541. 菊次郎の夏
音楽が情景を脳内に残す。 それだけ久石譲の音楽が素晴らしい。 [ビデオ(邦画)] 7点(2007-09-09 00:35:20) |
542. ソナチネ(1993)
浜辺で、武がピストルをこめかみにあててニヤリとしているシーンが、凄まじく印象的な作品。あのシーンだけでも、ただならぬ凄みを感じさせる傑作。 [ビデオ(邦画)] 7点(2007-09-09 00:31:33) |
543. Jam Films S
“Jam Films”シリーズは全部観ましたが、これが一番良かったですね。 このシリーズは大好きだったんで、もっと続編をやって欲しかったんですが・・・ [映画館(邦画)] 7点(2007-09-04 20:24:27) |
544. SURVIVE STYLE5+
レンタルするのに、とにかく苦労した一本。こんなことなら去年、映画館で観ておくべきだったかな。スタイリッシュでスピーディな、いまだかつてない邦画。音楽や映像の切れ味は抜群。それだけに、もう少し短めなら、更に切れ味とスピード感が増したかも。豪華キャストも見どころの一つ。そして豪華キャストでありながら、浅野忠信を十分に堪能できる作品でもある。浅野忠信の、“顔のゆがみ”が素晴らしい。 [DVD(邦画)] 7点(2007-09-04 09:42:41) |
545. 双生児
塚本晋也監督作品。最初はホラーだと思って観たのだが、意外にもヒューマンな映画だった。「江戸川乱歩」原作の小説を、映画化した作品なのだが、江戸川乱歩が大好きなので、かなりツボにハマった。だけど、冒頭のウジ虫が這う映像は、勘弁。ほんの2,3秒の映像だけどね。 [DVD(邦画)] 7点(2007-09-04 09:36:29) |
546. 殺し屋1
私が初めて「三池崇史」という監督と出会った、記念すべき作品。そしてR-18指定の、強烈な作品でもあった。当時、こういうグロテスクな作品に免疫がなかったので、かなりしんどかったのを記憶している。でも、この作品の浅野忠信は、私が観た全ての出演作の中で、最もカッコよかった!衣装もいいし、金髪もサイコーにかっこいい!やっぱロンゲはダメ。 [ビデオ(邦画)] 7点(2007-09-04 09:26:02) |
547. FRIED DRAGON FISH THOMAS EARWING'S AROWANA<TVM>
タイムリーで観た作品。とにかく衝撃的だった。何が衝撃的だったかというと、「こんな俳優がいたんだ・・・」っていう、驚きの発見という意味で。紛れもなく、私が浅野忠信という俳優に引き込まれていった瞬間だった・・・もう、10年近くも前になるのかぁ。。いや?待てよ?!1996年ってのは、あくまで劇場公開した年だから、私が観たのはもっと昔か。調べてみたら「1993年」にテレビで放映したらしい。この時、観たわけだから、実際は12年前か・・・。自分も浅野氏も10代の頃だねぇ、懐かしい。それはそれとして、言うまでもなく「浅野忠信ファン」は必見の作品である。 [地上波(邦画)] 7点(2007-09-04 09:19:55) |
548. キル・ビル Vol.1(日本版)
《ネタバレ》 主演はハリウッド金髪女優ユマ・サーマン。 あんまりハリウッド映画を観ないので、初めて知った女優。 金髪が印象的で、しかもタフな感じも印象的。 そしてセクシーで、美人。 ただ30歳を超えているせいか、アップになると多少・・・な感じがあるにはある。 だけど、とにかくカッコいい! 中盤からラストまでずっと続くレストランの様な場所でのアクションシーン。 これはつまらなかった。 Vol.1のメインな部分だけにうーん。 Vol.1の冒頭の黒人女性とのアクションシーンの方がよっぽど楽しめた。 冒頭の黒人女性との対決シーンと同じく、女性同士のガチンコ対決シーンだが、両方ともスピード感という点でかなり楽しめた。 本作では“多数対一人”というアクションシーンよりも、これらのガチンコ対決(1対1)の方が出来が良かったように思う。 [DVD(字幕)] 7点(2007-09-02 23:38:57) |
549. 元禄忠臣蔵 後編
《ネタバレ》 前篇は、かたぐるしい公の場での出来事が中心であったが、後篇はうって代わって人情劇に。 これが功を奏したのだ。 比較的、分かり易いセリフが増えたせいか、物語に入っていくことができた。 特に討ち入り後の切腹前のシーンは素晴らしかった。 一同は切腹を前にして落ち込むどころか宴会を始める。 死を前にしていくら覚悟を決めたお侍とはいえ、心中穏やかではないはず。 それとも、あだ討ちをしてあとは切腹という制裁を待つだけだから、立派なお侍として気は晴れやかなのか? どちらかは分からないが、とにかくこの宴会シーンの表面的な騒がしさとその裏に潜む哀しさの対比がとても良い。 死を覚悟した男達の、鬼気迫る宴会シーン。 これは見応えアリの必見シーンだ。 大石内蔵助を演じた河原崎長十郎と、富森助右衛門を演じた中村翫右衛門の二人。 これが何とも素晴らしかった。 『人情紙風船』(山中貞雄)でも共演したこの二人。 本作でも、あの時と負けず劣らずの素晴らしい演技。 特に河原崎長十郎の理屈くさいセリフの数々が、妙に説得力を発揮していて、十二分に引き込まれた。 ところで、本作は最近いっせい発売された溝口健二のDVDをレンタルして観たもの。 それらのDVDには、付録として新藤兼人のインタビューが収録されている。 新藤兼人は本作『元禄忠臣蔵』で“建築監督”を担当していたせいか、他作品に比べ、本作へのインタビューの受け応えはかなりの熱の入れよう。 そして、その話の内容も非常に興味ひかれるものであった。 本編もそうだが、この新藤兼人のインタビューも必見である。 特に驚いたのは、本作の予算。 なんと、当時の映画5本分の予算が本作の江戸城松の廊下のみに使われたというのだから驚き。 国家予算から出ていたとのこと。 これは膨大な数字だが、本作であのセットを見れば間違いなく納得するはず。 はっきりいってズッコケます。 あれを映画のためだけに作ったとは・・・ いくら国家予算とはいえ、溝口健二やりすぎです。 [DVD(邦画)] 7点(2007-09-02 23:24:30)(良:1票) |
550. 元禄忠臣蔵 前篇
《ネタバレ》 誰もが知っている『忠臣蔵』を、溝口健二が撮った。 それが『元禄忠臣蔵(前篇・後篇)』だ。 前篇と後篇合わせて、怒濤の224分! しかも私、恥ずかしながら『忠臣蔵』そのものが初体験。 そんな私に果たして本作の224分が耐えられるのか?! まずはオープニングから。 溝口作品を観るに当たっての楽しみの一つに「オープニング」がある。 特に溝口作品の中でも、時代劇系の作品はオープニングがカッコイイことが多い。 本作は超大作ということもあり、予想通りのかっこよさ。 大体この時代のオープニング・ロールって短くてアッサリ気味のものが多いのだが、本作は違った。 長い長い。 しかも重厚でかっこよすぎ。 しょっぱなから大満足である。 そして本編のはじまりはじまり・・・ しかしいきなり問題発生。 『忠臣蔵』のストーリーを私はほとんど知らなかった。 しかも本作はフィルムの保存状態が悪くセリフが聞き取り不能な部分が多数あったのだから致命傷。 そしてかたぐるしい文語調の昔言葉。 さっぱり分からないのだ。 しかも冒頭から浅野内匠頭が吉良上野介を切りつけてしまうというシーンから始まり、『忠臣蔵』のストーリーを知っている人なら難なく理解できたであろう場面が、その時の私には全く理解できなかったのだ。 結局、前篇が終わるまでストーリーを把握しきれず終了。 このまま後半も終わってしまったらどうしよう・・・という不安に襲われつつ、後篇へ。 [DVD(邦画)] 7点(2007-09-02 23:22:45)(良:1票) |
551. 家族ゲーム
《ネタバレ》 理屈抜きに面白いので、この時代の日本映画に対して、私の様な負のイメージを持っている人にも、是非観てもらいたい作品である。 気になったのがラストシーン。 本作の舞台は、高度成長期をイメージさせる団地の一室。 その団地の一室での、退屈極まりない昼下がりが本作のラストシーンなのだ。 本作の魅力の一つに“シュールさ”があると思うが、本作のラストシーンは、その“シュールさ”と不気味さ、そして不可解さ、そして疑問、奇抜なカメラワーク等、いろんな要素が複雑に組み合わさって、何とも言えない余韻を残す素晴らしいラストシーンとなっている。 昼下がり、不気味に静まりかえる団地の一室。 由紀さおり演じる母親は、子供たちを呼ぶ。 しかし返事がない。 部屋に子供たちの様子を見にいくと、そこで子供たちは死んだ様に深く眠っている。 いくら起こしても起きないので、仕方なく母親は台所のテーブルに戻る。 しかし、さっきからどうも外がうるさい。 どうやらヘリコプターが何機も団地の上空を飛んでいる模様。 これがとてつもなくうるさい。 不気味にうるさい。 静か過ぎる団地の一室と、その上空をけたたましい騒音をたてて飛ぶヘリコプター。 “喧騒と静けさ” 相反する二つのものが、複雑に絡み合わさり、不思議でいて、それとない不安を醸し出す。 憂鬱なくらいに静かで退屈な団地の昼下がりに、必要以上にうるさいヘリコプターの騒音。 これは一体、何を意味するのか? 結局、私にそれは分からなかったが、とにかくこの“喧騒と静けさ”は、観ている私を“何となく不安”にさせた。 言葉で説明すると何とも抽象的で分かりづらい表現となってしまったが、実際に本作を鑑賞された方の中で、私の言っていることを何となくでも理解してくれる方がいたなら、それで満足である。 ラストシーンの最後の最後、それまで平面的に空間を捉えていたカメラが、突如、上方に動き、団地の一室を上から三次元的に捉える。 そこでエンドロール。 何とも素晴らしい終り方ではないか。 素晴らしいんだけど、この終り方、どこかで観たことがあるような・・・ そうそう、溝口健二だ。 具体的には『残菊物語』のラストシーンであり、また、『雪夫人絵図』のラストシーンである。 [ビデオ(邦画)] 7点(2007-09-02 22:54:27)(良:1票) |
552. 折鶴お千
《ネタバレ》 溝口健二の、現存する数少ないサイレント作品の一つ。 原作は泉鏡花。 主演は“最後の大女優”山田五十鈴。 そして舞台は、私の大好きな場所の一つでもある「神田明神」である。 これだけでも満足間違いナシの組み合わせ。 しかもラストの主人公ふたりの再会シーンは、『山椒大夫』の基礎となったと言われているだけに、なお更期待も高まった。 私がレンタルしてきたビデオテープは、活弁付きのもので、恥ずかしながら活弁付き映画を観るのは初めての経験。 再生を始めて、いきなり気張った女性の声と共に映像が流れ始め、かなりの違和感をおぼえる。 しかしそれも数分後には何ら気にならなくなり、むしろ分かりづらい活弁ナシのサイレントよりも心地よく感じた。 本作は、傑作『残菊物語』とも共通する、「女性が無償の愛を男に捧げる」というテーマを扱ったもの。 その女性役を山田五十鈴が演じるのだが、その鬼気迫る演技に脱帽。 その迫真の演技を見せた山田五十鈴も勿論すごいが、それを引き出した溝口の手腕はさすがの一言。 それと70年前の神田明神を見れたのも良かった。 前述した通り、大好きな場所なので何度となく訪れたことがあるのだが、本作で見た神田明神は全くそれとは異なっていた。 しかしそれよりも、当時の万世橋の辺りから神田明神が見れたという事実の方が、私にとって新鮮だった。 しかも万世橋の辺りに駅があったとは。 東京を舞台にする古き映画を観ると、こういう発見があるので楽しい。 最終的に主人公の女性は気を違えてしまう。 気を違えた理由は、自分を犠牲にしてまで守ってきた男性が遠い処に行ってしまったからというもの。 理由としては判らなくもないが、気を違えるという説得感には多少欠けるような気がした。 しかしながら、その男性が気を違えた女性と再会を果たす本作のラストシーンは、山田五十鈴が鬼気迫る演技を見せる名シーンであった。 本作が名作と謳われる理由は、このラストシーンに集約されているのではないだろうか。 “再会のラストシーン” これを溝口に描かれたら、観ているこっちは従順にも圧倒されるより他はなし。 やはり溝口健二の映画は素晴らしかった。 [ビデオ(邦画)] 7点(2007-09-02 22:35:01) |
553. 大阪物語(1957)
溝口健二が亡くなった為に、溝口の没後、吉村公三郎監督が代役で撮った作品。 香川京子が大好きなので、個人的には気に入った。市川雷蔵は雷蔵らしさがあまり 出ておらず、本作では不調。 浪花千栄子もいつも程の調子の良さはない。 全体的にキャスティングを活かしきれてない印象。 しかし溝口が原作とあって、話自体はかなり面白い。 勝新太郎もいやらしいくらいに味を出している。 でも香川京子がやはり最高。 自分の指を舐めて、雷蔵の傷に塗ってあげる場面や、情事の後にいたずらっぽく雷蔵に微笑むところなどが最高に素晴らしかった。 [DVD(邦画)] 7点(2007-09-02 20:58:20) |
554. 砂の女
安部公房という作家が原作・脚本を担当、そこにあの『切腹』でも音楽を担当した武満徹が効果的な音楽を提供している。 岡田英次はアラン・レネ監督の『二十四時間の情事(ヒロシマモナムール)(1959)』を観た時に初めて知った俳優だが、アラン・レネの作品自体が趣味に合わなかったということも手伝って、あまり良い印象は持っていなかった。 しかし、本作『砂の女』においてはかなりの個性を発揮しており、その印象は“なかなか味のある俳優だなぁ”というものへと変わった。 そこに対するのは、私の年代の人達にとっても比較的著名な岸田今日子である。 もちろん、私が知っている彼女は“おばあちゃん”な岸田今日子。 こんなに若くて妖艶な彼女に出会ったのは、今回が初めてである。 まずオープニング・タイトル(キャストとスタッフ等の表示)からしてインパクト大。 この時点で、本作に対しただならぬものを感じてしまった。 それは、強いて言葉で表現するならば、 “オープニングでキャスティング等が表示される度に、ハンコ(印鑑)がガツンガツンと表示され、そこに独特の効果音が重なる・・・” というものなのだが、なかなか言葉では伝えにくい類いの演出なので、興味を持たれた方は一見して頂きたい。 かなりサスペンス的要素が強い作品であり、その点だけでも十分楽しめるのだが、最終的には人生哲学的なテーマにまで話が及んでいくという、広範な守備範囲を持つバランスのとれた逸品である。 [ビデオ(邦画)] 7点(2007-09-01 21:45:42) |
555. アンナ・マデリーナ
大好きなケリー・チャンと金城武の二人が共演する、香港を舞台にしたラブストーリー。 二人が共演している作品は、本作を含めて3作品のみ。 そのうち、『世界の涯てに』と『ラベンダー』は既に鑑賞済だったので、まだ観ぬ二人の共演作は、本作で最後となってしまった。 『世界の涯てに』『ラベンダー』共々、どちからと言えば主演二人の魅力を引き出すことをメインに作られていた感があり、作品としてみるといまひとつの感が否めなかった。 だけど、二人のファンである私にとっては、それで十分楽しむことができた。 ケリー・チャンはいつの時代の作品を観ても、そんなに極端には変わらない(全然歳を取らない!現在も尚美しい!)が、金城武は歳を重ねるに従い、雰囲気がかなり変わってきたように思う。 本作では、まだかなりの若々しさが残っており、まだヒゲもそんなに青くはない。 本作での二人は、『世界の涯てに』や『ラベンダー』と比べると、それほど綺麗に、又はかっこよくは撮られていないように感じた。 その代わり、作品自体の出来は、『世界の涯てに』や『ラベンダー』より良かった。 何より、普通に楽しめたのが良かった。 ただ、細かい面を言えば、少し作りが雑かなぁ、と思えるシーンも多く、洗練度という点ではイマイチかもしれない。 後半で、金城武演ずる主人公の書いた“小説”の再現シーンが流れるのだが、これが作品全体のバランスとリズムを崩すくらい冗長だった。 でも、そういった荒削りな面はあるにせよ、最後は最後でなかなか感動させてくれるし、観た後の気分もなかなか良い。 これで『世界の涯てに』や『ラベンダー』の様に、二人の魅力がうまく撮られていれば完璧だったのだが・・・ 2000年以降、ケリー・チャンと金城武の共演作は一つも撮られていない。 ケリー・チャンはまだまだ大丈夫そうだが、金城武が“おじさん”っぽくならないうちに、もう一作品くらい共演作を観てみたい。 二人のファンである私は、それを強く望んでいる。 ちなみに同じく大好きな俳優であるレスリー・チャン(故人)も本作ではチョイ役ながら出演している。 そういう意味でも、本作はかなりのお気に入り作品となった。 [ビデオ(字幕)] 7点(2007-09-01 21:41:11) |
556. 憂鬱な楽園
ホウ・シャオシェン監督としては珍しい「現代」を舞台にした作品。 彼の作品といえば、「過去」や「想い出」を映像化したものがほとんである。 「現代を舞台にした作品を撮るのは苦手」と、ホウ監督自身もインタビューの中で語っている。 実際、彼の作品の中で広く一般的に評価を受けている作品は、「過去のある時代」が舞台となったものばかりだ。 逆に現代を扱った『珈琲時光』などは、高い評価を受けているとは言い難い。 (もっとも、私が一番好きなホウ監督の作品は『珈琲時光』だが。) 「現代の東京」を描いた作品が『珈琲時光』ならば、「現代の台湾(台北)」を描いたのが本作だ。 私としては期待しないわけがない。 本作の撮影担当は『夏至』のリー・ピンビン。 クリストファー・ドイルの映像も個性的で大好きだが、リー・ピンビンの映像もそれに勝るとも劣らないくらい素晴らしい。 リー・ピンビンの撮る映像はドイルと比べれば控えめな印象はあるものの、透明感があって瑞々しさに溢れており、とても美しい。 “熱帯の緑鮮やかな台湾をリー・ピンビンが撮っている”というだけで観る価値のある作品である。 そして音楽。 メニュー画面にも流れている、この作品の「テーマ曲」がある。 その他、車で郊外へ飛ばすシーンや、バイクで山をぐんぐん登るシーンなどで使われている。 テクノ調の曲なのだが、本作を見終えた後もかなり耳に残っていた。 元々、テクノ調な曲が好きってのもあるけど、テーマ曲に関してもかなり気に入った。 映像と音楽が自分の感性とぴったり合っていて、観ていてとても心地良かった。 途中、「置時計」がかなり長い時間をかけて撮られているシーンが出てくる。 ストーリーとは全く関係のないワンシーンなのだが、とても透明感があって美しかった。 それも印象的だ。 しかし、ストーリーはなんてことはない。 だらだらと台湾のチンピラの生活が描かれているだけだ。 でもそんなことはどうだっていい。 ホウ監督の映画でストーリーを追ったっていいことはない。 台北の夜景、熱帯の緑鮮やかな風景、美しい置時計に、美しい女性歌手、そして強引に挿入されるテクノ音楽。 そしてそれらとコラボするリー・ピンビンの創り出す映像世界。 そういったものを楽しむべき作品である。 [DVD(字幕)] 7点(2007-09-01 21:30:25) |
557. サヨナラ COLOR
《ネタバレ》 新文芸坐の「気になる日本映画達〈アイツラ〉2005」に本作が含まれていたので行ってみた。 竹中直人の監督5作品目にあたるラブストーリー。 ヒロインは、竹中直人がプライベートでも憧れていたという原田知世。 竹中作品は、今まで『無能の人(1991)』『119(1994)』『東京日和(1997)』の3作品を観てきた。 その中でも、本作『サヨナラCOLOR』は、自分的に一番のお気に入り作品となった。 世評では、“竹中直人の独りよがり的な映画”という厳しい意見も聞かれたが、私はむしろその点が気に入ったのだ。 癌におかされた未知子(原田知世)は、かつてのクラスメートだった正平(竹中直人)の病院に入院してくる。 そこで彼女の主治医となったのが正平だった。 だけど彼女は彼のことを憶えていないと言う。 学生時代からずっと想いを寄せていた正平はそれを聞いてショックを受けるが、学生時代には相手にもされなかったクラスのマドンナと、こうしていつでも話しができるのが嬉しくてたまらなかった。 そして日ごと打ち解け、手術前には逆に彼女からのプロポーズを受けたのだった・・ しかし実は正平も癌だった。 そして彼女を熱心に診たがために、命を落とすことになる。 悲しさに涙を流す未知子。 かくして、未知子にとって正平は永遠の存在となったのだ。 これはまさに男にとっての理想の死に方である。 自分がずっと憧れてきた女性に最後はプロポーズされ、そして死んだ後も彼女の心の中にずっと存在し続ける。 だけど、残された女性の立場からすればたまったもんじゃない。 せっかく好きになったと思ったら、先立たれてしまうのだから。 ずっとこれから彼の面影を背負っていかなければならないわけだし。 この日、同時上映された作品が『トニー滝谷』という作品だった。 この作品は本作とは全く逆で、“愛する女性を失い、その面影をずっと追い続ける男”の話だ。 女性の方に勧められて観たのだが、辛いだけであまりいい印象は残らなかった。 女性にとってはいい映画にうつるかもしれないけど、男の私からしたらあまりに切なすぎて後味が悪すぎるのだ。 『サヨナラCOLOR』と『トニー滝谷』という、男女の立場が全く正反対な作品を同時上映。 このスケジュールが意図的に組まれたのだとしたら、“新文芸坐恐るべし”だ。 [映画館(邦画)] 7点(2007-09-01 21:28:39) |
558. オーディション(2000)
《ネタバレ》 「怖い映画だと知った上で観ていると、いつ怖いシーンが出てくるのだろうか?とか、そういう警戒心みたいなのを持って観ていると、そういう観客の想像力を膨らませる様な見事な演出が随所に散りばめられていて、ますます怖くなってくる。」 怖い映画という先入観は、上記のう様な現象を巻き起こす。 そういう観ている者の恐怖心を、煽り立てる演出が、誠に素晴らしい! この映画の恐怖は、まさにこの部分に集約されているのだ。 怖かったけど、さすが三池!!って感じで、満足できた。 前半の「恋愛映画のような」部分も楽しめたし、控えめなトーンの映像も素晴らしい。 三池作品の中では、間違いなく傑作の部類に入ると思われる。 個人的に一番、怖かったシーンは、最後のシーンではなく、 「ヒロインの住む、めちゃくちゃ汚なくて古いアパートの一室の映像に突如切り替わり、BGMには風が吹く音の様なゴォーーーーという非常に気味の悪い音が流れ、異常に汚い畳の上に、意味不明な大きな麻の袋が置いてあり、その横でヒロインの女性がうなだれたまま、身動きひとつしない。」 というシーンだった。 三池作品によく出てくる、「異常に汚いアパート」の空間も怖いし、BGMもめちゃくちゃ怖かったっす。。 余談だが、オーディションを行うシーンの中で、 「タルコフスキーの映画は観たことがありますか??」 と、質問をするシーンがあるのだが、妙にツボにハマってしまった。 ちょうど、タルコフスキーの作品を観まくっている最中なもんで。。 [ビデオ(邦画)] 7点(2007-08-31 00:12:37) |
559. ユメノ銀河
この作品、あんまり期待していなかったのだが、期待していなかっただけに意外にも楽しめた。 それと、今回、この作品の原作者である「夢野久作」っていう人の名を初めて知った。 それがちょっとした収穫。 今まで知らなかったのがちょっと恥ずかしいが。 さて、内容であるが・・・ 全編モノクロで描かれている。 でもそれがいい効果を生み出している。 昭和の陰気な感じが出てて、かなりよろしい。 乱歩もそうだけど、こういう、昭和のくら~い感じは独特の雰囲気があって結構好き。 そして特筆すべきは、浅野忠信のかっこよさ! 浅野忠信扮する主演の男性がバス会社に転勤してくるのだが、その登場シーンがかなりかっこいい。ものすごく印象的だ。 ただ、その登場シーンの後は、比較的落ち着いてしまい、神秘的な感じが持続されていないのが惜しいが。 少なくとも、前半の30分くらいまでは、 「おぉ~、この映画、なかなかいい味出してるぞぉ・・・」 って思わせてくれる映画である。 それだけでも十分、楽しめると思う。 [ビデオ(邦画)] 7点(2007-08-31 00:00:08) |
560. 貸間あり
“初川島雄三”を「フィルムセンター」で体験してきました。 川島作品といえば、『幕末太陽傳』『洲崎パラダイス 赤信号』『しとやかな獣』辺りから入っていくのが無難なんでしょうが、貴重な本作がちょうどフィルムセンターで上映されるということで、行ってきました。 フランキー堺が主演の1950年代喜劇ということで、自分にとってはやや敷居が高かったですが、意外と楽しめました。 主演のフランキー堺、ジャズ・ドラマー出身ということですが、演技うまいですねー。 びっくりしました。 そして変に体格も良いです。 そして脇役で強い個性を発揮していた桂小金治。 こちらも落語家ですが、自然な演技で素晴らしいです。 若い頃も同じ様な顔してたんですね。 ヒロインの淡島千景ですが、個人的には好みに合わなかったです。 なので、男性出演陣に共感できず。 あのパーマは、現代的センスで見てしまうと、ひいてしまいます。 完全におばはんパーマです。 ところで本作、冒頭から凄いハイテンションです。 よほど集中していないと流れについていけないくらいのスピード感。 その後も、ドタバタ喜劇的な色合いのジョークが連打されていき、観ているこっちはノックアウト気味です。 これを「息もつかせぬ笑いの連続」と取るか、「テンション高すぎ、スピード早過ぎで疲れる」と取るかは、ほんと好み次第。 私は両方でした。 笑いのセンスとしては、正直合わない部分が多かったです。 しかし、登場人物が全てクセ者ぞろいで、各キャラクターが実によく作りこまれています。 その為、後半はいつの間にか“川島ワールド”に引き込まれたのも事実。 特にフランキー堺の演ずる主人公が、実に人間味があってよかったですね。 “サヨナラだけが人生だ” 何度となく本作で繰り返される“川島監督の座右の銘”といわれる名文句。 実に奥深い言葉でした。 [映画館(邦画)] 7点(2007-08-24 07:11:26) |