1. さよなら子供たち
戦争の暗くて重い影については皆さまが書かれている通りなんですけど、私がもうひとつこの映画を見て苦しく感じたのはルイ・マルの罪悪感と言うか懺悔と言うかそんな気持ちです。この映画の重さとは到底比べものにはならないけれど、子供の頃友人に対して行った残酷な仕打ちを今も心の中に抱えている方って多いのでは?他人が聞いたらありふれた事と思うかもしれないし、被害にあった友人は忘れてしまっているかもしれない。けど、本人にとっては今も苦しくてとても他人には言えないこと。出来ることならその時に戻ってあやまりたいこと。それをついに告白したような、何とも言えない苦しさに胸が締め付けられるような映画なのです。 8点(2004-08-18 10:44:16) |
2. さすらい(1976)
この作品は映し出すべき風景のみを事前に綿密に検討し、脚本は撮影しながら順次書き足して作られたものだそうで【STING大好き】様がおっしゃる通り、見ながらまるで自分が旅しているかのような、写真集の中に紛れ込んでその世界を疑似体験しているかのような究極のロードムービーだ。東西ドイツの国境地帯を移動する彼らのバックに流れる音楽はロバート・ジョンソンの「むなしき愛」をはじめ、ボブ・ディランや60年代アメリカのカントリーやフォークソング等のオールディーズ(しかもリュドガー・フォーグラーはシングルレコードをプレイヤーでかける!素晴らしい!)。映画全体が醸し出す空気は、アメリカの音楽や映画などのカルチャーに焦がれながらも、どこまでもドイツらしい映画を撮る、ヴェンダースの根源を感じる。見ながら途中で眠くなる方もおられるだろうけど、それでもいいのではないだろうか。眠くなったら寝る。そして起きたらまた続きを見る。部屋を暗くして、お酒でも飲みながら、映画に身を任せてゆるく見るのもまた良いと思う。 9点(2004-05-26 14:27:26)(良:2票) |
3. ブルックリン最終出口
この映画深夜放映しているのを2回位見た。私はとても好きな映画なんだけどあまり話題にならないね。原作である同名小説は、読んだ事無いけど性や暴力描写の過激さが問題になった事で有名なベストセラー。自分自身の資質と求めるものとの間に大きなギャップを感じている人や愛情を求めながらもどうしても自らブチ壊してしまう性癖を持つ人には結構浸みる、痛い映画だと思う。但しラストの柔らかい光にはかすかな希望があるね。 7点(2004-04-13 14:02:52) |
4. ストレンジャー・ザン・パラダイス
ジャームッシュの映画は言葉が上手く通じないもの同士が集まる話しが多い。その為生じるすれ違いやら勘違いやらがまた可笑しいのだが結局根っこでは通じてるんだよね。彼の映画には言葉じゃなくて目線や仕草や風景を見て、或いはその独特のリズムを感じて、その場の空気を体感し想像する楽しみがあるのだ。 8点(2003-12-17 12:06:12)(良:1票) |
5. 都会のアリス
ひとりは気楽だ。しかし私の場合決して孤独が好きなワケではないので、そんな生活を続けているとあらゆる思考は堂々巡りとなり、全てのものが自分を素通りして行くような気がして、自分の輪郭がぼやけてくる。うつろな日々だ。主人公のフィリップもそんな状態だったのかもしれない。突然強引に他者に自分のペースを乱されることになった彼は、最初不機嫌だったが一度失ったアリスがもどって来てからは彼女との旅を楽しみ、終始寂しげだった表情は生き々としてくる。人は他人と関わることによって様々なことを「実感」できるのかもしれない。この映画はヴェンダースがチャック・ベリーの「メンフィス」にインスパイアされて作ったとか。警察に行った帰りに行ったライブでチャック・ベリーが唄っていたあの歌だ。「交換手さん、メンフィスに繋いでくれよ。9歳のあの子はさよならと手を振って行ってしまった。彼女との楽しい日々が忘れられないんだ」。 フィリップ役のリュディガー・フォグラーは個人的に大好きで、彼が出演する「さすらい」や「リスボン物語」もとてもいい。それにしてもヴェンダース、またドイツ語で映画を撮ってくれないものか・・。 9点(2003-11-25 14:20:42) |
6. バグダッド・カフェ
この映画、片思いだった男性と「チケット貰ったので」と言って見に行ったのだ(遠い目)。いったい誰がミニシアターのペアチケットなんてタダでくれると思う?新聞屋か?勿論私が自腹で買ったのよ。しかも事前に下見までして。つまり私のイチオシ映画だったんだな。優しい音楽と独特の映像、どこだか良く分からない土地での不思議なちょっとイイ話し。当時は非常に斬新な気がしたのだが、今見たらどうなのだろう。TVでやっていても見る気になれない事がどうも気になる。なので7点。無難なところで。 7点(2003-11-19 11:28:43)(笑:5票) (良:1票) |
7. ルートヴィヒ(1972)
まさにヨーロッパらしい熟しきった甘い腐敗臭に酔いしれる作品。病みやつれて無精ひげをはやしていても気品漂うヘルムート・バーガーは「ルードヴィッヒを演じるのはあんた以外ありえない!」と思える程のはまり役。この映画を見ていると、最近世の中何もかもあまりにも幼稚じゃないかい?と思ったりする。 8点(2003-11-07 19:59:33) |
8. ベルリン・天使の詩
ヴェンダースの世界の見方がよく表現されている、詩のような絵画のような映画。多くのシーンにベルリンの壁があり、閉じられた世界の雰囲気がまたヴェンダースの心の中を覗いているような気にさせられます。しかし退屈な人にはたまらなく退屈な映画でしょう。公開当時大人気で映画館は連日満員、通路まで人が座っている状況でしたが、居眠りしている人も結構目につきました。 10点(2002-08-30 15:40:13) |