21. 穴(1957)
ストーリーだけを見れば、相当に荒いのだけれど、そういう荒さを押し通して、娯楽作品として完成させる力強さが、当時の映画界と映画人にはあったのだと思う。 だからと言って、その強引さを現在においても用いれば良いかと言えば、そうではなく、その当時の時代の空気と価値観だからこそ生まれた映画の流れだと思う。 まあ何にしても、そういう時代の空気感も含めて、何十年も前の映画が現在も充分に“娯楽”として通じることは、とても素晴らしいことだと思う。 [ビデオ(字幕)] 7点(2005-09-24 02:22:28)(良:1票) |
22. 明るいほうへ 明るいほうへ -童謡詩人 金子みすゞ- <TVM>
今作がテレビ放映された数ヵ月後に同じく童謡詩人金子みすゞを描いた劇場公開版「みすゞ」が公開されたが、観客が受ける感動の大きさとしてはこのテレビ放映作が優れていた。同じ題材を扱いながら明らかに製作費をかけ、丁寧に作られたはずの劇場版がなぜ劣ったのか、その理由はひとつである。金子みすゞを演じた主演女優の差であったと思う。劇場版に主演した田中美里は決して悪くはなかった。しかし今作の主演である松たか子の存在感は際立っていた。これは女優としての実力の差というよりも、適性の問題だと思う。松たか子という女優はこの時代の古き日本女性を演じさせればおおよそ右に出るものはいないだろう。それはテレビ版の「蔵」を見ても明らかだ。それが歌舞伎役者の血によるものかどうかは分からないが、とにかく、今作の松たか子は素晴らしかった。 [地上波(字幕)] 7点(2004-03-27 11:46:30) |
23. アザー・ファイナル
2002韓日ワールドカップ決勝戦の同日、ブータンで行われた世界最弱国決定戦の模様を綴ったドキュメンタリー。世界最高のゲームが行われているその日に、世界で一番サッカーが弱い国を決めるというこの企画は一面ブラックなユーモアに見える。しかし、そこで行われたことは紛れもない好ゲームだった。レベルはもちろん横浜で行われたゲームとは雲泥の差であるが、そこにひしめき合うスポーツマンスピリットは、ロナウドやカーンのそれと何の変わりもなく、感動的である。 7点(2004-02-03 19:45:01) |
24. Undo “アンドゥー”
岩井俊二の独創的な世界観は秀逸であるが、それ以上に、山口智子の存在感に目を奪われる。精神的に歪み、醜く乱れながらも女優としての美しさに溢れた演技は圧巻である。映画の物語自体は盛り上がりに欠けるが、それでも強烈に胸に残る魅惑的な力がある。 7点(2003-11-25 17:09:03) |
25. あぶない刑事
もはや家具屋の“閉店セール”的な風合いも感じなくもないが、いよいよ本当の“ラスト”らしい映画最新作の公開中、動画配信サービスの番組リストに今作を見つけて、久方ぶりに観てみた。 「懐かしい」という感覚を通り越して、むしろ色褪せていない娯楽性が素直に凄いと思った。 主人公たちの言動も服装も取り巻く風俗描写もすべてにおいて「時代」を感じるけれど、古臭いというのとは少し違っていて、「こういうものだ」と時代を越えて観る者に納得させる強さとある種の潔さが、「あぶない刑事」というエンターテイメントの世界観そのものに溢れている。 まあ何と言っても、舘ひろし&柴田恭兵の主演コンビが織りなす化学反応が、やはり幸福で奇跡的なことだったのだと思える。 当たり前のことだが、この二人がタカ&ユージを演じなければ、この刑事ドラマの成功はあり得なかっただろうし、いまや大御所となった二人の俳優にとっても今の成功はなかったことだろう。 そして、最も凄いことは、この作品が誕生して30年という月日が流れた今現在においても尚、舘ひろし&柴田恭兵が、港署のタカ&ユージという変わらぬキャラクターを演じることに「違和感」を感じないということだ。 最新作「さらばあぶない刑事」はまだ観ていないけれど、きっと彼らは、30年前と変わらぬ“ダンディー”と“セクシー”を見せてくれるに違いない。 [インターネット(字幕)] 7点(2003-10-06 12:55:39) |
26. アンダルシア 女神の報復
映画の終盤、心身ともに疲弊し、化粧が薄れていくほどに顔立ちがよりシャープになり、エッジが効いた美貌が露になる黒木メイサが印象的。 彼女のルックスは、日本人女優の中ではやはり異質で、それ故になかなか雰囲気にマッチする映画に恵まれてこなかったと思う。 そんな彼女の美貌が違和感なくマッチするロケーションを実現し、映画世界に息づかせたことが、この国産娯楽映画が一定のクオリティーまで達していることを示す顕著な例だと思う。 何せ前作「アマルフィ」があまりに酷い映画だったので、それを観た殆どすべての人が、この続編の公開に対して冷笑を禁じ得なかっただろう。 明らかな“駄作”の二番煎じをして、一体誰が得するのだろうかと、この国の映画製作システムの奇妙さに辟易してしまっていた。 同じ製作スタッフに、当然同じ主演俳優、前作同様に某キー局のプロモーションの過剰さばかりが目につく“ザ・テレビ映画”としての存在感の強さ。この流れで、まさか一寸でも「面白い」と思える映画が生まれるなどとは夢にも思わなかった……。 そう、この映画、なんだか意外と「面白い」。 突き詰めていけば、前作同様に大味な展開の中に突っ込むべき「粗」は尽きない映画ではある。 けれど、そういう粗に対して目をつぶっても良いと思える程に、映画として面白い部分も充分に在る。 意味不明な程に冗長で陳腐だった前作に対して、演出的な巧さは劇的に向上していて、映画ならではの巧みさも所々で見られる。 更には冒頭に記した通り、ヒロインの美しさもきっちりと映画の中に組み込まれている。 部分的だったとしても、良いアクションシーンがあって、主人公のキャラクターにも愛着が備わって、映画的な面白味もあって、女優が美しいのならば、娯楽映画として何の問題もないじゃないかと思える。 決して「良い映画」だとは言わない。ただ間違いなく「悪い映画」ではない。 完璧な駄作からの見事な“巻き返し”。このあまりに想定外な製作陣の「成長」は、日本の映画ファンとして嬉しく、賞賛に値する。 このクオリティーをキープし超えていけるのならば、シリーズ化も大いに結構! [DVD(邦画)] 6点(2012-10-15 23:48:48)(良:1票) |
27. 愛のむきだし
《ネタバレ》 いやあ、困った映画だ……。 というのが、鑑賞直後の率直な感想。“何”を重要視するかで、褒めちぎることも出来るし、どこまでも蔑むことも出来る。そういう映画だった。 タイトルが示す通り、「愛」そのもののあまりに無防備な“むきだし”の様を延々4時間見せ続ける。 それだけで、一言「凄い」と言えばその通りで、他のあらゆる映画とも似通わない“天上天下唯我独尊”的映画だと言っていい。そのオリジナリティと絶大なエネルギーは、もちろん賞賛に値すると思う。 しかし、観賞後しばらく時間が経過して、個人的には拭いされない「違和感」が先行していることに気付いた。 人間の本質的な雑多さと下世話な様に満ち溢れた映画であることは間違いない。 過剰な“エログロ”描写が、鑑賞者の好き嫌いを大別することも明らかだろう。 ただ自分が感じた「違和感」は、そういう部分のことではなかった。 端的に言えば、「宗教観」だと思う。 難しく微妙な宗教描写にも、この映画は堂々と土足で踏み込んでいく。僕は無信仰なので、それらの描写もこの映画のエネルギッシュな娯楽要素として受け入れることはできた。 しかし、よくよく考えれば、この映画の宗教描写はあまりに乱暴過ぎるのではないかと思った。 主人公は、明らかに怪しい新興宗教に陥っていくヒロインに対して、「あの新興宗教でなければ、他のどの宗教を信じてもいい」というようなことを言う。 無信仰な者の台詞であれば、べつに違和感はない。しかし、主人公が生まれた時から敬虔なクリスチャンの家庭で育った人間であることを踏まえると、ちょっとあり得ない台詞なんじゃないかと思う。 そして、この映画では、信仰の深い人間が徹底的に危うく脆い者として描かれる。 「宗教」がテーマの核心に存在しているが、この映画はどこかで、信仰を軽蔑しているように見えて仕方がなかった。 そういう“立ち位置”を今作に感じてしまうと、みっちりとエグい描写が羅列する程に、致命的な軽薄さが垣間見えてしまった。 ただし、このあまりに特異な映画世界に息づく演技者たちはすべて素晴らしい。 特に物語的な主人公と言っていい“3人”が凄い。 西島隆弘、満島ひかり、そして安藤サクラ、この若い3人の俳優が凄まじい存在感を全編に渡り放ち続けていた。 さて、結局面白かったのか、面白くなかったのかどっちなのだろう。 ああ、困った……。 [DVD(邦画)] 6点(2012-09-19 23:11:55) |
28. 相棒 -劇場版Ⅱ- 警視庁占拠!特命係の一番長い夜
《ネタバレ》 警視庁内で使用されているPCが全て“Mac”であるという美術設定に対して「何てリアリティが無いんだ!」と、Macユーザーである僕はまず思ってしまった。 その一方で、何とも言えない後味の悪さには、警察組織内部の闇を描いたストーリー展開に相応しいリアルさを感じてしまい、“リアリティ”のバランスが非常にちぐはぐな映画であることは間違いないと思った。 警察組織の巨悪とそれにまつわる陰謀が、殆ど一人二人の裁量でどうにでも転んでしまう顛末には失笑を禁じ得なかった。 しかし、ストーリーに秘められた個々人の思いや行動原理には整合性があり、その部分がこの映画の娯楽レベルを一定の水準まで引き上げているのだろうと思う。 サブタイトルが示す通り、物語はほとんど警視庁内部で展開され、劇場版前作に比べ圧倒的に派手さは無いが、サスペンスとしての密度は今作の方が随分と高く、実に「相棒」らしい世界観が反映されていると思えた。 “衝撃”とされるラストの顛末については、「相棒」というシリーズそのものがこの映画で締めくくられるとういことであれば、それ相応の重みが加味されていたと思う。 だが、周知の通りこの映画の直後に至ってもテレビシリーズは繰り広げ続けられており、今なお完全終焉の気配はない。 であるならば、このラストは、「相棒」という世界観の人間模様において、あまりに勿体ないことをしていると言わざるを得ない。 ご冥福をお祈り致します……と、ついつい言いたくなる。 [地上波(邦画)] 6点(2012-05-31 13:53:50) |
29. アンノウン(2011)
《ネタバレ》 殆ど予備知識無く鑑賞を始めたので、冒頭から滲み出ているサスペンスフルな空気感にすんなりと引き込まれ、二転三転する展開を堪能しながら最後まで楽しむことが出来たことは間違いない。 サスペンスアクションとして、サスペンスの緊張感とアクションの高揚感がバランス良く配置されており、鑑賞直後の満足感は当初の想定よりも随分と高かったと言える。 ただし、観賞後数分間でちょっと振り返ってみると、粗という粗がポロポロと出てきてしまうことは否めない。 よく考えると映画全編に渡って言えることだが、「実は一流の○○○」だったというには、そもそもの言動がずさん過ぎて陳腐だ。 まず目的のために徹底した偽りを謀るとはいえ、目的地への移動中に至るまでその偽りを貫く必要があるのだろうか。これは明らかに観客を欺くためだけの演出であり、人間描写上の必要性はないと思う。 そんでもって、空港のタクシー乗り場で最も重要な鞄を置き忘れるって、どんだけうっかり屋さんなんだという話だ。これも結局、ストーリーとしての一つの目的を設置するためだけの設定であり、極めて安直だ。 他にも、一流ならば乗り込んだ先の言語で世間話くらいは出来るようにしとけよ!とか、ふいの自動車事故とはいえ簡単に気を失い過ぎだろ!咄嗟に飛び降りるとかそれくらいしようよ!とか一流の組織のメンバーのくせいに素人の女の子にやられてどうすんだ!とかとか……、一度突っ込み出したら止まらなくなってきそうだが、とにかくよくよく考えると用意されていたオチに対して整合性が無さ過ぎる要素に溢れてしまっている。 ストーリーのアイデア自体は、オリジナリティが高いとは言い難いけれども充分に面白味に長けている。それが興味を最後まで持続させる最大の要因だとも思う。 しかし、このアイデアであれば、ラストの顛末でもっとどぎつく踏み込むことができたなら、数多の粗を振り切って余りある映画に仕上がっていたかもしれないなと思う。リーアム・ニーソンのクライマックスの表情は観る者を惑わせる緊張感が含まれていて良かったけれど……。 まあそこまで完璧なクオリティーを求めるべき類いの映画ではないと思うし、観ている間と観終わった瞬間に満足していたならそれで充分だと思う。 と同時に、画面から溢れ出る上質な色調と巧い俳優陣の演技によって、もの凄く質の高い映画に“見えるだけ”に、やはり残念に思う。 [DVD(字幕)] 6点(2012-02-26 02:14:25)(良:2票) |
30. あしたのジョー(1980)
この劇場版自体が、自分が生まれる前の作品なので、当然「あしたのジョー」をリアルタイムに知る世代ではない。テレビアニメも見たことが無かった。 ただ、アニメのスペシャル番組などにおいて、散々放送されているので、矢吹丈の最大のライバルの名が「力石徹」だということも、彼の最期がどういうものかも、「知識」として当然知っていた。 この劇場版は、テレビシリーズの再編集版に過ぎず、そこに「あしたのジョー」という伝説的なアニメーションのすべてが凝縮されているとは到底思えないが、それでも、ようやく力石徹の「最期」をちゃんと見られたことは、意義があったと思う。 来年、ついに「あしたのジョー」が実写化される。 それを前にして、原作漫画を中古で買って読み、この映画を観てみた。 原作のファンである人からも、そうでない人からも、実写化そのものについて、配役について、賛否は尽きないだろう。 が、個人的には「期待」の方が大きい。 [DVD(邦画)] 6点(2010-12-28 16:16:26) |
31. 相棒 -劇場版- 絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン
「相棒」というテレビシリーズは、不思議な魅力を持っていると思う。 本来は某キー局制作の2時間ドラマ臭がプンプンする刑事ドラマだったにも関わらず、地味というか地道というか根強い人気が続き、10年間にも渡る人気シリーズになってしまった。 描かれるストーリーも、徐々に「謎」が洗練されていき、一定のクオリティーを保つミステリーシリーズとしても育っていったと思う。 テレビシリーズの深いファンではないので、本当に時々放映されている回を見たことがある程度だが、最初は”失笑”せずにいられなかった水谷豊のキレッぷりも、今では”お約束”となり、アレが無いと少々物足りなさも感じる。 この「劇場版」も全く観たくないなんてことはなかったのだけれど、まあ所詮テレビドラマの雰囲気の枠を出ない作品だろうと、特に期待もしていなかった。 そして、実際その予測は外れていはいなかった。 良い意味でも悪い意味でも”豪華な「相棒」”という印象。 1本の映画として完成度が高いとはとても言えないが、普段のテレビシリーズでは見られないであろう大々的なロケーションと豪華キャスト陣は、ファンを存分に喜ばせるスケール感を伴っていたと思う。 人気のテレビシリーズが、予定調湾ごとく映画化される現状には辟易しているが、「映画」にすることで面白味が膨らむ作品は確実にあるだろうし、一概に否定はできないだろうなとは思う。 同シリーズ「劇場版Ⅱ」にも、密かに期待している。 [地上波(邦画)] 6点(2010-12-21 14:12:20) |
32. アフリカン・ダンク
雰囲気はコテコテのB級コメディっぽいけど、なかなか盛り上がるスポーツ映画に仕上がっている。スポーツ好き、スポーツ映画が好きな人はかなり楽しめるはず。 6点(2003-10-11 14:17:09) |
33. AKIRA(1988)
大友作品自体あまり触れておらず、この手の作品には苦手な感がある僕にとっては、やはりストーリー自体に居心地の悪さと拒絶感を拭いきることはできなかった。正直「だから結局何なの?」と思ってしまう。むしろこれは難解・不理解というよりも趣味の問題であろう。だから物語自体に対するコメントはできないが、その特異なアニメーション世界は、流石に圧倒的なものを感じずにはいられなかった。特に精神世界を表現するビジュアルは、ダイレクトにこちらの脳裏に注ぎ込まれるような錯覚を覚えるほど見事だった。ただし、おそらく英語版に合わせてあると思われる、どうにも一致しないセリフとキャラクターの動きには気持ちの悪い違和感を終始感じた。 5点(2004-05-21 01:36:46)(良:1票) |
34. アンラッキー・モンキー
相変わらずと言っていい主人公の疾走と共に破錠していく展開は興味深いが、例えば「ポストマン・ブルース」ほどのストーリー的な完成度の高さは無かった。主人公の幻想のまま物語自体もぼやけて終わってしまった感が拭えない。 5点(2003-12-05 23:17:20) |
35. アマルフィ 女神の報酬
某キー局の開局何十周年記念か何だかで、日本映画とすれば「巨費」をかけたと言える今作。 オールイタリアロケが功を奏し全編通して一定の雰囲気はある映画だと思う。無駄に長い気もするが、サスペンスのテンポ自体は悪くはなかったと思う。 主演の織田裕二の演技なんて端から期待はしていないので、この手の作品としては珍しい「外交官」という役どころにも特別違和感は無かったと言える。 ただし、違和感は無い一方で、主人公が外交官である必要性をあまり感じなかった。 原作を読んでいないので何とも言い難いが、なぜ外交官である主人公があそこまで大立ち回りをしなければならないのか?そもそも彼は何者なのか? 主人公のキャラクター性自体の描き方があまりに不十分なまま物語は終結してしまい、ストーリーに入り込めなかった。 ストーリー自体も、一応の整合性は保っているけれど、配役その他から“オチ”が終始見え隠れするので、サスペンスによるカタルシスは得られなかった。 描かれなかった主人公のキャラクター性、主人公がちょこちょこ電話する相手に中井貴一を声だけ出演させるなど、某キー局の相変わらずのビジネス戦略が随所に見られる映画だ。 [地上波(邦画)] 4点(2011-01-06 16:57:02) |
36. アカルイミライ
黒沢清作品は非常に気になるのだけれど、実際観てみると自分の趣向に合わない。今作も例に漏れず、衣装や映像による秀逸な映画世界そのものには引き付けられたが、肝心のストーリーと人物描写に魅力を感じることができなかった。どうもそれぞれの登場人物の描き方が中途半端に思えてならない。 [映画館(字幕)] 4点(2004-01-30 14:29:15) |
37. ALIVE アライヴ
前半は原作のセリフをそのまま引用し並べているにすぎず、原作以上に漫画的な現実離れした環境は、監督の思惑よりも膨らみがなかったように思う。したがって、原作を熟知している者にとってはやや退屈だった。そこから一転、主人公が異次物と対面してからの展開は、とてもスピーディになり飽きさせることはなかった。特に北村龍平監督の得意中の得意であるアクションシーンは圧巻で、派手なアクションシーンは原作には無いものなので、映画としてのオリジナリティが出ていて良かったと思う。しかしながら、映画全体を総括すると、やはり高橋ツトムの原作が持つ、衝撃的な創造性と鮮烈な凶暴性は描き切るには及んでおらず、原作者のファンとしては満足に至らなかった。 [ビデオ(邦画)] 4点(2003-10-31 11:26:00)(良:1票) |
38. あぶない刑事リターンズ
「リターンズ」の製作はあぶ刑事ファンとしては嬉しいものだったけど、前作までの統一されたダンディズムが薄れ安っぽいしあがりに見えた。コメディ要素はこの作品の売りのひとつだろうけど、少し過剰な気もした。鬼課長役だった中条静夫さんが亡くなられ、今作には出演していないのも残念。 4点(2003-10-16 11:05:59) |
39. Adam by Eve: A Live in Animation
どういう類いの作品であるかをろくに確認せずに、Netflixのピックアップに上がっていた中から作品時間のコンパクトさに惹かれて鑑賞。 実写とアニメーションが融合した興味をそそる映像世界ではあったけれど、存在すら知らなかった気鋭アーティストの“長編MV”だった。 こういう作品もあるのかと、“おじさん”なりに興味深かったけれど、何せ楽曲をほぼ聴いたこともないアーティストだったので、短いドラマパートの間に挟み込まれるMVの連続に入り込めなかったことは否めない。 映像自体はそれなりに作り込まれていたし、Tik Tok世代に向けられた歌詞表示付きの演出は、ファンにとってはエモーショナルなものなのだろう。 ただしそれが「独創的」であるかどうかは少々疑問。 「渋谷」を舞台にした少女たちの葛藤や鬱積を主軸にして展開される世界観は、既視感があり、特にアイドルグループ「欅坂46」が表現した世界観に重なる部分が多かった。 主役の女の子は魅力的だったが、完全に平手友梨奈に寄せたキャスティングだったと思う。 ともかく、結果的に面白かったかどうかは別にして、自分の興味の範囲外の作品に触れる機会はそれほど得られるわけではないので、そういう意味では良い機会だったと思う。 最後の楽曲でようやく「ああ呪術廻戦の主題歌の人か」と気づく始末。新しいアーティストももっと積極的に知らなければと思う。 [インターネット(邦画)] 3点(2022-06-26 23:16:09) |
40. 相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿
テレビドラマで少しでも売れた作品は、何でもかんでも「映画化」してしまって興行収入を得ようとする流れは、今のテレビ業界の定石なので、「相棒」本編の映画化は必然だと思う。 ただ、いくら人気キャラクターだと言っても、本来“脇役”でもない“端役”である鑑識役を主人公に据えて映画化してしまうことには、少々やりすぎな感じが拭えなかった。 実際、一つの映画の主人公としてはあまりに華が無さ過ぎた。華が無いからこそ、本編で良い味を出しているわけで、そもそも本末転倒だと思う。 ストーリー展開的にもチープな点が多く、「鑑識」という科学捜査の先陣であるはずのキャラクターが主人公のわりには、捜査の手法そのものが強引で、論理性が乏しかった。 「鑑識」がメインである以上、走り回って捜査をするシーンなんて必要なく、台詞の通りに「物証がすべて」だという概念を貫いてほしかったと思う。 「相棒」シリーズらしく、少々強引であってもサスペンスを転じさせてオチを付けたことには好感が持てたが、やはり一つの「映画」としてのインパクトは備わっておらず、テレビのスペシャル版放映で充分だったと思う。 [地上波(邦画)] 3点(2011-01-17 12:36:13) |