1. 暖簾
「何事も堪忍」の辛抱と大阪商人のど根性、なにわを舞台にした見応えのある人生劇だ。暖簾分けに頂いた女房千代との夫婦愛もすばらしく、年老いた吾平と若い孝平の二役を森繁がこなす。同じ画面に二人の森繁が登場しかけあう場面は見ものだし、子どもの頃見たときは大変驚いたものだ。 [映画館(邦画)] 8点(2014-01-31 06:23:54) |
2. 信子
夏目漱石ぼっちゃんの女性版スタイルをとりながら、痛快さでなくほのぼのとした人情味で綴るのはさすが小説家獅子文六。それを描くのが清水宏監督なのだから、物語の方向性は自ずと決まる。だが主人公の田舎から出てきた女性教師を、都会風の高峰三枝子が演ずるのがとても意外。女学校はこんなものだったかなと少し首をかしげるけど・・・。前半が特に音声が聞き取りにくかったけど字幕もついていたので安心して見られた。ところで大発見、高峯三枝子が女生徒細川頼子を演じた三浦光子より歳が下だったとは。 [DVD(邦画)] 6点(2013-10-25 06:17:01) |
3. の・ようなもの
古典落語のなかに金馬さんの「居酒屋」というのがある。「えー、できますものは・・・・ あんこうのようなもの」この「ようなもの」が好きだったので映画を見た。最初と途中にソープランド(当時はトルコ)が出てくるが、やはり落語家が出てきて予想通り落語の世界だ。それに青春ものをかぶせて悪くない。だがどうしても主役男性がいまいち好きでない(下手?)ので減点。由美さんのおとうさんが将棋盤を取り出したところで、将棋の芹沢八段だと思い出す。 [映画館(邦画)] 7点(2013-01-01 08:52:24) |
4. ノンちゃん雲に乗る
家族で見に行ったのか、学校か何かで見たのかよく覚えていないが、子どもの頃見た映画。もちろんストーリーも細かなことも覚えてはいなかったが・・・。昔はこういう文部省推薦の教育映画?を何本も見せられたものである。50年ぶりにDVDで鑑賞。 内容についてとやかく言うことはないが、ヴァイオリンを弾いたり、バレーを踊ったりすると、子どもらしい顔が急に大人びた顔に見えたのが印象的だった。 ところで大泉さんは左手でヴァイオリンを弾いていたが、あれは左利き用の特別なものだったのだろうか。 [映画館(邦画)] 5点(2012-06-21 00:10:46) |
5. 野菊の墓(1977)<TVM>
木下恵介の「野菊の如き君なりき」には及ばずとも、松田聖子の「野菊の墓」とは比べものにならないくらいずっと良い。 映画は70数分という短時間だが、非常にコンパクトにまとめられている。アイドル山口百恵を女優山口百恵に近づけた映画と言えるだろう。情感が込められ実に感動的だった。 ところで山口百恵と言えば共演は三浦友和と決まっていたが、このドラマは別。何しろ相手が年下役なのだから・・・。 [地上波(邦画)] 7点(2012-04-13 20:15:17) |
6. 野菊の墓(1981)
これは驚き、かつてのモノクロの「野菊の如き君なりき」が明治の民子と政夫としたら、この映画は昭和の民子と政夫を思わせるではないか。 もちろんそれが単純に悪いと決めつけるものではなく、これはこれで良い映画である。ただ惜しむらくは主人公二人の演技の未熟さというより、魅力のなさかもしれない。それに引き替え脇役陣の見事さは光るのだが・・・。 一番のまずさは、民子が政夫よりも年長とさんざん語られながらも、そうは見えないこと。アイドル云々よりも、松田聖子が実年齢より若く見えるあの甘ったるさにあるのかもしれないし、「民さんは野菊のような人だ」と政夫が思っても、私には到底思えないことかもしれない。 後にヒットしたレコードの「矢切の渡し」が、この映画の別れの場となる渡し場だったとは、恥ずかしながらずっと後になって知った。 [DVD(邦画)] 5点(2011-06-04 09:15:12)(笑:1票) |
7. 野菊の如き君なりき(1955)
夏目漱石が絶賛したという伊藤左千夫の「野菊の墓」その小説の持つ美しさ、悲しさを見事に映し出した映画だと思う。もし伊藤左千夫が生きていてこの映画を見たとしたら、自分の思いが十分伝えられていると感謝したのではなかろうか。(私の勝手な想像) この映画のすばらしさは、飾らない、作らない、自然にそのままの形で美しさを表現していることだと思う。映画は淡々に、まさに水が流れるかのように淡々と進んでいる。笠智衆のぶっきら棒の表情や歌詠みも、主演の二人が名もない新人だということも、すべてが良い方向に・・・。 したがって何の説明もいらず、何の演技もすることなく、主役の二人の純粋な思いも周囲のやっかみもすべてが伝わってくる。 この時代は女子に学問は不要と考えられ、二十歳前で嫁に行ってそれが女の幸せと信じられていた時代であり、「男女七歳にして席を同じうせず」が尊ばれ、幼な馴染みと言えど、年若い男女がいつまでも仲がよいことがねたまれ、世間体が優先されていた時代でもある。そういう時代の中で、好きな者同士、女が男より年上ということがそんなにいけないことなのだろうか。とても寂しくとても悲しく胸を打つ。 良くできた映画の中でただ一つ気になるのは、政夫の回想シーンを丸く囲んだこと、作らない、飾らないことに逆らっているように感じられて惜しい。 [DVD(邦画)] 9点(2011-06-03 22:25:23) |
8. 典子は、今
《ネタバレ》 「こころに夢を抱いて たどった旅路に~」(主題歌の歌詞) なつかしいなあ、あれから30年も経ったのだ。DVD化されたことも今まで知らずようやく再鑑賞した。 映画が作られた頃、私はすでに教壇に立っていた。そして「障害者をかわいそうだと思ってはいけない。少し不自由なだけなのだ。だから君たちには進んでお手伝いをしてほしい」と熱く語っていた想い出がある。 典子さんが一人で広島まで旅をするが、その途中で何度「すみませんが、・・・していただけないでしょうか」を言ったことだろうか。これからの世の中は、この「すみません」が半分くらいですむようになってほしいと願わずにいられない。 それともう一つ、典子さんが映画出演を引き受けたいきさつについてだが、実は映画の前にもテレビドラマのドキュメンタリー出演依頼もあったそうである。しかし、彼女はテレビを断り映画を選んだ。 テレビが悪いというわけではないが、興味本位で見てほしくない。見るからにはお金を払ってでも見てくれる人、障害者をありのままに見て理解してくれる人に見てほしい。だから映画を引き受けたのです、というようなことを聞いたことがある。 彼女はみんなは私より余分に手が付いているだけ、とても便利そうに見えるが私はほしいと思ったことはないとも言っていたように思う。 [試写会(邦画)] 8点(2011-05-23 10:49:19)(良:1票) |