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1.  EVA エヴァ(2011) 《ネタバレ》 
ロボット科学者のアレックスは十年ぶりに故郷に戻り、自律型子供アンドロイドの情動反応プログラムを研究する。モデルとなる子供を探していたら、エヴァという少女に出会った。愛らしく活発で、大人に臆せず、ずけずけと物を言う、個性豊かな少女だ。アレックスが兄の家を訪ねるとエヴァがいた。偶然にも兄の娘だったのだ。アレックスはエヴァをモデルに研究を進める。かつてアレックスと兄と兄の妻ラナの三人は大学で一緒に研究をしていたが、アレックスが大学を飛び出し、外国に行ってしまったという経緯があった。理由はラナを巡っての三角関係だったようだ。時代は未来で、家事を何でもこなす召使型アンドロイドは開発されているが、その割に住居や車、その他の道具類は旧態依然としている。低予算映画だからだ。最大のサプライズは、エヴァがアンドロイドだったこと。アレックスが投げ出した研究をナラが引き継いで完成させた。そしてエヴァは自分がアンドロイドであることを知らない。そんな馬鹿なと思う。食事したり、逆立ちしたり、風呂入って髪の毛洗ったり、スケートしたり、何もかも出来すぎではないか。ロボット工学のアレックスが人間と見紛うような完璧なアンドロイドなど造れるわけがない。そもそもその原型を造ったのはアレックスだ。そのアレックスが造った唯一の自律型ロボットの猫と比較してもテクノロジーが飛躍しすぎていて、整合性が取れていない。以後見る気が急激に失せた。映画の教訓としては、自律型アンドロイドは時として人間に危害を加える危険があるということと、過去の三角関係の清算は難しいということで、共に興味は引かれない。教訓の代償としてラナは転落死し、エヴァは初期化された。何もかもが虚しい。物語は淡々と進み、抑揚がなく、演出面に問題がある。冒頭でラナの転落場面を持ってきたところが唯一の取り柄だ。眼についたところといえば、プロセッサー作成のCGの美しさくらい。エヴァがアレックスとラナを結びつけようとしたのは、ラナの感情が埋め込まれていたからだろうか?ところで記憶を初期化する「眼を閉じたら何が見える」の暗号は、日常でも使う言葉なので避けた方がよいだろう。それに初期化されたとしてもそれがロボットの死ではない。記憶はどこかに保存されている筈だ。記憶があるからこそ、正常に対人関係が営まれるのだ。文系の人が脚本を書いたのだろうか?隔靴掻痒の感が残る。
[DVD(字幕)] 6点(2014-04-20 13:07:33)
2.  プリズン211 《ネタバレ》 
スペインの刑務所暴動もの。意外の拾い物だ。 物語の端緒は卓抜だ。翌日に勤務を控えた新任看守フアンが刑務所の見学に訪れ、天井落盤事故で頭を負傷する。そのとき不運にも暴動が発生し、ひとり監房に取り残されてしまう。生き残るためには囚人になりすますしかない。そう判断した彼は、機智とはったりで刑務所のリーダーに取り入り、脱出の機会を伺う。いつバレるのか、サスペンスが持続する。冒頭の囚人が腕を切って自殺する場面とあいまって、今後の展開を期待させる。実にうまい。 異国ゆえの物珍しさがある。文化や政治、生活習慣の違いによるものだが、予想外のことが多く、興味をそそられる。 ①刑務所の暴動が日常茶飯事である。囚人と看守の癒着も同様。②囚人達が、収監されているETA(バスク祖国と自由)のテロリストを人質にし、政府との交渉の切り札にする。ETAを殺すとETAの反発によるテロが予想され、政府が窮地に陥る。だから強力な切り札となるのだ。一方、囚人達はテロリストであるETAを憎んでいて、一触即発の関係にある。③囚人達の要求が、看守による虐待の禁止と、待遇の改善と至極全うである。囚人達にも一理あるのだ。④ファンの妻が、暴動の報を聞き、夫を心配するあまり、身重の身でありながら刑務所に駆けつける。日本人ではありえない。⑤刑務所を囚人の家族や関係者が取り巻き、準暴動状態になってしまう。それを看守らが警棒を使い鎮圧する。⑥政府の最終手段として、SWATに突入させ、囚人達を皆殺しにするという、非常に荒っぽい解決方法がある。 これらのどこまでが現実に近いのかは不明だが、ゴヤ賞8部門受賞したことからも、全くの絵空事とは思えない。スペインでは「社会派映画」なのかもしれない。 物語はどんどん予想外の方向へ進み、結末も慮外。フアンの妻との愛情、リーダーとの友情は「お約束」だが、○○は誰が予想しただろうか。ハイレベルの緊迫感が持続していくというよりも、物語の展開に唖然としながら観るといった方が正確。 日本やハリウッド映画の手法や展開に「飽きてきた人」が観るのには最適の映画だ。 ところで疑問だが、派手なパンツしかないという理由でパンツを穿かないで出勤するだろうか?身体検査があるわけでもないのに。
[DVD(字幕)] 8点(2013-09-11 16:01:24)
3.  蝶の舌 《ネタバレ》 
思春期にも満たない少年が主人公なのにエロス満載という不思議な映画。しかも反戦が主題。エロスと反戦はなじまないと思うが、文化の違いだろうか。終盤まで、「チップス先生さようなら」のエロス版と思っていたが、最後にどんでん返しが待っていた。全てはラストのための伏線だったのだ。 喘息持ちで、人見知りで、学校に馴染めない少年を優しく迎えてくれた先生。喘息の発作のとき、川の水で体を冷やして救ってくれた先生。蝶の舌やティロノリンコという鳥の生態を教え、自然への興味を開いてくれた先生。虫取網を買ってくれた先生。「蝶の舌を顕微鏡で観よう」と誘ってくれた先生。「本は心を豊かにする」といって「宝島」を貸してくれた先生。自由の大切さを説いて教壇を去った先生。少年と先生の心温まる交流が描かれる。少年の両親も先生を慕っていた。だが内戦が勃発し、共和派の先生が逮捕されると、保身に走った両親は思想転向し、広場で先生を面罵する。母は少年にも叫べと命じる。「不信心者!アカ!」意味もわからず叫ぶ少年。次の言葉は「ティロノリンコ、蝶の舌」だった。少年にとって両者は同格なのだ。 「あの世に地獄などない。憎しみと残酷さ、それが地獄のもととなる。人間が地獄と作るのだ」先生の語った通りの地獄が出現した瞬間、「空のベット、曇った鏡、虚ろな心」の世界が広がる。 少年はトラックの先生めがけて石を投げつける。残酷さを強調するための演出だが、やり過ぎだ。無垢な少年が命令されてもいないのに、昨日までの恩師に石を投げつけることはできないだろう。あえてやるなら石が当って血が出るくらい徹底した方がよい。それならキリストとユダに擬すこともできた。少年の親友ロケの父親も連行されてゆくが、前段階で少年とその父親の交流場面ばあればなおよかった。この場面、少年のガールフレンドのロケの妹の姿が一瞬しか見えないのは惜しいことだ。 愛と自由を教えてくれた恩師に対して裏切りと罵倒で応えなければ生きてゆけない残酷な現実。けれども少年の最後の言葉からは、裏切りや罵倒を超越した「希望」が感じられる。純粋さを失っていないのだ。 蝶の舌はゼンマイ状に巻かれ、普段は隠れている。ヒトも本心を隠すものだ。少年が蝶の舌を見ることはなかった。いつか大人になったとき、自由という甘い汁を吸うことができるのだろうか。先生の眼差しは暖かく少年を見守っているように見えた。 
[DVD(字幕)] 7点(2013-06-16 23:51:22)
4.  瞳の奥の秘密 《ネタバレ》 
時代背景として1974年はペロン大統領が死去を受け、第三夫人だったイサベル・ペロンが大統領に就任したものの、政治は不安定に陥り、右左派によるテロの応酬が激化した時代。サスペンスとラブロマンスを融合させた意欲作で、カメラワークも冴えている。死刑と私刑議論も提供する社会派で、誰にでも薦めることのできる佳作である。短所は現実的でない部分が多い事だ。素人探偵ではなく、検察による本格捜査なのに、死因、犯人の遺留品、血液、精液など犯罪に関わる情報が一切ないこと。「写真で被害者を見つめている瞳があやしい」だけでは弱い。血液型が一致するなど補完すべき。被害者とその夫の家族が登場しない。悲しんでいるのは夫だけではないはず。葬儀の場面もなく、マスコミも登場しない。新婚美人教師の強姦殺人事件なら格好の三面記事ネタ。その犯人が行政命令により釈放され、イサベル・ペロンのボディーガードをしたなら世間は大騒ぎとなるだろう。まして犯人はパブロ殺害の容疑者である。二人はと夫はどうしてマスコミに訴えなかったのか。二人の泣き寝入りは納得しがたい。ベンハミンは逃亡し身を隠したが、イレーネはどうして逃げなかったのか。同様に命は狙われていたはず。母音Aの打てないタイプライターなど使えるはずもないのに「なくても平気よ」はないでしょう。せめてワープロをプレゼントしなさい。ベンハミンはPC持ってないの?犯人イシドロは、イレーネの挑発によって自白するが、安易すぎる。検事によれば「いい仕事をした。賢い勇敢な男」のはずで、矛盾する。パブロは酒場で喧嘩をしでかし、家に連絡できずに、ベンハミンの家に預けられ、そこで遭難した。家に連絡できない理由が「1年前から電話が故障して修理人が来ない」。もう少しましな理由を考えなさい。夫は犯人を25年間軟禁してきたが、あの場所なら誰かが訪ねてきたとき大声を出せば聞こえると思う。郵便配達は来るだろう。犯人はパブロ殺しの実行犯を知っているのに夫がそれを追求しないのも納得しがたい。実行犯は野放しのままで、事件は未解決。それなのにベンハミンは「怖い」から「愛している」に変わる。そもそも、ベンハミンがイレーネを愛していたようには見えなかった。イレーネの婚約を聞かされても「幸せを願っている」と笑って答えている。イレーネもベンハミンを困った人ぐらいにしか見てなかった。一番の名演技は犯人母の電話の声。
[DVD(字幕)] 8点(2012-12-14 02:57:58)
5.  パンズ・ラビリンス 《ネタバレ》 
いきなり流血する少女のアップで始まり、テープが逆回転。全編、観客にショックを与えようという意図に満ちる。”意欲的”な作品で好感は持てるが、グロ・痛いシーンが多いのには辟易。大尉の父は将軍で、亡くなるとき懐中時計を壊して息子に”死の時刻”を遺す。大尉は父に憧れて軍人になった。懐中時計の逸話を無い事にするのは他人に弱い部分を見せたくないから。息子に対する執着は異様。臨月の妻に長旅させて自分の元で産ます、出産前から男の子と決めてかかる、医者には万が一の時には赤ん坊の命を優先せよと厳命。軍人の血統を継承させたい宿願があり、死期が近いのを本能で察している。洞察力に優れ、敵に対して情け容赦無い。完璧な軍人になりきろうとするあまり、彼にとって現実はファンタジーでしかない。大尉には現実がファンタジー、少女にはファンタジーが現実。両者は全く違うように見えるが、合わせ鏡のような関係。不幸の国にあるという摘んだ人に永遠の命を授ける奇跡の薔薇は、毒棘があるせいで誰にも摘まれない。少女が胎内の弟に語り聞かせる寓話だが、これには弟に摘み取ってもらいたいという願いが込められている。少女も自分の死を察している。ラストで、現実主義の大尉は閉じた迷宮の扉を難なく突破できたが、その先には死が待っていた。少女は死んで無垢の血を流すことで、魂が魔法の国に帰還できた。両者は常に対比して描かれる。全てを少女の幻想と決めつける事はできない。父を亡くし、継父とはそりが合わないが、母には愛され、経済的に恵まれ、戦争の悲惨さは知らない。彼女の幻想は戦闘の前から始まっている。現実逃避するほどのトラウマがない。泥で汚れた服、魔法の根っこ、チョークは実在するし、病気の母親は医者が首を傾げる程回復したし、チョークドア無しでどうやって壁を破り赤ん坊を横奪できたのか。それに現実逃避の幻想なら甘美で自分に都合のよいものと決まっている。魂の開放のためには死のイニシエーション=継父の銃弾が必要だったとの解釈も可能だろう。この場合継父はユダで、キリストの復活には不可欠の存在。どこまで現実か、ファンタジーか。作り手のそのあたりの匙加減、曖昧さ加減は絶妙。彼女がこの世に残したという”印し”を見つけたいものです。葡萄を食べたのは、まだこの世に残りたいという未練があったから。母が死んで未練は消えた。「手目坊主」そっくりお化けが出てきてびっくり。
[DVD(字幕)] 7点(2012-08-10 12:35:23)
6.  そして誰もいなくなった(1974) 《ネタバレ》 
豪華なディナーを食べたり、ワイン飲んだり、連続殺人事件が起きているのにみんな妙に落ち着いているのが気になる。最初が毒殺なのにみんな飲み食い平気なんだね。みんなが同じ部屋に集まって監視し合えばよいのに。銃殺が起これば手の硝煙反応調べるとか、ピストルは誰も使えないようにどこかへ置いておくとか、それくらいの事はしてほしい。死体もどう処置したのやら。謎解きもお粗末。最後毒をどうやっていれたの?「そして誰もいなくなったと」という原作は、そして誰もいなくなるから面白いのに、そして誰もいなくならないこの映画、これを観て面白いと思う人は、そして誰もいなくなった。 追記:この映画は戯曲版を元にしているようだ。戯曲版では最後はインディアンの寓話は「首をくくる」ではなく「結婚する」となる。発売当初の原題は「Ten Little Niggers」で米国では差別用語であったため「And Then There Were None」と改題され、やがて原作者もそう改題した。戯曲版を書くにあたり、生存者を残すことにした。原作者にとっては、全員がいなくなる事が重要ではなく、寓話に基づいて殺人が起こることを重要視していた事がわかる。以上の事が判ったからといって映画が面白くなるわけでもない。監督がどうして小説ではなく戯曲を元にして映画を作ったかを理解するものは、そして誰もいなくなった。
[地上波(吹替)] 2点(2011-09-25 05:32:05)
7.  ミツバチのささやき 《ネタバレ》 
生と死の狭間に揺れる少女の無垢な魂の成長を極力言葉を排した映像詩で綴る。 母は内戦前の過去に生きる人物。友に安否を尋ねる手紙を出すが、返事は芳しいものではなかったようだ。 父は社会や家族には無関心で、養蜂にしか興味がない。その蜜蜂に嫌悪感を持っている。 アンの魂は幼く、蜜蜂のそれのように未分化で、人間と精霊の中間にある。精霊は人間(生者)と死者の中間に位置する。 映画のフランケンシュタインの怪物は、水辺で一緒に遊んだ少女を誤って殺してしまい、最後は村人に殺される。アンは死に対して強い興味を抱く。質問された姉は、怪物は実は精霊で村はずれの廃墟に住んでいると出まかせを言う。また精霊は友達になるといつでも呼び出せるとも。廃墟を訪ねると大きな足跡があるだけだったが、ある日そこで脱走兵を見つける。脱走兵が懐中時計を消す手品を見せて、アンは精霊と確信する。次に行くと脱走兵は消え、血痕がある。父が殺したと誤認したアンは父から逃げ出す。夜の森の水辺で精霊と遇う。友達になれたのでアンは危うく死を免れる。 ◆暗喩が多いのが特徴。窓の六角形の格子=家は政府の監視下にある硝子の蜜蜂の巣。死=怪物の映画、解剖人形、鉄道での遊び、絵画の髑髏、毒キノコ、猫の首を絞める、死んだふり。火を飛び越える=大人への通過儀礼で、アンは見ているだけ。圧政=汽車の青年兵、村人、父の無表情と無言。水辺=精霊と会う場所。蜜蜂=政府に飼いならされた民衆。 ◆少女と怪物の対比が印象的。無垢な魂の前では、どんな怪物も本来の無垢な姿に立ち戻る。人間の本質を見ることを大人達は忘れがちだ。解剖人形も最後に目が入って完成した。蜜蜂の社会は管理社会で、個々の蜜蜂に自由や独立はなく、魂も未分化状態。圧政下の重苦しい状況にあえぐ民衆になぞらえているのは明白。「怪物=政府」と「少女=無垢の魂=民衆」が友達になれたときに明るい未来が約束されるだろう。だからアンは最後まで対話を求め、精霊を呼ぶ「私はアンよ」と。フランケンシュタイの映画を自家薬籠中の物として見事に取り込んだ手法に驚嘆。他に類を見ないのではないか。脱走兵は母の元恋人であったかもしれない、脱走兵を殺したのは村人等、深読みが可能で楽しい。映像詩の美しさの多くは子役の演技に負うところが大きい。人間は子供時代があるから素晴らしい。怪物にも子供時代があったから共鳴するのだ。
[DVD(字幕)] 9点(2011-09-07 23:46:15)
8.  続・夕陽のガンマン/地獄の決斗 《ネタバレ》 
クールな賞金稼ぎペテン師ブロンディと憎めない小悪党テュコの金貨探しのロードムービー。これに同じく金貨を追う悪党エンジェルアイが絡み、背景に南北戦争を配する。音楽の良さは言うまでもない。 ・強盗を働いて大金を手にしたグループがいたが、軍に襲撃されて全滅。かろうじて生き延びた人物から金の隠し場所を聞くブロンティとテュコ。それぞれ一部しか聞いておらず、二人合わせないと宝のありかに行きつけない。この設定が秀逸。二人は時に協力しあいながら、時に馬鹿し合いながら、旅が続いてゆく。途中でテュコの生い立ちが明らかになり、人物に深みが加わる。ボロンディの過去は語られる事無く、謎めいた雰囲気を最後まで纏う。両者の掛け合いが最大の見どころ。◆一方セエンジェルアイの影は薄い。いつの間にか南軍の捕虜収容所の軍曹になっている。途中からいなくなるが、いったいまたどうやってあの墓場にやってきたのだろうか。ご都合主義だ。◆エンジェルアイが最初の殺しをする場面で、親父だけでなく息子も殺す。駆け付けた妻がそれを見てふらついて倒れる。一瞬幼い子供の姿が見える。それを巧みなゆれるカメラで表現している。殺す相手にも妻子がるということを伝えており、生命を軽視してドンパチ撃ち合うだけの娯楽映画では無いことを示している。◆反戦思想が読み取れる。戦争のシーンは疲弊しきった兵隊や負傷者の場面がほとんど。捕虜収容所の隊長は壊疽で死にかけ。捕虜たちによるもの悲しい音楽が長く続く。テュコを護送する駅の場面で「俺の首は3000ドルだが、お前の腕は何の価値も無い」と兵士の失われた腕をとる。護送列車が去ったあとのホームに並ぶ遺体。橋を奪い合うために川を挟んで毎日戦闘を繰り返す。その下らなさを誰よりも酔っぱらい隊長は知っているが、作戦には従わなければならない。「隊長は戦死したがってるぜ」「こんなに大勢が無駄死にか」二人はあきれ、橋を爆破。それを見て満足して死んでゆく隊長。死体の山に十字架を切るテュコ。死に行く敵の若き兵士にコートをかけてやるブロンディ。戦争は銀行強盗よりも愚かだ。【ツッコミ】①テュコたちが護送列車から飛び降りたのに、どうして誰も気づかない。手錠を線路で切る場面も同じ。②橋を爆破するのが簡単すぎる。衆人監視の中では無理。③橋が爆破したのにどうやって対岸に渡ったのか。④ブロンディは墓場で、いつ首吊りロープを用意した。
[DVD(字幕)] 7点(2010-12-25 22:09:10)
9.  夕陽のガンマン 《ネタバレ》 
前半はありえないようなシーンの連続で退屈だが、後半賞金稼ぎの二人がチームを組んでから、2転、3転する展開で楽しめた。音楽は秀逸だし、銃を発射するまでのタメや間合いが心地よい。よく練れた演出と脚本だ。二人のガンマンの友情物語でもあるし、妹の復讐譚でもある。敵ボスの人間性も描かれており、物語に重みを増している。観客の裏をかく銀行強盗も見事。ただ最後の仲間割れはいただけない。あれは賞金稼ぎのどちらかの入れ知恵でそうなる展開ならなお良かった。 ◆ただ手下やメキシコ人など類型的で、リスペクトが感じられない。虫けら同然の扱いだ。 ◆大佐は汽車を無理やり止めるし、モンコはホテルの客を強制排除するし、いわゆる”善人”ではない。善人では務まらいタフな仕事だということを言いたいのだろうが、それにしてもモンコ、やりすぎでしょ。一度は大佐を裏切るし。 ◆オルゴール付懐中時計だが、あれは若い男が女にプレゼントしたものではないのか?それを若かりしときの敵ボスが奪ったと解釈したが。でも同じものを女の兄である大佐が持っている。兄妹で同じものを持つのは珍しい。そもそも女が懐中時計を持つものなのか。というと妹が若い男にプレゼントしたものなのか。また硬派の男がオルゴール付の懐中時計など持つかという疑問もある。 ◆下手人がすぐに見つかりすぎではないか?保安官はそいつがどこの町にいるか知っているし、店で聞けば教えてくれる。逃げ隠れしたいないわけで、保安官が自分で確保しないのはどうしてだろう。 ◆モンコが保安官を正直さが足りないとなじり、バッチを奪い、他の保安官を選べというが、どうしてだろうか? ◆モンコが敵地に乗り込んだとき、葉巻を銃で撃たれて半分になったのに、次のシーンで元の長さに戻っている。 ◆帽子を何度も撃たれているのに帽子に穴があいていない。 ◆リンゴを撃っている間に敵に撃たれないのが不思議だ。 ◆銀行をお金は木にかけていただけなのに、どうして誰も気づかなかったのか。 ◆遺体を運ぶ時、ちゃんと側板を閉めましょう。絶対落ちて、数が足りなくなる。
[DVD(字幕)] 7点(2010-12-25 09:03:16)
10.  ロスト・チルドレン 《ネタバレ》 
天才科学者Aは、海上の基地で生命を創り上げた。妻にすべき美女を造ったが、小女になってしまった。6体のクローンを造ったが、1体は眠り病、4体はおばかさん、1体(ボス)は知能は優秀だが夢を見ることができないので、老化速度が異様に早いという欠陥があった。更に自分の分身として頭痛持ちの脳髄(叔父)を造った。ボスは反乱してAを海に投げ捨てた。Aは記憶を失い、海中の基地に隠棲するようになった。ボスは老いを怖れ「夢見装置」を開発。それには無垢な子供が必要で、夢見る子供の頭脳とシンクロするのだ。子供の誘拐は「一つ目団」にやらせている。盲人達に見えるメガネを与え、その代償として子供を貰うというシステム。子供が怖がって悪夢しか見ないので困っている。やがて怪力男ワンの弟が誘拐された。必死で探すが知能が足りないので見つからない。ワンに力を貸すのが、子供窃盗団のリーダー、ミエット。彼女は至ってクールな人生観を持つが、子供よりも純粋なワンに心魅かれて手伝う決心をする。大人と子供の役割が逆転している。だがそのことで窃盗団の首領双子姉妹から命を狙われるはめに。刺客としてノミを操る元サーカス団長が放たれる。紆余曲折を得て、子供達のいる海上基地に向かう二人。だが、記憶を取り戻したAが先乗りしていて、爆発を仕掛ける。無と無限はイコールだ、という意味不明の言葉を叫ぶ。全てを消し去ってしまいたいのだろう。ミエッタは子供を助けるために「夢見装置」にシンクロし、ボスと対決、見事助ける。全員脱出したところで基地は爆破。テーマは、老と若、美と醜。登場する大人のほとんどが醜く、子供はかわいい。それを最後の夢対決で、老と若、美と醜が逆転する姿を見せることで両者に違いがないことを証明している。夢を見ないと老いるのが早いので、夢を見て生きなさい、そのためには子供のような心を忘れてはいけませんということ。無いものねだりは無駄で、ワンとミエットはお互いに無いものを補完しあったので子供達を救出できた。涙→船がぶつかる、カニ→記憶を取り戻すなどのドミノは楽しい。ノミとオルゴールの殺人兵器、ネズミとチーズで鍵を盗むなどのオバカアイデアは愛さずにいられない。大人のための冒険ファンタジー。脚本や美術のオリジナリティは賞賛に値します。おかげで今夜はいい夢が見られそうです。
[DVD(字幕)] 8点(2009-10-19 00:47:25)(良:1票)
11.  28週後... 《ネタバレ》 
すさまじいゾンビ映画ですな。 一家族を中心に描いているので、家族愛ゆえの悲惨さがよく表現されています。 夫は妻を見捨てて逃げ出す、妻は感染するが抗体をもっており生き延びる、キスで妻から夫に感染、夫は妻を残虐に殺す、妻はナパーム弾で焼き払われる、父が息子を襲う、姉が父を殺す。 抗体をもっている人が発見されたところで、ああこれで最後は抗体ができてエンドだなと思っていたのですが、甘かったです。 子供を殺すことこそしませんが、姉弟を守ろうとした正義感あふれる兵士たちは殺されてしまうなど意表をつく展開です。 ヘリの羽根での残虐シーンは見ていられませんでした。 母親から受け継いだ珍しい眼と夫婦のキスという伏線が効いていました。 てぶれカメラと多カットによるゾンビ急襲シーンなど緊迫感があります。 でも家族で見る映画ではないのでヒットはしないでしょう。 救いようのないエンディングは次回作へのつなぎのためでしょうか。 人のいない町のシーンなど、ゾンビ映画にしては大金をかけた大作かもしれません。
[映画館(字幕)] 9点(2008-05-11 13:40:40)(良:1票)
12.  ボーン・アルティメイタム 《ネタバレ》 
手ぶれカメラの多用に厭きました。 めまぐるしく切り替わるカメラと緊張感をあおる音楽にも辟易。 何事もメリハリというものが大切です。 あの暗殺組織はいくら政府のものとしても都合よすぎです。 あんなにもすばやく情報が得られるわけがない。 マッド・ジミー大西・デイモンはふけて精悍さが失われてしまっている。 オフィスで書類を盗んだとき、わざわざ相手に電話して、自分のいる場所を教えることないよね。 どんでん返しもないしね。 もっと、すかっとする話にしてほしかった。 自分から志願したで終わりですか。 とほほな映画。 
[DVD(字幕)] 5点(2008-04-16 01:48:09)(良:1票)
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