1. マグダレンの祈り
修道院という名の罪無き者達の収容所。宗教の名の下で行われる人権蹂躙は、その理不尽さに於いて、医療という名の下でそれが行われていた精神病院や、法律や裁判による収監者に行われていたそれを遥かに凌ぐ。そこは神から最も見放された場所、即ち地獄であり、そこを護る修道女達は正に鬼畜である。本作は中世の話等ではなく、1960年代(!)の話であり、また、こんな修道院がほんの8年程前まで残っていたというのだから驚く。映画の作りは一般的な刑務所ものを更に地味にした感じで、【ダージン】さんご指摘の様に「告発」に重点が置かれている様に見えるので、ドラマとしては弱い(当時の「壁の外」の様子を対比させてみたら、もっと面白かったと思う)。しかし、観客の胸に届く告発としては成功している、6点献上。 6点(2004-02-20 01:06:39) |
2. 魔王
個々のエピソードが全体の物語を形作るのではなく、それぞれが独立した何かを表してる様に感じた。また、通常「鬼」と訳される“ogre”を「魔王」とした邦題も良く解らない。魔界で「オウガ」は下っ端で、RPG等では言わばザコキャラです。この映画のジョン・マルコビッチもナチスというボスキャラに仕える小鬼に過ぎない。そして、彼が良かれと思ってさらって来た少年達も、いつの間にか小鬼へと変わっていた。この時初めて、彼は自分のしてきたことを知るのです。たぶん聖書に精通してないと、この寓意性が解らないんだと思う。従って、私にも良く解りませんでした、5点献上。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2005-11-15 00:08:39) |
3. マン・オン・ザ・ムーン
アンディ・カウフマンというコメディアンには全く馴染みが無く、この映画を通じて初めて知りました。活躍(?)したのは70年代中頃から80年代前半とのこと。これは日本で言うと、「8時だヨ!全員集合」すら俗悪番組とされた時代に、たった一人で、本気とも冗談ともつかない「めちゃ×2イケてるッ!」か、悪意を持って素人をコケにする「ロンドンハーツ」的なお笑いを実践してた感じでしょうか。そう考えれば、いくら先進的なアメリカン・ショー・ビジネスでの話としても早すぎる。没後20年近くを経て、ようやく彼の目指したお笑いにコンセンサスが醸成され始めた感じでしょうか。彼が自分の人生そのものをヤラセの冗談にしてしまったのは解りましたが、映画はそこから何を導き出したかったのかが今一つ解りませんでした、5点献上。 5点(2005-03-08 00:18:35) |
4. マルキ・ド・サドの演出のもとにシャラントン精神病院患者たちによって演じられたジャン=ポール・マラーの迫害と暗殺
確かにタイトル通りの作品ではある。病院内の広めの治療室(?)みたいな部屋で、鉄格子越しの観客に対して、サドと患者達が劇を演じる。しかしフランス革命を勉強したことの無い私は、そもそもジャン=ポール・マラーなる人物を知らないので、劇中劇である「迫害と暗殺」がどういうストーリーなのか、全く理解できなかった。所々で院長の検閲が入ったり、患者が暴走したりして、劇の進行がスムーズじゃなかったのも一因。また、果たして「マルキ・ド・サドの演出」が本作通りであったかどうかも判らない。全体的には、当時の再現やサドの視点によるフランス革命と言うより、いかにも60年代のアナーキーなカルチャーを、サドや精神病患者に当てはめただけという印象。タイトル程の深みは感じられませんでした、4点献上。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2006-07-14 00:01:33) |
5. マイ・ハート、マイ・ラブ(1999)
今一。コネリー&ローランズ夫妻の昔のエピソードにクエイド&ストウ夫妻の現在のエピソードを重ねるとか、どれかのカップルに重点を置くとか、少しはスパイスなり技巧が欲しい。端から見てたら退屈な四つの恋愛模様の上辺だけをそのまま撮るだけでは、役者陣が豪華なだけに、最高のネタを並べられた「だけ」の寿司屋のカウンター状態。板前の腕が良くなければ素材も生きない。それに、不治の病の人が次々と出てくるのにも引いてしまいました。ちょっと辛いようですが、4点献上。 4点(2001-12-20 21:18:16) |