1. 春の雪
三島由紀夫はかなり好きだ。 春の雪はスゴい作品だ。 月並みな言い方だが、いつも彼の描写力には圧倒されてしまう。 圧倒されながら、心地よく酔うのだ。 「午後の曳航」の最後の一行など、息を呑む。 高校生の時にの時に衝撃を受けた。 幼少からじわじわ作り上げられた主人公の複雑な内面。 相手が誰であれ、彼の真意が言葉や表情で語られるという事は少ない。 駆け引き、とも違う、あの微妙な距離感。 それを映像に表現する。 よほどの芸達者であっても、まあ無理というものだ。 できたとしたら、美しい奇跡である。 そしてここには、その奇跡は、無い。 テレビスポットの段階で、ある程度想像はついており、 その上で鑑賞。 この穿った態度を覆すものもまた、ここには、無い。 メリットはある。 原作が以前よりも読まれるでしょう。 四冊買う人も多いかも。 そこで酔って下さい。 是非。 [映画館(字幕)] 2点(2005-11-11 14:12:11) |
2. 血と骨
この、じっくりと腰を据えないだらけの時代に、敢えてよく作ったとは思います。 田畑智子ら俳優陣が素晴らしい演技を見せる中、 鈴木京香だけが圧倒的にダメダメでしたが(特に老けてから)、 あれで主演女優賞を取ってしまうあたり、日本アカデミー賞とやらの救いようのない浅さが.... 彼女のスケジュールを待ったという話も聴きますが、アリなんですか?監督。 [映画館(字幕)] 6点(2005-11-01 11:59:32)(良:1票) |
3. スモーク(1995)
《ネタバレ》 そう、写真はゆっくり見た方がいい。 個人的には、最後の「再現フィルム」は、無い方が良かった。 [映画館(字幕)] 8点(2005-11-01 09:25:05) |
4. 風の谷のナウシカ
《ネタバレ》 これは偽善ではない。 人を殺した事があるから、肉親を殺された事があるから、 谷の人の思いや、イロんな痛みを背負って、まっすぐ目を開いて、風を切って飛んでいるから、彼女は魅力的なのです。 中学生の時に公開され、その時だけで三回程足を運んだでしょうか。 勿論、宮崎駿云々という蘊蓄は自分の中には一切存在せず。 ただ作品を純粋に楽しめたというのは、僕の世代は幸せでしたね。 原作も素晴らしいですよね。 [映画館(字幕)] 9点(2005-11-01 09:14:22) |
5. ルパン三世 カリオストロの城
私がラッキーだと思うのは、初めて観たとき、「これは宮崎駿で云々..」「ルパン斯くあるべき」という先入観無しでいられた事ですね。 今から初めてご覧になられる方々は、それらのうんちくが邪魔してしまうのでしょうね。 アニメどうこうではなく、エンターテイメントとして絶品です。 本当に彼らは「気持のいい連中」だし。 塔の中で、あの有名な万国旗のシーン。 素直に思います「こりゃ、モテるわなあ」 [ビデオ(字幕)] 10点(2005-11-01 09:08:42)(良:2票) |
6. ツィゴイネルワイゼン
頭で「わかろう」とかしないで。 ただ、静かに、 この美しい毒を飲んでしまいましょう。 ゆっくりゆっくり。 [DVD(字幕)] 10点(2005-11-01 07:22:18) |
7. きょうのできごと a day on the planet
当時の彼女に付き合って観ました。 最初の十五分で早くも浅さのみが目につきます。 方言を喋らせる必要性は? しかも不自然だし。というか、下手。 特に田中さん。 ちなみに私、テクニック至上主義ではありません。 音楽でもうまい「だけ」でつまらん音楽は(特に日本のフュージョンに)沢山存在しますし、 下手でも何か伝わるものがあれば充分です。 ふっと気付かされるものがあれば充分です。 そうしたものが無くても「何か」が残ればよいのです。 驚きがなくても構わない。 ストーリーが無くても構わない。 大根役者でも構わない。 事件が起きなくてもいい。 もっと言うと、映画にはメッセージやテーマがなくてもいいんですけど。 大体の名監督は仰ってますよ「テーマって言われてもねえ、説明ッたって映画で言ってるから」と それを踏まえても.... この映画からは何も伝わりませんね。監督からも役者からも。 ここには見事に何もない。 彼ら、友人同士ですか?恋人同士ですか?仲間ですか? これが共感を得るのであれば、なるほど浅い世の中だ、 と思います。 そりゃディズニーランドに客も入るわ(宮崎駿曰く、「あれは入り口と出口が一緒だから、だめ」という意味で。宮崎氏に同意!!)。 こんなんで、三島由起夫「春の雪」の主人公の内面を撮れるんでしょうか? [DVD(字幕)] 2点(2005-11-01 07:12:00) |
8. 犬猫
派手さは全くありません しかし、いやそれ故に 数十年の鑑賞に耐えうるであろう 数少ない日本の映画のひとつ [試写会(字幕)] 7点(2005-11-01 04:49:11) |
9. 太陽を盗んだ男
《ネタバレ》 最高に格好いいですねえ。 「突っ込みどころあっても、それを補うパワーが勝った」といういい例です。 後日DVDを買いまして、撮影時のエピソードや監督のインタビュー等が入った、 ボーナス・ディスクの内容がまた非常に面白く、 「だからこんなに作品のパワーがあるんだな」と納得するとともに、 「モノを作るってのは、こういうことだよなあ」と思わされました。 幾つか挙げます。 許可を取らず(取れず)に、バスで皇居に突っ込んだ(いついつごろにバスが一台突っ込んできますから、どうか撃たないで下さい。と言って)~撮影がキツく、逮捕された方が楽と、多くのスタッフが志願した。 許可を取らず(取れず)に、渋谷のデパートの屋上から札をばらまいた(本物も用意した、大きめの偽物を撒いた。ちなみに偽モノでももちろん犯罪)。 何台か車を借りて運転させて道を塞ぎ、高速道路が空いたところで、カーチェイスを撮影した(しかも、頼んだ巨大トラックが来ないで、小さい車が来て、うしろから丸見えだった 爆)。 あのロープ、どっから来てるんだろうなあ フッフッフ(監督)。 あの渋谷のシーンさあ、途中から、銀座なんだよねえ ハッハッハ(監督)。 予算がなくてカーチェイスがしょぼくなったが、アメリカで、「面白いけれどカーチェイスがC級」と言われ、意地で「バカヤロウ、俺はC級のカーチェイスが好きなんだ」と言った 爆)。 等々 機会があればご覧あれ [ビデオ(字幕)] 10点(2005-11-01 03:47:15)(良:1票) |
10. 七人の侍
《ネタバレ》 まず、役者達の「風貌」を観よ!! それだけでも、そこらへんの「映画」(と同じ形態をしているために、そう呼ばれるもの)との「違い」がわかると思うのですよ。 「風貌」という言葉、 それにふさわしい役者は果たして今何人存在するか? 風貌という言葉がようわからんという方、 土門拳の写真集「風貌」を、立ち読みでもいいからご覧なさい!! 現在、背中で演技できる役者は、果たして何人存在する? 刀を差して、腰をしゃんとして歩ける者は、今何処へいった? また、一人一人の存在感も圧倒的。 極端な話、役者は大根だっていいんです。圧倒的な「華」や、存在感があれば。 ジョン・ウェインは大根で有名だった。しかし何故ヒーローたり得るのか? 圧倒的な存在感だ。 さて、私はご多分に漏れず、志村さんと宮口さんにやられました。 あと 「子供は、大人扱いしてやればよく働く」 という鋭い指摘にも!! ちなみに「荒野の七人」について、黒澤監督は、 ガンマンって時点で違うんだけどなあ、ガンマンはガンマンだから。 元保安官とかならわかるんだけど というような事を仰っております。ご参考までに。 さて、 長い... 音声が... 古い... 白黒.... アクションシーンがCGだったら..... と仰る方が多いですが、 心からこの状況を憂います。 便利になった世の中の悪い面ですね。 去勢されすぎている。 一生、 アルバムを一枚通して熱心に聴くこともなく、 長編小説を手に取ることもなく、 オペラを観ることもなく(なにもこちとら詳しくねえし、オペラが高尚で他が下劣だってんじゃありませんや!)、 たまに意を決して手に取ってみても、 物語や映像、セリフや佇まいを「味わう」前に時間に耐えられない人が増えている。 前にもそのような方はおられたでしょう。 しかし、増えている。 哀しむべきことです。 供給する側にも大いに問題はありますが。 余談ですが、加東大介さんは、様々な名作にご出演ですね。 本作、秋刀魚の味から社長シリーズまで! [ビデオ(字幕)] 10点(2005-11-01 03:11:39)(良:4票) |
11. 秋刀魚の味(1962)
《ネタバレ》 まず、岩下志麻が、綺麗だ。 あんな24歳は絶滅してしまっただろうな。 球場を写さなくても、 白いハンドバックを出さなくても、 手に入れたクラブでゴルフをさせなくても、 冷蔵庫をど~んと見せなくても、 泣き顔をアップで撮らなくても、 見合い相手が出て来なくても、 「今までお世話になりました」と言わせなくても、 結婚式を写さなくても、 披露宴を写さなくても、 いいのです。 ということを気付くべきだ。 特に今の監督達、そして監督の周りにいる人達は。 説明に頼らず 人格表現に徹する この美しさ。 小津安二郎に乾杯!! [DVD(字幕)] 10点(2005-11-01 01:59:09)(良:4票) |
12. ラスト サムライ
飛行機の中で観ました。 感想。眠くはならないです。それ以上のものはございません。 映画には、いくら「突っ込みどころ」があってもいいと思います。 それをもってあまりある魅力があれば。 又,製作陣が最初に提示した「約束の線」を自ら超えなければ。 しかし... 例えば、黒澤明、宮崎駿、武満徹,小沢征爾等のインタビュー/対談、スタッフの話、等をお読み下さい。 作る側の心構え,最低ラインというもののご参考になるでしょう。 「突っ込みどころ満載だが、魅力溢れる作品」の代表格として、「太陽を盗んだ男」を挙げたい。 特典DVDもご覧になれば更に「なるほど」と思われるでしょう。 勿論私にとって、そうした資料は「後付け」のもので、 彼らの作品はそんなことを知らなくても楽しめる、とてつもないパワーを持った作品です。 その源泉を知りたくて、その一部に触れて、「成る程!」というわけです。 この作品からはそうしたパワーが感じられない。 何に対してであれ,感動できる心は素晴らしい。 しかし、客が育たねば,映画の質はますます衰退します。 同時に、提供する側の心構えや「ここでOK」というラインが下がれば,作られるものの質も下がる。 そうした作品が全体に占める割合が上がれば、全体が薄まる。 客はその中で相対的な判断を行う。 そしてその中の作品や監督を「目標」にしてプロになる者。 そして彼らの「目標」は「目標」で「最低基準」でないために、さらに質が低下したりする。 料理同様,芸術にも「口に合う,合わない」という要素は存在する。 例えばベジタリアンであっても、近江牛というものは良質のものなのだ、と認める心は持ち合わせておきたい。 この映画がここまで絶賛されてしまうのは、私たち客側にも問題あるのでしょう。 トム・クルーズは現代の大スターであり、ハリウッドの中で最もパワフルな人物の一人です。 彼に「ここでOK」と思わせてはいけない。もう一押し,ふた押しさせるのは、観客の眼です。 「ここで大丈夫と思ったら、もう一押し。それが映画だよ」 と その昔、黒澤明は言われたそうです。 このような現象は、音楽界、マンガ界においても非常に顕著なものですが。 [ビデオ(字幕)] 2点(2005-11-01 01:30:12)(良:3票) |