1. パンズ・ラビリンス
《ネタバレ》 初めて聞く名前の監督だったが、このページを見て、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトウ監督の作品に色々関わっている様子で、なるほど、と思った。一見、「ミツバチのささやき」の色々な面を。突出させてドラマティックにした作品という印象で、光と影のコントラストの見事さもあって、ビクトル・エリセ監督の影響が大きいのかなと思ったけれど、どちらかというと、「バベル」や「アモーレスペロス」の中で描かれているような現実の残酷さの中に、少女の逃げ場としてファンタジーを織り込んだ作品なのだろう。戦争、少女の妄想、ゲリラをかくまう逞しい女と、ひとつひとつのエピソードはそれほど斬新ではないのだけれど、正反対のものを組み合わせているというのにきちんとまとまっていて、構成がとても斬新だった。無理にハッピーエンドにしていないところもいい。 [DVD(字幕)] 8点(2009-04-05 16:23:14) |
2. モーターサイクル・ダイアリーズ
私もよく旅行に行く。箱根に行ったり沖縄に行ったり北海道に行ったり。お金が貯まればサイパンやハワイ。時間があればヨーロッパ。そう、お金と時間があれば、誰でも旅に出る事は出来る。でも旅先で、何かを感じ取るには才能がいる。チェ・ゲバラの豊か過ぎる感受性が、南米をまわりながら何を見て、何を感じ、後の革命へと彼を駆り立てて行ったのかが克明に描かれていて、ひたひたと感動出来た。その豊かさが彼を英雄にし(偉い人は沢山いるけれど、英雄の名を冠される人物は、ほんとうにごく僅かだ!)、しかし若くして銃弾に倒れるという末路を導てしまった。人間の幸福について、考えさせられる。南米の煤けた広大な景色と、4色モノクロの撮り方、おざなりとも思えるほど、わざと荒く繋いだ沢山のエピソード(まさにスクリーンで観るべき映画)。その中で時折見せるガエル・ガルシア・ベルナルの美しい笑顔が、とてもキュートで、印象的だった。 9点(2004-10-30 13:23:18) |
3. ウェルカム!ヘヴン
とっても面白い映画になれる要素がたくさんあるのに、どこか重大な部分が抜け落ちて失敗している作品。それはボクサーの魂が持つ意味がけっきょくうやむやに終わったせいかもしれないし、人間になる云々の所が説明不足で、無理矢理纏めた感が拭えないせいかもしれないし・・・う~ん、判らない。判らないけど何かが足りない。キャスティング最高! ファニー・アルダンとガエル・ガルシア・ベルナルの組み合わせって、相当ありえないのにすごく自然で笑えた。ペネロペも可愛かった。彼女のが演じたキャラクターではコレが一番好き。そしてハビエル・バルデム!! 美味しすぎです。絵の見せ方も、お軽い映画なのにヨーロッパらしい濃淡があって飽きなかったし、登場人物が皆でコスプレしているみたいな衣装も楽しかった。う~ん、つくづく惜しい。 7点(2004-06-07 10:56:53) |
4. アモーレス・ペロス
エネルギッシュで、無鉄砲で、痛々しくも愛おしい一話目。年齢的に、立場的に、一番共感してしまった二話目。淋しさが心に滲みる三話目。街で出会う全ての人の背中に、悲しみと愛が詰まっているという当たり前の事を思い出させられる。観客は、犬たちの様に一歩引いて、人間たちの愚かしさを眺める。そのテーマを、面白く感動的に練り上げたストーリーが見事。言葉の羅列ではなく、場面と表情で見せる撮り方もこの映画にしっくりはまっていた。犬を飼う者のひとりとして、犬と人間の関係の描き方にも、とても好感が持てた。残酷なシーンも多いけれど、愛情以上の尊重を感じる。これは相当見事な映画だと思う。年齢の節目ごとに見たい映画。(オクタビオの兄ちゃん、三都主に激似) 10点(2004-04-12 00:47:43)(良:1票) |
5. 天国の口、終りの楽園。
《ネタバレ》 えげつないセックスと、どうでもいい会話のオンパレードに、自らみっともない程割り込んで行く人妻に、途中まで「何だこりゃ?」状態で見ていました。でも最後に、ルイサの行動が、自分の身体の事を知った上のでの事であったと知って、涙が出る程感動してしまった。若い二人の圧倒的な生命力(それはいつか必ず失われてしまうものだからこそ、汚らしいのに美しい)の中に身を置きたい気持ちが、痛い程伝わって来る。もう絶対に戻る事は出来ない輝きを、正面から見据えた、勇気ある女性の、誰にでも起こりそうでいて、起こらない情景。いい映画だと思います。 9点(2004-03-31 10:02:02)(良:2票) |
6. レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード
観終わったあと、アルトマン監督は偉大だとしみじみ思った。彼の作品で一番最近観たのは「ゴスフォード・パーク」だけど、あれだけ沢山の人物が入り乱れて絡み合い、それなのにひとりひとりの描き方が秀逸で、人物が背負うものが、短い時間の中でしっかりと感じ取れた。ロドリゲス監督は、アクション、アイデア、構図、カメラ。どれをとっても優秀な監督だと思うけれど、どうやら群衆劇は苦手らしい。すごくキャラの立つ登場人物たちが沢山出て来るのに、ひとりひとりの描き方が浅くて、人物像がこちらにリアルに伝わって来ない。きっと監督のノートには、楽しい設定が書き込まれているのだろうが・・・。ストーリーも無意味に込み入っていて、デスペラードの、単純でありきたりですらあるストーリーだからこそ、「ギターケースに銃を隠し持った殺し屋」という設定が生きていたという事を、しみじみと感じた。心待ちにしていた続編だけに、本当に惜しい。相変わらず身体をはった俳優陣の演技は素晴らしいし、色んな所がちょっとづつパワーアップしてて、楽しかったのに。3はあるのか!? 5点(2004-03-20 21:50:21) |
7. アマロ神父の罪
《ネタバレ》 倫理観と動物としての本能。どちらも本来は美しいものであるべきなのに、それがひとりの人間の中で交差する時、毒が生まれるというテーマは、とても興味深かった。また南米の砂っぽさの中の二人のラブシーンが、とても美しい。ハリウッド映画にはない耽美的な空気があって、揺すぶられるものがある。どんなバイオレンス映画よりも暴力的なラストはショッキングだったけれど、脚本はとても優れていると思う。主演のガエル・ガルシア・ベルナルがハマリ役。アラン・ドロンを彷佛させる容姿も◎。 8点(2004-03-20 18:15:00) |
8. フリーダ
良くも悪くもサルマの女王様映画。画家としてのフリーダのステイタスがあまり描かれていなかった点に多少不満が残ったが、カメラも演技も衣装も(ストーリーはもともと波瀾万丈な人間の伝記なのだから当然面白い)、合格点に達した佳作映画だと思う。あとは見る人がサルマを好ましく思うかどうかにかかっているのだろう。私はデスペラード以来彼女の大ファンで、彼女がいかにフリーダ・カーロに心酔しているかをインタビュー等で識っていて、主演から権利の獲得、資金調達までをこなした事を識っていたから、公開前からとても期待していたし、画家フリーダ・カーロに関する知識も多少頭に入れていた分、とても楽しめた。サルマのともすればひとりよがりになるがちな姿(女子高生役まで自分でやることはないと思う・・・)も、好感を持って見れたし、豪華な脇役陣を見ると、結構人望が厚い人なんだなぁと思う。「情熱」という言葉が、なんとも似合う映画。女性映画(観客の99%が女性だった)と思われがちだが、男性にも見てもらいたい一作。 9点(2003-10-12 20:08:32) |
9. ロミオ&ジュリエット
別に名作の冒涜とは思いませんが、この監督は、古き良きものをいじる事でしか個性が表現出来ないのかなぁとは思いました。 5点(2003-07-01 22:06:10) |
10. ザ・メキシカン
可愛い映画でほのぼの観れて、私は好き。でもこういう可愛らしい役をやるのに、ジュリアは少々キツイのでは? そろそろラブ・コメ女王の地位はキャメロンあたりに譲った方がいいかも。脚本が良い映画ですね。なんだかジョニー・デップの「ドン・ファン」に通じるものを感じる。小品佳作女性向ですね。この映画で、男性の「長袖Tシャツの上から半袖Tシャツを重ね着」スタイルが市民権を得た気がします。 8点(2003-05-01 17:07:20) |