1. あ・うん
作品のスケールとしては、やはりテレビドラマの方が座りが良いように思った。寡黙な健さんに見慣れているためか、多弁な健さんには正直戸惑ってしまった。こんな健さんは新鮮だが、役柄には合っていない。板東英二は完全にミスキャストだと思う。台詞の棒読みが酷い。もう少し役者らしい役者を当てるべきだったのではないか。とにかく健さんの役作りと板東英二の起用に違和感があるから、物語に入り込めなかった。三木のり平の芸達者ぶりに唸ってしまう。健さんと絡む屋台のシーンは名場面だ。山口美江の神楽坂芸者もなかなかよい。真木蔵人がヴェルレーヌの詩を読む思想犯を演じているが、どうしてもサーファーにしか見えないぞ。 [地上波(邦画)] 5点(2014-11-30 10:41:30) |
2. 駅 STATION
《ネタバレ》 健さん追悼番組で再見。希望の無い重く悲しい物語。直子の過ちを許せず離婚。すずこを気にかけるが彼女の人生に関与して助けてやるわけでもなく、運命的な出逢いをする桐子とも宿命的に別れ、自分の仕事に疑問を感じ続けてるのに辞めることが出来ない。そんな物語だから、救いや癒しや希望は無い。だが心に重く響くものがある。 演者がいい。雪が降りしきる銭函駅での冒頭のシーンで、直子を演じるいしだあゆみが、まるで映画のクライマックスかと勘違いさせるような演技を見せる。桐子を演じる倍賞千恵子もいい。健さんが初めて居酒屋を訪れる時のワンシーンワンカットの演技が素晴らしい。完全に高倉健を喰っている。根津甚八は30秒くらいしか登場しないが、めちゃめちゃかっこいい。大滝秀次は相変わらず渋いし、宇崎竜童のチンピラ風情もいい味出している。 駅STATIONは、間違いなく名作の挌印が押されている映画だが、改めて観て違和感もあった。健さんが雪の中に渋く佇んでいる。健さんファンなら、実はもうそれだけで満足で、僕もほぼ満足なのだが、この映画には、謂わば高倉健的指向性とでも云うべき過剰な情緒があって、この雰囲気を味わうべしと云う暗黙の強制を感じてしまうのだ。これが映画の本質であってはならない。いしだあゆみや倍賞千恵子がいい演技をしてたと云ったが、それは情緒を醸していたからではなく、彼女らはこの物語の特定の設定に相応しい素晴らしい演技をしていたからだ。 [地上波(邦画)] 7点(2014-11-30 04:14:44) |
3. 紙の月
宮沢りえは体当たりの熱演をしている。だがドラマはいただけない。問題は原作なのか脚本なのか、原作未読のため判断できない。非日常性に焦がれ、優しい夫を裏切り、若い男とのセックスに耽溺するのは理解できる。だが突然、横領を働き、それをエスカレートさせていく。その堕ち方の蓋然性が弱くて戸惑う。 最後には、その謎が解けるだろうと期待するも、たとえば幼少期の歪な体験によるトラウマ等、カネに復讐しなければならない理由が明らかにされるのかと思いきや、全く描かれない。「与えたいだけ」が、横領して男に貢ぐ理由じゃダメだろ。うーむ。消化不調 [映画館(邦画)] 5点(2014-11-23 20:12:50)(良:1票) |
4. 武士の一分
《ネタバレ》 松竹山田組の藤沢周平3部作を全部観ている人たちに言わせると、「たそがれ清兵衛」」には叶わないという意見が多い。だが私はこれが初めての藤沢作品なので、他の二作品との相対で評価することはできない。だから純粋な単品批評になる。 山田洋次という人は、「男はつらいよ」シリーズや「学校」シリーズに見られるように、緻密に構成されたプロットを仕込む監督ではない。むしろ淡々と、鑑賞者の理解が遅れないように、分かりやすく絵を進めていくタイプ。だから、ほぼ正確に先の展開を読むことができて、演出意図が明快だ。 作品の評価としては、題名の「武士の一分」の「一分」が、いったい何を指しているのか、いまひとつピンとこなかったということはあるが、下級武士の三村新之丞、妻の佳代、そして二人を見守り仕えてきた徳平の3人の平穏な日々に突如訪れる災難を通じて、人生という物語の綾と妙を描くことに成功していると思う。 俳優陣の演技は良い。最初、三村新之丞は、どう見てもキムタクにしか見えなかったが、盲目になり、絶望の淵に追いやられて以降の鬼気迫る演技には目を見張るものがあり、何度か唸った。一方、長年時代劇をやっているような佇まいを有する壇れい。美しいし演技も上手い!そして何と云っても笹野高史。この評価は、この映画を観た誰もが認めると思うが、彼の人間味溢れる演技は、とても素晴らしかった。こんなにいい仕事をするバイプレーヤーだったとは! 演出的に勿体ないなーと思われる箇所もある。 時代劇では、敵役のキャラがどれだけ際だつかが物語の形式を保つ大切な要素だと考えるが、番頭、島田の悪徳ぶりがいかにも薄っぺらい。あんな酷いことをする奴は一人で決闘場に行かないだろう。たかが三流侍を始末するくらい、どうとでもできる筈だ。しかも新陰流免許皆伝のわりには弱すぎる。 ラストは、復縁しないほうがより深みのある物語になった。もし復縁させるのであれば、庭で鳥かごを燃やすシーンで、徳平に「飯炊女」という台詞だけを吐かせるだけで十分だった。その方が、より鑑賞者の想像力を掻き立てたと思う。この辺りがどうも、分かりやすさと丁寧さを履き違えているような気がして、勿体ないなあと思った。 他の2作品も観てみたい。藤沢周平の原作も読もうと思っているでがんす。 [DVD(邦画)] 7点(2007-10-15 12:33:25) |
5. ニライカナイからの手紙
竹富島の人々が持つ「うつぐみの心」とは、お互いの生活を確認、励まし合う風習であるという。忘れかけていた大切なものを再び発見したような懐かしさで胸がいっぱいになった。東京で真実を知り戻ってきた風希が、島の皆から慰められるシーンは本当に泣ける。当初、オジィの表情の乏しさに戸惑った。嘘を吐き続けなくてはならなかった無表情、また思いを上手に表現できない不器用さと捉えることもできるが、なぜこの俳優を起用したのか疑問に思えた。しかし最後、風希が島に戻った翌日に、ふたりで朝食をとるシーンでの繊細な眼差しの演技に、それまでのモヤモヤしたものは、すっかり晴れてしまった。心憎い演出でした。 [DVD(邦画)] 8点(2006-10-21 12:14:12) |
6. 火火(ひび)
《ネタバレ》 求道者の激しさを表現したいのか、清貧の美徳を説く物語なのか、いやもしかしたら、骨髄バンクの紐付き映画かもしれないぞと、一瞬戸惑うところもあったが、それでも終わりまで淀み無く見せ切ってしまうのは、ひとえに田中裕子の演技力の賜である。「女性版ハードボイルドが作りたかった。」高橋伴明はそう言っている。この映画、確かにハードボイルドの真髄である「覚悟」を描いている。田中裕子という女優は「覚悟」を表現するのが上手で、その反面、時に冷酷さを感じさせる所のある人だが、高橋伴明の丁寧な演出がそれを救っている。例えば、結婚式に欠席したこと、孫の誕生に祝福の態度ひとつ見せない母親に対して、娘が苦言を呈した後の切り返しのシーン。清子は「この金をきれいにしてからものを言え!」と、これまでに娘にかけた全経費が記されたノートを眼の前に叩きつけて啖呵を切る。このシーン、これで終わっては、田中裕子のキツさだけが残るところだが、監督は次のような場面を繋ぐ。夕焼けの庭を、子守唄を謳いながら孫を負ぶって歩く清子の遠景。その姿を、軒下で寝そべりながら団扇を仰ぎ、ちょっと恨めしそうな目つきに見ている娘のカット。台詞はないが、全てをフォローしているのである。思わず巧いと唸ってしまった。 [DVD(邦画)] 8点(2006-07-24 12:49:54)(良:1票) |
7. 突入せよ! あさま山荘事件
厳密なリアルズムを追求した映画と聞いて、もう少し骨のある社会派ドラマなのかと大きな期待を寄せて観にいった分、少々落胆した。役者陣の演技は素晴らしい。ただあの事件の時代背景が全く無く、登場人物も佐々だけに光が照射され過ぎるきらいもあり、警察アクションドラマ風なところが鼻についた。警察側からの視点だけでなく、犯人のキャラや時代背景を2時間の枠の中に全てブチ込むのは無理があるとしても、もう少しあの事件の薄暗い根底、日本赤軍を生み落とした日本の土壌について説明がないと深みに欠ける。演出もカメラも独特で才能の迸りを感じるだけに、とてももったいないような気がした。 5点(2002-05-24 12:50:40) |
8. トラ・トラ・トラ!
壮大な戦争映画を期待して見に行き,帰り道ではそんなことよりジェリー・ゴールドスミスの音楽にすっかりハマッてしまった映画でした。 特に田村高広と三橋達也が無言で握手する場面の「プレ・フライト」は,日本人以上に日本人の気持ちを表現していた見事な曲だと思う。以来,彼のサントラを追い求め,4年前の初来日,一昨年の2度目の来日とコンサートの度にジェリーと握手できたのは本当に幸福なことでした。 7点(2002-01-06 20:58:01) |
9. 天国と地獄
堤防の上、列車から犯人?が一瞬見えそうになる...このシーンにすごくドキドキした。 9点(2001-07-04 22:54:26) |