1. 四つのいのち
カメラは定点。台詞はなし。ただじっとその場の光景を撮り続ける。動物の登場割合が多いので、そういう作品かと思っていたら、それだけではなくて、(タイトルにもあるとおり)「人間」とか「植物」もテーマであるようです。しかし、意図はそうであると分かっても、作中にそれが反映されているかといえばそうではなくて、つまりどうも自己満足で終わってしまっています。例えば動物の撮影なんかは、定点でじっと(しかもそれほど動かない動物を)撮っているのがかえって迫力を出したりはしていますが、それだけです。よって、雰囲気以上のものではありませんでした。 [DVD(字幕)] 3点(2024-06-10 23:51:22) |
2. NOVO/ノボ
《ネタバレ》 5分間しか記憶が保たない男と、その男に迫ってくるお姉さんの恋愛沙汰物語。すぐ気づくのは、その記憶が5分間だけという設定が、全然生かされていないというか、ディテールに反映されていないということ(結局、指のケガをめぐるくだりだけだったのでは?)。もっといえば、その設定がなかったとしてもそれほど差し障りがないようなやりとりしか行われていない。後半では、その陰には実は的な展開があるのですが、整理しきれていないため、裏返しインパクトもあまり感じさせない。そのため、前半にはまだあった独特の重々しさも、どこかに行ってしまいました。ムグラリスの魅力的な肢体(露出はそれほどありませんが)がもったいない。 [DVD(字幕)] 4点(2024-06-03 02:27:42) |
3. トリコロール/青の愛
ひたすらチマチマじめじめしている独善的な心理描写が続く、いろいろな意味で何とも辛い作品。ジュリエット・ビノシュだったからそれなりに見ることはできたが、通常レベルの俳優だったら破綻していたのではないかと思う。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2023-05-12 00:27:00) |
4. 幸福なラザロ
《ネタバレ》 いかにもそれっぽいけど、観念的で平坦な前半はあまり面白くない。突然大展開する後半の方が、近代的な風景と主人公の存在とのギャップに加え、前半との関係を何も説明しないからこそのインパクトも手伝って、見るべきものになっています。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2023-04-19 01:01:30) |
5. 戦場のフォトグラファー ジェームズ・ナクトウェイの世界
タイトルどおりに各地の過酷な状況を撮り続けたカメラマンのドキュメンタリーです(ただし、「戦場」に限定されたものではなく、例えば貧困にあえぐ人たちの生活だったり、戦争が終わった後にどうなっているかというような対象もあります)。彼のカメラそのものに付いているミニカメラ(?)で撮ったとおぼしき、被写体との立体的距離感も分かるショットも多数あります。その追求ぶりはなかなかなのですが、しかし、ドキュメンタリー映画として見た場合は、彼がそこに注目した理由とか、対象地までのアクセス経緯であるとか、そういう「彼自身」をもっと浮かび上がらせてほしいところでした。でないと、結局は彼が生み出した写真そのものに頼っているということになってしまいます。 [DVD(字幕)] 4点(2022-10-16 00:12:26) |
6. カレ・ブラン(2011)
とりあえず近未来っぽい雰囲気の中で、いろんな人たちが理不尽な目に遭わされるくだりが、断片的に続けられる。背景の説明はほとんどなし。まあ、あえて寸止めにすることによってかえってインパクトを感じさせるセンスは嫌いではないし、ところどころ、当たり前のように進むからこその怖さをもたらす部分もある。しかし、結局は表層だけの描写で終わっているという感は拭えないのですよね。あと、主人公の夫婦が夫婦に見えないのも難点。アクロバチックな演出をするからこそ、基本はきちんとしていないと。 [DVD(字幕)] 3点(2022-09-26 01:18:44) |
7. そして、デブノーの森へ
《ネタバレ》 アンナ・ムグラリスの、たとえ行きずりだろうが息子の嫁だろうが瞬時に陥落しても無理のなさそうな、芯の強い美しさ。オートゥイユの、冷静そうでいて肝心なところは小市民的な的確な表現。グレタ・スカッキの引き締め力(そしてこちらはこちらで色っぽい)。というわけで導入部のバランスは実に最高でした。ただ、作家の過去がどうこうという部分が前に出てからは、何かそれがこのドロドロの家族ドラマとかみ合ってないのですよね。キーパーソンのはずの息子は途中からどっか行ってるし、逆に嫁の友人の行動は妙に唐突です(それなら、最初にもう少し出番を作って楔を打っておくべきでした)。あと、いうまでもないことですが、ムグラリスの脱ぎっぷりの良さ、そして肢体の美しさは特級品レベルです。 [DVD(字幕)] 6点(2022-08-29 00:16:22) |
8. アルゲリッチ 私こそ、音楽!
アルゼンチン出身の世界を代表するピアニスト、マルタ・アルゲリッチについてのドキュメンタリー・・・なのですが、撮っているのが彼女の娘、というのがミソでありまして。当然のことながら、ドメスティックな話題(や映像)が多くを占めています。したがって、もともとこの人を知っている前提で、「なるほど、プライベートな場面ではこうだったのか~」という新発見をする見方だったら、これほど面白い作品はないのでしょうが、「そもそもこの人ってどういう(業績や技術のある)人かが知りたい」という観点であれば、解説やデータ提供が親切にあるわけでもないので、ほかのファミリーと何が違うのかがよく分からない間に終わってしまいます。そんなわけで、深く楽しめたわけではないのですが、作中における日本の比重が高めなのは、ちょっと驚きました。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2020-08-27 00:58:29) |
9. こうのとり、たちずさんで
《ネタバレ》 川越しの結婚式のシーンをはじめ、重量感とインパクトのある(ありすぎる)ショットはいくつもある。しかし、よく分からないのは、何で主人公をわざわざレポーターに設定して、その視点からの作品にしてしまったのかということ(この監督にはほかにも同じ手法はあるが)。しかもその上で、主人公が特に何がしたいわけでもなくああだこうだうろうろしているだけなので、結局はせっかくの作品世界が収縮してしまっている。 [DVD(字幕)] 5点(2019-09-09 03:13:46) |
10. アイガー北壁
《ネタバレ》 途中からはひたすら壁・壁・壁の世界で、見ているだけでめまいがしそうなほど映像としては強烈です。この撮り方の誠実性が、作品の存在意義を大きく支えています。一方、背景の人物描写なんかは割と簡素というかむしろぶっきらぼうなくらい素っ気ないのですが、そんな中でも、過酷な北壁と優雅なホテル内(そして途中からどんどんいなくなるギャラリー)の対比など、静かなメッセージも力強く伝わってきます。 [DVD(字幕)] 7点(2017-06-13 02:09:19) |
11. リスボンに誘われて
《ネタバレ》 たった一冊の本だけが原動力となって、授業を抜け出した教師がそのままベルンからリスボンまで行ってしまうという、何とも素敵な謎から始まる導入部。その後も、各俳優陣の的確な演技と表現によって、物語は気品を失わず、一本の糸がどこまでも紡がれ、いつしか全体としての織物を完成させていく(その間、同一場面多視点ネタもちらほら)。その過去の探求が、自らを「退屈な人間」と卑下する主人公にも、微かな、しかし確実な変化をもたらす着地点に収斂する様式美。どこまでもじっくりと味わい深い作品です。 [DVD(字幕)] 7点(2016-11-08 00:58:22)(良:2票) |
12. 汚れなき情事
《ネタバレ》 閉鎖的な女子校の中に潜む感情や思惑のぶつかり合いというテーマにはなかなかそそられるが、どうも突っ込み不足の印象を受ける。特に、日常的な一幕に見え隠れする官能性みたいな描写にあちこちでトライしているのは分かるが、元の人格設定が不十分なので、かえって上滑りになっている。あと、学校を舞台とするなら、その基礎として、授業やその他必修項目(この場合、礼拝とか)の描写はきちんとするべきでした。対外試合云々という象徴的伏線の残し方は品があったので、+1点。 [DVD(字幕)] 6点(2014-10-27 01:38:39) |
13. 女優マルキーズ
《ネタバレ》 マルキーズをどういう人物として描くのかという焦点がはっきりせず、単に成功と凋落の筋を追っていっただけであるため、演ずる側もどう演じていいのか困っているような感じ。結局、ソフィー・マルソーも、最初に楽しそうに踊っている場面が一番輝いており、それ以外はさしたるインパクトがなくなっている。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2012-05-11 23:57:32) |
14. マルタのやさしい刺繍
《ネタバレ》 ストーリーは大体予想できるのですが、その中でも、限られた場所的範囲の中にいろいろな人間関係を織り込み、ショップ関係だけの話に終わっていないのがよい。また、会話の1つ1つでも、最小限の一言にいろいろな背景を反映させており、無駄がありません。リージみたいなおばさん、近所に1人いたら本当に楽しいよね。 [DVD(字幕)] 6点(2010-12-31 19:39:36) |
15. 恋するシャンソン
歌の部分がただの「歌の挿入」にしかなっておらず、演技部分と一体化されていない、というかむしろ逆に明白に別物になってしまっている。この時点で私にとってはダメです。内容自体も、いろんな人が登場する割にみんな似たような感じなので、手法としての群像劇の意味がありません。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2010-05-31 23:41:45) |
16. コーラス
《ネタバレ》 すでに多数指摘されているとおり、少年たちが突然コーラスが上手くなりすぎ、立ち直りが早すぎです。コーラスの力で作品としての印象は良くても、人間ドラマとしては完成していません。生徒たち1人1人も、もう少し個性的に造形できなかったのかね。それをせずに先生が頑張って生徒を更生させたとかいっても、あまり説得力がありません。あと、校長もステレオタイプすぎですね。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2009-08-14 03:19:40) |
17. マーサの幸せレシピ
《ネタバレ》 主人公の無表情ディスコミュニケーションぶりが的確に描写されている前半は、結構期待していたのです。ところが、最後に至るまで、恋愛面での変化くらいは捉えられていても、料理人としての成長や、子供に向けた感情の動きといったものがほとんど表現されていない。これでは作品としての幅が少ない、というかもったいないです。ちょっとした部分での光る演出(子供がパスタを食べる場面とか)や、料理をきちんと美味しそうに撮るこだわりなどは見えているだけに、残念です。 [DVD(字幕)] 6点(2009-02-03 02:11:09) |
18. 愛と宿命の泉 PART II/泉のマノン
《ネタバレ》 Ⅰで地道に積み上げた伏線がⅡで開花しまくり、かと思いきや、Ⅱもやはり当たり前のやりとりを淡々と重ねている感じです。マノンがセザールを告発する場面など、一番大事なところなんだから、もう少し工夫してほしかったんだけどな・・・。ただし、ラストのデルフィーヌとの対面から収束に至る流れは切れが良く、作品の印象を高めています。それと、エマニュエル・ベアールの美しさはやはり強烈。それだけでなく、あの格好で山道や岩場を飛ぶように動き回っているのが凄い。 [DVD(字幕)] 7点(2008-09-25 02:57:14) |
19. 愛と宿命の泉 PART I /フロレット家のジャン
《ネタバレ》 国内公開時は、Ⅰ・Ⅱまとめて上映されてたような・・・。さて、もっともらしい邦題、仰々しい二部構成、しかもそこで泉をめぐる愛憎人間模様が展開されるとなれば、壮大かつ華麗なドラマ絵巻を期待してしまうところですが、予想に相違して、なかなか地味な内容です。カメラはひたすらジャンの地道な農作業を追い続けます。立ち枯れた作物のショットなどどきっとするところもありますが、大自然の脅威や作業の過酷さがフィルム内に適切に切り取られているかというと、そうでもありません。一大重要場面のジャンの死のシークエンスなど、コメディチック(!)ですらあるし・・・。というわけで、何かが起こりそうで起こらないまま、Ⅱに続きます。 [DVD(字幕)] 7点(2008-09-25 02:49:10) |
20. ベジャール、バレエ、リュミエール
何の予備知識もなく見てしまったので、どのシーンにどういう意味があるのかよく分からないところが多かったです。が、各ダンサーの引き締まった動きや、どの場面でも情熱とエネルギーあふれるベジャール氏のパワフルさは印象的でした。普段見ることのないジャンルだったので、とりあえず好奇心は満足できました。 [DVD(字幕)] 6点(2008-06-12 00:59:35) |