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Yuki2Invyさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1627
性別 男性
自己紹介 基本的に3~8点を付けます。それ以外は、個人的に特別な映画です。

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【製作国 : ドイツ 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
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1.  アンダーグラウンド(1995) 《ネタバレ》 
色々と映画を観ていると、稀にどうしようもなく「天才性」を感じさせる作品に出会うことがある。本作は特に(通常の辻褄を超えて展開し始める)後半は、もう殆どがその類いの「常人の才覚では撮れそうもない」映像となっている様に思う。  「何故、どうして」という点で全く常人の理解が追い付かない本作は、初見では十分に理解するのは難しいかもしれない(少なくとも私はそうだった)。しかし、そういった細かい点を超越して作品全体から迸る得も言われぬパワーとメッセージは、初見だろうが何だろうが多くの人の心に確実に響くであろうし、そして二度三度と観直すと本作もまた、細部まで精密につくり込まれた類稀な完成度を誇るクストリッツァの仕事だということが分かってくる。生涯に渡って何度も楽しめる、素晴らしい映画だと思う。  シーンとしてひとつ、空飛ぶ花嫁の結婚式は、全ての映画の中で私が一番好きなシーンだと言ってよいかも知れない(初めて観たときはやはり疑問と、そして感動と笑いが止まらなかった)。もう一つ、演技面ではどうやってサルにあれ程に上質な演技を仕込んだのか、そのうち聞いてみたい。  もう一点だけ、批判されることも少なくない本作のテーマ面について、私は監督の「歴史を肯定する」姿勢には賛意を表したい。人間と、人間の生業(としての歴史)は、全て多面的なものであると思っている。本作は決して、歴史の負の側面を虚飾で覆い隠そうという作品ではない。清濁併せ呑み、醜さもさらけ出した上で、ポジティブな側面を力強くかつノスタルジックに描いた本作は、テーマ面の表現についても傑出した作品であると強く感じている。
[ブルーレイ(字幕)] 10点(2020-03-29 02:37:06)
2.  枯れ葉 《ネタバレ》 
引退するって聞いたときには、やっぱ(少しだけ)驚きもしたのですが、その時からも何となく復帰の可能性は在るかな…とは思ってて、んで5年で復帰ってコトなのでコレは正直「好い頃合い」だと思ったのです。が今作、そんな個人的期待や前評判の高さをも完全に凌駕してゆくがマデに、意外なホドに非常に素晴らしい作品に仕上がってたのですよね⇒短いタームの引退期間でしたが何かしらが(想定外に)好い方向に変化・進化しちゃったのか?とすら。まず、内容とゆーたら、直近の監督作と比べても実に全く何の変哲も無い超・ありふれた物語だとは思うのですよ。勿論、幾つかの親しみ易いテーマはしっかりと置かれては居ます。がしかし、率直にそもそも「やっぱそーいうコトじゃない」と思わされてしまったとゆーか、映画ってやっぱ(何を語るにしても)それをどう語るか、どんな画(色)で+どんな言葉(音)で彩るか、唯それだけのコトなのだ、と再度気付かされてしまった…と言いますか。思いがけず寧ろ、コレこそが映画だ(=映画の技術の粋と言うべきモノだ)とまで、もう唸らさせれてしまった…と言った方が好いかも知れません。  画ヅラと言うならまず、やっぱ何処も彼処も再び魅力に溢れて居る…のですが(⇒北欧の日常風景てのは、色んな他作品でも観るたび実感するコトではありますが、やはり少し風変わりとゆーかちょっと見慣れない感じが常に新鮮に感じられるとゆーか、それもまた今作でも効果的だったかな~とは思いますね)、今作は中でもその「色合い」とゆーか、ごく落ち着いて涼し気なハイソな感じもあるのですが、一方で非常に「鮮やか」だったなァ~という感覚が強かったのです。何となく、直近のカウリスマキ作品には「青い」ってイメージが有るのですが、今作はその青を非常に単純に「儘ならないという意味での憂鬱」の表現として使っている様に見えて、でその中 or 隣とかに(それと相対すべき何かとしての)赤や暖色が配されるという、シンプルなそのコントラストが非常に鮮やかに効果的だった様に見えました。コレも、誰でも出来そう・思いつきそうなモンだとも思うですが、それでも重ねて「卓越した」技術だったと思うのですよね(ココまで来ると)。  音楽的にも、今作はまたほぼほぼ歌芝居と言って好い様なレベルでモロに「歌う」シーンが多くって、かつ監督作の特徴としての台詞の少なさ(+しかも更に各々の本音はソコでまず言葉にならないコト)も相まって、それらの歌に登場人物の真の感情とゆーのがほぼ全て仮託されている…と言っても好い状況だったかと思うのですね。そもそもタイトルの『枯れ葉』とゆーのも、コレは私もどーいう意味だろ?と思って観に行ったら結局、ズバリ例の名曲シャンソンのコトだった様です⇒あの曲のイメージが骨格と成っている・あの曲を流しながら終わってゆくべき映画だった、という(コレも)シンプルな手法のよーで。でも、随所で流れる数々の曲ってのは、有名なのもあればそーでないのもあるし、音楽的なジャンルも様々…である一方で、実に心地好い調和の下でその「物語り」を各自見事に遂行していたとゆーか、コレとかもまた卓越した手腕だったな+とゆーかコレって単に映画の空気感の醸成と言うより、正に監督の価値観とゆーか(或いは)人生そのものの曝け出しの方じゃなかったかな…と思わされてしまいましたよね。こーいうのを、こんなカタチでモノの見事にやってのけられるとゆーのは、別に表現者でも何でもない私からしても、実に本当に羨ましいコトだな…と(また)唸らされてしまいました。傑作。
[映画館(字幕)] 9点(2024-01-28 22:53:09)
3.  ナイト・オン・ザ・プラネット 《ネタバレ》 
正直、ハタチ過ぎに一生の仕事を選ぶとなったとして、私の場合にタクシー運転手とゆーのはまず選択肢には入ってこなかっただろうなぁ…と思うのですね。見ず知らずの人間と密室に押し込まれて、で間を持たせる為には気まずくも喋るか、でなければ更に気まずい沈黙を耐え忍ぶか…ソコは(今でも)耐えられなくはないまでもシンプルに気乗りはしないだろうなぁ…とは思うのです。でも、昔の私よりも多少人生経験を積んだ今になって思うのは、仕事だろうが余暇だろうがとにかくやはり「人と繋がれる」とゆーのは実に非常に魅力的なコトであって、その意味では特に大都会のタクシー運転手なんて、ソレこそあらゆる分野・人種のあらゆる人々と毎日一期一会の出会いを重ねてゆける(+でその気になれば彼らと話すコトも出来るかも知れない)て、考えてみればスゴい仕事だと思うのですよ。私も実はもしかしたら、今の職種で通用しなくなったら20年後とかにはやってるかも知れない…と思います(でも私、殆ど運転経験ないので二種免許って取れるのかな?てな気もしてますケド)。  非常に純粋な会話劇の部類だと思いますが、また深夜のタクシー内てのも会話劇のシチュエーションとしてはこれまた非常に面白いとゆーか、何とゆーかこのジャンルにおける何かエッセンシャルなモノも感じられるなぁ…とゆーか。多くの場合で1対1、密室で動きもなし、かつ互いに面識が有るワケでもなし、そしてそもそも会話に乗るかどーかも完全に気分次第……なので結局、そーいう目的も必要性も本来は存在しないハズの会話を映画として面白いモノにする為には、本当に純粋な「会話としての面白さ」とゆーのが求められるのかなぁ…とでも言いますでしょーか(→端的に、それが最も際立っていたのがラスト、ヘルシンキのエピソードだったかなぁ…とも思いますかね)。  重ねて今作、会話劇でかつ全体としてはコメディタッチ、というジャンル分けになる作品だと思いますが、個々の状況設定・登場人物のキャラ自体は比較的シンプルで、少なくとも奇を衒ったというレベルでもないオーソドックスなモノだったと思います。が、だからこそ前述どおりの「会話としての(普遍的とも言える)面白さ」は逆に際立っていたかなぁ…と。そしてそれは取りも直さず、五つの話にそれぞれ出て来る役者さん達の仕事が総じて実に行き届いて素晴らしかった…というコトだ、とも。率直に、ウィノナ・ライダーって、ベアトリス・ダルって、ロベルト・ベニーニって(否、ベニーニはちょっと完全に超・ワールドクラスかも知れない)そしてマッティ・ペロンパーってこんなにまで凄い役者だったんだ!とつい感動してしまいましたね(これも否、ソレらを引き出した監督ジャームッシュをこそ、まずはとにかく褒めない訳にはいかないか…とも)。
[インターネット(字幕)] 9点(2022-04-16 22:45:01)
4.  ダンサー・イン・ザ・ダーク 《ネタバレ》 
「なぜジーンを産んだ」「(病気が)遺伝することは分かっていたのに」  この問いに対するセルマの「赤ちゃんをこの腕に抱きたかったの」という答え。コレとゆーのは、本当に人間のいちばん奥底にあるモノだ、とゆーか、人間からその人間性(善きにせよ悪しきにせよ)を根こそぎ奪い取ったとして、その最後に残っているのがコレだ、という様にも(私には)感じられたのですね。コレこそがヒトのヒトたりし最も美しい部分だ、と言っても好いものか、と(私としては)。私が今まで観た映画のどのシーンよりも美しいシーンだった、とも思います。本当に大好きですね。  今般、4Kデジタルリマスター版が公開されるってその予告編でドンピシャこのシーンが流れて、ついまた観に行ってしまいました。まあ、この肝心なシーンを予告編で流しちゃって好いのか?と思うトコロではありますケド。
[映画館(字幕)] 9点(2022-01-08 19:33:04)(良:1票)
5.  黒猫・白猫
気が付くと、珍しく幾度も観直しているという作品。溢れ出る生命力を浴びることで、明日への活力を分けて貰えるような気がするからだろうか。この映画の登場人物の様に、愉快に、力強く、無頓着に歌い踊る様に生きてゆきたいと、無意識に願っているのかもしれない。  とは言え、クストリッツァの才気炸裂・真骨頂な内容は、一見は適当なようで細部まできめ細やかにつくり込まれた実に高い完成度を誇る。今作ではそれをコメディ面に全振りしており、とにかくとてもユニーク・唯一無二な「笑える」要素が満載。しかし、何と言ってもこの作品の魅力は、これこそが「生きてる」ってことだという様な登場人物(あと動物)たちの無軌道で型破りな活力・生命力だと思う。何度見てもこう思う、「人生は、生きることは素晴らしい」と。
[DVD(字幕)] 9点(2020-03-28 18:24:58)
6.  怪人マブゼ博士(1933) 《ネタバレ》 
大作『ドクトル・マブゼ』の続編として製作されたモノの、政権を掌握した直後のナチス(のゲッベルス)に危険思想を孕む作品と見做されて上映禁止処分となった、てなコトですね。このコトもあってか後にラング自身は、今作にはナチス批判の意図をも込めたのだ…と言っているらしーのですがコレは多分後付けだろう…とゆーのも(また映画史家からは)言及されているトコロのよーです。私はとにかく第一作『ドクトル・マブゼ』を観れてないのでソコはナンとも言い難いかも知れない…とも思いつつ、今作はやはり、根本的にはごく娯楽映画的な方にハイ・クオリティな方のサスペンス・スリラーの傑作…だとは思うのですね(⇒オーラスのカーチェイスや、あと工場爆破シーンなんか最早オーパーツに近い出来ですよね!と)。しかし、ソレでも随所に垣間見える(時代的に不相応にも思える)ごく猟奇的でグロテスクな恐るべき要素とゆーのが、物語の内容を超える(=もっともっと本質的な)スリルやホラーを感じさせてくれる…とも同時に思ったりするのですよ。  その恐ろしさの根源てのは、やはりこの時代のドイツ社会自体が孕む歪み・捻れなのかな…とも(どーしたって)思ってしまうのです。ドイツ表現主義の作品として『吸血鬼ノスフェラトゥ』や『カリガリ博士』の印象を継承してるからなのかも知れませんが、所ドコロに登場する精神を錯乱させた登場人物達の有様とてまた社会病理としての種々の「狂気」の顕れである様にも思えますし、その中でマブゼ博士が唱える「テロルへの信奉」とゆーのもまた、「力」のみに頼らざるを得ない様な=そーしなければ生き抜けないという様な道理や倫理が用を成さない壊れた社会を映し出した結果…という様にも見えるのですね。で本作はまたまた、そーいうモノの象徴としてのマブゼ博士に対して善なる力=(本作においては)警察機構が完全なる勝利を収めて終わってゆく…という様にはどーにも見えないのも確かだと思うのですよね(⇒ソコは、同時代付近のアメリカ映画なんかと比べるとコレもやや異色だな…とも)。ナチスが検閲して改変してれば好かった…とゆーコトでは全くないのではありますケド、その辺も含めて個人的にはやっぱかなり「怖い・不気味な」映画だって印象がどーにも強く在り続けてます(映画自体の内容のスリルなんぞより余程…)。
[DVD(字幕)] 8点(2023-11-04 17:57:53)
7.  死滅の谷 《ネタバレ》 
コレは確かにナンとも強烈な……ブニュエルが今作を観て映画監督になろうと思った、てなコトらしいですケド、個人的には(コレもその影響自体は一般的に認知されてる)ベルイマンとか+彼の『第七の封印』とかへの影響…てのがより強力かもなって印象ですね。それは技術的な部分のみならず、今作が先進的・芸術的な表現技法を駆使して描き出すトコロの力強いテーマ性の部分にもまた大いに見て取れると思うのです。中盤の3つのストーリーで実に極上なるファンタジックの渦の中に見事に引き込まれたと思うやいなや、ラス前のエピソードの余りの冷徹さにモ~首がもげる位の勢いで現実に引き戻される、この感覚が実に鮮烈で、かつ(映画的にエッセンシャルな)「快感」だったと思うのですね。うーん、まだまだ、子どもの頃にコレを観せたら(ブニュエルとかベルイマンとかと同様に)ひとりの人の人生を⇒それを通して世界の在り方をも少し変えてゆける様な超・パワフルな作品だと思われますね。傑作。
[DVD(字幕)] 8点(2023-11-02 17:41:15)
8.  M(1931) 《ネタバレ》 
いや~、ド初っ端からあまりのスリラーっぷりに完全に引き込まれてしまったのですが、でも、ココなんかだってスリラーやホラーの観点からしたって、同時期のユニバーサル怪奇映画なんかと比べてもかなり異質…とゆーか私の好むトコロの現代的な「見せない」恐怖とゆーのが大いに感じられたりもしたのですよね。全編を通しても(時代相応に)ショッキングな描写に対する「制約」とゆーのはごく強力なモノとして感じ取れるのでして、暴力的・猟奇的な描写や反道徳的な展開なんかも中々描くコト自体が(そもそも)出来なかったという様に見える、その部分は当然(コレもやはり現代的な感覚からすれば)「演出の不自然さ」という印象にも繋がってくると思うのです。しかし、逆にそれ故に、全く語られない少女らの行く末を我々自身が如何ようにも惨たらしく想像し得るが為に、作中の幾つかの犯人と少女のシーンは却って実に寒々しく恐ろしいモノに見えてくる、この現象にはもはやある種の(恐怖映画としての)普遍性・不滅性が在る様にも思われますよね。そして、ソレは明らかに「監督の狙い」だ…とも(少なくとも私には)感じられるのです⇒その時点で、今今に私が観たトコロでもやはり確実にエポックメイキングな…と言うに値する傑作だと思われるのですね。  加えて、更に一つ優れていると思うのが、その映画史上に確実に残るだろう絶大な「ショッキングさ」が故に、本作にも辛うじて描くコトが許されたのであろう(極めて不埒な)終盤の「人民裁判」などといった作中の描写もろもろが、当時のドイツ社会の「歪み」という恐るべきリアルそのものをまた見事に体現している…という実に巧みな構成ですね。ココは、作中にも名前が登場するグロスマンやハールマンといった1920年代のドイツの実在のシリアルキラーについての知識が前提に無いと理解は難しいトコロかとも思われますが、おそらくこの映画は(前述した描写のまろやかさを踏まえたとしても・私なんかが現時点で観るよりも遥かに)当時の人々にとっては切実な恐怖だったのだろうと思うのです。もしかしたら、人類史上最も「本当に恐ろしい」映画のひとつだったのではねーか、とすら。だから、今作を観てのみの判断としてさえ、暢気な現代のホラー好きを自認する私の趣味の観点からとて、この時代のドイツ映画とゆーのは大いに絶対に鑑賞に値するのではないか…と一発で思わされてしまったのですね⇒そしてソレは、この時代のドイツとゆーのがまたある種、非常に高度に「狂って」いた…というコト自体を、残念ながらコレも非常に確からしい「歴史的」事実として(私も万人並みに)理解しているからだ、とでも言いますかね。なんか、全く思いがけずも実に高度なホラー的「閃き」とゆーのを勝手に拾い得てしまいました。
[DVD(字幕)] 8点(2023-10-30 22:33:21)
9.  パンドラの箱(1929) 《ネタバレ》 
私の観た「クリティカル・エディション」とゆーのは、1997年にドイツで修復されたプリントによるもので、その際に伴奏音楽は新たに作曲されたものということである。かなり現代的で(でありながらレトロで時代的な雰囲気も十二分に醸している)叙情豊かな音楽は相当に良質で、字幕がかなり少ないことも相まって率直な観たままの感触はオペラや音楽劇にも近いもの(=音楽の力で伝えたいモノを伝えてゆこうという意志を持つもの)に感じられた。確かに少し分かり難い作品ではあるが、その意味ではあくまで個人的にはある程度「慣れて」いる範疇の演劇的表現であったかと思う。内容的にも例えば『マノン・レスコー』などにもかなり近い様な、所謂(その時代の先進的な)ファム・ファタールを描く物語だと思われるが、今作のルイーズ・ブルックスにはそういった他作品の女性に感じる負の人間性の側面よりは、むしろ純粋で透き通ったソレの方をより強く感じ取れる様にも思われるのだ。  ルイーズ・ブルックス、世紀のハマリ役ですね。しかし、ただ悪女かと言うと少し違うとも思います。彼女は自分の感情にどこまでも素直なだけであり、そしてそう振る舞うことに揺るぎ無い自信と矜持を持ち合わせている、と感じました。その部分の彼女の表現の絶対的な土台となっているのが、類稀で実に現代的・普遍的な彼女のルックスであるかと思います。話を聞くと、実際の彼女本人もそういう自信に満ち溢れた「媚びぬ」女性だった様で、その意味でもこれ以上無いというキャスティングだったのでしょう。重ねて、今作の彼女のキャラクターには常しえに朽ち果てぬであろう普遍性とゆーのを感じます。傑作ですね。
[DVD(字幕)] 8点(2021-08-11 08:55:42)
10.  コリーニ事件 《ネタバレ》 
法廷ものとしてはどちらかと言えばシンプルな展開運びだとも感じられるが、率直にクライマックスの見応えは実に素晴らしかった。一点、それは今作において法廷で問われてゆくのが、被告が「有罪か無罪か」ではなく、被告が犯した罪に対する量刑(=情状酌量)の妥当性だ、という点で、それは厳密な法論理・ロジックからはいくぶん離れて、むしろより本質的な「正義とは何か」というヒューマニズム的葛藤に帰着してゆくからだ、と感じられたのである。他方、そうで在りながら本作のサスペンス展開には高度な論理性と十二分な明快さもが見事に保たれている。そのロジカル的・サスペンス的な面白さと、描き出されるヒューマニズムの清々しさの両立、という部分には、私の愛して止まない『人間の証明』を読破した時の感動というのを少し思い出させられた様に思う。  演技面は全体的に非常に手堅い感じであったが、ひとり、フランコ・ネロに関しては文句無しに出色の出来だったと思う。非常にユニークなクオリティをつくり出しており、これには流石!と言う他無いかと。
[DVD(字幕)] 8点(2021-05-20 00:50:31)
11.  パターソン 《ネタバレ》 
いけませんねコレは。羨ましすぎるじゃないですか。平穏。ひたすらな平穏だからこそ、むしろ些細な出来事がみな愛おしく見えてゆく。この生き方には確かにひとつの真理が在る様に感じられるし、大袈裟かもしれませんが一種、人のあるべき最善の姿の様にも思われます(ちょっと大袈裟ですね)。それこそ、種々の宗教において定義される「隠者」の要素を、多分に、かつ現代的に持ち合わせている様な、とでも言いますでしょうか。  また、彼の仕事がバス運転手だというのも如何にも洒落込んでいるじゃあないですか。世の喧騒を離れて静謐に暮らしつつも、日々バスに乗っては降りていく数多の人々は必ず何かしらな葛藤を抱えて彼の傍を通り過ぎてゆく。そこから彼は確実にインスピレーションを拾い得て、自分の世界をより深化させていくのだと。  駄目ですね。人が皆この生き方を選べる訳ではないし、仮に自分はそれを選べたとして、選ぶべきなのか。人と人が欺き合い、出し抜き合う混沌の現実から逃避することは許されるのか。  精神もまた、老いるものだと思います。この映画から抗い難い魅力を感じ取れるように為ったということ自体が、自分の精神的老化を示しているように思えて仕方が無いのです。何とも複雑な気分にさせられる映画体験でしたね。
[インターネット(字幕)] 8点(2020-06-14 02:39:23)(良:1票)
12.  ブラックブック 《ネタバレ》 
最初の方はシリアス全開のヴァーホーヴェンとしては際立ってマジメな内容で、これはこれで全く全然悪くないと思った。それが、終盤は一転してサスペンス方面の面白さ・意外性を重視した極めてスピーディかつ濃密な目まぐるしい展開で、少ーしリアリティを欠くものの、個人的にはこっちも超面白かった(が、ここは完全に娯楽映画なんですよねえ…)。非常に穿った見方をすれば、序盤・中盤と終盤で雰囲気がだいぶ変わっている点に疑問を差し挿むことも出来ようが(マジメに撮るんだったら最後まで貫けよ、という)、個人的にはそこまで深刻に気になっている訳でもない(とは言え、全く引っかからないという訳でもない)。  監督の個性であるエロやら汚物やらも非常に効果的に使用されており、映画としても見応えが高まっているし、ファンならニンマリ出来るだろう。しかし、いくらゲテモノ好きの私でも、件の糞尿ぶちまけのシーンは流石に少しやり過ぎにも感じた(前述の、リアリティを損なっている、という意味でも)。ただ、そこも含めて脱ぎまくりの汚されまくりな主人公を演じ切ったファン・ハウテンの演技には、最大級の賛辞を贈りたい(こういう気が強すぎる女性って正直ニガテなんだけど、「ムンツェに惚れたな?」「そうよ、悪い?」のシーンの凛とした目付きにはビリビリ痺れました)。地味に、ヴァーホーヴェンでは一番素直に他人にオススメできるかも知れませんね。
[DVD(字幕)] 8点(2020-05-17 01:58:05)
13.  エスター 《ネタバレ》 
単純なホラーとしては、2000年代以降では屈指と言える出来かと思っている。  一見は可憐な少女だが、その実は凶悪な怪物を家に招き込んでしまうという部分はままよくある展開ではあるが、複雑な過去を持つ夫婦の設定、子供を手玉に取る描写の巧みさ等、展開面での細かい工夫はどれも秀逸で飽きずに観てゆける。エスターの目的が父親の誘惑で、要は性的に歪んだ異常者(実を言えば普通なんじゃねーのという気もするが)だという点も、ある種良く出来たキャラ設定に思う(この手の異常殺人というのは、大抵満たされない性的欲求が動機の根底にあることが多いように思う)。  しかし、あんな絵を部屋中に描いてその中で夜を過ごしていたというのは、それだけで正に狂気を体現するこれも優れた演出に思う。中盤以降は比較的スピーディにその狂気が加速・過激化してゆき、終盤は相当に派手な展開になるのも個人的にはかなり好み。子役&ファーミガの熱演も素晴らしい。時代最高のホラー。
[DVD(字幕)] 8点(2020-03-01 12:40:35)(良:1票)
14.  71フラグメンツ 《ネタバレ》 
ある事件とそこに至る過程を(加害者・被害者の両面から)断片的な映像を積み重ねる手法で描き出そうとした映画。明確なストーリーがある様には一見は見えないつくりなのだが、取り留めなく映像を繋げているようで、そこに閉塞した社会情勢や、それを背景に異常な犯罪に至る衝動的な動機を巧みに分析・解釈して表現として結実させる手腕は天才的と言える。一級品のアート系と言える傑作。
[DVD(字幕)] 8点(2019-11-23 11:56:13)
15.  PERFECT DAYS 《ネタバレ》 
凄く、凄く好い映画だとは思うのですよ。非常に淡々と流れてゆく(ダケの)物語ではあるのですが、ほぼほぼ終始それがまたとても心地好く流れてゆくのだなあとも思いましたし、それで居て随所でホッコリ笑えたり・トコロに依ってはグッと急に泣けそうな箇所も在ったりして、また我々日本人であればそれをごく親しみ易い身近なモノとして観てゆけるとも思いましたし・一方で外国の方なら逆に大いに物珍しいユニークなモノとして観てゆけるだろう、というその意味ではある種「多様な・多面的な」価値を擁する映画にも成っている…と思ったりしてですね(そーいう映画って、それだけでもナンか好い映画だよな…とは絶対思いますよね)。  ただ、唯々但し、この映画ってとにかく、私にはモ~ひたすらにあの『パターソン』でしかなかった⇒だから、観終わっても結局全く同じとある一つの感想しか出て来なかったのですよ(根本的なモノとしては)。勿論、まず世の中にはこーいう映画ってこの2つの他にも幾らでも在るとだって思いますし、その中で偶々私がこの2作をこの順番で観ていた+その上に私自身が『パターソン』の方をごく非常に気に入っていた、というごく個人的な事情が在ったダケのハナシだとは重々承知しても居るモノの、だとしても今作、率直に私は(逆にちょっとギョッとする位に)何故にこんなにパターソンなの?と少しモヤっとしてしまったのが本音なのですよね。なので結論、評点は(『パターソン』との前後関係を鑑みて)この位にしておきます⇒もし『パターソン』を私が観てなかったのであれば、コレは絶対にもう少し高くなっていたとは思いますかね。
[映画館(邦画)] 7点(2024-01-03 17:59:59)
16.  ヒトラーのための虐殺会議〈TVM〉 《ネタバレ》 
シンプルに、かなり強烈な作品ですね。映画としても、楽しめたとは全く言えないですが完全に引き込まれて観ては居ました。同時に、ホロコーストの実際の様々な事柄・要素に関して非常に明快に分り易い・勉強になるという作品に思えます⇒ナチス側が何をどう考慮し、その結果どのように具体的にホロコーストを進めたのかが好く分かる。その観点からすると、今作は(ほぼドキュメンタリと言っていい程に)会議とその前後の時間のみを描くものであるので、その外側にある状況については(端的にはナチスの組織構造や戦況、特に東部におけるアインザッツグルッペンの活動について、等)事前に少し頭に入れておいた方がより理解を深めるコトが出来るかも知れません⇒ただしその意味でも、そういったモノを学べる映画としてそのジャンルの中で確実に中核を占める様な作品だとは思われます(その意味でも、また価値ある作品だと)。
[DVD(字幕)] 7点(2023-12-24 17:36:40)
17.  聖地には蜘蛛が巣を張る 《ネタバレ》 
今作、舞台はイラン第二の都市・北東部に位置するマシュハドで、ここは実際イスラム教シーア派の聖地の一つだ、とのこと。そして2001年に彼の地で実際に起こった連続殺人をベースとした映画であって、かつ描かれる犯罪事象そのものと、そして解決後の顛末はほぼ実話どおり、ということらしいのですね(⇒主人公の女性ジャーナリストの行動の部分が少し脚色されている、てことかなと)。実話ベースなのでサスペンス的には比較的にもシンプルな内容に思えますが、その面に関しても実話由来の凄みに加えて(サスペンス)映画としての技術的なクオリティも中々だったかな…と個人的には思ったりしますかね(演出・撮り方等、全般的にやっぱ巧かったです)。  加えて二点、まずは(コレも実際に事件当時発生した)イラン国内の事件に対する諸々の反応や、そもそもこのイスラム教の国・社会における女性の扱い、だとかいったモノを描き出してゆく「社会批判」的な部分にも、映画としての端的な「観る価値」が在ったと確実に感じるトコロであります(⇒これ故、今作はイラン国内では製作できず、実際の撮影はヨルダンで行われたとのこと)。あともう一つ、その犯人サイードを演じるメフディ・バジェスタニの演技についても、コレが中々に出色なクオリティでした。宗教的な動機が根底に在る人物だとは言え、それでも多分に快楽殺人的・精神異常的な様相を含む複雑なキャラクターの表現がかなり見事だったと思いますし、その「病んでいる」ことこそがまた、真に描き出すべき「社会病理としての犯罪」ということ(事実)なのではないかな、と思う迄に至りました。プラス、もうお一方の女優さんの方も同じく好かったと思います(+スゲー美人だったし)。ワリとオススメな作品ですね。
[映画館(字幕)] 7点(2023-04-26 22:49:51)
18.  カリガリ博士 《ネタバレ》 
話の内容や演出の意図が隅々まで分かり易い・伝わり易いというサイレントではない…とも思いますが、ソレでも一点、サイレントならではの「演技の質」とゆーのには、また大いなる見ドコロが在るという作品かと思いました。やはり、音・台詞に頼らないという意味ではある面で非常に「高度な」とゆーか、少なくとも現代のソレとはかなり「異質な」という意味での面白さ・興味深さとゆーのが(サイレント映画の演技には)存在していると思うのですが、今作は、まず状況設定からして異常なコトもあり、かなり独特・独創的なソレを観るコトが出来たという実感はごく強力でした。やっぱり、兎に角はチェザーレ、でカリガリ博士、そしてラストにかけてはフランシスとジェーン…この彼らの「狂気」の表現は、間違い無く実に高度で普遍的な演技の仕事だったと思います(+そしてまた高度に異質で「ココでしか観れない」という感じも在り)。コレまでも、またコレからもずっと、永く観て損は無い作品として在り続けるのではないか…と思いますね。
[インターネット(字幕)] 7点(2023-03-03 20:44:24)(良:1票)
19.  特捜部Q カルテ番号64 《ネタバレ》 
今回の事件の背景部分って、世界的に見ても結構普遍的な人権問題で、日本でも少し前には話題になったかと思います。映画に落とし込まれてるのはワリと今作が初見だったので、その意味でもまず社会派作品としても意外と価値の在る作品かも知れませんね。映画全体としても、展開運びは(これまでのシリーズ作に倣って)まずはごく手堅く、かつ部分的に意外性を孕む真相・中盤~終盤のスリラー展開・そして特捜部のメンバの人間ドラマの面なんかも含めて、4作では一番諸々と質が高かったよーに思います。甘めのこの評価で。  一点、ゆーて私にはどーしてもカール(あと何ならアサドも)が優秀な刑事にはどーにも見えない…のですケド、逆にローセってメッチャ優秀じゃねーすか?(情報収集能力・分析能力が並大抵ではない)その意味からするとオーラス、カールがアサドに言う「残ってほしい→ローセには君が必要だ」ってのが、要は(ホントに抜けたら困るのはローセなんだケド、あのおねいちゃんと二人だと正直オレ間が持つ気がしないから、とりあえずアサド宜しく!)という意味だったのではないか…と何となく邪推してしまいました(スイマセン、私性格捻じ曲がってますね…)。
[インターネット(字幕)] 7点(2022-02-12 22:04:13)(良:1票)
20.  水を抱く女 《ネタバレ》 
主人公の女性の名前そのまんまに、ヨーロッパに於ける普遍的な神話的概念「水の精(ウンディーネ)」をモチーフにした現代ファンタジー、という感じの作品。オペラだったら例えばドヴォルザークの『ルサルカ』なんて作品も存在するが、ウンディーネは総じて悲恋の物語の主人公となる、その部分を投影した現代版で、ただしウンディーネの伝承の細かい設定までを忠実に反映・再現しているモノでもないし、そもそも映画としてその真相が隅々まで明示されて終わる、という訳でもない。端的に言えばごく不可思議なおはなし(部分的には少しだけ不可解)として観るべき様なモノだ、と言ってまた好いであろうと思う。  その意味では、多分に雰囲気映画の類いとも言って好いかも知れない。そしてその雰囲気の面については、出来はまたかなり上質というレベルだったかと思います。まずはまたバッハの音楽が抜群にハマってましたね(協奏曲ニ短調)。なんとゆーか、水って実は哀しいモノなのかなあ、と感じさせられたとでもゆーか。水が奥底に秘める静けさ・暗さ・冷たさそのものこそ、ウンディーネの悲劇的な運命のある種の根源・理由なのではないか、と(その部分のイメージとゆーのは比較的温暖なアジア=東洋とそーではない西洋との文化的差異、とでも言って好いものなのかも…とも)。  前述どおりやや曖昧な雰囲気映画とは言え、ラスト付近はごく手堅いまずまずの分かり易さで、また小物も使ってお洒落に演出されるので結構気持ち好く観終われたと思います。また、ギリ90分という尺も(この内容でこれ以上の長さは確実に冗長になる、という意味で)非常に適切だったかと。偶には気楽に小品でも観るか~て観たのがこれホドのクオリティだと、なんとゆーかお得感がハンパ無いですね!実はかなりオススメです。
[DVD(字幕)] 7点(2021-11-01 21:31:29)
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