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すかあふえいすさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

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1.  七人の侍 《ネタバレ》 
個人的には後年の「椿三十郎」や「天国と地獄」の方が完成度は高いと思うが、やはり一番好きな黒澤映画はコレになるだろうか。俺にとって白黒映画の悪いイメージを払拭してくれた思い入れのある作品の一つ。  ジョン・フォードやボリス・バルネットが馬ごと追ってスピードを追求すれば、黒澤明の場合は馬を待ち構えて迎え撃つ視点。冒頭で野武士が走り去るのを見守る視点は恐怖から、最終決戦で馬を追いかけるのは「ぶった斬ってやる」と標的に一撃浴びせるために。  黒澤が受け継ぎリスペクトを捧げるアクションの素晴らしさも見所だ。 百姓と侍たちが絆を結ぶ展開・馬や群衆スペクタクルの迫力は伊藤大輔「斬人斬馬剣」や鳴滝組の「戦国群盗伝」、仲間集めと馬の疾走はフォード「駅馬車」、ユーモアと殺陣の切れ味は山中貞雄「丹下左膳」等々。  冒頭20分の導入部、麦が実る「麦秋」までのタイムリミット、鶯の鳴き声は春の証明。実るのが速い街の麦は時間の経過を伝えその得たいの知れない恐怖が強まっていく。 そこに光を差し込む官兵衛といった侍たちの登場。戦力が揃っていく頼もしさと楽しさ、人足や菊千代が百姓と侍たちを結び付けていくドラマ、戦闘準備のワクワク感。それが詰まった2時間だけでも面白いが、それを爆発させていく後半1時間30分の死闘・死闘・死闘!  登場人物もみんな味のある面々。 野武士を恨む利吉、娘が大事な万蔵、弱腰の与平、間に入って仲裁する茂助、侍に惹かれる志乃、どっしりと構える長老儀作。  侍たちも冷静な指揮官の官兵衛、地味ながらハニカミと戦闘時の怒気が頼もしい五郎兵衛、縁の下の力持ち七郎次、若く未熟な勝四郎、ノッポのムードメーカー平八、凄腕の剣客である久蔵、侍・百姓・野武士に片足突っ込んだトラブルメーカー菊千代。  それぞれに役割があって必死に生きようと戦う。特に菊千代は大きな楔。二つの立場を繋ぐ無くてはならない存在。 彼が居なければ官兵衛が百姓の心情を深く理解する事も無かっただろうし、また官兵衛がいなければ菊千代が村に来たかどうかも解らなかった。持ちつ持たれつの関係。  菊千代と官兵衛の一喝による「鎖」、野武士という打倒すべき目的は「道」となって団結を高めていく。さらには平八の死。百姓を代表する利吉の責任感、家族同然となった仲間の死。誰も裏切り者が出なかった理由がここにあるんだろうな。  劇中の野武士は作物を食い荒らす「災厄」でしかない。「災害」に感情移入すればコチラが殺される。殺るか殺られるか。野武士もまた仲間の死を還り見ず何度も突っ込む。理由は解らない。解らないからこそ怖い。色々な解釈が持てる存在だね。  とにもかくにもこれほど心打たれた作品、点数など安いもの。俺にとってマイフェイバリットな映画の一つだ。
[DVD(邦画)] 10点(2013-12-14 13:26:20)(良:4票)
2.  女囚701号 さそり 《ネタバレ》 
園子温「愛のむきだし」でもオマージュが捧げられた刑務所ヴァイオレンスアクションの傑作。  刑務所は野郎どもだけの巣窟じゃない。野獣のように眼光ギラつかせたアマ、ビッチ、女たちが蠢めく空間でもある。 そんな汗と女の匂いムンムンの泥の中、黒髪をなびかせ鋭く美しく輝く梶芽衣子の存在!こんなにカッコイイ女には野郎だろうがアマだろうが惚れちまうぜ。どんなにボロボロになろうがけっして諦めない不屈の女心。  ひたすら耐えに耐えてチャンスを待ち続け、泥にまみれ延々と土を掘り、友をお姫様抱っこまでしちゃう漢女(おとめ)っぷり。  表彰状が踏みにじられる脱獄騒動から始まるオープニング、湿地帯を走りまくる女、群がる刑務官たちの追跡! 刑務所内をすっぽんぽんで列をなして歩かされる女囚たち、腐りきった法の番人たち、互いに鉄拳で気合を入れる飢えた野獣どもの眼光、秘部に押し当てられるドス黒い警棒。  白い布に隠される情事、赤い斑点・画面がぐるぐる回転し髪が怒髪天となり灯る復讐の炎。  女囚たちも食器をガンガン打ち鳴らし脱走と憎悪をブチまける機会を待ち続ける。美しい一重美人、修羅場潜ってそうな姉さん、博打女、潜入者、脳味噌お花畑のBBA軍団。 ドア先輩にガラスを喰らわされ血に染まる鬼BBAとの鬼ごっこ、夏候惇のような凄まじさを見せつける署長。腐っても署長である。アイパッチのように鈍く光るサングラス。  まったく興奮しないパンモロよりも、百合を誘う瞬間のパンチラの方が圧倒的に素晴らしい。丸出しになったおっぱいを揉みしだき吸いまくり、雄のように、調教するようにむしゃぶりつく梶芽衣子!俺の股間の警棒も(ry  刑務作業と地獄の穴掘り耐久レース、シャベルの斬撃と大暴動!疲れを吹き飛ばす怒り、怒り、怒り、ライフルを奪い撃ちまくる!人質には恐ろしい拷問だ(我々の業界ではご褒美です)!!  目線で交わされる女たちの複雑な関係、ダイイングメッセージ、熱した電球によるヤキ入れ、復讐の黒衣、蒼ざめる最期、野郎も女どももくたばりまくる怒涛のクライマックス!!
[DVD(邦画)] 9点(2016-08-28 02:30:41)(良:1票)
3.  シン・ゴジラ 《ネタバレ》 
初代「ゴジラ」の素晴らしい音楽と咆哮が“そのまま”響き渡るシンプル・イズ・ベストな黒一色のオープニング。 世界よ、これがゴジラだ…と自信を持って言えるのは、上映からしばらく経って“ヤツ”が真の姿を見せた時である。 それまでは能天気な人々の言葉が大量に吐き出され続け、下から映されるペンの山、画面を覆いつくす夥しい文字、押し寄せ川を上る船、道路を埋め尽くす車、飛び散る瓦礫、一枚一枚揺れ落ちる屋根瓦、振り回される人、人、人の群がその瞬間まで徐々に緊張を積み重ねていく。 石原さとみの人をイラつかせる喋り方と微妙な発音も(ry 画面の黒さも怖さを引き立てる中々のもの。  初代「ゴジラ」が怪獣という「個」とそれに立ち向かう人間の「個」の激突だったのに対し、本作は岡本喜八「日本のいちばん長い日」の如く一つの出来事をめぐり「組織」が混乱し立ち向かう。 会議で高みの見物をし、行動を起こす者の意見は軽くあしらわれ、対策が後手後手に回り続ける苛立ちが、画面の向こうで人々が災厄に見舞われる中で募っていく。喋る人間の言葉やそれを紹介する字幕・説明文も高速で過ぎ去っていく。 この辺の件を見るだけで、庵野たちが喜八の傑作のリメイクを撮るべきだったと思わざる負えない。極端なクローズ・アップが多様されるのはかなりうっとおしかったけど。  一隻の小型艇が海面を漂い、そこに乗り込んだ人々の視点ごと吹き飛ばすように巨大な水飛沫が出現する。 紅く染まる水面、“ヤツ”は気づくと背びれを突き出しながら川を上り、また気づくと地中を這い市街地を粉砕しながら前進を続ける。「キングコング」のように激しくのたうち、眼をギョギョロ動かし、苦しそうに叫び、血を流しながら。 観客は突然現れた得体の知れない存在に「誰だお前っ!?」と会議室の面々と共に困惑し、侮り、警戒を続ける。 ソイツが突然“進化”するように起き上がり、眼を小さく鋭くして立ちはだかるのである。動き続けた物体が急に止まる…次に何をしでかすか解らない恐怖と緊張が画面に奔る。  接近する武装ヘリの一団との睨み合い、、引き金を引く指の動き、警笛は列車の接近を告げるのではなく攻撃を躊躇う“理由”が路上を通過することを予告するため。 そして気づくとまた“ヤツ”は消え、海から黒い姿になって再度現れる!初代「ゴジラ」のように徐々に、ゆっくり確実に進んで来る巨大な体躯、自由自在にうねり市街地を横切り蠢く尻尾が語り掛ける得体の知れない恐怖。  口を引き裂かんばかりに顎を開き、コンクリート・ジャングルの底を走るように吐き出される泥のような爆炎、それが光の束、線となって放たれ戦闘機を切り裂きビル群を薙ぎ払い焼き払う瞬間の戦慄! 今まで喋り続けた人々を、暗闇から静かに迫り来る不気味な戦闘機を沈黙させるような圧倒的絶望。コレだ!コイツだ!一切合切何もかも破壊する恐ろしき災厄の化身!ヤツこそが「ゴジラ」だ!!!!!炎に包まれる東京を背に君臨する後ろ姿がもう最高にたまらない。怖いんだけど物凄くカッコイイ。   ゴジラはどんどん熱を上げていくのに対し、人間側は感情的になるのを押し殺すように冷静に仕事を続ける様子が描写される。一滴の汗を流すことさえ許されないほどだ。 拳をあげて怒りを発する者をなだめるように、激高しそうな者に冷たいペットボトルを突き付けるだけでその姿勢が伝わって来る。万の言葉に勝る瓦礫の中に消えた人々への鎮魂、生きている者に向けた首(こうべ)をたれる礼、祈り。 どんな状況でも闘う者たちは飯を喰らい、水を飲み、食事で出たゴミをまとめ、洗ってないシャツを取り換え、資料を整理してひたすら勝機を探ることをやめない。 政治家は政治をし、記者はネタの取引をし、自衛隊は前線で抵抗し続ける。自衛隊は伝統行事のさだめから逃げられないのである。 アメリカも手段を選ばず、ドイツは一言で快諾して協力してくれる。流石元同盟国!  観客を励ますように高らかに響き渡る鷺巣詩郎「ヱヴァンゲリヲン」の音楽、折り紙が導くヒント、過去の悲劇を繰り返さないために、たとえ放射能で埋め尽くされようがマスクをつけ踏みとどまり立ち向かう! 動くはずの無いビルが、本来人を運ぶための列車が生き物のように敵に襲い掛かる頼もしさは何なのだろう。“切り札”をブチ込む様子もあえて見せず効いているのか?いないのか?と思わせ安心させない演出がバツグンだ。  次のゴジラvs人間を期待させるかのような締めくくり、伊福部の旋律に始まり伊福部の旋律に終わる物語。
[映画館(邦画)] 9点(2016-08-11 23:00:40)(良:2票)
4.  淑女は何を忘れたか 《ネタバレ》 
小津のトーキー初期のほのぼのとしたコメディ映画。コメディと言ってもほんのちょっと「クスッ」としてしまう感覚。ルビッチ風味のやり取りを積み重ねていくのが面白い。 車、大きなタイヤを覆うカバー、車から降りてきた毛皮をまとう成金女。ボールで壁当てして遊んでいる子供と会話。  囲炉裏を囲んで主婦の談笑、「ちっ」、「ちぇっ」、「ほっほっほっほっ」。冒頭8分の軽快さが素晴らしい。  小腹がすいたからうなぎを頂戴、ご飯と別々にねって贅沢だなオイ。  大学の先生、講義 居眠り男への扱いが面白い、関西弁を喋る娘、嫁入り前でも吸いたい煙草、強制的に家庭教師を頼まれる。  「地球の面積」の話をしていたらデッカい地球儀を持ってくる子供にクスッとなる。大学の兄さんよりも子供の方が賢いのが面白い。ジェネレーションギャップ、子供たちなりの励ましソング、「こんがらがっちゃダメよ♪」。  歌を歌いながら地球儀を回して国の名前を当てっこ、北極は国じゃねえwwえ?国じゃなくて地名当て?   フェンシングの剣でのやり取り、ドクトル呼び、並べられたコーヒーカップ。 歌舞伎の見物は「麦秋」のように徹底的に見せないパターン。歌舞伎を見る客の表情や後姿のみが映される。  それを待つ女たち、芸者を見に行く人々の表情、芸者の舞いは映るのに歌舞伎は何故に映されないのだろうか。延々と舞いを映すのは「鏡獅子(菊五郎の鏡獅子)」を思い出す退屈さ。  観客「もういいよ」   芸者たちと酒を飲みかわす、財布の交換、頭痛い→額に手をやって「風邪かな?」、単に酔っぱらったとちゃうんか、姪のワガママに付き合う叔父さんが優しすぎて泣いた。  叔母さんもカンカン、後を追いかけて問い詰める、雨の降る朝食、酔ってて叔母さんの声も覚えていない。この後のやり取りが特に面白い。叔母さんが来たら説教のフリ、腹を小突く姪にワロタ。嫁に頭が上がらない夫が可愛い。  手紙でバレる嘘、説教を受ける叔父、叔父をたちを助ける姪の嘘、叔母さんも話友達との気晴らしの会話でストレス発散、叔母さんを騙して脱出する叔父さんたち。コイツら・・・w 叔父さん?ドクトル?オッサン?叔父公!姪に押されて叔父さんもアタック(物理)。叔母さんは「何でアタシがぶたれないけんの」という驚きの顔、「ちょっとやりすぎたかなー」という後悔の顔をする叔父さん。優しすぎるぜ叔父さん。 二人の女の間で板挟みの叔父さん、一応謝る姪、叔父さんも謝る、巻き込まれる岡田涙目。むしろ殴ってくれる方がが良いらしい、静かに笑うお父さんの姿、時計の音とともに夜が訪れ、コーヒーの支度をする妻の姿をロングショットで捉えて物語は終わる。
[DVD(邦画)] 9点(2015-07-28 16:58:47)
5.  新幹線大爆破 《ネタバレ》 
和製パニック映画の傑作。 後にヤン・デ・ポンが「スピード」という共通点の多い映画を撮ったが、あの映画で失われてしまった“スピード”の恐怖がこの映画にはある。スピードによって狂う人々の、速度を落としすぎれば木端微塵に吹っ飛ぶというスリルが! それにスピードが速まっていく恐怖。車両だけでなく導火線やガスの音までそのスリルを醸し出す。  冒頭からシークエンスを重ねていく様子がスリリングで面白い。 夜、煙草を吸い、人目のなくなった列車の下に何かをゴソゴソと仕掛ける男。 仕事を終えた男は、仲間らしき男に電話をかける。公衆電話が時代を感じさせるが、10円を入れ続けなければ電話が切れてしまう・中断してしまうという緊張。  決行当日の朝。階段ですれ違う男との無言のやり取り、列車に乗り込んでいく人質たちの会話が、後の緊張を盛り上げる。男たちの計画に参加する者の不穏な空気。  そして1本の電話によってテロ事件が、オープニングが、この映画が動き出す。  爆弾が何処に・何個あるのか解らない恐怖。客がそれを知ればパニックに、機関車乗りたちの決死の行動が示す爆弾の恐ろしさ、猛スピードで走る新幹線で同じ脱出はできない、密室状態(回送)で徐々にパニックになっていく人々、時計代わりのストップウォッチ、迫る列車によって決断を迫られる人々、安全装置や別の車両が爆弾の「起爆装置」になりかねない恐怖、分岐点でのすれ違い、スピードを殺せない状況でのブレーキの使い方・・・1分1分が濃い。  犯人の要求の仕方が面白い。円ではなくドルという単位の真意、「千数百人の乗客の命代に比べたら、遥かに安い要求じゃないか」の言葉。 日本政府を相手にたった数人の連携で戦いに挑むのだ。犯人たちの素性が明らかになるにつれて、観客は犯人たちに感情移入していく。あの回想は卑怯だ。自分の目の前で・・・。  犯人、鉄道員、警察どうしの葛藤も面白い。恐慌状態が人間の醜さを炙り出す。募る苛立ち、ある赤ん坊を抱えた妊婦は我が子を思うばかりにパニックに陥る。女を殴るのは母親と赤ん坊の命を死なせたくないから。それに比べて仕事命で他人どころじゃない人々、ジャーナルストは興味本位で、犯人は人々が慌てる様子を楽しんで見守る。 パニックが1本のアナウンスで収まる内はまだいい。緊急停止装置をめぐる恐怖、チャンスを待つ犯人、車掌の対応も時間の問題だ。  船上という密室、それを追跡する複数の視点。受取人が金を落とさないか、思わぬ援軍、バイクとパトカーの追跡、市街地での追跡。やっと掴んだ手掛かりは同時に人質や警察の首も絞めにかかる。バイクに乗るのは複数の公衆電話で尻尾を掴ませないため。ビル、橋の上、路上と視点がどんどん低くなっていく駆け引き。  “忘れ物”による攪乱、仲間の後退を確認して情報を地獄まで持っていく散り様、パスポートと死者への手向け。  密室から密室への受け渡し、迫る障害物、車両下での作業・・・1500人の、小さな命の、一人一人の命の重さがのしかかる。たとえ最後の一人になろうとも・・・。
[DVD(邦画)] 9点(2015-06-26 22:23:23)
6.  シムソンズ 《ネタバレ》 
俺が「キサラギ」を見直し再評価するキッカケになった映画。  70年代風のスポーツ映画・・・いやTVドラマの感触。 人間の善良さを信じぬく物語に、我々は何処か懐かしさを覚えるのだ。どの世代にも関係なく。 毎回凝ったOPの佐藤裕市、簡単な自己紹介。  撮影は「キサラギ」でも組んだ川村明弘。  未来への不安、悲惨な人生想像、それを中断するように飛んでくるカーリングのブラシ。  劇中で幾度も画面を横切る自転車、軽トラ。少女たちは車をコントロールするようにカーリングの石を滑らせ、走らせていく。 「キサラギ」同様にアイドル(偶像)・憧れに誘われる主人公。「キサラギ」と違い最初からハッキリと映されるアイドル。 「キサラギ」に振り回される男たち、「シムソンズ」のために団結する女たち。  他に何も無い、何もないからみんなカーリングに熱狂し、何もないから勉強して現状から“抜け出そう”とする。  主人公も先輩への“憧れ”しかなかったから見栄を張ってしまう。  そんな何もないからこそ一つの事を徹底的に極める人々、それを追うメディア。  ブラシで擦るのは牛舎を綺麗にするため、石を走らせるため、己の未来を拓くため。  いつの間にか揃っていく面々、分かりやすいカーリング講座、「simsons」のゼッケンで自分を飾る。 シンプソンズ(The Simpsons)。とシムソンズ(simsons)。彼女たちはオリジナルの「シムソンズ」になれるのかなれないのか。  鏡に映るコーチ、憧れが遠のいていく現実、石に振り回される面々。  手に書いて覚える“勉強”。でも机と向き合い自分を偽る勉強とはワケが違う。  ワンマン少女、農家の少女、ずうずうしい少女、挨拶は「最低」の勉学少女。 それぞれが石で打ち砕きたい現実を抱え、嘘をつき続ける。  対照的に現金なコーチは自分に嘘をつけない。ホタテ漁に打ち込むのは幼い子供のため、誇れる“恥”をかいたのも仲間の名誉のために。 正直者と嘘つき少女たちの邂逅。  幾度も響くゼロ(0点)の言葉、丸い形。  ブラシを奪うのは人質にするため、たまねぎを切るのは女を泣かすため、声を出すのは自分を鼓舞するため、資金を集めるため、警察の手から逃げるため。 少女たちが走れば石も氷の上を走る走る走る。  ド素人もプロもイチからミッチリ訓練、木に刻まれる“目標”。  氷職人の超カッコイイ丸投げ、トイレのドアで練習、授業中も脚を動かさずにはいられない。 一応挨拶と握手はするようになる司令塔さん。彼女が“一線を越えた”のは自分のためか「1点」を目指す他人のためか。 やっと不平不満が爆発する。 「ずうずうしい!」という言葉のブーメランの投げ合い。  悪役に徹するホワイトエンジェルズ。名前と正反対の漆黒のユニフォーム。 表情が活き活きしたシムソンズに対し、エンジェルズの面々の表情の暗さは何なのだろう。 監督は何故、藤井美菜のような女性をエンジェルズ側にもキャスティングしなかったのだろう。エンジェルズがミキに嫉妬しているような側面も感じる。 ミキの過去がコーチの出した写真と記事だけで語られるだけ。ミキもあまり自分の過去は語らなかった。  ミキは言葉ではあまり語らない。 放り投げられたコインに思わず走り出すような、行動で示す女性だった。海の中に躊躇無く脚を入れるのだから。やはり他人のために頑張ってしまうタイプの女の子だった。  勝つ前の1点・勝つための1点。笑顔でエールを送る。  身を引き締める衣装と刺繍、大事なものを譲り合う女たち。初雪、ミキの選択、緊張をほぐす笑顔。
[DVD(邦画)] 9点(2015-06-11 23:44:52)
7.  下妻物語 《ネタバレ》 
この映画、スタートダッシュの事故紹介(自己紹介)からしてぶっ飛んでいやがる。 「パワーパフガールズ」とかカートゥーン風のアニメーション、メーターをふりきらんばかりにバイクをブッ飛ばすゴスロリ?ウエディングドレス?白装束の女?が軽トラとドッカーンッ!! 彼女にそっぽをむき傍観すらしない仏像、無数の破片、野菜、パチンコ弾と共に宙を舞いながら女は回想を始める。 交通事故や自分が死ぬ瞬間というのは、何分にも何時間にも感じるらしい。女はそんな感じに自分の経緯を語り始めるのである。  回想の中ですらこの女はフワフワと飛びやがる。 夢の中のベルサイユ宮殿も、実際は田舎の糞尿と精液まみれの肥沃な土地と同じ“匂い”がする環境にすぎない。 ジャスコのファッションショー、 天空カメラもブチ割って~、 自分の故郷もボロクソに~、 ピーピー五月蠅え著作権~、 子供のような眼帯ばあちゃん、 ジャージの国からご機嫌遊ばせゲロ・マミーレ。  まったく何てアホな映画なんだ(褒め言葉)!  出産中に浮気かますとか何つー精神力だ! そんな勝手な女よりも、がむしゃらに家族のために命を削ってくれたダメ親父の方が良いに決まってらーな。 その娘も嘘を塗りたくる厚化粧。なるほど、人は見かけですわ(断言)。 その“化けの皮”が泥にまみれて洗い流され、吐き気がするくらい白かった服に“色”が付く瞬間! そこには精気に満ちた凛々しい女の表情しかない。初めて心を開いた友のため、金属バットを叩き付け啖呵を切る一世一代の大芝居よお!怒涛の「ゴーン」三連打!! 父ちゃん譲りに、いやそれ以上の“ドス”が現す器のデカさ。  ゴスロリ女はゴスロリという仮面を身にまとう。 スイーツ(笑)を気取っているようで、心は男顔負けのオスカル(男前)ハート。 今まで自分を育ててくれた父親のためにアレコレ金儲けの手段を考えたり、そんな男を捨てる女を“見限ったり”、いまどき借りは作らないとかカッコ付けてる漢娘(おんなのこ)の義理に応えてしまうような女だった。  絶滅危惧種のスケバン女もまた、スケバンという仮面を身にまとう。 一見すると何かある度に頭突きだの飛び蹴りだのをかます暴力女だが、本当はゴスロリ女以上に夢を見ていた少女だった。初恋に初心な感情を見せたり、特攻服の下に着る黒シャツの女らしさ(肩がエロい)、世話になった組織のために命がけで背いたり。  あの変テコリンなオーナーもただの漢(おとこ)だったぜ。ハイハイ、ツンデレ乙。  でも何をどうしたら全身ギャグ漫画の絶滅危惧種の男に惚れるんでしょうね。  ???「今おれのこの頭のことなんつった!」  一護「こんな名前で死神やってんだよっ!」   “本物”の記憶は実写、伝説はハッキリしない“幻”だからアニメ。  とにかく俺の脳味噌では語りきれない、笑いあい涙ありのメッチャ面白いアクション映画なのです。
[DVD(邦画)] 9点(2015-06-01 20:48:50)
8.  シコふんじゃった。 《ネタバレ》 
相撲を愚弄している(いいぞもっとやれ)。 常識とは破壊されるために存在する。 日本の伝統である相撲も、今の世の中気軽に楽しめる「スポーツ」に進化しなけりゃならない。 伝統は大事だ。 古から受け継がれてきた技術、思想。 ただその素晴らしい伝統も、新しい時代のパワーと結びつかなければ何も生みだせない。 それを描いていく作品がこの「シコふんじゃった。」である。 周防監督は「Shall we ダンス?」でも戦後日本の複雑さをダンスを通じて描いたが、「シコふんじゃった。」は純粋な青春映画でもあり、スポーツを通して日本文化へのアンチテーゼも描こうとしたと思う。 どっちもコメディタッチの軽さ、そして一人一人の心の成長を描いた熱いドラマがある。 土着も日本人だからこそ描ける内容だ。 主人公は相撲に興味すらなかった今時の学生。 相撲=単位として受け止めていた。 当然練習も満足にせず大会に出され、ボロ負け。 勝ち負けもどうでもいい、悔しさも無い。 そこに相撲に本気で取り組む人間からの厳しい反発。 「相撲を何だと思ってやがる!!!」 「別にどうも」 「てめえらみたいなオカマ野郎は恥さらしだ!!」 てめえ「ら」。てめえ「ら」と来たもんだ。 自分だけならいざ知らず、仲間や教師まで罵られて黙っていられる主人公では無かった。 「相撲が何だ!勝ちゃいいんだろ勝ちゃ!!見返してやるよバカヤロウ!!!」 悔しさ、憤り、勝ちたいという気持ちの芽生え・・・男たちは徐々に変わっていく。 教師もそんな彼らを見るうちに、錆び付いた魂が蘇る・・・! 心と心の本気のぶつかり合い、経験の差は技術で補え。 幾らなんでもたった数ヶ月で数年以上鍛えてきた奴らと互角に戦えるのか・・・そこは娯楽映画、ご愛嬌といこう。 何しろ主人公たちの面付きが別人だもの。 成長を「面付き」で納得させてしまうこの王道。 単純明快な王道と爽やかな青春。 汗だく筋肉燃焼の相撲をここまで爽やかに、かつ力強く描いた映画は他に無いのかも知れない。 終盤の「試合」の二段構え。 実にドラマティックだ。 シコ、ふんじゃおうかな・・・そんな映画。
[DVD(邦画)] 9点(2014-12-20 21:36:56)(良:1票)
9.  Shall we ダンス?(1995) 《ネタバレ》 
この映画は、西洋化の文化が進んだ現代の日本だからこそ撮れる人間ドラマのハートフルコメディ。 基本的には面白おかしく主人公たちの日常を描くんだけど、登場人物一人一人の丁寧な掘り下げ、趣味のダンスが生きがいになってしまった人達の喜びや哀しさを噛み締める映画なんだよな。 ダンスの生徒と教師、家族持ちの男と独身女性の不思議な関係・・・一線を越えずとも、ダンスを通じて心と体で交流する様々な人間模様を見せてくれる。 「日本人が社交ダンスだなんて・・・」というセリフからも解る通り、日本人は昔から亭主関白的な文化で“女性と手をつなぐ”なんて習慣は馴染みが薄い。 まして一緒に床は過ごしても手を取り合って踊るなんて風習は皆無に近かった。 明治維新後も「鹿鳴館」で社交辞令として踊るくらい。 西洋を見習って服装は変わっても、古くからの中身はほとんど変わらない時代が続いた。 軍隊だって基本的には男が主軸。女武将や女城主、女スパイは歴史上数あれどほんのひと握り。女性の自由も戦後になって開放的になったワケよ。 本作は戦後から50年以上たった節目とも言える頃に作られた。 まだまだ職業差別とかはあったけど、それでも男と女が面と向かって腰を据える時代になっていた。 洋服を着たり和洋折衷が当たり前の世の中で、社交ダンスも小学生や文化祭の頃にやるのが普通という子供も多かっただろうね。 しかしこの頃の社会人にとっては「社交ダンスなんてお年寄りかもの好きしかやらない古臭い趣味」なんてレッテルがあっただろう。 西洋で社交ダンスなんて当たり前、日本は身なりは西洋化しても心は昔の名残が残る・・・そんな情景を感じられる。 これは日本人なりにそのレッテルを破り、一人の人間として一歩を踏み出そうって勇気なのよ。 登場人物たちの心の殻と、当時の日本の風潮を重ねた二重の人間ドラマなのさ。
[DVD(邦画)] 9点(2014-12-16 22:47:53)(良:1票)
10.  仁義なき戦い 《ネタバレ》 
2作目以降、特に「代理戦争」「頂上決戦」「広島死闘篇」は素直に作品の素晴らしさに打ちのめされても良いが、最初の「仁義なき戦い」はギャグでやっているとしか思えない。 壮絶、痛快、ドタバタ、もう滅茶苦茶。 戦後の闇市における混乱、日本刀で腕をブッた斬られる凄まじい幕開け。  アホだ。  馬鹿ばっかだ。  男は何て馬鹿な生き物なのか・・・人が死ぬたびに「テレレー♪」は卑怯だろ。笑うなって方が無理だ。  実録?実際だぁ? こんなん見て信憑性沸くかボケえ! 山守のオッサンが無敵すぎて笑うしかねえだろうがあっ! ラスボス:山守  「実録もの」特有の胡散臭さ。その臭さが良いんだよ! 今更「ゴッドファーザー」みたいな堅苦しい叙情詩をやるわけにもいかないし。  だからこそ破壊力を!壮絶極まる!血で血を争う破壊力を高めなければならない! 正に「ゴッドファーザー」の「劣化ウラン弾」!それをこんなに面白い映画にしてしまう深作欣二は凄えぜ。弾けた時の一方的な貫通力を極めた怪作なのだ。  任侠?仁義?んなもんはドスとハジキでバキュンキュンキュンよぉ!  なぁ文太の兄ぃ? 「最後じゃけん、言うとったるがの~狙われるもんよりも、狙うもんの方が強いんじゃ・・・そがな考えしとると、スキができるぞ」 テレレー・・・ テレレー・・・  ま、何だかんだ言って傑作です。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-30 06:33:13)(良:2票)
11.  仁義なき戦い 代理戦争 《ネタバレ》 
一番最初の「仁義なき戦い」は音楽の使い方がギャグとしか思えなかったが、2作目、3作目以降は音楽の使い方も死に様も漢たちの血生臭いドラマもどれをとっても切れ味しかなかった。 特に本作はシリーズの駆け引きと虚しさを噛み締められる一篇だ。群像劇としての面白さもより磨きが掛かる。  最初のダイジェストで前がどんなかおさらい、世界の代理戦争は、当然日本のヤクザ社会でも例外ではない。 今回の菅原文太の兄貴が味わう虚しさは、シリーズ随一。 小林旭の知性派というかインテリ的なキャラも喰えない野郎だ。 この世界、暴力だけじゃ食っていけないからねえ。 白昼堂々暗殺を仕掛けるヤクザの鉄砲弾ども、 相変わらず憎めない山村のおやっさん、 木刀から日本刀までブンブンうなる、 ビール瓶でも渇入れて~、 ちょっと可愛そうになってくるレスラーのおっさーん、 成り行きでヤクザになっちゃった倉元と母ちゃんのタバコの件が忘れられへん、 自重する気皆無な山守、 発炎筒もいきなりの強襲もビックリする時はビックリする人間臭いヤクザたち、 文太の兄貴だけ闘る気満々で空回り、 利用される女達の哀しみ、 停電の会合場面は妙に心に残る 、血で血を争うぐちゃぐちゃの殺し合い・・・。   クライマックスは何度見ても強烈だ。 文字通り粉微塵になってまで“殺され”続ける残酷さ。殺し屋たちも、時と場所は選べない。 砕け散った一片を、文太の兄貴が握り締め、打ち震えるシーン・・・!  原爆ドームが、戦後も広島を中心に繰り広げられる殺し合いを無言で嘆くかのように、物語を締めくくる。
[DVD(邦画)] 9点(2014-11-30 06:18:57)
12.  昭和残侠伝 死んで貰います 《ネタバレ》 
全盛期のマキノと比べると落ちるという人もいるかも知れないが、俺はマキノが晩年に咲かせた傑作の一つだと思っている。  高倉健にとっても、健さんの生き様が鮮烈に刻まれた1篇だ。  夜、ヤクザが賭博をする場面から映画は始まる。若い男が博打の不正を“眼”で訴えるが、話は入れられず男は後を去り、道端で先ほどのゴロツキが男を袋叩きにし“警告”をして去っていく。  雨が降りしきる中、傷ついた男を若い乙女が手当てをする。傷ついた心に、暖かい酒と優しさが染み渡る。この場面がキレイでさあ。  そっから3年後、どうしてこうなったヤッパ片手に不正ごとをブッ刺し、賭博をブッ壊してブタ箱行き。見破ってこそイカサマなんて言うから・・・。 健さんは、一体何度映画の中で捕まっているのだろうか。  「ヤクザもここまで落ちたら一人前の馬鹿だ」 菅原文太「サーセン」  地震で絶たれる想い、家族の帰りを待ちわびて死んだ人々への申し訳なさ・・・。 「“きらく”って宿知っているか?」 「きらくきらくと言われても・・・」 ツマんねえギャグ言ってんじゃねえよコノヤロウ。  震災後の混乱がヤクザも追い込む。  出所後はまっとうになろうと振舞うが、惚れた女の危機には黙ってられねえ人情、その女のためにひたすら耐えて、耐えて、耐える。 二人っきりで本音を洩らす男気、それに応える侠の精神。  料理人の腕前もまた“血”で決まってしまうのだろうか。俺も健さんの玉子焼き食いてー。 松っちゃんのスタイリッシュ面接。  ただ、彼自身が変わっても、それを知らない人間は絶えず追いかけてくる。今まで流した血や体に刻まれた傷、犯してきた罪はどんなに洗っても拭われない。  そして、たった一枚の紙切れのために死んでいく人々の無情さ。  積もり積もった怒りは、爆発させるしかない。柳の木が連なる長い道を、ゆっくりと歩いていく漢たち。  抜刀、血しぶき、凄絶に散る侠たちの生き様、死に様。 馬鹿は死ななきゃ治らねえ・・・「死んで貰うぜ」・・・!
[DVD(邦画)] 9点(2014-11-30 03:51:41)
13.  獣兵衛忍風帖 《ネタバレ》 
山田風太郎の忍者もの、深作欣二の「柳生一族の陰謀」等を思わせる奇奇怪怪な伝奇アクション。 川尻善昭による妖気を帯びたかのような作画が凄まじい。  俺は「ヴァンパイアハンターD(1999年)」の雰囲気の方が好みだが、このエログロヴァイオレンスな美女と野獣と化物が殺し合うハイテンションかつ破天荒、破壊的なまでの傑作を紹介しないワケにはいかない。   獣兵衛こと牙神獣兵衛と鉄斎による岩を切り刻むような戦いに始まり、奇想天外人外な忍者軍団との激闘に次ぐ激闘! 特に竹林における強力若本との斬り合いは凄い!キン・フーの傑作武侠映画「侠女」を思い出すような苛烈さ! 豊満なおっぱいを撫で回す様子がここまでエロくないのはこのアニメくらい。アゴは気にするな!  偶然助けた毒とアゴのキツいくの一、陽炎と関わった事で彼女を狙う鬼門八人衆という恐ろしい変態集団と闘うハメになる主人公の獣兵衛。 彼もまた主君を“ある理由”で失ってしまったはぐれ忍び。 オマケに黒幕とも言える怪しい坊主に鬼門八人衆の野望を探ってくれと頼まれる始末。 このように巻き込まれ型の時代劇だが、徐々に主人公が何故はぐれ者になってしまったのかも解き明かされていく。  とにかく獣兵衛がかまいたち的な技(斬撃?)一つと気合で化物連中と戦っていく姿は応援したくなる。オマケに超人情家。こんなカッコイイ男に惚れないワケがない。  時代劇が好きという人、エログロ?むしろ大歓迎という人に超オススメ!
[DVD(邦画)] 9点(2014-11-17 21:57:41)
14.  次郎長三国志 第八部 海道一の暴れん坊 《ネタバレ》 
本来はこの第八作で完結予定だった次郎長。 完結を予定していただけに、畳み掛けもシリーズ一番の迫力を感じさせる。 石松が主役といっても良い。  次郎長一家のやり取りも益々和気藹々として面白おかしく、「旅がらす次郎長一家」で仲間を失った痛みからようやく吹っ切れた感も出ている。  先に旅立った豚松も、生まれ変わって槍を振り回して(「七人の侍」に出演して)いる事だろう。  諸事情で途中退場してしまった仲間たちのエピソードもキチンと織り込み、ストーリーはより厚みを増してくる。  どうでもいいけど、加藤大介は出れないで何で志村喬が出て来れんだよ(笑) 志村さん「七人の侍」で一番重要なお人じゃないか。 戦前から「弥次喜多道中記」や「鴛鴦歌合戦」でマキノ一家と馴染みが深い人だし、シリーズで一番盛り上がっている時に出るのは自然な流れなのだろう。短時間とはいえ、大親分としての存在をしっかり印象付けて去っていった。流石だ。  中盤の政五郎と石松の戦いは必見だ。 半裸になりじゃれる様に刃を交える斬り合いは熱く、その途中で「俺にはお藤さんがいるから死ねんのよ~」とのろけてみせる政五郎のノロケにガクッと呆れる石松が面白い。が、何処かギクシャクする。 普通戦闘時の女の話は死亡フラグである。 ギム・ギンガナムで言えば「戦場でな、恋人や女房の名前を呼ぶ時というのはな、瀕死の兵隊が甘ったれて言う台詞なんだよ!」と思いながら石松も戦っていたに違いない(何じゃそりゃ)。  だが、政五郎には生きる理由が存在する。 石松はどうだ、戦って死ぬ事に活路を見出そうとしているのではないか。 政五郎に触発されたか石松、夕顔への想いを募らせる。 だがそこは石松。忠義は次郎長に、惚れた女には義理立てだけして去っていく。切ない。  この後に再び登場する志村喬の演技が素晴らしい。  そして再び刃を交える政五郎と石松。 「俺も惚れた女が出来たから死ねん」とノロケ返しだ。 夢のような幻想的な光景が展開される。  石松の直球を受ける気ゼロのお園は本当魅力的。  しかし、“戦馬鹿”じゃなくなった石松は・・・石松よ永遠に。  この作品でパワーを使い果たしたか、第九部はラストに相応しくない急ぎ足の作品となってしまったのが惜しい。
[DVD(邦画)] 9点(2014-05-27 19:18:54)
15.  次郎長三国志 第六部 旅がらす次郎長一家 《ネタバレ》 
何だか伊藤大輔の傑作「忠次旅日記」シリーズを思い出す。  勘助を倒し凶状旅の道を歩む次郎長一家。 凶状の楽烙印は次から次へと苦労を引き寄せる。  敵に追われる凶状旅の苦しさ、 そんな中で倒れるお蝶、 治したくても金が無い、 かくまってくれる場所も無い、 救った恩人から返される仇・・・とにかく涙なくしては見れない。  お蝶の代わりを務めると言わんばかりの女傑お園の登場。  いや、現にみんな泣きまくっているし。登場人物がうっとおしいくらい泣きまくる。  山道での逃走劇は圧巻だ。 石松もみんな一斉に泣きだす。 旅の辛さに泣いたのか。それとも死が迫るお蝶を想い泣いたのか。  これほど想像力をかきたてるほど男たちが泣く映画もそうそう無い。  笑いあり涙ありの第六部。
[DVD(字幕)] 9点(2014-05-20 17:45:13)
16.  11人いる! 《ネタバレ》 
原作の古臭いデザインをあえて採用し、動きで結構カッコ良くみせてくれる。 脚本も変な脱線がなく、見やすい。  冒頭のシーン、本来は10人の筈が「おい、11人いるぞ!」という場面でまず冷や汗。え?そうなのと観客はビックリ。疑心暗鬼のまま協力や仲間割れなど定石どおりの展開。  性別を自分で決められるという発想は凄い。  出崎は原作から逸脱する事無くキャラデザもシナリオも丁寧に90分内に仕上げた。反面、余りに忠実にやってしまいちょっと地味な印象も拭えない。 あと挿入歌は確実にいらない。
[DVD(邦画)] 8点(2014-12-21 22:32:32)
17.  静かなる決闘 《ネタバレ》 
本格的な医療ドラマ。 黒澤が大映時代に撮った映画はハズレが多いが、この「静かなる決闘」はかなりの力作。 医療ヒューマニズムは「赤ひげ」にも受け継がれる。  “音”の映画。雨音、車、ガラスの割れる、人々の叫び、叫び、叫び、「リンゴの唄」の音。 この映画の“決闘”とは、病との、己自身との闘い、対照的な二人の男たちの対比を描いた闘い。 雨と不協和音から始まるオープニング、第二次大戦下へ。 野戦病院、疲れ切った医者たち。雨の音が緊張を持続させる。  静かな三船。戦場ではまだ梅毒の兆候が出ない。 戦場から帰った戦後、愛するが故に結婚を諦めるしかない苦しみ。立ち聞きしてしまった衝撃。壁で踊る女の絵のヌード、花。  酒瓶を振り回そうとするのを止める一瞬。酒瓶を投げようとするのを女の悲鳴が止める。中の酒を震える手で注ぎ溢れさせる。この時から男の破滅は予告されていた。  ハーモニカの音色で笑顔になる人々の表情。欲望を爆発させる三船の一人語り。ドン引きして泣くしかない千石規子。  廊下で対峙する二人の男。看護婦のビンタに力のない反応。ガラスをブチ割り、絶望に沈む姿。
[DVD(邦画)] 8点(2014-12-15 22:48:48)
18.  十三人の刺客(1963)
再評価です。 前見たときは戦闘まで淡々としすぎていて退屈でしたが、今回は「太秦ライムライト」を気に色々と見直す事にしました。 そしたら退屈どころかその丁寧なドラマ作りに見入ってしまいます。 それに戦前の時代劇を幾つか見たおかげで俳優陣の豪華さに今更ながら驚いています。「鴛鴦歌合戦」や「赤西蠣太」の名演を見た後だと、片岡千恵蔵の重きを置いた演技の良さがようやく解りますし、その補佐役として「鞍馬天狗」の嵐寛寿郎や月形龍之介など時代劇を支えてきた骨太の名優たち。どうしてこんな面々の凄さに今まで気付けなかったのか。戦前日本映画の凄さを知った今の自分には、老いて尚も重厚で重い時代劇を作ろうとした野心が伝わってきます。「十三人の刺客」は今でいう「太秦ライムライト」。 黒澤映画や小林正樹の「切腹」などは、今だと最新鋭の技術の粋とも言える「驚異的な存在」だったのでしょう。時代劇の人気が続く嬉しさの反面、サイレント時代から培われた「剣劇」というカタの衰退・・・それを残すべく千恵蔵を始めとする古参の強者、里見浩太朗や丹波哲郎をといった新進気鋭、西村晃など名バイプレイヤーたち・・・今考えると恐ろしい顔ぶれです。 終盤まで戦闘が無いのも往年の時代劇のようなドラマに重きを置いた作風であるし、数十分にわたる戦闘も阪東妻三郎の「雄呂血」や伊藤大輔の「忠次旅日記」えのオマージュにも似たこだわりが感じられます。 この映画の神髄はサイレント時代の「呼吸」を理解しないと中々味わえないものなのかも知れません。
[DVD(字幕)] 8点(2013-12-24 12:53:08)
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