21. 地雷を踏んだらサヨウナラ
小雨の降る中、地元唯一のミニシアターに観に出かけたが、その帰路の心の高ぶりは今も忘れられない。あらゆる「重厚」に包まれた映画だと思った。重厚な映像、重厚な演技、重厚な音楽、重厚な生き様……。圧倒的なまでの一之瀬泰造という一人の戦場カメラマンの行き方に接して、感動というよりも身震いに近いものを覚えた。「地雷を踏んだらサヨウナラだ」と笑顔を残して聖地アンコールワットへ行く浅野忠信=一之瀬泰造のたたずまいが印象的だった。 [映画館(邦画)] 10点(2011-07-03 23:46:24) |
22. 沈まぬ太陽
日の丸親方の大企業を軸とした様々な人間の、様々な思惑、正義、悪意がめくるめく様を描いた長ーい物語。 202分にも及ぶ大長編で、内容が内容なので、とてもじゃないが気軽には観られない。数ヶ月前に録画しておいたものをようやく観ることができた。 山崎豊子の長編を渡辺謙をはじめとする映画スタッフが気合いを入れて長い長い映画に仕上げただけあって、骨太で見応えのある作品だったとは思う。 個人的に、こういうそれなりに名を馳せた多くのキャストが色々な役で登場する作品は好きなので、次々に登場する俳優陣の顔ぶれを見ているだけでも、興奮させられた。 冒頭にも記した通り、様々な人間の様々な思惑が絡み合う人間ドラマなので、最終的に「誰が正しい」ということは言えないもどかしさを、ラストシーンを観ながら感じた。 そのことが、見終わった後のカタルシスの欠如に繋がったことも否めない。 ただし、この物語はまさにそういう社会自体のもどかしさを描いたものであり、それをしっかりと表現したこの映画の方向性は決して間違っていないと思う。 そして、「フィクションだ」と濁してはいるけれど、この物語が実在の巨大企業の顛末をモチーフにして描かれていることは明らかであり、実際にどういう問題があって現状に至っているのかという「実情」がとてもリアルに理解できた。 現実に即し、安直なドラマティックを排除した実直な映画だと思う。 でも、渡辺謙演じる主人公が、自らの信念に対してあまりにも頑すぎて、その絶対的な実直さが逆に人間として共感できないなあと、個人的には思ってしまった。 [地上波(邦画)] 6点(2011-07-03 23:33:22) |
23. シーサイドモーテル
やりたいことは分かる。狙っている世界観もファーストシーンからラストシーンまでビンビンと伝わってくる。 だが、ウマくいっていない。そして、面白くはない。 山間の小汚いモーテル、海なんて何処からも見えないのに、その名も「シーサイドモーテル」。そこに集まった4組の訳あり男女。それぞれのシチュエーションの中で巻き起こる”騙し合い”。 キャストは生田斗真、麻生久美子、山田孝之、玉山鉄二、成海璃子、古田新太……と華やかさを併せ持つ曲者揃い。 「ああ、面白そうだ……」と、予告を見た段階で止めておくことが、最も幸福なのかもしれないが、もちろんそういうわけにはいかないわけで……。 何と言うか、面白く無さ過ぎて腹立たしいなんてことは全然ないのだけれど、きっぱりと面白くないと断言は出来て、その失敗の様を何故だか微笑ましく眺めてしまう。そんな映画。 それは、この映画に携わったスタッフも演者もみな決して手は抜いていないということが、ひしひしと伝わってくるからかもしれない。 「タランティーノばりに面白い映画を作ろう!」とそれぞれが頑張っているのだけれど、噛み合っていないというか、そもそも話が面白くないというか。 無意味にハイテンションな演出なので、舞台で各部屋のセットを立体的に組んで演れば、結構面白い舞台になるかもしれない。と、可哀想なのでフォローしてみる……。 まあ、いいよ。こういう映画もあって良いよ。 P.S.「手紙」の後にこの映画を観た。山田孝之&玉山鉄二の役柄のギャップは、楽しみがいがあった。そういう要素も、映画の醍醐味だと思う。 [DVD(邦画)] 5点(2010-12-25 02:10:49) |
24. 仁義なき戦い 代理戦争
現在(2010.9)放映されている某ビール会社のCMで、御年77歳の菅原文太が、物凄い風格を携えて立ち飲み屋でビールを飲んでいる。 ただのCMだが、菅原文太という大俳優のスター性を改めて感じた。それと同時に、昭和の日本映画史を彩ったスター俳優も、自然の摂理の中で徐々に少なくなってしまったことに一抹の淋しさを覚える。 そんな思いもあって、菅原文太の映画を観たくなった。彼の代表作と言えば、一にも二にも「仁義なき戦い」だろう。数年前に第一作目を観て、その溢れ出る映画のエネルギーに圧倒された。 番外編と評される第二作目を飛ばして、深作監督作品のシリーズ中、最も評価の高い第三作目の今作を観た。 「代理戦争」という副題が表す通り、やくざの組織対組織の思惑がぶつかり合う”かけひき”の様が色濃く描かれた作品だった。 菅原文太演じる広能昌三も、やくざ組織の中の愚かしい欲望の乱立の中で鬱積する場面が多く、一作目のような強大なエネルギーとインパクトは得られなかった。 やくざ映画らしい抗争シーンは何度か挟み込まれるが、トータルすると、どこの世界でもあり得る“政治劇”を観ているような印象を持った。 菅原文太の憤りが溢れる苦悩の表情で映画は終わってしまうので、観ている方もカタルシスが満たされぬまま苦悶してしまう。 どうしてこの作品がシリーズ中、最高評価を得ているのかは理解出来なかったが、シリーズを転換させていくための作品としては重要な人間模様を描いていると思う。 そして、単純に血で血を洗いのし上がっていく様だけを描かず、今作で描き出されたようなやくざ社会の中での“政治”の様や、盃の取り交わしと裏切りが表裏一体であるこの世界の異様なまでの愚かしさまでを、徹底して描き連ねたことが、この映画の孤高の価値に繋がっていると思った。 飛ばしてしまった第二作目も含め、この際、全シリーズ作品を観てみようと思う。 [DVD(邦画)] 6点(2010-12-05 23:08:15) |
25. 仁義なき戦い 広島死闘篇
シリーズの順番を違えて、第三弾「代理戦争」を観た直後に、第二弾である今作を観た分、余計に特徴的な個々人の人間描写が鮮烈に印象に残った。 何と言っても配役が凄い。 シリーズの主人公である菅原文太演じる広能昌三を脇に配し、北大路欣也、梶芽衣子、千葉真一がそれぞれ濃すぎるほどの芝居を見せつけてくれる。 それぞれが決して魅力的なキャラクターというわけではないのだけれど、台詞を発する一つ一つの息づかいや、ぎらつくような目つきに、目が離せなくなる。 特に千葉真一演じる暴徒のキレっぷりは圧倒的だった。文字通り男の血と汗がたぎる映画世界の中にあって、梶芽衣子の色香も極上。 それにしても、深作欣二が生み出した同シリーズは、オリジナル全5作品がたった2年間の間に立て続けに公開されたことに驚く。 これほどまでに濃い映画を、これほどまでに濃いキャストをもってして連発した当時の日本映画界のエネルギーは、とても今の映画界の裁量でははかれないだろう。 つくづくあらゆる面において、「圧巻」の一言に尽きる映画だと思う。 [DVD(邦画)] 8点(2010-09-12 19:52:01) |
26. 食堂かたつむり
今僕が日々の生活で生きていく中で、とても大切にしていることは、「食べる」ということだ。 それはもちろん、今に始まった感覚ではないが、歳を重ねていく中で、殊更にそれの重要さが身に染みてきている気がする。 分かり切ったことではあるけれど、人生は楽しいことばかりではなく、むしろ辛いことの方が多い。 ただその中で、日々の「食べる」という行為が充実していれば、ただそれだけで人生は幸福になり得る。と、思う。 「生きることは、食べること」と、この映画は謳う。 それはとてもシンプルなことだけれど、幸福感に溢れ、同時に、潔く、厳しい「真実」だと思う。そして、その「真実」をきちんと描いたこの映画は、同じようにシンプルで、ただただ素晴らしい。 “とある事情で”で声が出なくなってしまった主人公、倫子。彼女が出来ることは、ただ美味しい“ごはん”を作れることのみ。彼女が作った小さな「食堂かたつむり」に訪れ、食事をした人々は、次々に願いが叶っていく。 温もりに溢れたプロットに、温もりに溢れたおいしそうなごはんが次々に登場し、その美味しそうなごはんと、それを美味しそうに食べる人たちの姿を見るだけで、幸福になる作品だ。 ただ、この映画は、そういった幸福なグルメ映画の範疇だけでは留まらない。 「食べる」という行為の根本を、もっとひたすらに純粋に追求し、その根本をしっかりと描いている。 料理自体の”美味しさ”は二の次で、それよりも前に存在する、「食べる」そして「生きる」というすべての生命の営みにおける「幸福」と「残酷」を真正面からしっかりと描き切っている。 その“まっすぐさ”が、この映画の最大の素晴らしさだと思う。 [映画館(邦画)] 8点(2010-04-07 16:58:28) |
27. ジェネラル・ルージュの凱旋
面白い原作に対して、おそらく完成度の高い映画にはなっていないだろうな。 という予想は容易について、それはたぶん間違いないということを分かっていながら、やっぱり気になるので観てしまう。そういう映画は時々ある……。 前作「チーム・バチスタの栄光」は、原作が持つ独特の医療サスペンスの世界をちっとも反映出来ていない「駄作」を超えて「愚作」と評することをいとわない作品だった。 それと同じ監督、同じ主演コンビで製作された今作が、決して良い映画に仕上がっているわけがないことは、分かっていたのだけれど、どうしても気になる要素があって結局鑑賞に至った。 その要素とは、“ジェネラル・ルージュ”を演じた堺雅人だ。 今回の物語の場合、要となるのは竹内結子&阿部寛が演じる主演コンビではなく、救命救急センターの絶対的な“将軍”速水センター長を演じる堺雅人の存在であり、彼のパフォーマンスいかんでは映画の完成度に大いに影響すると思われた。 その思惑通り、堺雅人は要となるキャラクターを原作のイメージを損なうことなく表現しており、その点で映画としての一定の説得力は保たれたと思う。 ただし、やはりそれでも、前作同様、原作の持ち味をちっとも反映出来ていない。 この監督が何故だか入れたがる意味不明で面白くも何ともないギャグシーンには、前作での免疫もあったので若干慣れたが、ストーリー展開として盛り上がるべき点をきちんと押さえられていないことは、致命的だと思う。 “バチスタ”に続き今作の監督も担当した中村義洋という人。 このシリーズ作だけを観ると、どうしようもない駄目監督というレッテルを貼りたくなるが、「アヒルと鴨のコインロッカー」「フィッシュストーリー」「ゴールデンスランバー」と立て続けに監督した伊坂幸太郎作品では、とても良い結果を残している。 映画監督と原作には、クリエイターの優劣とは別の“向き”・“不向き”があるのだろうと改めて思う。 [DVD(邦画)] 3点(2010-04-01 12:31:56) |
28. 少年メリケンサック
ふとそれに気がついて、意外に思った。 宮崎あおいの出演作を昨年(2009年)は、一本も観ていなかった。それどころか、もっと確かめると、最後に観た彼女の出演映画は、2006年の「ただ、君を愛してる」だった。 3年以上も彼女の演技を映画で見ていなかった。何たることだ。と、思った。 今年の日本アカデミー賞で、主演女優賞にノミネートされた彼女の紹介映像で、今作のワンシーンが流れた。 「何だか面白い演技をしている」と、とても新鮮に感じ、久しぶりに彼女の映画を観たいと思った。 言わずもがな僕は宮崎あおいという女優のファンである。10年近く。 それなのにどうして3年以上も出演映画を観ていなかったのか。 一昨年の大河ドラマの出演の影響で、出演作品数自体が少なかったということももちろん一因だけれど、はっきり言うと「観たい!」と思える作品がなかったということに尽きると思う。 大河ドラマの出演とその成功、CMなどへの露出拡大に伴い、宮崎あおいという女優は、一躍“国民的女優”となった。 そんな中で、彼女の”畑”である映画に対する立ち位置も確実に変化をせざるを得ない状況となったと思う。 詰まるところ、以前のようにフットワーク軽く若手映画監督の挑戦的作品に出演しづらくなってしまった。 それが、彼女の出演映画を「観たい!」と思えなくなってしまっていた要因だと思う。 そんなわけで、この映画についても、自分の中で敬遠していた。 敬遠していた理由はもう一つあって。 クドカンは好きだけれど、彼の良さは長編映画では発揮されにくい。“クドカンワールド”は、テレビドラマや舞台など時間や環境に「制限」がある媒体でこそ発揮されると思う。なのでこの映画も、きっと笑えるし面白いんだろうけど、トータル的にはクドカンが個人的な趣味趣向に突っ走った作品なんだろうと、分かっていた。そして実際そうだった。 ただ今回は、端から「宮崎あおいを見よう」と思って、この映画を観た。 さすがに宮崎あおいで、滅茶苦茶な映画世界の中で、存分にコメディエンヌとしての魅力を見せてつけていた。 終始、「かわいい」としか言いようが無いし、やはりこの女優は凄いと思った。 じゃあそれでいいじゃない。と、思う。 [DVD(邦画)] 6点(2010-03-16 00:23:12)(良:1票) |
29. ジャージの二人
疲れ切ったお盆休み前の日。精神的な疲れを除きたい時にふさわしい映画だったと思う。 暑さを避けて、山荘での日々をジャージで過ごす父子には、それぞれ悩むところがあって、“避けて”きたのは、本当は暑さではなく、人生の中で生じる疲弊感みたいなものなのだろう。 でも、久しぶりに会った父子は、そういったもろもろの諸事情を敢えて話そうとはしない。ただただ、山荘でのスローな日々を繰り返していく。 その何でもない情景とか、父親と息子の絶妙な距離感が、とても染み渡ってくる。 それは決して特別なものではなくて、世の中の父子、特に父親と息子の関係性の中に普遍的に存在する“つながり”を感じるからだと思う。 敢えて言葉にしなくても、敢えて伝えなくても、「解消」するものはきっとあって、それを果たしてくれるのは、時間であったり、自然であったり、自分にとってベーシックな人とのつながりなのだと思う。 映画としては、なんと言っても堺雅人と鮎川誠の「息子-父親」関係の“妙”が素晴らしかった。二人の絶妙な間合いが、そのまま映画自体の間合いとなって、独特の空気感を生み出していると思う。 質の高い映画ということでは決してないけれど、理屈ではなく、観る者の気分を軽くする映画だ。そういう映画も確実に必要だと思う。 [DVD(邦画)] 8点(2009-11-25 22:21:36)(良:3票) |
30. Jリーグを100倍楽しく見る方法!!
Jリーグが開幕し、Jリーグ熱が最高潮に過剰過熱していた時期に公開された作品。当時活躍していた選手たちがデフォルメされたアニメーションで登場する。印象深いのは、ゴン(中山雅史)の親父までがメインに登場する。確かにゴンチチ、一時ブームになったなー。てゆーか、みなさん、ヨーロッパだとか代表戦だけでなく、Jリーグも見よう! [映画館(字幕)] 2点(2009-06-27 04:58:17) |
31. シティーハンタースペシャル グッドバイ・マイ・スウィートハート<TVM>
ご存知「シティハンター」のテレビスペシャル版。お馴染み冴羽のガンアクションとおとぼけぶりが楽しめる。ストリー的には目新しさはないので盛り上がりには欠ける。 [地上波(邦画)] 3点(2009-06-25 16:13:30) |
32. 修羅雪姫(2001)
まず続編を意識しているのかどうかは知らないが、あの終わり方では肩透かしをくらった感は否めない。トップにクレジットされているわりには伊藤英明の役どころはあまりに希薄なまま終わってしまったように思う。そのラストをはじめストーリー的にみればとても褒められた完成度ではないというのが正直なところだろう。しかしながら、海外でも評価されたようにそのビジュアルはなかなかのものだったと思う。CGとワイヤーによるアクションシーンがというよりも、釈由美子、嶋田久作をはじめとしたキャラクターのビジュアルに映えるものを感じた。演技だけを見ればお世辞にも上手いとは言えない釈由美子だが、その風貌、眼差しは映画の質に合ったものだったと思う。そのあたりは見応えとして残る。 [ビデオ(邦画)] 4点(2009-06-24 15:14:46) |
33. 式日 SHIKI-JITSU
観る時に集中力が無いと一気にダレる映画だろうけど、集中力さえ続けばけっこう感慨深い作品に仕上がっていると思う。岩井俊二主演というのはどうかと思ったが、役柄のせいか意外に違和感はなかった。重苦しい映画だけにラストの明るさには救いがあった。エンディングテーマがCOCCOの「Raining」だったのが嬉しかった。 [映画館(字幕)] 5点(2009-06-23 23:39:21) |
34. 静かなるドン4〈OV〉
あまりVシネは見ないけど、今シリーズだけは原作も面白いので結構観た。近藤静也役の香川照之をはじめとしてキャスト陣が結構豪華でそれぞれキャラクターに合っていたと思う。設定自体がある意味破綻しているので、Vシネのノリに合っていたと思う。 [ビデオ(邦画)] 5点(2009-06-23 23:21:06) |
35. 静かなるドン3〈OV〉
対抗組織鬼州組との抗争も激化していき、独特のコメディに加えヤクザ映画ならではのバイオレンスも見応えがある。多くのVシネシリーズがあるが、今作はその中でも非常に良く出来たシリーズだと思う。 [ビデオ(邦画)] 5点(2009-06-23 23:19:17) |
36. 静かなるドン2〈OV〉
Vシネシリーズ第二作目。破天荒で悪ノリな原作の世界観に近いシリーズであると思う。香川照之をはじめとする出演陣も原作のキャラクターに近くVシネとしては完成度は高い。 [ビデオ(邦画)] 5点(2009-06-23 23:18:55) |
37. 静かなるドン〈OV〉
同名人気漫画のVシネシリーズ。テレビドラマ版も放映されたが、Vシネ版の方が良い意味でくだらなく、アダルトなところが原作に近い。香川照之のキャラクターがドン役にとても合っていたと思う。 [ビデオ(邦画)] 5点(2009-06-23 23:18:26) |
38. 深呼吸の必要
「言いたくないことは、言わなくていい」 お互いのことをほとんど知らない中での生活。それはその事実だけを見れば、現実の冷たい社会と同じことかもしれない。でも、もちろんそれは根本的に異なる。“平良家のルール”は、人と人とを隔てるためではなく、人に対する深い想いから存在することだ。だからこそ、赤の他人だったそれぞれが紛れもないひとつのファミリーへと成り得るのだ。 とてもありきたりで、シンプルなストーリーである。主人公のキャラクターの薄さなど詰めるべき部分は確かにある。しかし、あの空と海に囲まれた時間そのものに、ストーリーという概念に縛られない解放感があったと思う。 [DVD(字幕)] 6点(2009-06-20 20:47:33)(良:1票) |
39. 十三人の刺客(1963)
《ネタバレ》 先ずモノクロームの秀逸な映像美に圧倒される。静と動を極めたその映像世界に古めかしさはまったくなく、新進的な雰囲気すら感じる。往年の名俳優たちの重厚なたたずまいにも目を見張る。他の時代劇に違わず、今作も侍としての崇高な精神を発端に物語りは始まるが、今作の場合、格好良いサムライの姿を期待すると少々面食らう。ラストの泥臭い大殺陣に象徴されるように、この映画は殺し合うということの無情さ、人間の本質的な滑稽さを根本に描いていると思う。タイトルのわりには脇の人物の描き方がもう一つで期待していた群像劇としては弱いが、己の精神と精神の間でせめぎ合う侍たちのドラマは秀逸だ。 [DVD(邦画)] 6点(2009-06-20 17:44:00) |
40. 女学生の友
清々しい脚本とデジタルハイビジョンならではの鮮明の映像が心地よかった。フランクな老人を演じた山崎努の演技が印象的で素晴らしかった。等身大の女子高生の思い悩む姿とそれに対する老人の構図がユニークでバランスも良かったと思う。 [地上波(邦画)] 6点(2009-06-20 17:30:59) |