1. シルミド/SILMIDO
《ネタバレ》 妻投稿■企業のセクハラや大学アメフト部暴行事件って、こういうノリの延長だったんだなーという再確認が最初の感想。根性論って行き過ぎると、弱者への暴力に対する抑制が利かなくなるんだよねえ。火山高の先生が軍服来て船の上でマシンガン乱射している時点で魁男塾的ノリを想像していたんだけど、後半は現在皆さんが利用している仁川国際空港‐ソウル間のAlex=広域空港地下鉄の車窓から見える島でこういうことがあったんだという事実に愕然とさせられました。■この映画の登場人物に同情すべき点は見当たらない。みんな犯罪者だし、劇中でやっていることも殺人、強姦、民間人の人質を取っての籠城。神の目視点でモルモットを見るように映画を見ることはできても、登場人物に感情移入して映画を見ることはできないし、そういう映画でもないと思う。■・・・・なんだけど、誰もやりたくないことを誰かに強要するときに「お前らは同情する価値もない人間だから、騙して酷いことをやらせても、殺してしまってもいいんだよ」と言ってしまう行為…この”悍ましさ”はしっかりと受け取ることができた。史実では登場人物は死刑囚でもなく、農村から騙されて連れてこられた(今の福島原発みたいだね)人であるという事実を敢えて捻じ曲げ、登場人物に過度に感情移入しないようにしたのも、上記の悍ましさを描き出すことにこの映画を特化させた結果なんじゃないかと思う。■今の世間でも弱者や無抵抗の人間に酷いことをしても、謝る前に「こいつはこれこれこうだから価値のない人間なんだ」と吹聴する奴とか、「こうやって逞しくしてやっているんだ」って言う奴いるよね。この映画はこういう社会を、前半の魁男塾から後半のバス自爆まで、一貫して皮肉っている。 [DVD(字幕)] 8点(2011-09-29 12:18:50) |
2. 悪魔を見た
《ネタバレ》 妻投稿■この映画を見て「私の心の中にも悪魔が潜んでいる」と感じるのは無理だと思う。仮に私が殺されたとしても、みんなで育てているチビが殺されたとしても、私の旦那は加害者への復讐に走らず、自分は何ができるかを考えて、残された人、それがいないなら社会福祉のために身をささげるだろう(ただし私の命を守るために他に方法がないなら、6人くらい殺しそうな一面はある)。殺人被害者家族や暴力被害者当人の方々も、その多くが憎悪に苛まれつつも、他者の権利を尊重する原則を固持し、激しい無力感の中で社会的義務を果たしていかなければいけないのが現実だ。犯罪被害者家族の気持ちの側に立って(・・たような気になって)加害者への死刑を連呼する人たちも、被害者家族が復讐のために社会に反逆したら、たちまち非難に転じるに違いない。■犯罪被害者家族が犯人を殺したいと思うことは、悪魔に魅入られているということなのだろうか。極自然な事なんじゃないのか。そして「悪魔に魅入られる」というキーワードの下に、犯人を憎むことと、周囲を巻き込んで犠牲にして復讐する事を同一リンクで扱っていいのだろうか。両者には大きな断絶があるはずで、その断絶とは何か、何と戦わないといけないかが提示されていることが、こういう種類の映画の価値だと思うが、この映画はそこを素通りし、さも「犯人に殺意を持つことが既に悪魔に魅入られている」という描き方をしている。■「私の心の中の悪魔の発露」はもっと思いもよらないところにあると思うんだけどなあ(特に「多数派」になったときは注意すべき)。 [インターネット(字幕)] 5点(2011-09-23 03:17:38)(良:1票) |
3. 光州5・18
《ネタバレ》 妻投稿■よくツタ屋で「戦争の狂気」という題目で売られている映画。私はこういう分野の映画には2種類あると思っていて、1種類目は「ジョニー・マッドドッグ」や「ホテル・ルワンダ」みたいに、私が映画を見て、「遠い世界で行われる人間の狂気を知って恐怖を感じた気になって」、「まあああいう国に行かなければいいや」と夕食を続けるタイプの映画。もう1種類目は「狂気」というものを感じさせない割には「こういう事が目の前で起こったらどうしよう」という生理的恐怖を感じさせる映画。私にとってこの映画は後者のタイプだ。■突然軍隊がやってきて市民を無差別に殴り殺す。パンツ一丁でトラックに乗せられる。政治的にはいろいろあったけど経済的には日本と同じシークエンスを経ている(つまり風景がちょっと前の日本と似ている)世界でこういう事が本当にあると言うのが言いようのない暴力の恐怖をストレートに伝えて行く。この映画の上手いところは「何でそんな事が起こったのか」「人間の狂気」「戦争の狂気」なんて鼻から論じるつもりがない事。もう「何で?」なんて関係なく殴られ殺される。その点が「暴力の理由なんて後から理由づけされるもの」という歴然たる戦慄を上手くあらわしていると思う。■後半市民軍が結成され、解放区が作られてワイワイガヤガヤやっている風景や、そうした団結が軍隊の圧倒的力の前には脆くも潰されてしまうという無惨すぎるラストは、「暴力」「軍隊」と言うものの本質をストレートにぶつけていると思う。軍隊や自衛隊は主権国家なら必要かもしれない。でもその本質はああなんだから、ちゃんと国民は管理しなきゃね。 [DVD(字幕)] 7点(2010-08-05 04:11:45)(良:1票) |
4. 殺人の追憶
《ネタバレ》 妻投稿■これってどう評価するべきなんだろうか。この作品は「犯人の異常性」「軍事政権下の韓国の怖さ」「今もおこかで生きている犯人の怖さ」というものを感じられる名作なんだろう。しかし私は主人公の刑事が知的障害者の人を拷問しているシーンで完全に「持つべき感想」を見失った気がする。■自閉症当事者の私の友達は昔の職場で背中の皮膚が半分なくなるくらい殴られたことがある。警察も助けてくれず当然加害者はお咎めなし。私に言わせればいずこにいる殺人者を怖がっている暇なんてなく、テレビをワゴン車に積んで余裕をこいているソン・ガンホの穏やかな顔の方が数段怖かった。多分殺人者もそんな穏やかな顔で毎日生きているんだから、怖がる必要なんてないんじゃないだろうか。少なくともこの映画は「人を殺す異常性」を描きたいのか「人殺しが異常ではない異常」を描きたいのかがはっきりわからない。■中学生くらいの女の子が泥だらけで死んじゃうシーン、それを見てソン・ガンホが茫然とするシーンは、どこかで見たような気がする。 [DVD(吹替)] 4点(2009-08-17 04:16:16)(良:3票) |
5. 大統領の理髪師
《ネタバレ》 妻投稿■この映画のメッセージはすでに最初の青瓦台の食事のシーンで出ています。子供の喧嘩において、自分は悪くないのに謝らされ、それに抗議すると大好きな父親に殴られ、でも裏でその父親が偉い人に殴られ、銃まで突き付けられるというシーンです。もし私が子供のころ、私のお母さんが上司に殴られ、ナイフを突き付けられていたら、私は大人の世界を一生信じられなくなったでしょう。■そして物語後半はナガンが連れ去られ、歩けなくなるという出来事を父親の視点から見つめる構図に変わります。自分の息子がわけのわからない理由で行方不明になり、歩けなくなるまで拷問されるという悲しさ、怒りが描かれます。■この2つのシーンの後に理不尽な暴力で心を破壊された親子がおんぶしながら、韓国の空と美しい木の下を歩くシーンがありますが、そのシーンには親子以外人間が画面に映らないのです。私はそこに「人間を殴ったり後遺症を残す大けがをさせる『権威』というものがあっても、それは馬鹿な思考(マルクス病とか)でドンパチする人間世界のみ有効で、この世にある自然や親子愛とは関係ないんだ」というメッセージを感じるのです。 [地上波(字幕)] 7点(2009-06-22 22:53:40) |
6. 僕の彼女を紹介します
妻投稿■チョン・ジヒョンてめえ調子に乗ってんじゃねえぞ。何女子高のイケメン教師を手錠で拘束して連れまわしてんだよ。何凶悪犯を車から引きずりだして得意そうに踏みつけてんだよ。いかにもたこにも「愛とは支配」を地で行ったその挙句に最後は泣き狙いやがる根性が許せない! そこに直れ! 説教してやる! ・・・・・追記:旦那は大喜び・・・。 [インターネット(字幕)] 6点(2009-05-03 21:55:54) |
7. レッドクリフ Part I
妻投稿■ジョン・ウーが三国志をやるとあーなるのはわかっていたが、どうせあーいう映画にするなら、あーいうのに徹してくれたらいいと思う。怪我やロープで動けない敵を串刺しにするのは、あーいう映画には似合わない。これじゃあ、劉備や周ちゃんの仁徳とやらも萎えるぜ。 [地上波(吹替)] 5点(2009-04-12 23:23:12) |
8. トンマッコルへようこそ
《ネタバレ》 テーマは純粋・・・。その主語は村人ではなく兵隊さんたちだろう。私の旦那の行動(あるいはその他の映画レビュー)を見てからこの映画を見ればわかるが、村人さんたちはどう考えても自閉症者なのだ。つまり場の空気が読めない。壊滅的に・・・。私の予想ではたぶん自由主義にとっても社会主義にとっても邪魔な発達障害者が1948年建国直後に両者の秘密合意でここに住まわされ、忘れられた結果この村が誕生したという裏設定があると思う。冒頭で傷病兵を殺すシーンと、「子供のように純粋な」という健常者の確信犯的な偽善すら感じる村の名前が、その伏線に見える。そういう村人に対し、戦争が出来る頭の回転の速さと人間を殺すよりも実は服従させる事に使われることの多い「銃」を持っていながらも、結局何の悪さもしなかった・・・最後に彼らを守ろうとした兵隊さんにこそ「純粋」という代名詞がふさわしいと私は考える。ラストシーン・・・真っ暗な夜空からその虚ろなシルエットを現わすアメリカ軍の飛行機は、日本の内地で人々を追い回した艦載機P40と絨毯爆撃をしかけてきたB29だった。B29の絨毯爆撃のシーンは、爆弾の雨がどんどんこっちに迫ってくる、おそらく昭和20年に多くの日本人が感じたであろう絶望を一瞬だけ表現していた。監督が意図したかどうかは想像の域を出ないが、私はこのシーンと、その後ろに続く村人が「花火」と楽しむシーンにこそ、この映画のメッセージが込められていると思う。南北兵士が戦ったのは結局は愛する人が爆弾が迫ってくる絶望にさらされないためなのだというメッセージだ。つまり彼らは絨毯爆撃を花火に変えたのだ。もう一度言う、ファンタジーなのは村人ではなく兵隊さんなのだ。■■凄いいい映画だと思ったんだけど、知的障害っぽい女の子(ちなみに私も知的障害者です^^)の使い方が間違っていないかな? あそこで死んでしまうのはファンタジーとしてやってはいけないと思う。あとあのラストサムライ・・・必要なの? [インターネット(字幕)] 7点(2009-02-08 05:42:34) |
9. 猟奇的な彼女
うちの旦那、これを見て「あー、スパイダーパニックの巨大ハエトリグモになって、あのおいしそうなぴちぴちした体にしゃぶりついて、エキスを吸い尽くしてー」とか訳解らないことを言っていました。確かに映画の中のチョンジヒョンは猟奇的なようで美しいシンメトリーを強調したような服をいつも着ていますよね。頭のネジが外れた倒錯趣味の変態野郎のための映画であって、旦那の反応からしてそういう意味では成功した映画だと思うから8点なんだけど、私だって負けていないという嫉妬の意味も込めてマイナス1。 [DVD(吹替)] 7点(2009-01-22 04:35:38)(笑:1票) |
10. グエムル/漢江の怪物
旦那に代わって妻投稿。この映画はモンスターパニック映画につきものの、大勢の犠牲者と怪獣の屍の上で感傷に浸る主人公とヒロイン連中に対するアンチテーゼではないかと思う。ガメラ、仮面ライダー何でもいい。夜道を家に帰る端役女性が突然その命を通り魔的に奪われる。次の瞬間には主人公の図々しい日常が描かれ、被害女性の今までの人生や、彼女の帰りを待っていた彼氏が変わり果てた恋人を前に嘆き悲しんだり、家族が蒸発した娘を必死で探すであろう事実はなかったことにされるような展開に、きっと制作者は違和感を感じていたのではないか。それが、この映画における葬式のシーンやラストの唖然とする結末など、頑張って努力した主人公の家族が悲惨な運命を背負う描写へとつながったんだと思う。あの女の子の遺形はモンスターを際立たせるために殺された映画やテレビの中の無名の人々の墓標ではないかと思う。 [DVD(字幕)] 7点(2009-01-02 03:12:21)(良:1票) |
11. ブラザーフッド(2004)
《ネタバレ》 韓国の友達も出来たし旦那も韓国で迷子になって韓国の警察に助けられたので、韓国は身近な国ですが、国がある日2つに分かれ、殺し合い、味方同士でも殺し合うという悲劇を映画で知った今、韓国の友達が出来る事はとても素晴らしいことだと思いました。竹島や歴史問題で相容れない考えはあるけど、価値観の違いを乗り越えて人々が仲良くなることが許されるなんてホントにホントに素晴らしいですよ。でも頭蓋骨が砕けるまで人を殴ったり、首つり死体や黒こげ死体がたくさん出てくるのはリアルで気持ち悪いし、戦争の狂気と死の恐怖を表現するには浅はかかな。この点は殺戮描写のほとんどないホテル・ルワンダの方が秀逸だと思いました。兄弟愛もラストはスター・ウォーズの最終章そのままでしたしね・・。それを差し引いても今を生きる私たちが平和のために何を大切にしていくべきか、そしてすることが許されている素晴らしさはメッセージとして十分伝わってきたので8点です。 [DVD(字幕)] 8点(2008-11-25 23:04:26) |
12. 火山高
マトリックスそのものは好きじゃないが、それがパロディーにされていくのを見るのは大好きだ。そしてそれを学校でやってしまうという心意気には圧倒。しかし無茶苦茶な設定だからこそ、それを面白くするためには作り手の表現者としての志が必要なのであって、この映画はそれが空回りしてしまっている。全ての元凶は「しびぼうろく」ネタだ。こんな得体のしれないネタをなくし、単純に「ありえないパワーを持った不良が支配する中学校にやってきた主人公が、学園の平和のために戦う」という感じにすれば、間違いなく高得点を入れていたと思う。 [ビデオ(吹替)] 6点(2008-01-29 23:11:34)(良:1票) |