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かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1246
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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1.  オクス駅お化け 《ネタバレ》 
題名とビジュアルの雰囲気に騙された感じだった。 原題を漢字表記すると「玉水驛 鬼神」だが、原語では日本語の「の」に当たる助詞が省略されているので、邦題ではこれを補って「オクス駅の…」とすべきところ、省略したままにして不器用な直訳の印象を出している。また「鬼神」は「鬼神」のままでもいいだろうが、あえて幼児語の「お化け」にしてユーモラスな方向に引っ張っている。どうせなら「おばけ」にすればもっととぼけた感じが出ただろうがそこまでは徹底していない。 この邦題と、怖そうなポスタービジュアルのギャップに目を引かれたのが見た動機だが、しかし実際そのイメージ通りの映画でもない。黒いオバケが駅に取りついているのかと思ったらそうでもなく、そもそも導入部と本編がほとんど関係ないように見えたのは意外だったが、前日談として一応つながった形ではあるようだった。  ホラーとしては特に怖いところはない。井戸の慰霊で決着がついたかと思ったら実は終わっていないとか、呪いを他人に移すのは確かに「リング」っぽいが、似ているというだけで特に面白くはない。 物語としては、各種問題を頭出ししただけで薄っぺらいので社会派的な面での本気は感じない。劇中の「玉水保育院」は日本で起きた事件を元にしたとのことだが、臓器売買まで持ち出すのでは現代的すぎて唐突感がある。また「4桁の数字は、韓国で児童を対象とした犯罪事件の日付」だそうで、1211・1013・0329は確認できたが、そういう悲惨な事件を思わせるのも形だけの問題提起にしか見えない。 さらに主人公を記者の設定にして巨悪を告発する物語のようでいて、最後は個人的な復讐でしかなくなったようなのは話を逸らされた感がある。ただし社長本人も巨悪の隠蔽に加担した過去があり、今回知らぬふりで逃げようとした?のを主人公が潰した、というようなことなら勧善懲悪的な(というより懲悪的な)話だったことにはなる。また湯灌師の発言をもとに考えれば、主人公は恨むべき相手に正しく復讐したことで、世の中全部を恨まなくて済んだのが幸いだったいうことか。これが儒教倫理的な筋の通し方ということかも知れない。 一応の娯楽性は備えているので極端に低評価にはならないが、何かと半端な印象を残す映画だった。個人的には事前の期待が大きすぎたということもある。 その他、特に序盤で変に漢字が目についたのは日本向けのサービスだったかも知れない。
[インターネット(字幕)] 5点(2024-04-20 17:15:45)
2.  リゾートバイト 《ネタバレ》 
2chオカルト板発祥の怪談をもとにした映画である。永江監督のこの手のホラーはシリーズ化していたが、今回の劇場予告編に「ネット怪談最終章」と書いてあるということはもうネタ切れで終わりになるのか。 場所はエンドロールに出ている通り瀬戸内海の白石島(岡山県笠岡市の笠岡諸島)とのことで、特に義理はないが紹介しておくと、旅館は名前を変えているが「白石島旅館 華大樹」、食料品店「あまのストア」も実在する。また地元民役として、オーディションを経た地元キャストが多数出演しているようだった。  原話を読んだことがなかったので一応内容を確認したが、題名の話だけでは長編映画にならないのを、その他の怪談も組み合わせて充実させている。具体的には「リゾートバイト」をメインにして、主人公が御堂に籠る場面から「八尺様」を前面に出す形に作っている。また旅館の2階に上中下の引出しがあったのは、その場面で文字が見えた「禁后」という題名の別の怪談に入っている要素だった。 ほか映画宣伝にある「絶対に先が読めない」展開を意図して、原話にない趣向をラストで加えた形になっている。それ自体は「きさらぎ駅」と似たような印象もあって感心するほどのものではないが、終盤の最終決戦の開始に当たり、登場人物の誰が誰だかわからなくなるのは出演者の演技力が試される場面だったかも知れない。その後のコメディ風味は結構いい味を出していたので嫌いでない。 なお主題歌は不気味な曲で好きともいえないがホラーのエンディングにはふさわしい。全体的に娯楽映画として悪くない感じだった。  出演者として、主演の伊原六花という人はよく知らなかったが、2024/3/16の大相撲中継にゲスト出演したのを見て(終盤のみ)なかなか面白い人だと思っていた。一見あまり特徴のない顔かと思っていたが、今回見るとかなり個性的で魅力的な表情をしてみせる人だった。終盤この人がヒーロー的に大活躍する場面も作ってあるのは大変よかった。
[インターネット(邦画)] 6点(2024-04-13 15:45:03)
3.  “それ”がいる森 《ネタバレ》 
大人が真面目に見るものではない。点数は子ども向け映画という前提で甘くしておく。 題名の「森」(こんもりした山の意)のモデルになったのは福島県に実在する「千貫森」だそうである。ここは実際にUFOの目撃例が多いとのことで、地元の福島市飯野町では「UFOの里」を地域の個性として売り出している。エンドロールに出ていた「福島市UFOふれあい館」は市の施設として公開されており、また2021年には「国際未確認飛行物体研究所(UFO)研究所」も開設されたとのことで、そのPR映画として作ったとすれば子ども向けにできている理由はわかる。ちなみにその研究所は雑誌「ムー」(映像中にも見えた)の協力を得ているとのことで、この映画もホラーというよりオカルト映画と思えばいいかも知れない。従ってSFでもない。 ドラマ部分はいわば「学校の怪談」のようで、大人はわかってくれない系の展開が苛立たしいのは前世紀の遺物のようでもある。しかし子ども向けにしては刺激が強すぎで、特に宿題していただけの児童(川瀬麻友ちゃん)が犠牲になったのは痛々しい。他にも帰って来なかった連中がいたにもかかわらず、最後が晴れやかな雰囲気で終わったのはかなり適当な感じだったが、子ども向け映画として型どおりとはいえる。 なお宇宙人は福島市飯野町にしか来ないとしても、クマの方は全国的に警戒が必要だ。冬眠しないクマがいる場合もあるそうである。
[インターネット(邦画)] 4点(2024-04-13 15:45:01)
4.  事故物件 恐い間取り 《ネタバレ》 
原作を読んでいないので比較できないが、実話とされているものをベースに映像化した感じは出ていて、全体的な印象としては悪くない。芸人の業界らしいドラマもあり、ホラーにしては特色ある劇中世界ができている。  映画的な趣向としては、物件を渡り歩くうちに悪しきものがついて来て、4軒目に至ってヤバさが頂点に達する形になる。クライマックスの対決は盛り上げ過ぎのようだったが、もとの怪談本をそのまま再現したのでなくホラー映画として作ったわけなので仕方ない。最後は一応ハッピーエンドかと思わせておいて、ホラーらしく後味の悪さを加味した終幕になっている。 好んで事故物件に住むなどろくなことにならない気はするわけだが、原作者本人は特に支障なく今に至っているようなので、必ず何かヤバいことになるわけでもない。この映画でもラストの展開からすると、仮に周囲で何かヤバいことが起きたとしても、結果的にこの二人は何とかなるのではと思ったりした。ついて来ていた銀河帝国皇帝のようなのは二人の生命を縮めるものかも知れないが、場合によっては守護する側に回ることもあるかも知れず(「恐怖新聞」の配達人のように)、また笑いで二人の生命が延びれば相殺して余りが出る可能性もある。  その他現実問題として、外国人は事故物件でも気にしないことがあるそうなので、住む人の心持ち次第という面は確かにある。映画では一般の不動産屋に担当者がいたようだが、現実世界では事故物件を専門的に取り扱う事業者もいるようで(高齢者と外国人向けなど)、そのような動きを通じて物件の適正な流通が促されるのはよいことだ。実在の事故物件公示サイトの運営者もそのようなことを言っていた。 ほか出演者では江口のりこさんが魅力的な登場人物になっている。メイクアシスタント役の奈緒という人もいい感じを出していた。
[インターネット(邦画)] 6点(2024-04-13 15:44:59)
5.  ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘 《ネタバレ》 
あまり真剣に見るものではないが、どうせ昭和の怪獣映画だと思えばそれなりに見ていられる。 エビとガの登場にはあまり必然性が感じられないが、劇場パンフレットに書かれた「陸海空の三大怪獣」というコンセプトで数を揃えた形らしい。新顔のエビラはハサミに大小があるが、小さい方で人間を串刺しにして食っていたので使い分けがあるようだ。終盤モスラが飛来した場面では、ゴジラとの間で何らかのコミュニケーションがあったように見えたが、劇場予告ではここでモスラが「来ちゃダメッ」と言っていたことになっていて女性的なイメージが持たれている。 場所が南洋の島なので当時の日本各地の風景を見られるわけではなく(ロケ地の海岸は別として)そういう面白がり方はできない。しかし最後に島が崩壊して沈下する場面は迫力があって、この辺はさすが日本特撮だと思った。  政治的な主張としては、大学生の反戦・反核は当時の定番として、悪の秘密結社のような敵はどういう団体だったのか不明瞭だが、呼称に「赤」が入ることから当時の東側陣営に連なる組織と思うしかない。「革命」という言葉を特別視していたようだったが、本来の革命というのは民衆が圧政に耐えかねて、または外部勢力の扇動で起こすものであって、劇中でやっていた核開発の延長上にあるものではないだろうと言いたくなる。しかし当初は革命の美名のもとに発足しながら、この頃には核兵器で世界平和を脅かす存在になっていた東側勢力を皮肉ったとも取れなくはなく、戦後の東西対立の中でゴジラを「中立」の立場に置こうという考え方だったかも知れない。 登場人物としては、水野久美さんはこの時期になってまたこんな村娘役かと思うがそこはプロである。露出の多い服装で藪や岩場を動いて傷だらけにならなかったかと思うが余計なお世話か。小美人は前と違う双子が出演して同じ声質でのハーモニーを聴かせている。外見は「謎の円盤UFO」(1970~英)のエリス中尉風だった(どことなく未来的)。
[DVD(邦画)] 5点(2024-02-24 20:13:05)
6.  アイ・アム まきもと 《ネタバレ》 
「おみおくりの作法」(2013英伊)のリメイクとのことだが、撮影場所からすれば「おくりびと」(2008)の成功に味をしめた制作会社が二匹目のドジョウを狙ったように見える。変な題名は我の強い人々には受けるかも知れないが、自分にとっては見る気を減衰させる効果しかない。 内容的にはコメディ要素らしきものが多いが笑えない漫才のようで寒々しく、また本人の性格特性を言い訳にして、お役所だから非効率も許されるはずという前提で話を作っているのは安易な印象がある。都合よく人を死なせて泣かせるのは薄っぺらいドラマというしかない。  物語に関しては、世評によれば結構忠実なリメイクらしいので、この映画に対していちいち突っ込みを入れる気にならない。もとからこういう変な話だったということだ。 一つ書くと、死を語る映画であれば死者よりむしろいまを生きる人々を前向きにさせるメッセージがあってもらいたいと思うが、それがこの映画では「頑張った」だったのか。オウムが言っていたように日々の自分を励ますため、あるいは主人公のように最後にこの言葉が言えるよう、日々悔いのない働きをしようということならわからなくはないが、何にせよ最後の締めの言葉だというのが後向きの印象を残す。 未来に向けて生きていこうと人を元気づける映画でもなく、どちらかというと人生後期の人々向けに、そろそろ自分の最後を意識しておけ、という終活映画のように思われた。今の時代にふさわしい。  以下関係ないが個人的な思いとして、自分としては劇中の元炭鉱夫のように、死んだ後はもうどうでもいいので死体を適切に処理してもらいたいとしか思わない。もう死んでいるので葬式に人が来なくても困らないが、しかしそれでも自分の死を悼んで来てくれる人がいるとすれば有難いと思う(心霊になっていれば泣く)。故人を思う生者の気持ちは大事にしなければならず、自分もまた生きている限りそのような気持ちは持っていたいという程度の感慨を催す映画ではあった。特に同じ時代を生きて来た人が先に行ってしまうのはつらいものがある。
[インターネット(邦画)] 4点(2024-01-20 19:55:30)(良:2票)
7.  忌怪島/きかいじま 《ネタバレ》 
ホラー映画として怖いところはない。話の前提として、科学技術と心霊は「真逆にある世界」ではないということらしいがだから何だという感じである。いろいろ理解困難なところが多いが、要は島一つをまるごとデータ化して作ったVR世界が「あの世とこの世」の出入口になってしまったということか。鳥居はどっち側のものかとか、この人物はこの時点でどっちにいるのかといった謎解きの仕掛けがあるかも知れないが、どうせわからないので考えるのは放棄した。 ただ少なくとも島の名前が「境島」なのは2つの世界の境界という意味と思われる。最後に2人(+1人)がフェリーで出て行ったのは、国内他地域の言い方だと補陀落渡海のようなものだろうが、撮影地の言葉でいえばネリヤカナヤに向かっていたのであって、それは死後の世界または理想郷(死んだ父親のいる場所/主人公の望むべき世界)なのかとは思った。 その上でさらにホラー要素として撮影地で実際に伝わる呪いの伝承をからめた形だが、複数要素の接合によってまとまりのない印象になっているのは前作などと同様だった。当然ながら物語として共感できるものもない。  その他個人的な感覚として、何とはいわないが非常に嫌な感じの成分が全編にわたって含まれている気がしたが、あくまで個人的な感覚なので他の人々が何とも思わなければどうせ意味はない。 登場人物に関しては、最初に伊藤歩さんが重要人物っぽく出たので期待したがすぐ顔が見えなくなってしまった。村シリーズのレギュラーだった「秋奈」は突撃YouTuberを卒業してしまったらしい。個人的には見どころが多くなかった。
[インターネット(邦画)] 3点(2024-01-06 10:14:49)
8.  島にて 《ネタバレ》 
山形県の離島・飛島で2018~19年の1年間に撮影されたドキュメンタリーである。季節ごとの自然景観や家々の様子が映されていて、特に海の向こうに鳥海山が見える映像が多く、海を隔てて鳥海と相対する島との印象を出している。また細かいところでは魚を模した盆飾りを映したのが目を引いた。 登場する人々はみな温和な感じに撮られていて和まされる。島の現状としてはいろいろ大変だが、その上で今後は何をどう考えて何に期待するのかを問う映画になっていて、最後は少ししんみりさせられた。 なお共同監督の田中圭氏は対談動画など見るとなかなか感じのいい人のようで、映画の中では80歳の漁師の人物に「圭ちゃん」と呼ばれていた。  島の現状としては当然ながら厳しいものがあり、今までのように漁に出て、あるいは裏山で畑を作るといったことが高齢のため続かなくなってきている。最後の中学生も、その中学生に漁師になれと言ったのも実は外来者の一家だった。親の生業を継ぐなと言われるのは農山村でも同じようなもので、また都市部に家があるのも山村住民などではあることだろうが、離島であればなおさらだという気にさせられる。漁業するにも島に住む必然性はなく、酒田に住んで漁に出ていることが多いらしい。 新しい動きとしては「合同会社とびしま」というものがあり、バーベキューイベントはこの年限りで終わったようだが、地元報道によれば簡易水道の管理やIT技術を使ったプロジェクトにも取り組んでいるらしい。最近は東京都の離島・青ヶ島出身の人も所属しているようだった(2023.9.1山形新聞記事)。  今後のことに関しては、そもそもこんな場所に人が住む必要などあるのかという極論も出そうだが、しかし山に人が住まなくなればクマが降りて来るように、島に人が住まなくなれば外敵が入り込む恐れもある(日本海側は昔から危ない)。また観念論になるが、学校の場面で出ていた憲法第22条第1項の居住・移転の自由の広がりを維持するためにも、従来の居住地を捨てないようにしたいという考え方はありうる。 この映画としては、要は昔からの地域社会を維持しようとするよりも、合同会社のように外から来た人々を含めたコミュニティを作っていけばいいということか。実際住むとすればここに生まれたか、その他何らかの理由でここを特別な場所と感じる人々ということになるが、一度外に出た人々が戻るのもいいとして、合同会社のメンバーには地元の大学卒の人もいたようで、地方の大学の存在がこういう場所に目を向けるきっかけになることはあるかも知れない。 何にせよ若い人々の「やってみたい」(前掲記事)に期待しようということだ。悪いことばかりとは限らない。
[インターネット(邦画)] 7点(2024-01-06 10:14:45)(良:1票)
9.  青ヶ島の子供たち 女教師の記録 《ネタバレ》 
東京都の離島・青ヶ島について極めて誠実に作られた映画である。この映画は1955年だが、少し新しい青ヶ島映画としては「アイランドタイムズ」(2006)もある。 青ヶ島の場面はどの程度が現地での撮影だったのか不明だが、空撮は少なくとも本物で、また船着場は現在の三宝港の場所らしく見える。方言については「おじゃる」「たもれ」といった古式ゆかしい言い方や「…だら」「かんも」といった特徴的な言葉が出ていた。 住民の暮らしに関しては「酒と喧嘩と神拝み」を死ぬまで繰り返す島だと言われ、実際に「牛メを売ってまで島酒を飲」みたい男も出ていたが、これで島全部を貶めるでもなく角を丸めた感じになっている。ただし巫女だけは目の敵にされていたようで、これにより最後は神頼みでなく人間の意思の力に助けられたという物語を作っていた。東京(港区白金)の人々の善意が実ったラストは、日の丸で万歳というのが時代錯誤的ではあるが正直感動的で、これこそ日本だと思わされた。なおタメトモの件がどうなったのかは不明だった。 個別の人物としては、東京の「鉛筆小僧」の父親は明治生まれらしく不愛想で傲慢なパワハラオヤジかと思ったが、外見がそうだというだけでちゃんと人の情を持っていることが後でわかる。娘にも嫌われていなかった。  ところで劇中では村長の長女だけが東京の大学を出て本土での活躍が期待されていたが、他の若年層は島に住み続けることに誰も疑問を感じていなかったようで、これが昭和30年頃の普通の感覚だったかも知れない。 主人公が「こんな島、海の底へ沈んでしまえばいい」と言ったのはさすがに言い過ぎで、天明の大噴火により生存者が八丈島に避難した後、約40年を経て「還住」を果たしたという苦難の歴史は知られていなかったのかと思わされる。しかしこの映画としても、一度は島を出た人々がまた戻り、外部での知見や人のつながりをもとにして、島をいい方へ変えていくことを期待していたのかも知れない。今はますます人も減って大変だろうが、これからもずっと人の住み続ける島であってもらいたいと他人事ながら願っている。  その他映画と関係ないが近況として、青ヶ島でも2020年から光ファイバーケーブルによるブロードバンドサービスが開始され、人の行き来は楽でなくとも情報通信には支障なくなったとのことだった。今は島出身・在住の人物によるYouTubeチャンネルがあったりもする。 また現在はどうなったかわからないが、新型コロナウイルス騒動の前は外国人観光客が変に殺到して困ったこともあったらしい。何かと人々の憧れを誘う島なので来島者が絶えることはなさそうである。
[DVD(邦画)] 6点(2024-01-06 10:14:42)
10.  先生!口裂け女です! 《ネタバレ》 
前に見た「スマホ拾っただけなのに」(2019)と同じ監督なので、この映画も台湾映画「報告老師!怪怪怪怪物!」(先生!かかか怪物です!)の真似かと思ったが中身は違っていた。実際に題名通りの台詞もあったのは笑ったが、後の方になると「先生」の意味が変わって来る。ジャンルとしてはホラーというよりコメディであって終盤にはアクション場面もある。 口裂け女に関しては、最初はその辺の住民とどこが違うかと思わされるが実は真の口裂け女であって「私、きれい?」の台詞もちゃんとある。もともと口裂け女は三鷹・三軒茶屋・三宮といった「三」のつく場所に出やすいと言われているが、この映画でも主人公は東京都三鷹市に住んでいて、名字がミカミだったのも三上とか三神のつもりだったかも知れない。また走るのが早いので原付では逃げきれないとの伝承があるが、その原付も映画の構成要素として使っている。  物語としては、特に考えもなく悪事に関わっていた高校生が自業自得で危機に陥ったが、先生のおかげで助けられて心を入れ替えた話になっている。序盤はワルぶってイキがるクソガキ連中が苛立たしいが、最終的には微笑ましい青春映画になっていて和まされた。また終盤の戦いでは先生の大活躍がものすごく格好いいので感動した。 主人公の家庭は一人親だったが、ものわかりのいい片親だけでは家庭教育が行き届かなかったクソガキを、先生が強烈な手法で矯正してくれた形になっている。また先生が去った後は姉が年少者を導く存在になったのかも知れない。 今回の件で先生が三鷹を去らねばならなくなったのは寂しいことだが(千葉県木更津市に移転?)、ちゃんと仕置人の仕事は完遂していたようで笑った。今後の活躍を期待したくなるヒーロー映画でもあった。 登場人物としては転校生が愛すべきキャラクターで、主人公の姉もなかなか格好いい姉貴になっている。口裂け女も愛嬌のある人物で大変結構でした。
[インターネット(邦画)] 7点(2023-12-02 14:34:24)
11.  シン・仮面ライダー 《ネタバレ》 
今回はオープニングで東映のロゴが出る。仮面ライダーは対象年齢が自分より少し低かったので、リアルタイムではあまり熱心に見ておらず思い入れもそれほどない。 アクション場面では、序盤で崖の上から飛び降りるとか唐突な場面転換などは元の雰囲気が出ているが、その後は映像効果を多用した独自のダイナミックな映像を作っている。最後は単なる取っ組み合いの喧嘩になっていたが意図があってのことと思われる。  敵組織の目的が「人類の幸福探し」であるからには、「幸せって何?」を問う映画かと思ったら「最大幸福」は放棄したとのことだった。昔あった「最小不幸社会」の再現かと思ったが、しかしそれより進んだ現代的感覚として、不幸な人々の救済のためにはその他大勢にどれだけ負担や犠牲を強いても構わないという価値観のようでもある。その上さらにこの映画では、絶望した個人を敵組織が適当に選抜して強大な力を与え、当該個人の趣味嗜好で勝手に幸福を追求させることにより、その他大勢どころか社会全体に破滅的被害が及ぶ恐れが生じていたらしい。いわば不幸最強社会ということで、善なる意図を標榜しながらも、まるで社会の破壊自体が目的になっているかのようなのは嘆かわしい。 出て来た連中はほとんどテロリストだが、うち0号の男だけは本当に人類の幸福を目指していたらしい。しかし政府の男が言ったように「絶望の乗り越え方」は個人により違うのであって、全部まとめて処置すれば問題解決というのは間違っていることになる。最後の戦いで本郷は、社会の破滅を阻止すると同時に個人の救済にも手を貸していて、それが常に可能とも限らないがそういうことを彼は目指したのだと思われる。幸も不幸も人によって処方箋は違うはずだということだが、ちなみに「幸せって何?」に関してはルリルリの話がけっこう本質をついていた。追伸が泣かせる。 もう一つ、この世界で信じられるものがあるとすれば組織でも主義主張でもなく個人の単位でしかないのであって、そのためには誰をどこまで信じるかの見極めが大事と言っていたようでもある。ルリルリと一文字は本郷を信じ、また政府の男らをも個人としては信じようとしていたらしかった。ほか本郷が「自分の心を信じる」と言ったのは、自分がもともと持っていた良心の根底部分をどういう状況下でも失わないと決意したのかと思った。信ずべきもののわからない人類社会で、個人の心の持ち方を提言しようとした映画と取れる。 最終的には本郷の誠実さと一文字の反骨精神をもって戦うヒーロー像が実現し、とりあえず当分このまま戦いが続くらしいが、仮にこれが1年間のTVシリーズだったとすれば、最終回で人工知能が何をするかが問題になるのではないか。ロボット刑事がずっと見ていて人間の行動に関心を持ったりしていたので、その観察結果をもとに人工知能が本郷と同じく自分を変える結末だったらハッピーエンドになるかも知れない。それまでは見るのもつらい戦いになりそうだが、一文字が陽性で打たれ強そうな男なのは救われる。  以下その他雑記: ・全体的にシリアスで笑わせる場面は基本的にないが、大阪でいうとされる「知らんけど」のような台詞を浜辺美波さんが言っていたのは、制作側と若い世代の断絶を自虐的に表現したようで微妙に面白い。古い世代の常識?とされた赤いマフラーはけっこう感動的な使い方をされていた。 ・SHOCKERのSがSUSTAINABLEなのは今っぽいので笑った(偽善的)。浜辺美波さんもここは憶えにくかったのではないか。 ・キカイダーとロボット刑事は、日本語文中の英語を機械的に英語の発音に置き換えればいいと思っていたようで、各国事情に配慮する気のないグローバルな雰囲気を出している。 ・個々の改造人間についてはコウモリ→ウイルス→科学者、パリピ+薬物?といった現代的事象もあるがハチ→女王様はわかりやすい。それぞれの絶望の理由は必ずしも明瞭でなかったが見る側で察してやれということか。三種混合は単なるバカ(哀れな奴)。 ・一文字はかつて仲間を失う経験をして絶望し、自分は孤独が向いていると思い込もうとしていたが、今回の件でまた仲間を求める方向に転換したようで、この男の救済にも本郷が手を貸したことになる。政府の男らは機器類のメンテナンスその他に欠かせない連携先であり(なんと米軍まで動かしていた)、どこまで信じて協力できるか見極める力を一文字は持っている。 ・「シン・ゴジラ」「シン・ウルトラマン」に続いて体臭の話題が出ていたが今回は男だった。ニオイフェチとかは関係なく彼が人間であることの証拠と思われる。
[インターネット(字幕)] 9点(2023-11-11 15:10:57)(良:1票)
12.  漁港の肉子ちゃん 《ネタバレ》 
人に勧められたので見たが、勧めたくなる気持ちはわかった気がする。子どもの生育過程に必要なものを惜しみなく提供する人物像と、自分の存在を肯定できた子どもの姿に反感を覚えそうな人々は見ない方がいい。 事前に絵面を見た限りでは、こんな人物が近くにいれば煩わしい(暑苦しい)だろうとしか思わなかったが、実際は意外に嫌悪を感じさせないキャラクターができている。また映画紹介を読むと社会性が強そうで敬遠したくなるが、見れば意外に嫌味を感じない。暗い場面や寒そうな場面もあるが基本は陽性の物語であって、ちゃんと笑わせて泣かせる作りになっているのはさすがと思わせる。登場人物は年齢性別境遇が自分と違うので直接共感する立場にはないが、問答無用で感情を動かされるものがある。 またアニメらしいファンタジックな作りで可笑しみを出しているのは楽しめる。かつて死ぬ気で働いたという仕事が奇怪なキノコの収穫だったのは子どもの想像の世界だからということか。またその辺の生物とか神社が言葉を発するのも文学少女的な性格の表れかと思うが、あからさまに人の声を当ててしゃべらせていたのが変でユーモラスに感じられる。お嬢様風の同級生の自宅が領主貴族の居館のようだったのはふざけすぎだ(笑)。 主人公の少女は小学5年生の割に達観したところがあり、これは遺伝的資質のせいかも知れないが反面教師が側にいたからとも思われる。またその反面教師の人徳のせいか、頼れる人物のいる生活環境ができていたのも救われる。親はなくても愛はある、ということも含めて、不遇なようでも実は幸運のもとに生まれた子どもだと思っていいかも知れない。 最後の出来事はどう評すべきか困るものもあるが、少なくとも事前にちゃんと祝いの品が用意されていたという点は感動的で、これは神様の特別な計らいだったと取れる。劇中人物の好みそうな品で2人を祝福しようと企んだらしく、エロ神社といわれていた理由は説明されていなかったが、特に女性を贔屓する神様だったからだと思っておく。
[インターネット(邦画)] 8点(2023-10-14 17:01:44)
13.  霊的ボリシェヴィキ 《ネタバレ》 
序盤で「禁句」を言った奴がいきなり殴られたのは笑った。世間的にはそれほど評判が悪くない映画らしい。 同じ監督の「恐怖」(2009)と似たようなものかと想像していたら姉妹編だそうで、これの方が本来の姿とのことだった。題名は昭和(戦後)に流行した革命志向との関係を予想させるが、この映画自体に回顧趣味はなかったようで、どちらかというと皮肉・揶揄の姿勢と思われる。 題名の意味として、一つは宗教の否定ということが考えられる。劇中集団の基本認識として、「あの世」はないが「化け物」のいる霊界のような場所はあるということのようで、両者の何が違うのかはわからないが、例えば「あの世」というのがキリスト教などの天国、仏教の浄土、あるいはご先祖様のいる場所など民間信仰的なものを含めた安楽の地のことだとすれば、これを宗教的な観念として否定した上でなお「化け物」のいる霊界は存在すると言っていたのかも知れない。いわば天国はないが地獄はあるという考え方のようでもある。 題名の意味としてはもう一つ、「恐怖」に関わることもあったかも知れない。例えば、水害や火災など非業の死の間際に恐怖を感じると、安らかに死ぬことができずに「化け物」のいる霊界(地獄)に行ってしまうということなら、わざと恐怖を感じさせて地獄に送ることもありうるわけで、この点を全体主義下の恐怖政治に関連づけているということか。 ほか登場人物が心霊の正体を「思念」と断じる場面もあったが、これは口調からすると思想統制の一環であってそのまま信ずべきものではないかも知れない。あくまでこの連中の思想はこうだというだけである。  映画の構成としては、廃工場のような場所(業務用大鍋あり)で人々が順に体験談を語る百物語のような趣向になっている。個人的には霊媒師の話が、見た瞬間に後悔するという点でネット発祥の著名な都市伝説を思わせて印象的だった。そこからまた別方向につながっていったのは話を逸らされた感があったが、二次元的に見えるというのは確かにそういう話はある。 物語的には、主人公に何が起こったかをめぐるミステリーのようだったがよくわからない(すり替えられたこと自体はわかる)。登場人物では小柄な運営スタッフの人が何をするかと思ってずっと見ていた。こういう人も昔なら革命の闘士をやっていたかも知れない。 前記「恐怖」と同じく面倒臭くてつき合いきれない印象もあるが、見る所が全くないわけでもなかった。
[インターネット(邦画)] 5点(2023-10-07 14:25:06)(良:1票)
14.  泣く子はいねぇが 《ネタバレ》 
秋田色の濃い映画である。海浜景観に日本海沿岸の風情があり、秋田名物ババヘラアイスも出たのは感動した。地方ではあるがみな現代に生きる日本人であり、必要以上に田舎臭く見せることもないのは秋田出身の監督として当然といえる。 男鹿の「なまはげ」に関して、劇中では「なまはげ保存会→存続の会」会長の男が全体を一人で引っ張っている印象だったが、実際は多数の集落単位で個別に行ってきたものらしい。もともと地元の青年団のような人々がやっていたのだろうから多少の不祥事があっても変でなさそうだと思うが、現実に2007年末の悪質な事件が全国に知れ渡ってしまったことがあり、この映画もそのことが発想の原点にあったかと思われる。行く先々で酒を注がれて飲まねば済まない地域社会の縛りの中で、主人公のような腑抜けが個人的方針を通すのが難しいのは間違いない。  帰郷した主人公を直接責める者はあまりいなかったが、あからさまに攻撃して来たのが会長の男であって、これは主人公のせいというより会長自体の人間性による。「わがんねんだよおめだぢが」と言っていたがわかる能力がないのであって、自分の決めた枠に人間をはめ込む以外の観念がなく、枠から外れた者には容赦なく憎悪を叩きつける。本人は善意と信じているので手に負えず、指導力があると思われて持ち上げられるのでどこまでもリーダー然としつづける。個人的には最悪と思うがこれも人間なのでどうしようもない。 一方の主人公は極めて善良な男だが、眼前の問題にまともに向きあえない人間だったようで、今になって向き合うにしても普通人のレベルとの差が開きすぎている。保育園での姿などはあまりに見苦しく、おめあど死んだ方いいんでねが(…秋田方言になっているか不明)と言いたくなったが、現に生きている人間が簡単に死ねるわけもないのでどうしようもない。序盤に出た「シロクマ効果」との関係でいえば、最後の出来事を経て心が入れ替わる可能性も表現されていたかも知れないが、安易に希望を語る気にもならなかった。 解説によると「父性」がテーマだそうだが主人公があまりに不甲斐なく、とても父性を語る域に達してないようで素直に受け取れないが、しかしそういう感想自体が劇中会長に近いかと思うと何ともいえなくなる。自分としては会長よりは主人公に近い側と感じたのは間違いない…というよりかなり近いかも知れない。結果的に自省させられた映画だった。  ほか周辺人物に関して、「運動会」ビデオを見た兄の発言は不明瞭だが孫を見せたかったと言っていたのか。事件のせいで兄が結婚の機会を逃したとすれば、いわば会長と並ぶ直接の被害者だったことになる。また親友も主人公の任務懈怠のせいで破滅したとすれば被害者だろうが、悪友ながらも最後まで主人公の味方だったらしい。社会にはこういう奴もちゃんといるということで、自分が神様の会長などとは大違いだった。 出演者について、吉岡里帆は個人的に最近見ていなかったが、こういう顔をしてみせる人だったかと改めて思った(顔自体はどんぎつねと同じだろうが)。また序盤だけだったが古川琴音という人も目を引いた。仲野太賀には引き続き期待する。
[インターネット(邦画)] 8点(2023-09-30 10:51:07)
15.  野生のなまはげ 《ネタバレ》 
低予算映画ということを前提としての評判は悪くないらしい。以下は個人の感想ということで。 ナマハゲを含む日本の「来訪神」は2018年にユネスコ無形文化遺産に登録され、ナマハゲの地元秋田県でも人口減少と少子化・高齢化の中で行事の存続に努めているが、その「来訪神」をこの映画のように、家畜や愛玩動物の扱いで「飼う」などという発想は非常な違和感を覚える。同じくユネスコ登録のアマメハギが「ゲゲゲの鬼太郎」に出たりしていることもあり、妖怪の扱いであればかろうじて許容できなくはないが、しかし最低限、人智を超えた存在でなければならないのであって、悪ガキや悪徳業者に翻弄されるなどという展開は著しくイメージを毀損する。秋田での協力は得られなかったと監督が言っていたようだが(宣伝協力として秋田県東京事務所の名前が一応出ていたが)、現に「来訪神」の存続に努めている立場からは協力できかねるということなら当然ありうる。 監督はもともとオオカミなど野生動物と少年の交流を描きたかったという話もあるようだが、その交流の相手をナマハゲに変えたのは、奇を衒ったようだが適切とは思えないというのが個人的見解である。  その他物語については要は夏休みの出会いと別れのドラマだが、笑うところや泣くところは特にない。ただ人が落ちる場面に力が入っていたのがよかったのと、「秋田美人」の登場には感動した。秋田美人役の六串しずかという人(171cm、長身)は盛岡市の出身で、岩手を拠点にモデルなどの活動をしているとのことで本物の秋田美人ではないが、しかし秋田ではないというだけのことで特に問題はない。佐々木希にわざわざ登場してもらう必要はなかった。
[DVD(邦画)] 3点(2023-09-30 10:51:04)
16.  河童のクゥと夏休み 《ネタバレ》 
うちの近所にも昔は河童がいたことになっていたかも知れないが今はいない。個人的にも河童に特に思い入れはない。 この映画の河童は野生動物のような存在らしいが、知能があって人の言葉を話すからには人間としても軽くは扱えない。ただ河童だけでなく犬やカラスも人並みの知能がある設定なので、対等な生き物として扱うべき対象はさらに広いことになる。人智を超えた能力としては言語によらない意思疎通の方法を持ち、さらに人類文明を超越した存在ともつながる立場だったようで、かえって人類の方がそのような世界から疎外された種族ということになる。 劇中河童は現代の文明社会で人間の保護を必要としていたが、子どもながら人格がしっかりしていて自立心もあり、見るからに哀れっぽい存在には描かれていないのがいい。非力そうに見えてちゃんと相撲が強いのも侮れないが、場合によって破壊的な能力を発揮するのはやはり人間として畏怖を感じさせる存在ともいえる。 また自然環境に関する問題意識についてはよくある普通程度の感覚だろうが、この映画では最初を江戸時代まで遡ることで、現代の都市開発だけでなく大規模な水田開発も自然環境に影響を及ぼしたとの認識が示されていた。ちなみに「やんばる」は2021年7月に周辺の他の地域とともにユネスコ世界遺産に登録され、いまだ米軍の訓練場に隣接していながらも、保全の条件は改善されていると思われる。しかしその遺産登録もそれ自体が別に強制力を持つわけでもないようで、何より守ろうとする人間の意思が大事なのだろうが、今後の国際情勢や経済・科学・軍事その他の都合でどう変わるかわからないと思えば、どこまでも人類など信じられないという思いはある。人類社会に上辺の社会正義はあっても良心は存在しないので、劇中河童には何とかうまく生き延びてもらいたい。  物語としては夏休みの出会いと別れということで、これまで特に主体性なく生きてきた少年に自立心が生まれ、初めて心の通じあう他者を認識する機会になったということらしい。ラストで河童と少女はそれぞれ新しい生活環境での暮らしを始めていたが、少年ともまたつながることのできる可能性を残していたのは救われる。 なお製作に当たって遠野市の後援を得たにもかかわらず、物語上は遠野に河童はいないと断言した形になってしまっていたが、座敷童子はいたのでまあいいかともいえる。その座敷童子の歌には少し心を打たれた。他にも心を動かされる場面の多い映画だった。
[DVD(邦画)] 7点(2023-09-30 10:51:02)
17.  いつか輝いていた彼女は 《ネタバレ》 
映画と音楽のコラボレーションによる映画祭「MOOSICLAB 2018」への出品を前提に制作されたもので、当時活動中だったバンド「MINT mate box」がそのままバンドとして出演して主題歌も提供している。またボーカルの人がそのまま劇中の重要人物という設定のため、本人の高校時代の悪業を暴く話になってしまっているのが変である。別に実話でもないだろうが。 監督の前田聖来という人は「女優出身の新鋭監督」と紹介されているが、個人的にはAKB48出演の学園ゾンビドラマ「セーラーゾンビ」(2014)で、演者として強い印象を残したので覚えていた。  まず苦情として登場人物とその名前が把握しにくい。また音量や発声のせいで発言が聞き取りにくいので何を言っているかわからない。35分なので甘く見ていたが、2回見てやっと内容がわかってきた気のする映画だった。 設定としては高校の芸能科とのことで、一般の共感を得ようとするには特殊な世界だが、もともと自意識の強い連中ばかりという理由にはなっている。主人公は地味に見えても実は何かと他人に羨まれる資質に恵まれていたようだったが、結局別方面に行ってしまった原因としてはその場の運のほか、「マホ」との違いは人間のスケールの差?、「詩織」との違いは上昇志向の差という感じか。確かに芸能やスポーツなど高校生の頃に決定的な差が出る世界もあるだろうが、その他普通人は高校時代が不遇だったからといって負け確定とも限らないので、主人公は腐らずに何か新しいことを発見してもらいたい。真面目すぎるのが問題なのか。 なおラストで「なつみ」と「佳那」もその後どうなっていたのか見たかった。「詩織」はクセモノ感が顔に出ていた。
[インターネット(邦画)] 4点(2023-09-09 10:11:09)
18.  コタンの口笛 《ネタバレ》 
撮影場所は主に千歳市内(支笏湖を含む)とのことで、ほかごく一部を札幌と白老で撮っている。劇中で「今じゃもうありもしないアイヌの風習を見せて」観光団体を呼んでいたという白老には、現在では立派な民族文化の拠点施設ができて多くの来場者を集めているらしい。 現代の出来事として、2021.3.12に日本テレビの番組でアイヌに対する侮蔑的発言があって問題になったが、この映画ではその言葉がそのまま台詞になっており、実際にそういう言い方はあったということがわかる。劇中発言によると当時の社会は前よりましになったとのことだが、それでもなお差別があることの背景には、差別者の個人的問題(劣等感の裏返し、ただし中学生レベル)以外に、世代の違いのせいで前時代の差別感情から逃れられない場合があることが示されていた。ほか民族差別とは直接関係なく、古い世代の権威主義に対する若い世代の反発が表現された場面もあった。 一方で社会制度については特に問題視されていたようでもなく、当然ながら義務教育は万人に対して普通に行われ、また失業保険といった社会保障も全国民に共通になっている。鮭を獲るのが密漁扱いだったことに関しては、先住民の権利を国家が奪ったと解釈されるのが普通??だろうが、これも社会の構成員が等しく共通ルールに従うことの表現とも取れる。まだ人々の間に差別意識は残っていても、社会制度はフラットなものができているとの認識だったようで、個人的感覚としても先日たまたま見た中米グアテマラの先住民の映画に比べれば、日本は極めてまともだと思わされた。 物語上のポイントになっていたのは、登場人物の中で最も強圧的で横暴な人間が何と主人公姉弟の親戚だったことである。集団の全体が善または悪なのではなく、集団内にも善や悪の個人がいて、さらにいえば個人の内部にも善悪が混在して時代により変化もしていく。そのような認識のもとで、殊更に集団間の憎悪を煽り分断を拡大するようなことをせず、次第に改善されつつある社会において「一人ひとりが強く生きる」ことの方が大事だ、というのが結論だったらしい。そういう考え方が現代においてどのように評価されるのかわからないが、個人的には普通に共感できる話ができていた。 なお監督としては、戦後の時代において「広い世界の中の日本の立場におきかえる事の出来る」テーマがこの物語にはあるとの考えだったそうだが、これは現代でも基本的に変わらないと思われる。終わることのない圧迫に耐えながら、劇中姉弟のように諦めない姿勢を貫くことが大事ということで、劇中の美術教員の言葉を日本全体として受け止めるべきだということになる。  その他個人的な見解としては台詞がほとんど東京言葉のため、特に若年層などはアイヌか和人かという以前にそもそも地方民とは思えない。その中で主人公姉弟はまだしも純粋で真直ぐな人物像ができていたが、この二人を迫害する同級生の底意地の悪い発言や口調はまるで地方民を侮蔑する都会人のようで極めて不快に感じられ、本来のテーマとは別に地方民としての共感を誘う映画になっていた。ちなみに主人公姉弟の母は秋田県由利郡本荘町(当時)の出身だったとのことで、その良き地方民の資質が姉弟にも受け継がれていたものと想像される。
[DVD(邦画)] 6点(2023-08-26 10:52:10)
19.  三大怪獣地球最大の決戦 《ネタバレ》 
三大怪獣+1が活躍する楽しい怪獣映画である。 洋上で船が襲われた時に、最初はクジラか何かが来たと見せておいて、実は後にゴジラがいたというのはフェイント感を出していた。またその後の横浜で夜空にキーンという音だけがして、やがてラドン(影絵)が見えて来た場面はなかなか迫力がある。今回初登場のキングギドラは、初回は卵のようなものに入って地球に来たことを再認識させられたが、一度は横浜→東京まで行っていながら(また東京タワーが壊れた)その後にちゃんと富士山麓の決戦場に出向いて来るのが筋書き通りの印象だった。 出現時点では一応恐ろしい存在のように見えても怪獣バトルが始まるとコメディになってしまう。ゴジラはやんちゃな悪ガキでラドンも同類、モスラはいい子(東京タワーを壊したこともあるが)というキャラクターになっていて、ゴジラがモスラにいろいろ言われてフン、バーカという顔をしていたのは笑った。真面目なモスラが地球生物の共通利害を説いたことで、結果的にゴジラとラドンも共感したかのような展開だったが、実際はモスラが一方的にやられていたのに腹を立てて加勢しただけのようで、モスラほど真面目な連中でもないと思われる。なおモスラは、防衛大臣が口にした核兵器の使用を回避するため尽力した形になっている。 ラドンはどちらかというと非力なイメージだったが、この映画ではゴジラを手ひどくやっつけていたのはなかなかやるなと思わせる。また一番弱そうなモスラの糸が意外に強力で、古風な表現でいえば「ほうほうのてい」でキングギドラが逃げていったのがざあまみろだった。  ドラマ部分では主人公兄妹の馴れ合い感が可笑しいのと、金星人が何事にも動じることなく「わたくしは金星人です」で通す人物設定に好感が持たれた。ラストの趣向は知らないで見たが、まるきりローマの休日だったので正直感動した(「ローマです」と言うかと思った)。 その他の話として、鉄筋コンクリートの大阪城や名古屋城ならともかく、現存天守の国宝松本城が全壊しないで済んだのは幸いだった。今回は松本市内での撮影もあり、映像中で女鳥羽川の橋(中の橋)の向こうに看板が見えた果物専門店は、歩行者天国の「なわて通り」(縄手通り、ナワテ通り)で今も営業していて、映像では店頭に天津甘栗が見えたが、今は観光客向けにフルーツのスムージーなども出しているそうである。昔の映画でもちゃんと現代につながっている。
[ブルーレイ(邦画)] 6点(2023-08-05 14:10:05)
20.  三大怪獣グルメ 《ネタバレ》 
バカ映画の巨匠・河崎実監督のバカ映画である。公開日が2020/06/06とのことで、本当にこの時期に劇場公開したのかと思うが、疫病の不安の中で見れば気晴らしになったかと思われる。 歴史的にみた三大怪獣といえば「三大怪獣 地球最大の決戦」(1964)のゴジラ・ラドン・モスラだろうが、海鮮丼という前提なら「ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣」(1970)の3怪獣のうち、カメが食えないのでタコにしたように取れる。また公式サイトによれば、もともと円谷英二監督が戦前に企画していたタコ映画の構想に触発されたとのことで、そのタコに監督本人の「いかレスラー」(2004)、「かにゴールキーパー」(2006)を加えた形になっているともいえる。  バカ映画といってもこのくらいになると特に変なところもなく、ちゃんとしたストーリーを備えた娯楽映画になっている。当初は登場人物の性格付けを不明瞭にしておいて、最終的に誰に肩入れすればいいかがはっきりさせていく形だったのは悪くない。うち悪役は、ラストに至ってもまだ「世界の破滅」を企んでいたのかも知れないが、世間では既に人間がミイラ化するという怪事件が発生しているのに同じようなことを考えるでもなく、どこまでも海産物に固執していたのはもう頭が変になっていたと思うしかない。昭和のTV番組「怪奇大作戦」の第24話を思わせる哀れで恐ろしい(笑)終幕だった。 また題名からすればグルメ映画ということもあり、登場人物それぞれ言葉を飾ったグルメ評論風の賛辞を連ねるのが空々しいが料理自体はまともなものを出している。食物だけでなく、協賛に名前の出ている「有限会社ニイミ洋食器店」(東京都台東区)のキャラクターが大活躍する展開だったのは、「プロを支えるプロの街 かっぱ橋道具街」へのリスペクトも感じられて少し感動した。同じく協賛で「岩下の寿司がり」の岩下食品株式会社(栃木県栃木市)も存在感を出している。  出演者としてはちゃんとアイドルも出ているが、例によって監督本人も顔出ししている(見なくていい)。ほか監督のお知り合いか何かわからない人々が大勢出ていて特にコメントする気にならないが、別映画で見たばかりという関係で一人だけ挙げると、「DAICON FILM版 帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令」(1983)のイブキ隊長役の人物が「イブキゲンゴロウ」役で出ていた。ちなみに主演の男に関しては「わかんなくて結構だよ」の表情がよかった(笑った)。
[インターネット(邦画)] 5点(2023-08-05 14:10:03)
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