1301. 蛇イチゴ
《ネタバレ》 不思議と最後まで観てしまう力を持った作品だ。 それだけ観る者を作品世界へ吸引する力を持った作品と言えるであろう。 表層的にいたって平凡で幸福な家庭が、ある日突然ガタガタと音をたてて崩壊していく。 その様を、非常に緻密に巧く描いている。 この巧さは、今日の日本映画界において傑出している。 そして女性を美しく撮る監督さんだ。 女性なのに、何故か男性が興奮するような女性の撮り方をする。 興奮とは言っても、決してエロティックな意味ではなく、純粋に女性を美しく撮るのだ。 「なんて美しいのだろう」 と、観ているこちらは興奮するわけである。 女性が女性を美しく撮ったというものではなく、それは明らかに男性目線の美しさ。 この監督って、レズビアンなんじゃないか?と疑ってしまう程に、驚くほど男性が女性を撮るような形で、女性を美しく撮るのだ。 ところで本作だが、少々解りにくさが無いわけではない。 最後の終わらせ方も、明解というわけではなく、観るものの想像に委ねる様な形の終わらせ方。 でも、これが余韻を残し、なかなか良い。 本当に、巧い監督さんだなぁ、と感心してしまった。 脚本家としての巧さ、監督としての女性を美しく撮る巧さ。 それらを併せ持った天才女流監督だ。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2008-03-25 23:39:58) |
1302. 嫌われ松子の一生
『下妻物語』が良かったので、中島哲也監督に期待して鑑賞。 この監督は間違いなく才能がある。 しかししかし、本作ではその才能を間違った方向へ使ってしまった様だ。 凡作ではないが、決して心地の良い作品ではない。 石井克人監督が、同じく間違えた方向に行って失敗したように、中島哲也監督もなんか方向を誤まった気がするのだが・・・ 次回作に期待したい。 しかし、黒沢あすかってこんなに色っぽかったっけ?! 歳をとって逆に綺麗になっているのが凄い! [CS・衛星(邦画)] 4点(2008-03-24 22:47:56)(良:1票) |
1303. 弥太郎笠(1960)
どうもマキノ監督の時代劇は肌に合わないようです。 しかしながら、丘さとみの可憐さ、躍動感溢れるチャンバラには目を見張るものがありました。 [ビデオ(邦画)] 5点(2008-03-23 15:04:44) |
1304. 眠狂四郎無頼控 魔性の肌
成田三樹夫を目当てで鑑賞。 しかも私の好きな市川雷蔵が出ているとくれば、それだけで満足・・・のはずが、どうもなぁ・・・ まるで西部劇の主人公の様な眠狂四郎の強さ。 あまりに強すぎてつまらない。 しかし、娯楽作品として素直に観られれば満足できるはず。 それにしても、成田三樹夫の出番が少なすぎ! それが私にとっては一番痛かった。 やっぱり成田三樹夫はヤクザ役が一番だなぁ~。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2008-03-23 00:49:49) |
1305. 妻(1953)
《ネタバレ》 成瀬映画に上原謙との取り合わせ。 これだけでもう、ハズレなんかあり得ません。 上原謙のダメ男ぶりも観ていて気分が良くなるくらいハマっています。 しかしまぁ、 高峰三枝子が・・・ 元々、あまり好きな女優さんではないのですが、その嫌なイメージを増幅させる役を演じています。 煎餅をボリボリ、お茶でうがい。 こりゃ、夫としてはたまりません。 上原謙のごとく、観ている私までイライラしてきました。 ここまでイラつく「妻」を演じた高峰三枝子は、ある意味凄い。 彼女の演技の成せるワザなのか? それとも単なる地か? いずれにしてもウザ過ぎます! しかし、本作を観ていて少しシックリこなかった部分がありました。 それは上原謙が浮気をして、結局、浮気相手の女性にフラれてしまう部分です。 これがどうも唐突ですし、理由が良く解りません。 なんか強引に、「元のサヤに戻る夫婦」という成瀬映画のパターンに持っていった様な気がします。 これが強引すぎて、どうも最後はシックリとこなかったのです。 上原謙をはじめ、雰囲気は非常に“成瀬していて”で良いのですが、このストーリー展開の無理が気になりました。 それでも十分楽しめるところは、さすが成瀬監督ですね! [CS・衛星(邦画)] 7点(2008-03-21 21:12:18) |
1306. 無法松の一生(1943)
三船版の後に観たので、ストーリーを追うような形で観るハメになってしまった。 こちらの方を先に観ていれば、もっと感動できただろうに・・・ 残念だ。 [DVD(邦画)] 6点(2008-03-20 22:38:23) |
1307. 神々の深き欲望
与那国島が舞台というのが、実際にその場所に行ったことのある私にはすぐ分かった。 「クブラバリ」という、その昔、人減らしの為に妊婦を飛ばせたとして知られる気味の悪い場所が実際にある。 私はその現場を観たことがあるので、鑑賞中は怖くて仕方なかった。 本作で登場する“西の神島”とは、台湾のことであろう。 実際、与那国島(クジラ島)から肉眼で観ることができる。 本作はとても長く、決して面白い作品ではない。 ただ、南方の島国の閉鎖的なムードは良く表現できているように思う。 [ビデオ(邦画)] 6点(2008-03-20 16:39:40) |
1308. 妻は告白する
《ネタバレ》 凄まじいまでの愛憎劇。 女の情念を、これほどまでに強烈にフィルムに焼き付けた作品があっただろうか。 少なくとも私は観たことがない。 法廷サスペンスものとしてみても一級品の出来栄え。 若尾文子の演技も凄いの一言! 愛すべき人に対して、ここまで真っ直ぐに気持ちを持てるなんて凄い。 凄すぎる。 殺人は決して肯定できるものではないが、女が男を愛する気持ちは、そんな道徳観念すら殺してしまう。 男にはない女の情念。 それを雄弁にして、サスペンスフルに綴った本作。 いやぁ、アッパレでした。 (追記) 本作を観るきっかけとなったのは、映画評論家である佐藤忠男氏の『日本映画300』という文庫本に載っていたからです。 この本は本当に凄い。 ハズレがほとんどと言っていいほどない。 紹介されている作品は、どれも凄い作品ばかりなのです。 日本映画好きの方は必携の一冊だと思います。 [ビデオ(邦画)] 9点(2008-03-17 23:39:41)(良:1票) |
1309. 青春の殺人者
《ネタバレ》 前半の両親殺しのくだりは、凄い緊迫感。 これだけの緊迫感を放つ作品は、そうはない。 しかし、中盤から終盤にかけてダレダレ。 そこが残念。 もう少し尺が短かかった方が良かったかも。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-03-17 05:37:39) |
1310. 歌麿をめぐる五人の女(1946)
まあ、溝口作品の中では間違いなくレベルの低い作品ですね。 登場人物が誰が誰だか分からない。 田中絹代しか分からない。 そういった演出的部分も、物語に入っていく観客を阻害している要因の一つだと思われます。 [DVD(邦画)] 4点(2008-03-15 23:38:17) |
1311. 鏡心
ご覧の様に、石井聰亙監督が全てを担当した、自主映画の様な作品です。 しかし、そこは石井聰亙監督の力ですから、凡作にはなっていません。 映像で語る作品なのですが、これが素晴らしい映像美! はっきり言って、出演者の演技とセリフはいらない感じ。 それだけ映像が綺麗で素晴らしい。 『狂い咲きサンダーロード』の様な荒削りな作品を撮った監督とは思えない、洗練された作品に仕上がっています。 万人にオススメできる作品ではないかもしれませんが、映像重視の映画ファンの方には絶対オススメしたい作品です。 もちろん石井聰亙ファンの方は必見です。 [DVD(邦画)] 7点(2008-03-14 00:18:21) |
1312. にあんちゃん
《ネタバレ》 今村昌平作品にしては、性描写が全くない。 これにまず驚き。 しかし、今村監督ならではの“泥くさい描写”は健在である。 田舎町の泥臭さをストレートに映像に焼き付けている。 「にあんちゃん」が貧しくて厳しい環境ながら、未来に希望をもって敢然と山を登るラストシーン。 これは北野武監督作品『キッズ・リターン』のラストシーンを思わせる素晴らしいシーンである。 どんな苦しい環境においても、「希望」を持ってさえいれば、人生が「終わった」ということにはならない。 苦境に立たされても、熱い「希望」を決して捨ててはならない。 「希望」を持つことこそが、生きる上で非常に大切であり、生きる喜びの源泉となり得ることを、本作は雄弁に物語っている。 力をもらえる、心に残る良作であった。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-03-08 19:35:13) |
1313. 魔像(1952)
《ネタバレ》 ベタベタのチャンバラ喜劇。 個人的に苦手な系統の時代劇。 ただし、津島恵子の美しさは特筆モノ! おかしいなぁ、彼女の出演作を観るのは初めてじゃないのに、今までこんなに美しいと感じたことはなかった。 これは監督の手腕のせいか?! 今一度、その美しさに注目したい女優となった。 [ビデオ(邦画)] 5点(2008-03-03 23:03:19) |
1314. 雲ながるる果てに(1953)
《ネタバレ》 “カミカゼ特攻隊”の特攻までの数日をドキュメンタリー・タッチで描いた本作。 戦争の悲惨に関わる史実を、忠実に描いたことに関しては賞賛に値するし、何より反戦的な訴えも見事に表現されている。 しかしながら、そもそもお国の為に命を捧げるということ、それ自体に嫌悪感を持っている私は、最後まで感情移入できなかった。 こういう悲惨な事実が戦争中にはあった。 それはよく伝わるが、個人的好みとして、感情移入しがたい戦時中の「天皇万歳」的な悪しき風潮は、観ていて不快感が募りっぱなしであった。 [ビデオ(邦画)] 5点(2008-03-02 23:44:50) |
1315. キクとイサム
《ネタバレ》 まずは、北林谷栄が40代だったというのが驚き! しかも、まだご存命とのことですし。 こりゃ、凄い! 話はやや重くて暗いものがあるが、ユーモラスな描写も多く、なかなか楽しめた。 [DVD(邦画)] 7点(2008-03-02 15:59:40) |
1316. 風の中の牝雞
《ネタバレ》 この作品は小津的ではなく、むしろ溝口的な作品である。 それは主演が田中絹代だからという理由によるものではない。 内容的に溝口的なのだ。 田中絹代演じる女性は、ひたすら健気である。 夫(佐野周二)がどんなに酷い仕打ちをしようとも、「自分が悪いのです」と言う。 これは観ていて辛い。 ここまで健気だと、観ていて辛いのだ。 途中まで「何と救いようのない暗い話だろう」と思って観ていたが、終わってみれば、心にじんわりしみいる、なかなかの良作であった。 夫婦の間で、どんな問題がおきようとも、「互いをより深く愛する気持ちを持て」ば、乗り越えられる。 ラストで語られる佐野周二のこのセリフが胸を打った。 「深く愛する気持ち」。 確かに夫婦がより深く理解し、末永く幸せにやっていくには大切な姿勢なのではないだろうか。 とても考えさせられる作品だった。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-02-26 21:14:58) |
1317. 夢野久作の少女地獄
《ネタバレ》 映画館にて、“わざわざ”鑑賞。 観るに足らない作品。 日活ロマンポルノのレベルの低さを初体験。 苦痛きわまりない。 特にヒロインがブサイク。 しかも女子高生に見えないほど老けている。 「火星さん」というあだ名も不快感だけが募る。 ラストも、上手く収めることができず、ぐちゃぐちゃになって、そのまま放置した感じ。 しょーもない映画だった。 [映画館(邦画)] 2点(2008-02-25 21:41:24) |
1318. 雄呂血
80分という短い尺に加え、頭から最後までスピーディに見せるので、最後まで楽しむことができた。 バンツマがどうこうより、作品としてまず面白いし、出来が良い。 評判だけでイマイチだった『赤西蠣太』なんかよりは、評判に内容が伴っていて、素直に楽しめた。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-02-24 17:14:26) |
1319. プーサン
伊藤雄之助がとにかく凄い! 男の哀愁が体全身に漂っています。 伊藤雄之助って、こんなにも凄い俳優だったんですね。 いやぁ、感服いたしました。 そして加東大介も、本作では特に魅力を発していました。 元々好きな俳優ですが、本作の加東大介は、事のほか良かったです。 院長室での伊藤雄之助とのやりとり、電車の中での女性二人に挟まれた時の表情などなど、面白すぎです。 市川崑監督の作品って、あまり本数観ていないんですが、初期にこの様な素晴らしい作品を撮っているんですね! なんかハマりそうな予感がします。 [映画館(邦画)] 8点(2008-02-24 01:13:29) |
1320. 愛のお荷物
なんと豪華な出演陣! 山村聡、三橋達也、フランキー堺、山田五十鈴。 それぞれ個性を満面に打ち出していて楽しい。 テンポ良く最後まで観られるのが魅力。 また、人口増加というシリアスな問題が背景にあるのに、まるっきり暗さがなく、川島監督の上手さが伺える。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-02-17 18:28:40) |