1. コウノトリの歌
《ネタバレ》 アメリカ側からベトナム戦争を描いた作品は多数あるが、本作はベトナム側からベトナム戦争を描いた作品であり、希少な作品だ。 戦争の爪痕は戦争が終わった後も、心の傷として残る。 戦争はあってはならないと見る者に語りかけ、この物語は終わる。 アメリカのベトナム映画だと、大抵はベトコンが得体の知れない不気味な存在として描かれる事が多い気がする。 それに対し、本作はベトコンを血の通った、ごく普通の人間として描いている。 むしろこれは至極当たり前の事なのだが、アメリカ映画ばかり見ていると、こんな当たり前の事すら分からなくなってしまうから恐ろしい。 ベトコンにも愛する人と家族があり、その人達との別離を悲しみ、そして戦争を誤ったものと感じている。 この当たり前の事を理解できただけでも、本作を見た意味はあったと感じる。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2021-07-13 16:51:29) |
2. 草原に黄色い花を見つける
《ネタバレ》 トラン・アン・ユン監督でベトナム映画に好印象を持っていたが、本作はそこまでの作品ではなかった。 映像美に関してはかなりの高水準。 ただし話の内容が私には真面目過ぎたかな。 少年が恋をする。 それで恋煩い。 どこの国でも同じだ。 ただのこの少年があまりにも情けなすぎる。 弟に嫉妬して暴力を振り、それで反省して泣く。 まあ子供だから仕方ないのかもしれないが、あまりにも情けなすぎて感情移入が難しい。 自分勝手だしね。 後半は尻上がりに良くなったので、この点数で。 [インターネット(字幕)] 5点(2020-07-24 12:01:21) |
3. 1735km
《ネタバレ》 ベトナムを長距離列車が突き抜ける。 1735kmの旅。 その列車内で男女は偶然出会う。 そこで繰り広げられるロマンス。 そして別離、再会のエンド。 そつがない流れで、ロードムービーにロマンス要素が絡まり、しかもベトナムの風景が、趣向を凝らした映像で見事に画面に焼きついている。 しかししかし、こういった好条件が全てそろっているのに、なんか物足りない。 何故だろう。 おそらく、表現がわざとらしく、しかも、とってつけたような偶然の連続によるストーリー展開に、無理があったからではなかろうか。 音楽の使い方もそれほど良いともいえない。 しかし、映像感覚は素晴らしいものがある。 映画先進国のように洗練された演出がなされていれば、ロマンス・ロードムービーの傑作として、アジア圏を代表するような傑作になったに相違ない。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2008-10-21 20:22:36) |
4. 青いパパイヤの香り
少女役の女のコがとにかくかわいい! そして微妙なエロスを感じさせるところもグッド! 全体的にゆったりとした展開なので、多少イライラ感も出るが、やはりトラン・アン・ユンの作品は良いですね~ [DVD(字幕)] 6点(2007-10-13 10:26:36) |
5. 夏至
撮影を担当するのは、リー・ピンビン(マーク・リー)。 彼が撮影を担当した作品の中で、既に私が観たのは『花様年華』『フラワーズ・オブ・シャンハイ』『珈琲時光』『ミレニアム・マンボ』『戯夢人生』等で、意外に沢山あったりする。 しかしそれに気付いたのは、今回の『夏至』を観てのこと。 それまでリー・ピンビンがこれらの作品の撮影担当だったことは知らなかったし、名前すら知らなかったのだ。 彼の映し出す映像は、かのクリストファー・ドイルを思わせる。 上の作品群を見て気付いた方もいらっしゃると思うが、『花様年華』はドイルの代表作の一つだ。 じゃあなぜリー・ピンビン?となると思うが、『花様年華』に関しては二人で撮影を担当している様だ。 ドイルは『地球で最後のふたり』を観て以来ファンだが、この『夏至』を観てリー・ピンビンのファンにもなってしまった。 『青いパパイヤの香り』はまだ荒削りの感じがあった。 トラン・アン・ユン監督の描く、いわば“癒しの映像”がまだ中途半端だったのだ。 しかし今作『夏至』では、その瑞々しき映像が徹底的に追究されている。 これは半端じゃあない。 「ベトナムはきっとこんなには美しくないんでは・・・」と、余計なことを考えてしまうほどの、息をのむ美しさなのだ。 ストーリーは何てことのないものだし、正直、途中で少し眠くなってしまう様な内容だ。 しかし、この監督の描き出す「ベトナムを超越したベトナム」と、リー・ピンビンによる「美しすぎる映像」とが、それを帳消しどころかプラスにしてくれる。 特に三女とその兄とが暮らす部屋のインテリアは、“素晴らしい”の一言。 この部屋のインテリアを観れただけでも、この作品を観た価値があったと思える程だ。 その色合いの美しさに圧倒されてしまった。 よく、「映像だけ素晴らしい映画は映画とはいえない」みたいなことを耳にするが、そんなことは関係ない。 観ていて心地よくなれる映画なら、それでいいのだ。 どんなに名作と呼ばれ、どんなに評判の高い娯楽作品でも、“心地よさ”が得られなければ、私にとってはどうでもいい作品であるからして。 そういう意味でこの『夏至』は、今後繰り返し観ることによって、ぐんぐん点数がアップしていくことになるかもしれない。 [DVD(字幕)] 8点(2007-09-01 20:39:50)(良:1票) |
6. シクロ
トラン・アン・ユン監督の作品は、『青いパパイヤの香り』『夏至』そして本作『シクロ』と、3つとも全て観ましたが、その映像美は素晴らしいの一言です。 特にその映像の持つ独特のみずみずしさは、唯一無二のものがあります。 監督はフランス・パリ在住のベトナム人というお人ですが、フランス的なセンスとアジアの美しさとが見事に融合した高いレベルの作品を撮る監督さんです。 特に本作『シクロ』と『夏至』は素晴らしい出来ですね。 監督の奥さんが3作とも出演しているんですが、いくつになっても美しい女優さんです。 [DVD(字幕)] 8点(2007-08-29 01:26:17) |