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かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1249
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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【製作国 : 台湾 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
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1.  ハロー、グッドバイ。<TVM> 《ネタバレ》 
台北発メトロシリーズ(台北愛情捷運系列)全7作の一つである。今回はシリーズ最後の「終点」であり、これまでの6作に出た街や出来事を振り返りながら今回の新しい物語を作っている。その上で、メトロの始発点と終点を「你好」と「再見」とし、その間に生起した「出会い」(または縁)を描いたシリーズだったという形でまとめている。なお駅は主に北投駅が映っていた。 物語としては以前から散発的に出ていた変な男女が主役になって、それぞれの肉親の欠落を埋めていこうとするドラマを描いている。これまでの出現場面では人間離れした存在に見えていたが、変な点は実は今回の「並行世界」に係るファンタジー設定に起因するものであり、生身の人間としては別に変ではなかったらしい。  今回独自の趣向としては、変な女子の父親が台北捷運公司の職員という設定で裏方の司令室風景などを見せており、構内の監視カメラが父親との通信手段になっていたのは印象深い。本人もメトロには思い入れが深く、シリーズと同じ題名の画集を出版したのが劇中の重要な出来事になっていた。また地下鉄路線図を星座に見立てて、その関係で大稻埕のキラキラ星が再現されていたのは感動した。 そのほか各所にシリーズ全体とのつながりができており、例えば花一輪を手に取って謝謝と言った場面のような、本編で意味不明だった出来事の真相を見せたりしている。登場人物への個人的な思い入れで感情が左右されてしまうところもあり、西門町の小虎ちゃんが大泣きした場面はつられて泣かされた。最終作にふさわしく、これまで見てきた人々の哀歓をまとめて想起させる内容になっている。  なお主人公男女が観光案内ボランティアをしていたところに変な外国人が来て、「ホエア・イズ・ベイトウおんせんはくぶつかん」と言ったのは、さすがにもう少しましな聞き方があるだろうがと呆れたが、そこで男が返した言葉もかなり適当だったのは笑わされた。ここは日台の観客が一緒になって笑える場面に思われる。 日本人が台湾に行ってみて好きになったという話はよく聞くので、いいところなのだろうと前から思ってはいたが、自分は行ったことはなくてもこのシリーズを全部見たことで、初めていま現在の台湾に対する親愛の情が持てたというのは収穫だった。点数はこのエピソード単独の数字というより、全体を通して集積された思いの表現ということである。全部見てよかった。
[インターネット(字幕)] 8点(2022-01-22 10:31:16)
2.  幸福路のチー
題名の「幸福路」とは戦後に拡大した台北大都市圏にある通りの名前だそうで、ストリートビューで見てみるとけっこう賑やかな街らしい。 自分としては全体的に「おもひでぽろぽろ」(1991)のイメージかと思ったが、台湾現代史が背景になっているため重みがあり、また「先住民族」(字幕)やアメリカ人とのハーフといった登場人物の多様性も出している。1975年頃は台湾にも米軍がいたということだ。 簡単に海外へ移住するなどは基礎的な行動力が日本人と違うのか、または国境のハードルを低く感じているのかと思ったが、結局最後は主人公も自分の生きるべき国を改めて選ぶ機会が生じたようだった。  物語に関しては、幸福とは何かという問題提起に始まり、当初は食う・寝るだけだったのが時代の変化や主人公の成長で変わっていく。本人としては王子様→悪と戦う→社会正義と発想が展開したらしいが早々に挫折し、苦しまぎれにアメリカに渡ってみたが満足のいく結果でもない。アジア人なら誰でもいいのだろうという発言はかなり攻撃的だったが、これは主人公の方こそ白人なら誰でもいい(王子様だから)と思っていたことの裏返しではないか。意外にも最後まで残ったこだわりが王子様だったようである。 迷っていたが最後には、かつてお姫様のように思っていた親友の現在の姿に感化され、不惑を前にして、自分として最も根源的と思えるものを選んだようだった。離婚したら両親が悲しむと夫には言われたが、実際はそうでもなかったらしく、本人も自分の決断に確信が持てたようなのは他人事ながら嬉しい。 ただしこれは終着点ではなく新たな出発点であって、まだまだ主人公には先がある。ラストは「悲情城市」ほど暗澹とした感じではなかったが(最後は2014年頃)、これから世界がどう動くのかわからない不透明さはやはりある。しかし主人公もその都度自分の目で見て考えて、自分なりの幸福を一生追求し続けろという年長者の教えを自分のものにしていたようだった。  登場人物の中では、洋風美女の親友が和み系の人で好きだ。角を立てずに丸く収めようとする穏やかな人物のようだったが、その娘はあくまで筋を通そうとする強気の人物だったらしい。また幼い息子が姉を描いた絵には笑わされた。 ほかガッチャマンの絵や「永遠的朋友」といった子ども同士の素朴な友情、また家族同士が見せる自然な感情には少し泣かされた。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2021-04-17 08:50:43)(良:1票)
3.  悲情城市 《ネタバレ》 
最初が日本語で始まるが、その後も日本の言葉や漢字の日本語読みが結構聞こえる。ヒロインも「にいさん」のような呼び名を常用しており、また主人公の林文清のことは「きよしさん」と呼んでいた。そもそも兄妹の名前からして日本語読みできるよう付けられており、生家がかなり親日的だったと想像される。 主人公の生家である林家は財力のある在地の有力者のようだが(日本人の感覚ではヤクザに分類?)、ヒロインの実家である呉家もお堅い旧家か何からしく、子弟の教育水準も高かったようである。戦前は、林家は日本(というより統治体制か)に反発し、逆に呉家は親和的だったようだが、その違いが何か対立を生んでいたわけでもない。戦争では1人が帰還せず、戦後は大陸の密輸業者とのトラブルや共産主義者の弾圧で家族が失われ、先行きは明るくなかったようだが特にはっきりした見通しもなく終わる。結局何がいいたいのかと考えさせられてしまうが、監督インタビューを見たところでは、それまで隠されてきたこの時期のことを人々が改めて回顧するという意義はあったらしい。昔を知らない世代にも、当時の社会の有様を伝えるものになっていたと思われる。 またこの映画ができたのは、1987年に台湾で起きた大きな政治的変化のおかげとのことだが、その変化は単に映画製作の好機というだけでなく、現在の民主的な政治体制につながる歴史的な大事件のはずである。この映画は大陸側の勢力に一方的に支配される形で終わったが、今の台湾がこれからどうなるかは今いる人々が自らの意思で決めるべきことであり、それを改めて認識させる映画だとは思わされた。日本人にとっては他国の問題だが、かなり気になることではある。  登場人物に関して、まず序盤で出た静子さんは上品なお嬢さんだったが、こんなカワイイ系美女が当時の日本にいたか??という意味でも目を引いた。ヒロインの寛美さん(寛美ちゃん)の方は少し地味かと思ったが、よく見れば清楚で優しげで可愛らしい人である。男連中が政治談議をしている脇で、清さんと一緒に「蘿蕾莱」を聴く場面には和まされた。控え目で古風に見える女性だったが、主人公も悪気の全くない温和な男で、この2人が作った穏やかな家庭のはかなさが切ない映画ではあった。 ちなみに筆談の字幕が無声映画のようで、過去を回顧する映画にふさわしい雰囲気を出していたかも知れない。
[DVD(字幕)] 8点(2020-11-14 09:25:43)(良:1票)
4.  ラブ ゴーゴー 《ネタバレ》 
台北に住む若者の群像劇のようなもののようで、前に見た「熱帯魚」(1995)よりは都会的でポップな印象がある。解説によれば「3つのストーリーが結晶する感動のラスト」だそうだが、何が「感動のラスト」なのかはわからない。とりあえず「3つのストーリー」とは以下の3つと思われる。  1.パン屋 いわゆるイマジナリーフレンドが、単なる夢想ではなく実体があったという感じの設定らしい。この男自体は全く好きになれないが、相手への思いが単なるスケベ根性ではなく、純粋なものだとわかったところは感動的だった。これで恋愛成就につながるのか不明(疑問)だが、今回の件で創造性を刺激されて仕事に一層励む気にはなったらしい。 2.かわいいゾウ(自称) この人は不運というしかない。勝手に夢想を膨らませていたのはお互い様らしいが、あんな男と縁がなかったのはせめてもの幸いだ。最後はポケベルから携帯電話に移行していたが、近年の邦画で「スマホ拾っただけなのに」(2019)というのもあったように、変に拾うとろくなことがないのは今回もうわかっただろうと思われる。なお「ゾウさんゾウさん」というのは台湾の歌なのか。 3.若い営業マン ゾウさんに「乳離れしてない」と言われたタイプの男。地図を見て、つまり飛行機や高架鉄道の視点から街を見て、そこに住む人々を想像するというのは浮世離れした夢想家ということらしい。終盤の屋上の場面が長かったのは、地べたよりも空に近いこの男の意識(別世界)の表現ではないか。これまで世間とは接触不良だったようだが、今回一人の人間の存在を実感したことが、これから現世とのつながりを作っていく過程の一段階になったと思われる。 なお屋上での散髪の様子を多方向から映していたのは少し手が込んでいた。この男と一緒の時間を過ごしたことで、美容室の店主にとっても少し新しい視野が広がったかも知れない。  そのほか音楽クリエイターが台北を去ったのを含め、最後は全部同じ日の出来事だったらしい。同じ日といっても出来事自体は別々であり、題名から予想される恋愛物語にも見えないが、それよりは「熱帯魚」のような、夢想から現実へ移行していくエピソードの集合体と思えばいいか。また美容室の店主にしても、男連中の人間像に触れたことが少し救いに感じられたかも知れない。 なおこの店主が片脚を少し引きずるようにしていたことの意味はわからなかった(訳あり?)。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2022-04-09 09:26:17)
5.  セデック・バレ 第一部 太陽旗 《ネタバレ》 
台湾の先住民(台湾での呼称は「原住民(族)」)を扱った映画で、具体的には1930年の「霧社事件」に焦点を当てている。首狩り族というと印象は悪いが、昔の日本でも手柄の証拠として首級を持ち帰るのは普通にあったわけで、意外にも台湾の山中に武士が残っていたということらしい。殺された日本人の方が「武士の末裔」だなどと叫んでいたのは笑わせた(嘲笑)。 事件の場面はこの第一部の最後に出るが、ここで誰が見ても殺されて仕方ないと思わせる連中が真っ先に殺されたのは納得のいく作りになっている。特に男尊女卑の染みついた下司な男(上の世代の日本人にいた)や、自分の劣等感か何かのせいで弱い立場の者を踏みつけにするひねくれた男(どこにでもいる)などは早く殺されないかと心待ちにしていた。それ以外で殺された日本人は災難だったが、異質な集団と接する最前線にはこういうリスクがあると思わなければならない。  この第一部では、個人的には民族集団が大規模な侵略を受けた際にどう対応するかの問題かと思って見ていた。最初に激烈な抵抗をしておいて、その後は集団の存続のため忍従していたが、ここでまた改めて反撃を企てた形になっている。 しかし民族の誇りを守るのはいいとして、単なるテロ攻撃では自滅するのと同じというのは主人公本人も言っていたはずである。また戦える男の首を取るのは名誉としても、日本人の女子供まで皆殺しにしたことの理屈はついていたかどうか。侵略民の繁殖拡大を食い止めるための全数駆除なら意味はわかるが、しかし日本人全部を絶滅するなどできないことはわかっていたはずではないか。主人公も若い頃とは違って指導者としての分別を備えた人格者に見えたが、事件の後の落としどころまで考えていたのかどうか、この第一部ではわからなかった。 なお注意点としては、この映画では日本人が矢面に立っているが、日本人が来る前は漢人との間でも同様のことがあったのではないかということである。また先住民同士でも狩場をめぐる争闘が日常的だったことは劇中に示されており、人間集団の間に必ず起きる争いが、この映画ではたまたま先住民と日本人との間で起きたというように取れる。仮に日本人が悪とするなら漢人も先住民もみな悪ということになるわけだが、あるいは劇中で、男のプライドが女を苦しめるという意味の歌が聞かれたのは、男こそが悪の根源だということかも知れない(現代風解釈か)。  そのほか特徴的なのは先住民の歌が多用されていたことで、特に渓流で主人公と先代が輪唱した場面は印象的だった。また金玉を握る場面も印象的だった(痛々しいが笑った)。主人公は苦みと渋みが顔に出たナイスオヤジだった。
[DVD(字幕)] 7点(2021-10-16 14:28:47)
6.  天空からの招待状 《ネタバレ》 
監督の齊柏林氏はもともと航空写真家で、自分が空から見てきた台湾の姿を紹介するため一念発起して空撮ドキュメンタリー映画の製作に取り組んだとのことである。それで大成功を収めたが、続編を撮影中の2017年にヘリコプターの墜落事故で亡くなったというのが痛ましい。 この映画も全て空からの撮影で、スケール感が失われて地形が模様に見える高度から、人々の表情がわかる低空での映像もある。自然景観や人々の暮らし、伝統的な一次産業は好意的に撮られており、水田らしき場所で水路に陽光が反射したのはキラリと光る一等地の圃場だというアピールに見えた。また人々が農作業をしている両側で、緑の植物が風になびいて流れるような構図は見事だった。 一方で否定的に扱われた人工物として、海に接する排水口(大潭発電所?)の映像は戦慄を催した。また土砂採取の現場が何本もの虫食い跡のように見えたのも気色悪い。  当然ながら単なる空撮映像の羅列というわけではなく、故郷の島を母親にたとえ、その子である人間が都合よく使うだけでなく労わることが大事だと訴えている。監督が長年空から見て問題だと思ってきたことが、地表の人々には見えていないという危機感が根本にあったらしい。 具体的な問題点としては、まずは山地開発による山崩れや土砂流出といったことが印象づけられる。また西海岸の養魚場で地下水を大量に使用するため地盤沈下が発生し、墓地も浸水して「土葬が水葬になった」というのは、「熱帯魚」(1995)の映像でも見えていた気がする。ほか水質汚濁や廃棄物処理など環境保全の基本的事項とともに、近年の時流に乗った形で石炭火力の問題を指摘するとか有機農産物への取組みを紹介していた。 日本人の感覚としては、今さらそれを言われても、というのもなくはなかったが、しかしさすがにこれはまずくないかと思ったのは、大都市近郊の急峻な山地で稜線を削って高層住宅などが建設されている場所だった。傾斜の度合いが多摩丘陵などと比べ物にならないわけで、今の日本でいえばメガソーラーによる環境破壊が危惧されていることにつながるかと思った。  なお今回初めてじっくり見たのが、台湾の最高峰である「玉山」(3,952m)の姿だった。いわゆる新高山(ニイタカヤマ)だが、ノボレと言われても険しいのでどこから登るかわからず無理そうに見える。しかしこの映画のために「台湾原声童声合唱団」の子どもらが登り、狭い主峯の上で揃ってパフォーマンスをやっていたのはご苦労様だった。マイナス2度だったとのことだがみんな笑顔で、若い人々が元気なのは大変いいことだと思わされた。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2021-08-14 09:33:09)
7.  藍色夏恋 《ネタバレ》 
アニメ映画「幸福路のチー」(2017)の主役だったグイ・ルンメイ(桂綸鎂)という人が顔出しで主演している映画というので見た。これが映画初出演とのことで、その後は香港や大陸にも活躍の場を広げているらしい。 全体的には青春映画のようで、自分としては登場人物に共感できたわけでもなかったが、しかしラストがけっこう感動的で最終的には好印象だった。終幕場面の背景音楽からエンディングテーマにつながる流れも好きだ。 個別の場面としては全校注視の中で偽手紙を蹴り剝がしたのと、体育館で延々とどつき合いをするのが印象的だった。また題名と関係あるかわからないが、夜の青さに目を引かれる映画だった。  若い人々にとって未来が見えないのは不安だろうが、何も決まっていないのだから自分次第と思えばいいだろうとはいえる。しかしその決まっていないこと自体にも不安があり、それで何かが決まっているかのように予言する占いや、勝手に都合のいい結果をもたらすまじないを好むのかと思ったりする。この映画では、結果的に未来に向けた視野は広がったが、同時に何も決まってはおらず、これから何が起こるかわからない状態をそのまま受け入れて進む覚悟ができたように見える。 また主人公男女が惹かれ合う気持ちは正直よくわからなかったが、普通一般のスケベ本能を超えたところで、その人物そのものの存在を欲したということかも知れない。主人公がLGBTQのうちのLと決まったわけでもないらしく、これから何が起こるかわからないにしても、信頼できる水先案内人を得た気がしたからこそ前向きに生きる気分が生まれたのだと思われる。 ちなみに登場人物が通う「師大附中」とは「國立台灣師範大學附屬高級中學」のことらしく(エンドロールに名前が出る)、けっこう名のある実在の高校らしい。軽薄に見える奴はいるにしても、ゴミをちゃんと捨てるとか椅子を直すのを見ると基本的にまともな連中なのだと思わせる。  ほか雑談として、校舎の外で聞こえたブラスバンドの曲は、国歌とされる「三民主義」と、「國旗歌」という曲を続けて演奏していたようだった。国を象徴する曲なので直立不動で聴くのが建前らしく、例えば夕方に国旗を生演奏付きで降納していたということか。一応そういう厳粛な場面で、男女2人が個人的な揉め事を起こしていたことになる。 また今回は「噁」という漢字を新しく憶えた(噁爛、噁心)。「木村拓哉」は前から知っていた。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2021-07-31 08:48:37)
8.  熱帯魚 《ネタバレ》 
デジタルリストア版というのをBDで見たので映像的には美しい。大人も子どもも一緒になって「ウンチ」で大喜びするなど、本当にしょうもない場面が美的に映されている。ポスタービジュアルで印象的なビル街の熱帯魚はちゃんと動く映像として出て来ていた。 場所に関しては、実在の地名が出るので嘉義県東石郷(漁港がある)だとわかる。人家がときどき浸水するなど本当にあることなのかわからないが、ストーリー上の意味はあったようである。劇中一家の嫁がバンブーダンスのようなもので遊んでいた(微笑ましい)のは現地の風物ということかも知れない。 日本との関係では卒業式の「仰げば尊し」とか、「刺し身」「ワサビ」という言葉が出ていた。また海に潜る場面で流れた曲はどこかで聞いたことがあると思って一生懸命調べたところ、何と昭和歌謡「恋をするなら」(橋幸夫、1964)だった。自分としてもリアルタイムでは全く知らない曲だが、劇中のは台湾のカバーバージョンと思われる。  主人公は高校受験前の中学生男子で、基本的にはコメディなので可笑しい場面が結構ある。誘拐犯一家はあまり物事を詰めて考えたりしない人々のようで、日本人でさえ思ったのは、台湾全土に「中正路」というのが一体どれだけあると思っているのかということである(映像に出たのは嘉義県朴子市)。脅迫電話でメンバー総出演だったのは笑った。 ストーリーとしては最後にどうなるのか予想がつかなかったが、物語的には若い娘が最後にくれた手紙に集約されていたらしい。題名の意味に関しては、例えば“絶対に実現しないと決まったわけではない夢”とでも思えばいいか。夢想(「白日夢」)だけで満足するのでなく、現実に目指すべき夢を持て、というのが青春映画としてのメッセージと思われる。ほかあまり明瞭ではないが、心から願うだけでなく「縁」も大事だと言いたかったかも知れない。 ちなみに主人公の受験に変に肩入れする男がいたのは、妹への贖罪の意味があったらしい。  登場人物としては、片思いの女子が人魚になってにっこりした場面は和んだ。また一家の若い娘(ちょっとお姉さん)がそれほど美少女でもないのは親しみが持てる。ほか一家を仕切っていた中年女性は、「維基百科,自由的百科全書」によれば“標準的な台湾の隣家のおばさん的性格”らしい(やかましい)。「巨蛇娘娘」という漢字言葉が心に残った。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2020-10-10 08:58:01)
9.  私たちの青春、台湾 《ネタバレ》 
台湾を中心に、香港と大陸にわたる若者の社会運動を扱ったドキュメンタリーであり、台湾独立派の学生と、民主主義を実践しようとする大陸からの留学生の2人が主人公になる。2014年の「ひまわり運動」が中間の山場だが、それに続いた香港の運動は成功せず、また主人公2人も個人的な挫折を経験し、劇映画のように都合よくはいかない現実を映して終わりになる。 監督としては、主人公2人が国境を越えた社会運動を広げていく未来を想定していたらしいが、それが挫折したのを自分の挫折とあわせて捉えた結果、監督本人が終盤で第3の主人公のようになっていたのは意外な展開だった。挫折はしても3人の人生はまだ続いていくわけで、その一時期を切り出したこの映画が、それぞれの青春を映していたという形でまとめたらしい。いわゆるほろ苦い青春映画だが、しかし少なくとも台湾にとっての「ひまわり運動」が若者の独りよがりに終わらず、結果として多くの国民がその正しさを確信できたというなら現実的な成果があったといえる。 ほか個別の事項として、「支那」は台湾でどういうニュアンスで使われる言葉なのかが気になった。またネコを閉じ込めた場面は出来すぎのようだが偶然だったのか。性犯罪者の心理を本人に語らせるなどリアルな場面は苦笑した。  ちなみにこの映画は2018年の映画祭「金馬奨」で最優秀ドキュメンタリー賞に選ばれているが、授賞式での監督の発言に反発した大陸側が、翌2019年から映画祭への参加を連続ボイコットしているとのことで、同年からの個人旅行の停止とあわせて民進党政権への圧力と捉えられていたらしい。「ひまわり運動」だけでなく、この映画自体が思い切り実社会に影響を及ぼしたわけだが、それは多分監督の本意でないと思われる。 その他雑談として、「ひまわり運動」の場面で聞こえていた「國際歌」は、これがどういう歌かを知っていれば何だこれはと思わされる。しかし今年3月下旬からの上海ロックダウンで、市民の不満の表現としてこの歌(起て飢えたる者よ)や「義勇軍進行曲」の歌詞が使われたのを当局が問題視し、自宅で鳴らしていた者が警察に連行されるとか、SNS上で閲覧できなくなったという報道があった(2022/5/17ニューズウィーク日本版コラム)。そのように、当初想定と全く違う場面で歌本来の意味が活かされることはあると思えば、この映画での「國際歌」も、純粋に国境を越えた市民の連帯を呼びかけたものと思えなくはない。ちなみに個人的には、政治性はともかくこの歌自体は嫌いでない(歌える)。
[インターネット(字幕)] 6点(2022-06-11 10:07:12)
10.  君のためのタイムリープ 《ネタバレ》 
邦題の「タイムリープ」からすると時をかける少女かと思うが、台詞によれば「ターミネーター」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」だそうで、全体的には後者に近いが邦題の「君のための」は前者のイメージである。2017年で38歳の男が20年前の高校時代に戻る話になっている。 原題の「帶我去月球」(Take Me to the Moon)は張雨生というシンガーソングライター(1966~1997)の楽曲名で、劇中年代もこの人物が事故で死去した年に合わせている。仮にその事故がなければ映画のストーリーは成り立たなくなるが、それでも主人公が無理に警告しようとした姿に結構心を打たれたことからすれば、当時の若者にはこれがかなり衝撃的な事件であって(日本でいえば尾崎豊?)、観客の心情にも訴える場面だったのかと逆に思わされた。 ほかにも当時の社会描写らしいものが多く、登場人物と同じ30代末期にかかる人々が、自分の青春時代を回顧する映画かも知れない(よくあるタイプの)。  物語としては主人公の男が、自分の恋した相手が死ななくて済むよう過去を改変する話である。最初はとにかく死なないことだけ考えていたが、結果的には単に死なないだけでなく、相手の人生が輝く未来が実現でき、ついでに自分の未来も輝かそうと決意したということか?? よくわかっていないが悪くない話ではあった。 日本との関係では、冒頭いきなり日本語で始まるのは「悲情城市」か「海角七号」かと思わされる。1997年時点では日本の存在感が変に大きく、それはかつて文化面でも日本が台湾をリードしていたということだろうが、ラストの段階ではすでに台湾が台湾自身の安室奈美恵を生み出しており、若くして没したアーティストの後を引き継いでいたらしい。エンドクレジットに「特別感謝 魏德聖」とあったことから想像すれば、日本から受け入れたものと、台湾が生み出したものの融合が表現されていたとも取れる。  出演者として、宋芸樺 Vivian Sungという人は今どきまだ高校生役なのかと思ったが、18~35歳を幅広くカバーできる役者という意味なら変ではない。高校時代と現在が同じ演者なのは「私の少女時代」よりも著しい改善点といえる。今回は歌がうまいので感心した。 また「まるで男」と言われていた「小八」役は、「屍憶」で童顔が印象的だった嚴正嵐 Vera Yenという人である。中学生にも見える容貌だが弁護士志望という役柄は悪くない。今回はバンドでドラムを叩いていたのが目を引いた。年齢不詳のユニークな女優(兼シンガーソングライター)のようで好きだ。
[インターネット(字幕)] 6点(2022-04-30 13:59:22)
11.  1秒先の彼女 《ネタバレ》 
前に見た同じ監督の「ラブ ゴーゴー」(1997)に比べて、映像的な洗練度や娯楽性(大衆性)がさらに向上したように見える。 原題にある「情人節」とは、本来は2/14のValentine's Dayの意味のようだが、近年はなぜか七夕をこれに当てるという風潮があるらしい。前半の「消失的 人 」が消えた人というのはわかるとして、後半の「消失的情 節」の「情節」は、実際にplot、storyといった意味があるようだった。  全体構成としては、前半の郵便局員パートで各種の疑問を提示しておいて、それを後半のバス運転手パートで解いていく形になる。変に日焼けしていたのはUFOに拉致されたせいかという想像が広がらなくもない。 特に前半ではラブコメ風味が強い。こんないかがわしい男を相手にして大丈夫かと心配すべきところだが、本人の言動や表情が微笑ましいというか笑わされるので和む。後半は少ししんみりさせられるものがあり、少女に救われた記憶というのは「ラブ ゴーゴー」のパン屋かと思ったが、今回はちゃんと望みを果たす結末になったようだった。 謎の出来事の真相に関しては、利息という説明はよくわからなかったが、とにかく人によって1日増える場合と減る場合があり、それが主人公男女の運命を変えたということらしい。ただ郵便局員の心変わりの理由が不明瞭なのは残念だった。「大切な記憶」が共有できない寂しさ(男)に対し、「あなたを愛する人がいる」(女)と気づいて応えようとしたということかも知れないが、後者はあまり説得力がない気がしたということである。今回はドラマ的な面で不満が残ったかも知れない。 なお相合傘の下に人名を書く習慣の世界的分布がどうなっているのかは気になった。縦書きできる言語でないと難しいはずだ。  映像面では街の人々が停止していた場面が見どころかと思われる。人形を置いたのかと思ったら、終盤で一斉に動いたのは生きた人間だったことがわかる(犬は違うか)。また浜辺でのおふざけは「熱帯魚」(1995)のようだったが、生きた人間を相手にできないようなのは切ない気分だった。冠水した道を走るバスが千と千尋を、また車内がエヴァンゲリオンを思わせたのがアニメの実写化のようで目を引く。 登場人物としては、郵便局の若手同僚もかなり目立っていたが、何といっても主人公(演・李霈瑜/Patty Lee)が愛嬌があって可愛いので好きだ(かなり好きだ)。この人あってこその映画だった。またヤモリに親和的な態度も悪くなかった。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2022-04-16 08:51:26)(良:1票)
12.  隠し味は愛<TVM> 《ネタバレ》 
台北発メトロシリーズ(台北愛情捷運系列)全7作の一つである。駅は中正紀念堂駅とのことで、周辺には駅名の由来になった蔣介石総統を記念する施設があるはずだが映像には出ず、主に「國家戲劇院」という国立劇場(表と裏)が映っていたようだった。また別の回の舞台だった淡水の浜辺の場面などもあるが、ここは「デートのメッカ」だそうである。 今回はシリーズ中で最も娯楽色の薄いエピソードで、邦題から感じるような和み系の映画でもなく、特に女性の怖い顔などは目を逸らしていたくなる。主人公が料理教室を主宰していることから料理映画の性質もあるが、料理映像というより調理方法に託して人間関係を語る趣向になっている。また主人公のグループ4人に関しては、青年期を過ぎようとする人々(少なくとも1人は1982年生まれ)が、少女時代を回顧して現在を再確認する意味もあるようだった。  物語としては正直よくわからなかったが、既婚者同士の不倫未遂を契機として、隙間が生じていた2組の夫婦に変化が生じた話ではあるらしい。なおTVドラマ放送時の「傻瓜與睡美人」という題名は、解説によれば「愚か者と眠り姫」だそうで、うち「睡美人」はそのままSleeping Beautyと読める。 以下解釈例として、まずお姫様の方は愛がないと言われたりもしていたが、これは何が愛なのかわかっていなかったということか。異性に心惹かれるのも愛だろうが、これまで自分を支えてきた祖母や親友や夫を大事に思う心も愛だと気づいたのかも知れない。結果的には淡水の浜辺で再出発し(王子様のキスに上書き?)、新しい愛の物語を始めたのだと思っておく。 また王子様に関しては、これまで自分がしたいことを自分のためにしてきたのを、今回初めて誰かのために何かすることを学んだのかも知れない。それならそれが夫婦の関係修復にも役立つはずだったと思えるが、早々に妻の側が切り捨ててしまったということか。この王子様は金持ちの息子で覇気はないが善良で細かいところによく気のつく男で、これこそ主夫業に向いた男ではなかったかと思うが、夫はそれでよくても妻の側が耐えられなかったかも知れない。仮に妻も夫も同じ上昇志向タイプなら、子を育てる気でもない限り、夫婦でいること自体に意味がなかったとも思われる。 以上により必ずしも話の全部を読み取れた気もせず、また背景事情の設定などに不明瞭・不自然な点もあったが、このシリーズにしては時間が長い分、多くのものを詰めようとした印象の映画ではあった。  その他のこととして、少女時代の回想場面では、さすがに日本のようなルーズソックスは出なかったが、同じ役者のままでスカートの短い制服姿になるのが今回のわずかなギャグ要素かも知れない。ただ特に「玉娟」という人物が、年齢に関わらず昔からこういうイメージだったことの映像的表現といえなくはない。 ほか料理教室の生徒だった低身長女子2人が屈託ない感じなのは安心させられた。
[インターネット(字幕)] 6点(2022-01-22 10:31:13)
13.  振り向いたらそこに<TVM> 《ネタバレ》 
台北発メトロシリーズ(台北愛情捷運系列)全7作の一つである。駅名は忠孝復興駅だが、舞台になった街は解説によると「東区」とのことで、題名の駅の東側にあるデパート・オフィス・飲食関係などの集積する地域らしい。 原題の「奉子不成婚」とは、かつて皇帝の勅命による結婚を意味した「奉旨成婚」という慣用句から、現代において子ができちゃったために否応なく結婚するのを「奉子成婚」と表現するようになり、そこからさらにこの映画で、できちゃったから結婚するのではないという意味で作った言葉と思われる。英題の“The Thin Blue Lines”は昔の映画の題名に引っかけたのかも知れないが、実際はタイトルのところと劇中で全く別のそれらしいものを見せていた(青でなく赤?)。  映画の紹介文には「おとなのラブコメディ」と書いてあるが、特に前半は大人というよりアダルトなギャグで笑わせる。変に日本関係の事物が多出するのは煩わしい(壁ドンの解説などしなくていい)が、これは原案/監督が台湾で役者・監督をしている日本人だからということか。音楽としてはflumpoolの「証」という曲が使われていた。 物語面では父親の存在が中心テーマになっていたらしい。「奉子成婚」との関係でいえば、世間体はどうでもいいとしても、子どものためには父親が必要だと母親としても思わされ、またその父親も自分なりの覚悟で父親になろうとしているのが見えた段階で成婚に至ったという話かと思った。男の性格付けがカクテル・コーヒーと映画撮影では盛り込み過ぎで整理がついていない印象もなくはなかったが、最後はラブコメにふさわしく幸せ感満載の終幕だったので、結果的に悪くない映画だと思わされた。 個別の場面では終盤の「帰るな」に少し泣かされた。また字幕の「マジですか」を原語でどう書くのか知りたいと思った。  演者としては、主演の蔡淑臻 Janel Tsaiという人は顔や体型からしてヒロインにふさわしい姿を見せていたが、その友人の静香ちゃん(演・范時軒 Amanda Fan)が極端に可愛いので、個人的にはこの人が重要人物だった。ブライズメイド姿がキレイでかわいい。 ほか他のエピソードにも出ていた莫允雯 Christina Mokという人が「明星孕婦」役で、過剰メイクの沢尻エリカのような顔を見せていたのが面白かった。  [2022.4.2追記] 本文には「カクテル・コーヒーと映画撮影では盛り込み過ぎ」と書いたが、これは監督の北村豊晴という人物が、実際に台北で飲食店の経営をしながら映像関係の仕事もしていることの反映と思われる。気づくのが遅れてすいませんでした。
[インターネット(字幕)] 6点(2022-01-22 10:31:10)
14.  淡水河の奇跡<TVM>
台北発メトロシリーズ(台北愛情捷運系列)全7作の一つである。駅は淡水駅、街の名前も淡水(新北市淡水區)で、台北市から流れて来る淡水河の河口に近い港町である。19世紀には台湾島の主要な貿易港だったとのことだが、この映画ではそういう歴史的なことは関係なく、そもそも街の風景もあまり出ない。主人公の母親が「魚団子」の食堂を経営していたのがかろうじてそれらしい。 なお原題の「鮮肉老爸」は漢字だけ見ると意味不明だが(鮮魚ならまだしも何で肉?)、これは「美少年父さん」というような意味かと思われる。  全体的にはタイムスリップをテーマにしたSFコメディであり、あまり深みを感じさせるものでもないが娯楽映画としてよくできている。コメディらしくそれなりに可笑しいところがあり、序盤ではかなり下品だと思っていたが、プロポーズの背景で歌う場面でまずは失笑させられた。中盤のTV番組やエンディングの楽曲「野性的青春」もふざけている。 映画のジャンルとしてはコメディ/ロマンスとされているが、基本は家族の物語のはずなのでどこがロマンスかと思っていると、終盤の見せ場に至って初めてそういう意味だったのかと納得させられる。途中で一度は邪魔されたキスシーンも、最後にちゃんと実現(情熱的!)していたのは正直感動的だった。ほかにも観客の意表をつくところのある作りだが、個人的にはここが最も意外な展開だった。 なおSF的にいえば、過去を変えたらどうなるかという大問題があったはずだがあえて回避する結末になっていた。  登場人物としては、主人公の彼女(演・方志友 Beatrice Fang)がなかなか可愛いので好きだが、若手の科学者だったようで主人公には向いていない。また主人公の母親(演・苗可麗 Miao Ke-Li)は、Wikipedia(中文)では「淡水公認第一美魔女」と紹介されており、確かに少しカワイイ系の入った美女にも見える。ちょっと体型的に厳しいところもあったが、終盤の見せ場では役どころにふさわしい姿を見せていた。これは同年配の女性が見て心ときめく(羨む)展開だったかも知れない。 ほかどうでもいいことだが、劇中のTV番組に出ていた「命理大師」役は、このシリーズのプロデューサーで7作中2作の監督もしている葉天倫という映画監督である。他の回にも出ていたが、今回も個性的な容貌に合ったしょうもない人物役を芸達者に演じていた。
[インターネット(字幕)] 6点(2022-01-15 14:47:48)
15.  西門に降る童話
台北発メトロシリーズ(台北愛情捷運系列)全7作の一つである。駅は西門駅、街は西門町という台北有数の繁華街らしい。現在は渋谷にたとえられる若者文化の街らしいが、昔は浅草のような場所だったという話もある。交差点の地面に ”Xi-Men Walker” と書かれていたのは「西門町徒步區」という場所のようだった。 劇中の台詞では、西門町の三大名物といえば映画・金・変人だと言っていたが、うち金と変人はともかく「映画」に関しては、実際に映画の街として知られていた時期があったらしい。そのため劇中でも何かと映画を物語に関連付けようとしていたようだが半端な印象だった。また映画以外にも町の歴史を匂わせるもの(人物)を出していたようだが、日本人が見て自ずとわかるほどのものはなかった。  全体的にはいい雰囲気の映画であって、現代的な都市景観の裏に庶民の住処が混在し、上下の立体感もある劇中世界を見せている。主人公が始めた街頭スタイリスト?の業態も若者の街らしく?面白い。また街区の奥に人知れず「太陽と緑、都会のオアシス」の異世界ができていたのもファンタジックな印象だった。 しかし雰囲気はいいとしても見て単純にわからないことが多い。例えば1999.9.21の建物倒壊は「921大地震」によるものだろうが、それで変人男が今の境遇に至ったという字幕の説明が理解できない。また黒スーツの男が主人公をどう思っていたのか、何をしようとしていたのか結局不明だった。 また物語に関しては題名の「童話」の意味がよくわからないが、感覚的にいえば童話の中に自分が閉じこもって出て来ないのではなく、童話(または幼時の記憶?)を自分の中で大事にしながら現実を生きろということか?? ラストもどうなったのか不明だが、少なくとも親子一組は再出発できたのだろうからハッピーエンドのようではあった。 ほかに登場人物の人間模様も描かれており、それぞれの物語(断片的なものも含め)については連関が見えなかったが、これは各種ばらばらな人間像を詰め込むことで、総体として西門町という場所を表現しようとしたのかとは思った。  登場人物について、特に主人公が小柄で可愛いのは大変結構だった。演者の郭書瑤 Kuo Shu-yauという人は2013年の第50回金馬奨で最優秀新人賞を受賞したとのことだが、10代の頃には“「童顏巨乳」等特色”によってグラビアアイドル的な人気があったようで、この映画でも確かにそういう感じは出ている。映画としてはわけがわからなかったが、この人の印象がよかったので悪い点数はつけられない。
[インターネット(字幕)] 6点(2022-01-15 14:47:46)
16.  まごころを両手に 《ネタバレ》 
台北発メトロシリーズ(台北愛情捷運系列)全7作の一つである。新北投駅に近い「北投温泉」の話とのことだが、ほとんどは主人公の住む旅館内で進行する。 北投温泉というのはもともと日本統治時代に発展したとのことで、主人公の旅館も板敷の廊下に畳敷の部屋で宴会しているなど、まるきり日本風の造りに見える。この温泉街は1970年代まで”色情業”のおかげもあって繁栄したらしいが(それで日本人も多かったのか?)、その全盛期も昔のことになり、今は代わりに健全な温泉街になったということらしい。  邦題は適当に付けてあるが原題は「5つ星の干物女」であり、内容的にも題名にふさわしいコメディになっている。最初から最後まで大笑いというわけでもなく、登場人物がカメラ目線で語る手法もそれほど面白くはないが、評価員が上から何か取る(返す)のが少し可笑しいのと、旅館に「笑いが渦巻く」表現として意味不明な大笑いをしているのは失笑した。奇怪なブタのほかキノコが重要キャラなのも悪くない。 物語の面では、主人公の祖母と昔の日本人との関係がまるで「海角七号」(2008)のようで、生の日本語の台詞が多かったのも似ている。その映画で男女が別れたのは戦後に台湾が日本統治下から離れた時だったのに対し、この映画での1972年は日本が中華民国と断交した年なのも意味ありげだったが、別に政治的なことは関係なかったらしい。日本の男が責任放棄したのは倫理的に大問題ではないかと思ったが、そこはうまく決着をつける一方、別の人物を悪役にしてしまったのは気の毒でもあるが、それも最後は丸く収めた形になっていた。 最後は祖母と主人公だけでなく、ふしだらな関係に見えた男女までもがしあわせ感に浸る終幕だったので、結果的には悪くない映画だと思わされた(結構好きだ)。  登場人物としては、特に葉星辰 Stars Yeh という人が演じた1972年の祖母が可愛い(結構好きだ)。主人公役の柯佳嬿 Alice Koという人は顔だけ見ると美形でクールな印象だが、この映画では可愛いとも断言できないが愛嬌のあるコメディ役者になっている。 ほか人気モデル役で出ていた莫允雯 Christina Mokという人も、本来こんな安いイメージのタレントではなかったらしい。劇中この人気モデルのPR映像は笑いどころがよくわからなかったが、これは本人が出演した新発売のオシャレな魯肉飯(時尚滷肉飯 新上市)のCM映像を、本人の紹介として無造作に転用した想定だったと思えばいいか。
[インターネット(字幕)] 6点(2022-01-08 14:06:01)
17.  この街に心揺れて 《ネタバレ》 
台北発メトロシリーズ(台北愛情捷運系列)全7作の一つである。駅名は大橋頭駅だが、地名としては河港のある「大稻埕」(だいとうてい)という地域の「迪化街」(てきかがい)とのことで、レトロな洋風建築と近所づきあいの残る古い市街地のようだった。なお邦題は雰囲気で適当に付けてあるので気にしなくて構わない。 物語的にはもう若いともいえなくなってきた男女のラブストーリーだが、特徴的だったのは原題と英題のとおり、恋物語に数学を結びつけたことである。相手の男は数学者だが視野の狭い専門バカでもなく、一見無関係な技術や数理に即して人間界の真理を語る特性というか能力があったらしい。最終的に重要だったのは「オイラーの等式」なるもので、これは文系の立場からすると忌避感を催す言葉だが、要はそれ自体が一見無関係な全く別のものをつないで調和させている点で、「縁」を象徴するものと意味づけたのがこの映画としての工夫らしかった。 ちなみに主要人物のほかに、世間の男女間をやたらに繋ごうとする変な若い男が出ていたが、これはシリーズ全体に関わる存在のようで、今回限りでは意味不明だがとりあえず大目に見ておく。  ところで別に台湾映画に詳しいわけではないが、どうも他の映画で見た要素が多く使われていた気がする。なぜか日本人が出るのは「海角七号」(2008)など、幼時の記憶は「トップガイ」(2014)、外国在住で帰郷を迷うのは「幸福路のチー」(2017)を思わせたが、これはいちいち真似しているというよりも、向こうでよくあるパターンだということか。ラストが空港だったのも、少し前に「風が踊る」(1981)を見たばかりだったのでまたこれかと思わされたが、今回なりの決着の付け方としては悪くなかった。 ほか個別の場面で結構いいところがあり、「女性が不機嫌なときは…」というのは先人の知恵を思わせる(魯肉飯5杯食いたい)。また家系が敵同士?だというのをロメジュリで茶化したのは、些細なことでも創意の働く基礎的なレベルの高さを感じさせる。即興でキラキラ星の変奏を連弾していたところでは、こんな特技があるとは聞いてなかったので反則だと思ったが、このあたりから主人公も可愛く見えて来た。 主人公男女以外では男の叔母が感じのいい人物で、甥が物事を数学で語ろうとするのに対し、歴史を語ることで対抗していたのは笑った。「肝心な時に決断しないと…」というのはその通りだ。向こうの人はちゃんとわかっている。
[インターネット(字幕)] 6点(2022-01-08 14:05:59)
18.  TOP GUY トップガイ 《ネタバレ》 
台湾の空軍パイロットの話である。これより少し前のトルコ映画「スカイ・イーグル」(2011)と似た感じがある。 無名の外国映画の邦題が全く信用できないのは当然として、この映画に関しては英題の “Dream Flight” は正しい(原題の「想飛」も同じ意味か)。半分は訓練学校での話なので、トップを目指すどころかまずは一人前になるため奮闘している印象がある。 戦闘機映画として売る思惑もあるのだろうが、前半ではT-34練習機(プロペラ機)が主役であり、ほかにAT-3練習機(ジェット機)が少し映る程度である。その後は主人公の乗機になった国産戦闘機IDFが前面に出るが、映画宣伝に名前の出ているミラージュ2000は実機が少々、またF-16は申し訳程度の出番だった。  全体構成としては、前半はラブコメ風の青春物語、後半は主人公と妻が夢をかなえるまでの話になっている。病気とか死亡事故とか食器が落ちて割れるとかのありがちな展開もあり、またオズの魔法使いと星の王子様のどっちが大事かわからないといった統一感のなさもあるが、最初から軽目の娯楽映画(男女兼用)と思っていればそれほど問題ない。個別の場面としては、主人公が屋上でシミュレーション飛行する背景にピアノ曲が流れる場面は好きだ。また唐突な「紅の豚」には失笑させられた。 音楽面では主に“Over The Rainbow”が耳に残るが、ほかに序盤のラブコメ部分でChappieというキャラクターの歌「Everyday」(Monday 早起きはいつだって苦手なの...)というのが流れたのがこのパートの雰囲気を反映していた。  ドラマ的には“心の目で見る”というのが一貫していたらしい。終盤のDream Flightは思い切りファンタジックな場面だったが、かえって戦闘機映画の出来損ないなどと言わせない確信犯的な意志が感じられ、結果的には悪くないと思わされた(正直少し泣かされた)。またラストで冒頭と同じ時代の回想場面に戻ったのは、この時から二人の未来が運命づけられたという意味らしく、子ども時代からの素直な空への憧れが感じられたのも悪くない。世間の評判がどうかは別として、個人的感覚としては結構しあわせ感に浸れる映画だったので、少しいい点を付けなくては済まない気分だった(少し長いが)。 なお登場人物では、特に主人公の妹の笑顔にかなり和まされた。主人公には台湾の空を守る任務があるにしても、この家族や妻のためにもとにかく無事でいてもらわなければ困ることになる。要は敵が攻めて来なければいいわけだが。
[インターネット(字幕)] 6点(2021-12-18 10:31:45)
19.  風が踊る 《ネタバレ》 
1981年製作とのことで、街の風景や背景音楽などに(日本でいえば)昭和っぽさがある。基本的にはラブコメ風の映画だった。 撮影場所としては澎湖島、南投県鹿谷郷と台北である。澎湖諸島は亜熱帯と熱帯の境界付近で温暖な気候のはずだが、劇中では寒風の音まで入れて妙に寒々とした印象を出していた。また鹿谷という場所は変に霧が出ていて見通しがきかないと思ったら、主人公男女が子どもらと一緒の場面では日も照っていたりして、これは登場人物の気分の変化も表していたかも知れない。  物語的には自由恋愛を志向したものだそうで、実際そのように見える。相手の男が、当初は辺境の漁村に寂しく住む視覚障害者のように見えていたが、実は正体が全く違っていて視力もすぐに回復した、というのはかなり都合のいい展開に思ったが、このことで男の地位や女の美醜と関係なく、人間の本質的なところに惹かれ合ったことが表現されているらしい。 また途中までは主人公が平気で人を騙すのは困ったやつだと思っていたが、その上に婚約者を捨てて別の男に走るのでは倫理的に大問題ではないかと思っていた。しかし婚約のことは古風な父親に言われていただけで、それよりも「きちんと約束した」方が大事だというのは、古いしきたりに縛られない本人の主体性と誠実さを示している。なお当初、主人公は香港の男と同居しているのかと思ったが、実はそうではなかったと考えられる。 終盤は少し意味が取りにくかったが、男が来るかどうかで結婚自体が左右されるわけではなく、主人公としてはもう心を決めていたということらしい。その上で、旧世代のように結婚に縛られるのか、結婚しても自分として生きられるのかが問われていたのだと思われる。  ほか社会的なことに関していえば、当時の台湾はまだ一党独裁の戒厳令下にあったわけだが、主人公が学校の規律にあえて従わないなどは、社会的な束縛にこだわらない自由な気風があったことの表現かも知れない。主人公が「仰げば尊し」(「靑靑校樹」)に適当な歌詞をつけて子どもらに歌わせていたのは笑った(注:「前途は はるかに、人生は洋々と…」からは元の歌詞でちゃんと歌っていたらしい)。 そのようなこともあって、自分の世代的な感覚からすれば、ほどよいリベラル色の出た映画で悪くないと思った。なお最後の「恭禧發財」は、字幕に書かれた観客向けの言葉というより二人への祝いの言葉ではないかと思ったが(不詳だが)、何にせよ悪くない趣向だった。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2021-12-11 11:04:45)
20.  新・幽幻道士 立体奇兵 《ネタバレ》 
本来は3D映画として制作されたそうで、原題の「立體奇兵」とは終盤に出た赤青の連中がそうだったらしい。確かに、3Dの効果を出すためかカメラに向けた前後の動きが目立つようだった。 今回は設定が初期化されたようで、金爺爺がもともといた「義荘」(第3話冒頭場面のナレーションで説明があった)に最初から少年2人と美少女がいる形になっている。親方と孤児連中の旅という設定はないものの、町内でキョンシーによる殺人事件が起こって疑いをかけられるなど、このシリーズとしてはオーソドックスな印象がある。  内容としてはちゃんと子どもら主体の物語ができており、前回とか前々回のように大人が悪ノリしている印象はなく、コメディ要素にも抵抗なく笑える映画になっている。ベビーキョンシーが敷居につまずいたのに笑わされ(子役は痛くなかったか)、また痒みの素?とか八卦ボックスのようなアイデアも面白かった。最後は残念ながら悲劇に終わっていたが、まずは笑って泣いてという普通の娯楽ドラマの範疇と思われる。 また決戦時の人形の館がファンタジックな作りなのも楽しい。伝統色ある異形の兵団が次々襲って来るのはイマジネーション豊かで、小さい子ならこういうのを喜ぶのではないかと思った。獅子舞が出現したのは変だったが、幇間のようなキャラの坊主頭が青いのがまた可笑しい(気色悪い)。奇兵が消える時のワオンという効果音も面白かった。 このシリーズは初回が好評で第二作を作ったあたりが頂点で、三作目からは低落するばかりというパターンかと思ったが、この新作は子ども向けという基本姿勢を守ったことで、かえって大人も安心して見られる(笑える)佳作になっている。大人の立場としても、子をもって初めて人の道の何たるかを知る、という程度のドラマはできていたかも知れない。  登場人物としては、前回の孤児役5人が少し役どころを変えてまた出ており、前回はグループ中の一人だった美少女が今回はテンテンの地位に昇格したのは順当に見える。もとのテンテンより少しきつい顔に見えるが基本的にかわいいので問題ない。また前回の監督の娘も再登場しており、かなり特別扱いの役をやっている。前回と違って大人の女性の面での見どころはなかったが、子役が微笑ましいので結構だ。ベビーキョンシーも相変わらず愛嬌のある顔を見せている。
[インターネット(吹替)] 6点(2021-11-27 11:27:46)
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