1321. ゆれる
《ネタバレ》 西川美和監督、凄い実力です。 師匠の是枝裕和監督を既に抜いていますね。 しかしながら、純粋に脚本としてみるとシックリこない部分があります。 結局、事実としては「手を差し伸べたが落ちてしまった」だと思われますが(兄の手の傷から)、それに対し、法廷で最終的に「突き落とした」と偽証した弟を、あのバス停で笑顔で迎えるには、さすがに無理があります。 ただし、もしかしたら、兄は弟を心理的に揺さぶることによって、何かを弟に伝え、そして弟はそれをきっかけに兄を理解した。 その満足の結果として、あの笑顔がもれた。 そう考えることもできます。 ただ、これは前述した通り、7年もの刑期を負わされた兄が、そこまで弟を良心的に解釈するには無理があり、説得力を欠くと個人的に感じました。 しかし、ここまで観た後に、考えさせられる時点で、西川監督に見事に翻弄されているのです。 そういう意味で、脚本的には少々無理があるものの、西川監督の並々ならぬ実力に感服しました。 この女流監督の今後の活躍に目がはなせませんね。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2008-02-07 19:02:28)(良:1票) |
1322. ツィゴイネルワイゼン
第一に面白くない。 そしていかにもな映像センスが自分とは合わない。 更に、原田芳雄が苦手。 大楠道代も楠田枝里子の様で気持ちが悪い。 だけど、不思議と印象に残る作品だ。 この特別な印象こそが、本作が高く評価される源なのかもしれないが、その良さを十分には理解できなかった。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2008-02-05 19:03:37) |
1323. 戸田家の兄妹
《ネタバレ》 前半は面白くなかったが、しり上がりに良くなった。 特に、ラスト付近の佐分利信が軽薄な兄妹たちを豪快に追っ払うシーン。 そして、熱心に母や妹を説得し、中国の天津に希望を持って誘うシーン。 これらのシーンはとても良かった。 でもこういう家族内のいざこざや女性同士の問答を内容とする作品であれば、成瀬巳喜男監督なら、もっと上手く撮ったのではないか。 小津監督は、カラっとしたコメディタッチなものを撮らせると最高に上手い監督だし。 成瀬監督は沢山の作品を撮っているから、本作の様なテーマと似た作品を既に撮っているかもしれないけど、本作の成瀬バージョンを観てみたい気がする。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-02-05 00:38:06) |
1324. 破れ太鼓
まず阪妻。 凄まじい存在感! これぞニッポンの雷オヤジ! 息子役の森雅之が「こわぃ、オヤジだなぁ・・・」とつぶやくのが愉快、そして納得。 あの森雅之を子供扱いにする阪妻の迫力は流石。 そして次女役の桂木洋子。 本作でもやっぱり可愛いかった。 いつも思うが、桂木洋子って若い頃の「いとうまいこ」(若い頃の芸名は「伊藤麻衣子」)に声も雰囲気もソックリな気がする。 又、妻役の村瀬幸子だが、観ている間中ずっと沢村貞子に似てるなぁ、と思っていた。 そしてラスト付近で、その妹だが姉だか「おばさん」役の、当の沢村貞子が登場。 これにはビックリ。 やはり似ている。 そしてこの似ている二人を姉妹にもってきたのが、また良い。 阪妻に話を戻すと、前述した「存在感」や「迫力」といったものを前面に出しながらも、同時に「コミカルさ」や「人間の弱さ」なども滲ませている。 これは阪妻の天性のものか、それとも演技によるものか。 いずれにしても、凄い俳優だ。 阪妻の出演作には傑作が多いのがよく理解できた。 阪妻という俳優は、その一人の力で、作品全体を傑作にまで至らしめるパワーと実力を持った俳優なのだ。 傍若無人な大太鼓。 哀愁漂う破れ太鼓。 両方を見事に演じ分けた阪妻の演技に、ただただ敬服するばかりである。 [DVD(邦画)] 8点(2008-02-03 09:04:37)(良:1票) |
1325. 父ありき
小津作品を年代順に観てきたが、本作でかなりの「完成」を感じた。 小津スタイルが確立された頃のような気がした。 音声の劣化が酷く、まともに視聴できる状態でないのが悲しい。 しかしながら、笠智衆の演技が抜群に良い。 小津サイレント時代の常連俳優、坂本武も脇で良い味を出していた。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-02-02 22:05:36) |
1326. まごころ(1939)
御茶ノ水の「アテネフランセ文化センター」という摩訶不思議な場所で見てきました。 とても古臭く、かび臭い巨大なビルです。 そこの4階で上映されました。 舞台の様な場所に、プロジェクターというか、16mmでの上映でした。 作品ですが、成瀬作品としては平均的なレベルです。 平均的とは言っても、決してレベルが低いという意味ではありません。 成瀬作品はレベルが高いので、その中で平均ということは、普通からすれば傑作と呼んでも言い過ぎではないほどの出来です。 1930年代という点において、音声が聞き取りにくい、映像がぼやけている、50年代に比して完成度が低いなどの問題点はあります。 しかしながら、なかなか地味に見せるいぶし銀の味わいで、何回も繰り返し観られる奥の深い作品でした。 やはり、この頃の入江たか子は正統派美人ですなぁ。 ぐうの音も出ない程の美人顔であります。 晩年に新藤兼人監督のドキュメンタリーでそのお顔を拝見した後に観ただけに、そのギャップにやられました。 時というものは本当に残酷ですねぇ・・・ [映画館(邦画)] 7点(2008-01-29 23:32:44) |
1327. 大菩薩峠(1966)
《ネタバレ》 時間の経過を忘れるほど鬼気迫る仲代達也の演技と眼光。 大人数を相手にした立ち回りは、迫力十分だが、ややリアリティを欠くのが残念。 終り方はかなり拍子抜け。 加山雄三のあの気合いは何だったのか? そしてお松は一体どこに? 西村晃はいかにもクセ者風で、最後にキーパーソンとなるのか?と思わせぶりながら、活躍は最後まで観られず。 敢えてこういう終わらせ方にしたのだろうが、どうも消化不良気味だ。 だが、全編を通してみなぎる緊張感、そして、観る者を釘付けにし続ける演出は見事だ。 [ビデオ(邦画)] 8点(2008-01-27 20:15:06) |
1328. 真空地帯
《ネタバレ》 戦時下における、軍隊の内幕をリアルに描いた作品。 軍隊内部ではイジメや暴力が日常茶飯事に行われており、むしろそれが内部では当たり前のこととされている。 上層部は物資を横流ししたり、人事を不当に行ったりと、こちらも腐敗し放題である。 そういった軍隊内部の内幕を、嫌というくらいにリアルに見せ付ける。 これが本当にリアル過ぎて辛すぎて、観ていて嫌になる。 作品の出来具合としては、文句のつけようがない。 時間の経過を忘れる程の力作である。 しかし、先に書いたように、観ていてどうも嫌になる。 気分が悪いままに二時間が経過するのだ。 「良い物観た」ではなく、「胸くそが悪い物を観た」。 観終えた後、そんな気分になってしまう。 そこがこの作品の良い所であり、悪い所でもある。 いずれにしても、本作が非凡な作品であろうことは間違いない。 久しぶりに凄い邦画を観た気がする。 [DVD(邦画)] 8点(2008-01-27 20:04:02)(良:3票) |
1329. にっぽん昆虫記
《ネタバレ》 内田吐夢監督の『飢餓海峡』と負けず劣らず左幸子の演技が凄まじい。 彼女の熱演なしには、本作のパワーは生まれなかったであろうことは相違ない。 男と女が情欲に流されるまま、まるで昆虫の様に生きる姿をリアリティに演出した今村監督。 『赤い殺意』と非常に似たテイストの作品だが、本作の方がパワー・リアリティ・性的描写の全てにおいて上であろう。 宗教、父娘の親密過ぎる間柄、母娘丼、売春、他人の子を身篭り「あなたの子」と騙す、チクリ、金への執着、強姦、、などなど、際どいテーマてんこ盛り。 それらを下手に飾ることなく、リアリズムに徹して描いた今村監督。 「調査魔」と呼ばれた今村監督だからこそ、リアリティを欠くことなく描くことが出来たのではないだろうか。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-01-27 11:48:47) |
1330. 淑女は何を忘れたか
《ネタバレ》 やはり、小津監督はユーモアのある作品を撮らせてこそ本領を発揮する監督である。 斎藤達雄と桑野通子との掛け合いが素晴らしい。 特に二人で示し合わせて説教をするシーン。 ドアの使い方、全てが軽妙洒脱でセンスも良い。 ラストのエロス漂う演出も見事。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-01-24 22:12:47) |
1331. かげろう笠
“CS・衛星”として初レビュー! 万歳!! やっと、CSで本作の様な貴重な邦画を観ることができた。 それが、まず嬉しい。 香川京子を目当てで本作を鑑賞。 とても静かな女性を演じており、香川京子の可憐な魅力には欠ける作品である。 逆に長谷川一夫は、なかなかの男気を見せていて良かった。 今まではナヨナヨした女形のイメージが強く、あまり好きな俳優ではなかったが、本作でそのイメージが消え去った。 長谷川一夫という役者は、どんな役柄でもこなせる役者なんだと感心した。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2008-01-21 21:09:38) |
1332. 一人息子
後の小津代表作『東京物語』の原型ともいえる小津の王道的作品。 つまりは、私の苦手な系統の小津作品である。 やっぱり小津の魅力はコミカルさにあるんではないか。 本作は終始淡々と進み、コミカルさは成りを潜めている。 [ビデオ(邦画)] 5点(2008-01-16 22:14:55) |
1333. 独立少年合唱団
大林宣彦監督の『青春デンデケデケデケ』を好きな人なら楽しめるはず。 私は苦手なジャンルの作品だ。 [ビデオ(邦画)] 5点(2008-01-13 23:35:22) |
1334. 狂い咲きサンダーロード
リアリティ無視で爆走するストーリー展開に苦笑するも、勢いだけは物凄く、最後まで引っ張られた。 娯楽作品として素直に観れれば、十分楽しめる作品である。 古臭さがそこかしこに溢れているが、その古臭さを逆手にとり、逆に楽しむ。 これがリアルタイムではなく、21世紀において本作を楽しむ上では必須の条件だ。 山田辰夫のかすれた声が何しろかっこいい。 そして雰囲気も、どこか私の好きな成田三樹夫に似ていてかっこいい。 この作品でこれだけのインパクトを放つパワー溢れる演技をみせたのに、その後のブレイクがなかったのが残念だ。 暴走族はもはや時代遅れ。 しかしながら、それが逆に観る者の好奇心を否応なくかき立てるのだ。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-01-13 16:19:53) |
1335. 東京の宿
まあ、内容としては小津サイレントの中でも平凡なレベルでしたね。 しかし、本作が小津最後のサイレント作品とは! つまり、これで視聴可能な小津サイレント作品のほとんどを観たというわけです。(まだ数本、未見のものがありますが) これには感慨無量です。 [ビデオ(邦画)] 6点(2008-01-12 23:01:46) |
1336. 母を恋はずや
《ネタバレ》 最初と最後が欠落している点を抜きにしたとしても、それほど良い作品だとは思えませんでした。 小津監督のサイレント作品で現存するものはほとんどを観ましたが、その中でも出来は良くないほうだと思いますね。 [ビデオ(邦画)] 4点(2008-01-04 22:04:24) |
1337. 名刀美女丸
現存する30本余りの溝口作品のうち残すはあと5本。 ついにここまで来てしまった。 とても寂しい気分だ。 さて、本作は『必勝歌』などと同時期、すなわち戦争終結前後に作成されたものである。 制約が多かったのであろう、出来はとても悪い。 少なくとも、溝口らしさは出ていない。 それにどうも話が飲み込みづらい。 文語体でのセリフが多すぎるからだ。 まあ、それは時代劇ではよくあることだ。 しかし、たださえ時代劇と相性悪めな溝口作品で、文語体のセリフ連発となると、ますますもって話を理解し難いものがあった。 [DVD(邦画)] 4点(2008-01-03 13:59:51) |
1338. 20.30.40の恋
20代と30代と40代の女性の3人のラブストーリーが平行して描かれる。 前半はあまりにめまぐるしく三者の話が入れ替わるので、散漫な印象を受けた。 しかし、だんだんと一人一人の話がじっくりと描かれる形に移行していき、途中からそれなりにハマることができた。 特別に傑作とは思えないが、それぞれの話はなかなかにしっかりしていて、それなりに楽しめる佳作である。 [DVD(字幕)] 6点(2008-01-03 01:39:54) |
1339. 座頭市物語
モノクロ映像がとてもシャープ。 そしてストーリーもシンプルで良い。 勝新もドスがきいた声でドスを振り回し、かっこよくないのにかっこよい。 不思議な魅力を持つ時代劇だ。 [ビデオ(邦画)] 7点(2007-12-31 12:57:14) |
1340. 機動警察パトレイバー
《ネタバレ》 この系統のアニメには苦手意識があったが、果敢に鑑賞してみた。 やはり苦手。 更に、鳥が大量に出てくる場面。 あれで一気に幻滅。 ヒッチコックをパクってるところがアザとい。 それが致命傷。 ただし、首都圏に関するリアルな描写には驚いた。 これには感心させられた。 しかし、この感心ポイントは本作の見所とどこまで合致しているだろうか? つまり、私が興味をおぼえたポイントは、本作の見所とはズレた箇所である。 こう考えると、やはり私には合わなかった作品のようだ。 そして、登場人物達の声。 アニメだから仕方ないのかもしれないが、妙にやかましい。 アニメ好きでない限り、耳障りなこと間違いなし。 そしてバブル絶頂期に製作されたというのも興味深い。 あの頃の勢いなら、10年後にはこんなんなってるのでは?というノリだろうか。 全く能天気な時代だ、あの頃は。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2007-12-29 23:22:54) |