1. レッドタートル ある島の物語
《ネタバレ》 ブログではほかにいろいろ書いているが、ここではとりいそぎ、イカダを破壊する海の中の何かについて検討しよう。 男は島を脱出しようと、竹でイカダをこしらえて、それに乗って沖に出る。しかしその度に、イカダの底をドーンと突き上げる何かに襲われ、イカダは破壊されてしまう。男が海中に顔を沈めその何かを探すが、すでに姿はない。男は泳いで島に引き返す。これを3回くらい繰り返す。3回目にレッドタートルと出くわす。 この流れで行くと、最初のドーンの正体は、じつはレッドタートルだったのではないか、と推察できる。確証はないが、レッドタートル以外には考えにくい。無人島が男を逃がさないためにやってるのかもしれないとも考えたが、だとしたらなぜ無人島はあの男を必要としたのだろう。 でもそれはレッドタートルにも同じことが言える。なぜレッドタートルはイカダを破壊してまで男を無人島にとどめようとしたのだろう。 ネットのどこかのレビューでは、「レッドタートルが男に惚れた」という意見があった。うーん、まあそうとも取れるかもしれないけど、だとしたらなぜ映画のラスト、レッドタートルはあの行動に出たのだろうか。いまいち僕はつなげられない。 それに惚れた相手に、あんなイカダをぶっ壊すという暴力的な方法でアプローチするだろうか。なぜ1回目2回目は姿を現さなかったのだろうか。 僕はレッドタートルによる、男への仕返しだと思う。 そもそもこの映画の主題となるはずのレッドタートルの身振りそぶり、運命、意志すら解釈がビローンと広がってしまう。それこそがジブリの意図だとするならば、あのころのジブリはいずこへ? ただ少なくともラストシーンの、男の手をそっと撫でるカメの前足の優しさと、海に向かう後ろ姿には、力強い何かまっすぐな思いを感じずにはいられなかった。それが何なのかは、よくわからーん。 [映画館(邦画)] 7点(2016-11-05 22:36:01) |
2. ニンフォマニアック Vol.2
《ネタバレ》 映画終盤、「もしこの映画の主人公が、男だったら、凡庸な話になっていただろう」と語られる。凡庸、つまり、どこにでもあるありきたりな話。この映画はもちろん女性が主人公。確かに凡庸な映画ではなかった。それは主人公が女性であるというよりも、主人公を”演じる役者が女性”だったからだと思う。とにかく性的な描写が次々に押し寄せる。もう少しでポルノ映画じゃね?と判断されかねないすれすれのところまで攻めてくる。脚本というよりも、映像から届けられる情報が強力で、凡庸さは無かった。そもそも僕たち(野澤もりやいちはらかわせ)はラースフォントリアーっていう時点で凡庸だなんて少しも思っていない。 だけども一通り映画が言いたいことを言い終わったとき、つまりなぜ主人公の女があの煉瓦作りの暗い路地で血まみれで倒れていたかが判明したとき、その理由を女性自身が老人に語るシークエンスは、凡庸であった。まるでそのへんに転がっている大衆映画のような、きれいな終わらせ方だ。なんだよラースフォントリアーのくせにこんな終わらせ方でいいのかよ、もうラースフォントリアーの映画観なくていいや!って思わせてからの、あの、とどめの、老人の、老人の、行動!からの、暗転中の会話と銃声と足音!これぞラースフォントリアー!それでこそラースフォントリアー!ありがとうラースフォントリアー!死ねラースフォントリアー!二度と映画なんか作るなラースフォントリアー!僕は一生あなたの映画観つづけます! 結局、やっぱり凡庸な映画ではなかった。 それでも中盤、主人公の女の心境にどうしてもついていけないところがあったのは確かだ。一番首をかしげたのは、セックス依存症の女性たちの集まりで暴言をまき散らすあたりだ。そのまま車に火を放つ謎のシーンが投入される。さすがにむちゃくちゃじゃないか。 あの集まりが行われる場所が、舞台と客席がある施設であることを見逃してはいけない。あの環境は、そこにいる人物を「演じさせる」ように思う。だからあの暴言のシーンは、意外と主人公の女性の本音ではないんじゃないかと思う。もっと優しくて人の気持ちを慮れる人だと僕は思う。だからこそ暴言がどうもしっくりこないままでいる。 [映画館(字幕)] 8点(2014-11-23 21:59:08) |
3. ニンフォマニアック Vol.1
《ネタバレ》 監督の醍醐味である、「悲惨な女の半生」はまだ息を潜めている。きっとボリューム2で開闢するだろう。ラストのラストで、その嫌な予感が漂い、ボリューム1は終わる。あの終わり方はワクワクする。 ちょくちょく図や数式やサンプル映像が用いられる。ドグマ95の誓いをとっくに無視して映画撮っているけど、それは結構前からだから、もうどうでもいい誓いなんだろう。 このように、ラースフォントリアーにしてはずいぶん、映画を観る人を楽しませようとしているなと感心した。昔はもっと一方的に悲惨な女をスクリーンに叩きつけていたと思うが。監督も丸くなったのかな。 ボリューム2に期待。 [映画館(字幕)] 7点(2014-10-17 00:14:27) |
4. ありふれた事件
《ネタバレ》 フランス語って野蛮だな。 [DVD(字幕)] 7点(2014-09-23 00:35:54) |
5. ミスター・ノーバディ
《ネタバレ》 僕も時々思うことがある。信号待ちをしているとき、もう1メートル前に立つだけで、僕は車にはねられ、大けがをする。全く別の人生に分岐していく。もっと軽い分岐だってある。朝食をパンにするか、ごはんにするか、それでもその日一日の人生は異なるものになるだろう。 しかし我々は、時間が不可逆なわけだから、必ずどこかひとつのルートしか進めない。 でも、今の自分とは違う別ルートをすすんだ自分ってのも、存在しているのだ(多世界解釈)。この映画では、それら別ルートの人生を一通り旅していくことで、最初の分岐点(駅のホーム)へと収斂していく様は圧巻だ。 それぞれの人生ルートを回覧してみて気付いたが、この無数の多世界すべてをひっくるめて“自分”なんだなと。 [DVD(字幕)] 9点(2013-03-14 23:46:35) |
6. 変態村
《ネタバレ》 フィリップナオンが出てるから見てやった。 もっともっと理不尽におねがいします。 [DVD(字幕)] 6点(2008-01-03 23:49:58) |
7. ダーウィンの悪夢
そもそも僕は魚が苦手でして、加工工場の様子の方がスラムの現状よりも残酷でグロかった。 解説や音楽なないため、映画として盛り上がることは無いが、それなりに楽しめるので見といてもいいだろう。こんな映画見たって、なんとかしなきゃとかは感じない。 [DVD(字幕)] 7点(2007-08-14 23:47:32) |
8. ノー・マンズ・ランド(2001)
あの二人が、あの時、仲良くなれたら、きっとそんな感じで戦争はなくなり世の中は平和になっていくのでしょう。でも、ヨーク考えると、あんな状況であの二人が仲良くなれるわけない。だからこの戦争はおわらないんでしょう。それくらい平和って難しいことなんですな。報道陣が一番無関心で最前線の連中に感情移入している我々にはうっとうしい存在に見えるが、かれらがテレビで世界にブロードキャストすることによって彼ら最前線の皆さんは存在が確認できる。その網にかからない人たち(この場合地雷男)に一番の悲劇があることを知らず。くだらねえ。 [DVD(字幕)] 9点(2005-08-06 20:40:49) |
9. ベルヴィル・ランデブー
日本はアニメが凄いと言われていますが、日本人にこのような作品を創ることが果たしてできるのでしょうか。こんなアニメはじめて見ました。びっくり。大型船とかフランス人独特の顔つきとか四角い肩の男達とか、かなーり無理のある造形ですが、ああやってこそ出てくるリアリズム、匂い、空気がたまらなくおいしい。つっこみどころ満載の傑作。 9点(2005-02-02 00:27:38)(良:1票) |
10. 岸辺のふたり
《ネタバレ》 8分がどうのこうのではなく、もうこれは僕自身のこれからの人生を考える上で欠くことのできない映画になりました。時代が変わり、岸辺が枯れてしまっても、(あるいはコンピューターに人類が支配されても)本当に大切なものを忘れないでいたい。ただ遠くを見晴るかすだけでもいいや。あの娘は父と離れて以来、たびたび寂しい想いをしていただろうが、友人や家族、大切な人たちに囲まれて、そしてあの木陰を通るたびにほのかに父を感じて、幸せだったと思う。スクリーンの水彩画はそこまで説明してくれないから、そう勝手に鑑賞してもよいではないか。 ですが、。 上映時間が短いからなのかさすがにチケット代は遠慮していたが、2回上映したのは蛇足に思えた。しかもその幕間に、この映画を観た著名人たちの感想が流れ出す始末。僕はそれまでの至高の8分間で最高の気分になっていたというのに、誰だか知らないが他人の価値観を流し込まれ、それをふまえた上でもう一度ご覧下さいというのはいったいなんなんだ、そうやって上映しろと誰が言い出した。1回観させていただいたので本当に満足していますから。上映方法にマイナス1点・・・ 9点(2005-01-24 01:09:26)(良:1票) |