1. ハウルの動く城
《ネタバレ》 映像美は申し分ない。期待以上の出来である。声優陣も少女時代の倍賞千恵子以外は適役だった。久石譲の音楽も相変わらず期待を裏切らない。技術面だけでいえば10点満点である。だが問題はストーリーにある。全てが結果の羅列でしかなく、そこに至るまでの理由が存在していない。まず連帯感が生まれた理由が不明。ソフィーは魔女によって呪いをかけられ老女にされてしまう。それなのに彼女は魔力を失った魔女を迎え入れる。戸惑いも憎しみも憐れみも描かれずに、いつのまにか仲良くなっていたという結果しか表現されていないのである。少年マルクルとソフィーも同様。マルクルはソフィーを慕うようになるが、なぜそうなったのか、理由が見当たらない。最大の謎はソフィーとハウルの恋愛模様である。ソフィーはなぜハウルを愛したのか?その過程が書かれていないのに、突然彼女はハウルを愛していると叫ぶ。最後、仲睦まじい彼らの姿をみた女王がどういうわけか、仕方がないから戦争をやめましょうなどとのたまう。なんという強引な展開であろうか。推測するに、この映画は原作をかなり端折っているのではないだろうか。個性的なキャラクターは魅力的だが、ストーリーは全く楽しめなかった。声優陣の貢献と技術の高さに2点献上するがこれが限界。宮崎アニメというだけで興行成績はトップを維持すると思われるが、それはただのネームバリューであって作品の質を証明するものではない。宮崎アニメでここまで失望したのは初めてだ。次回作は是非とも名誉挽回に挑んでもらいたい、と願わずにはいられない。 2点(2004-11-21 19:52:39) |
2. 半落ち
多くの方が語っている通り、寺尾アキラと樹木希林の演技が素晴らしい。静かに表情で魅せる演技、迫真にせまる演技、二人の演技力がこの作品の質を底上げしたことは紛れもない事実である。確かにそうそうたる豪華なキャスト陣ではあるが、それだけではここまで素晴らしい内容にはならなかっただろう。社会問題を背景にかまえ、ミステリー性は薄れているもののヒューマンドラマとしてはかなりレベルが高いと感じた。派手な演出に頼らず、脚本と演技力だけで魅せた良作である。幅広い層に観て頂きたい作品だが、とりわけ年を重ねた者ほど感情移入しやすいストーリーであると思われる。 9点(2004-05-10 06:39:52) |
3. バトル・ロワイアル 特別編
通常バージョンと両方観たが、こちらはバスケの試合シーン等を挿入し、情緒的にまとまっている感がある。もちろん原作小説は素晴らしいのだが、映像化することによって良くも悪くも生々しくなっている。BRの世界は空想の中に投影した現実社会だ。その危うい崖っぷちの世界の中でもしBR法が出来たら城岩中学の生徒のように我々は友人に刀を向け、銃を発射するだろう。誰だって自分が一番かわいい。しかし同時に「この人だけは守りたい」と思うかもしれない。その葛藤がとても人間くさくて共感を覚える。この映画は中学生同士が殺しあうという一見非現実な設定でありながら、人間のエゴイズム、弱さや脆さと同時に懸命に生き抜くことの必要性を強く訴えているのである。日々の生活に疲れた時にこの映画を観れば、おのずと答えが見つかるのかもしれない。 9点(2004-01-27 00:04:41) |
4. バトル・ロワイアルⅡ 鎮魂歌
BR1が好きだったので期待しすぎてしまったのだろうか。今作は前作の良さをすべて払拭してしまっている。勿体ない。BR1が何故あれほど支持されたのかわかっていないのでは?という疑問がわいた。BRの魅力は現実社会のデフォルメであり架空世界の中に現代を投影している、そこにあったのではないのか。具体的に言うなれば、制服姿の中学生が友達同士で殺しあう、それが全てだったのだ。今作はただの戦争映画になってしまっている。BRらしい台詞も所々見受けられるのだが、個々の葛藤や内面が見えてこないので胸に響いてこない。キャストが熱演すればするほど虚しく感じられてならない。根本的に設定や構成から練り直したほうがよい。 5点(2004-01-23 17:39:27) |