1. 英国王のスピーチ
《ネタバレ》 心に響く作品となっている。派手さがある作品ではないが、“重み”のある作品に仕上がっている。ストーリーは展開に大きな動きのあるものでもなければ、単純に感動を煽るようなものではなくて、シンプルに構成されているので、アカデミー賞を受賞した傑作の感動作という印象とはやや異なるものの、最後のスピーチに全ての想いが結実されており、評価通りの良作といえるだろう。国民を守る王として、一緒に戦ってくれた友の期待を応える者として、自分を影から支えてくれた妻をもつ夫として、幼いながらも父を理解してくれる2人の娘を持つ父として、あのスピーチにはを感じられた。様々な想いの中で、様々なプレッシャーの中で、紡ぎ出される一つ一つの言葉には心を動かされざるを得ない。 また、王室としてのプレッシャーや、難局を迎えた王の地位としての“重み”もあった。兄の退位による戴冠、戦争を迎えるという状況がマジメな彼をさらに追い込んだように思えるが、マジメさとユーモアさを兼ね備える彼だからこそ、この難局をも乗り越えたように思える。ジョージ6世が最後までローグをライオネルと呼ばなかったように思えたが、果たしてどうだったのだろうか。もしそうならば、ジョージ6世らしさがよく出ていると思う。王という地位の重さを知るジョージ6世だからこそ、対等な立場で付き合いたくてもそれを許せなかったのだろう。王の代わりに王妃がライオネルと呼ぶ展開も、王の気持ちを痛いほど分かる妻の気持ちが込められているように感じた。それだけ威厳が必要な王だからこそ、逆にライオネルは王と対等の立場で向き合わなくてはいけなかったのだろう。対等の立場に立たないと、悩みを抱える者の真の心の声は聞こえないのかもしれない。彼は、戦場で傷ついた兵士にも、小さな子どもにも、対等な立場で向き合ったのだろうと思われる。王としての立場を守らなくてはならないジョージ6世と、対等の立場で問題を解決しなくてはならないライオネルとのベクトルの違いというものも本作をより深く、より面白くさせている。最後にライオネルがバーティではなくて、陛下と呼ぶことで、さらに深みが増している。 とてつもないプレッシャーの中で吃音症を乗り越えたのだから、現代に生きる我々が抱えるプレッシャーというものも、周囲の助けがあれば、乗り越えられないわけがないということももちろん描かれているように感じられる。 [映画館(字幕)] 8点(2011-03-01 23:11:46) |
2. ガフールの伝説
《ネタバレ》 3D吹替え版を鑑賞。本作の見所の一つである映像の美しさはやはり段違いの素晴らしさであり、お腹いっぱいに堪能できる。フクロウの羽毛の柔らかさだけではなくて、埃の舞う様子、水滴の粒や空気の流れ、炎の燃え盛る様など、リアルの現実でもなく、既存の映画とも異なる新たな体験をすることもできるだろう。壮絶なバトルシーンについても、スローモーションなどを多用したり、工夫されており、見所は十分ではあるが、さすがにフクロウということもあり、複雑な動きを描くことは難しいようだ。 ただ、あまりにもリアルに描きすぎているので、フクロウの各キャラクターが全く可愛く見えない。小さいフクロウなどは可愛く見えることもあるが、ファミリー向けアニメ作品としてはこの点はやや致命的かもしれない。 映像の美しさは保証モノではあるが、ストーリーについては正直言って子供騙しレベルといえる。映像の素晴らしさとストーリーの不味さの“バランス”があまりにも悪すぎた。一方がいくら素晴らしくても、他方がダメならば、映画全体の評価が低くなってしまった。ストーリーは「スター・ウォーズ」をベースにして、最後に「ロード・オブ・ザ・リング」を加えましたというような仕上りとなっている。 本作で多用されている『左脳に従え』というフレーズがどうしても『フォースに従え』としか聞こえない。主人公のソーレン=ルーク、ジルフィー=レイア、クラッド=ダース・ベイダー、ライズ=ヨーダ、トワイライトとディガー=R2D2、C3PO、メタルビーク=パルパティーン、こうもり=クローン軍団のようにしか映らなかった。 善と悪の戦いを描くファンタジー映画は、基本的にはどの作品も似たような構図にはなるが、本作はあまりにもオリジナルティがなさすぎる。 どこかで見たことのあるストーリーに加えて、「月光麻痺」「フクロウの左脳に影響を及ぼす鉱石」「飛べないフクロウが数分のトレーニングで一瞬にして飛べるようになる」など、観客を無視してすっ飛ばすようなところも見られるのも問題。 原作がある作品であり、難しいかもしれないが、思い切って子ども向きのファンタジーではなくて、大人が楽しめるように、ストーリーをダーク化すれば、もうちょっと評価される作品になったかもしれない。 大人の事情ということもあるとは思うが、これでは中途半端にしか感じられない。 [映画館(吹替)] 6点(2010-10-17 14:19:16)(良:1票) |
3. シャーロック・ホームズ(2009)
《ネタバレ》 つまらなくはないが、期待度が高かっただけに少々物足りなさも覚える。全体的にドキドキ感やワクワク感には乏しく、爽快感やサプライズも感じられなかった。もっとホームズを危機やピンチに陥らせて、もう少しハラハラさせた方がよかったのではないか。危機に陥ったとしても明晰な頭脳で切り抜けたり、本当に危険な際にはワトソンが助けてくれたりしないと盛り上がらない。屠殺場でのアイリーン救出劇や大爆発といった展開はもちろん用意されているが、基本的には予定調和気味の仕上がりといえる。 アクションをメインにしてもよいが、ホームズらしい謎解きという要素がほとんど見当たらないのも残念だ。ホームズがおかしな動きをしたり、やたら変な物をクローズアップして、伏線的なものはきちんと張っているが、観客が推理するという仕掛けにはなっておらず、観客はやや置き去り気味となっている。最後に一気にネタ晴らしされても、「ふ~ん、そうだったんだ」位にしか感じられない。 その肝心のトリックや謎や陰謀も分かるごとにテンションが下がってしまった。自分に従わない国会議員を殺すというどうしようもないネタには拍子抜けであり、トリックは古典的かつ既視感があるだけではなくて無理があるものばかり。ブラックウッド卿自身にカリスマ的な“悪”が見えてこないのもマイナスだ。 そのようなネタやトリックを無視できるほど、ホームズとワトソンの相棒愛やコンビが光っていたかというとそうでもない。ロバート・ダウニーJr.は頭脳明晰ではあるものの、人間的にやや足りず、女には甘いというルパンⅢ世のような親しみやすいユニークなキャラクターには仕上がっているが、アイリーンは峰不二子、ワトソンは次元や銭形のようなキャラクターには仕上がり切っていないため、肝心のホームズとワトソンの友情や信頼感などをそれほど深いものだとは感じられなかった。 変装して彼を見舞い治療するという姿にはやや驚いたものの、それだけでは足りない。 モリアーティ教授の登場は嬉しいが、こちらもどうしようもない動機にはテンションが下がる。モリアーティ教授を登場させるくらいならば、ホームズもブラックウッド卿も実はモリアーティ教授の掌で転がされていただけ、事件は何も終わっていない、むしろ今から事件が始まるというオチくらいのものを出して欲しいところ。 そうしないと続編に対する期待感を欠くこととなるだろう。 [映画館(字幕)] 6点(2010-03-15 21:03:57)(良:3票) |
4. ソウ6
《ネタバレ》 デキは意外と悪くはなく、合格ラインは突破しているのではないか。驚くようなトリックはないものの、ゲーム自体はなかなか凝ったものとなっている。また、ホフマン刑事にカリスマ性がないことが欠点だったが、そういう欠点を長所に変えるところがこのシリーズの良さでもある(Ⅲでも使った手法)。直接殺人を犯すという暴挙に出た彼に後継者失格の烙印を押して、今後のシリーズ展開を膨らまそうという狙いもみられる。 気に入らないところは、保険会社の担当者を殺す必要があったのかというところだ。彼のゲームのプレイを見ている限りでは、それほど悪い奴ではない。自分だけが生き残ることや自分が痛みを感じないことを第一に考えているわけではない。計算や数字で判断するのではなくて、純粋に仲間を助けたい、家族や子どもがいるかどうか、というような点で判断している人間的な一面が垣間見られる。 彼がどういうプレイをするかを母子が判断するという“ゲーム”があるとすれば、彼のプレイは間違っているようには思えず、母子の“ゲーム”はミスではないか。彼を殺さないことによって、今後は更生して何人もの命が彼の保険によって救われる可能性も出てくる。 彼をたとえ殺すとしても、もうちょっとタメが必要だったと思われる。母親がいったんは殺そうと決意するもののやはり最後には殺せないと嘆いて、観客に対して安堵感を与えておきながら、最後の最後に息子がもう一撃食らわせるということが必要だったのではないか。“彼が助かった”と感じさせないと息子の一撃が活きてこない。 “ゲーム”の趣旨を考えると、殺すこと自体賛成できないうえに殺し方も面白みに欠けるので、この点がマイナス評価となる。一応、“生への実感”“生に対する感謝”が本作のテーマでもあるわけなので、なんでもかんでも殺せばよいという問題ではない。父親を見殺しにされたから“むかついたので殺します”では、復讐や暴力を是認する残酷なだけのものであり、映画としての“深み”もなくなってしまう。 彼を殺すか殺さないかというのも製作者に対する一つの“ゲーム”だったような気もする。化学薬品を使った面白い殺人方法を思いついたから、実現させてみようぜというノリではないか。ハロウィーンシーズンに楽しむサスペンスホラーなので仕方がないとはいえ、製作者自身が“ゲーム”に負けているような気がする。 [映画館(字幕)] 6点(2009-11-08 22:37:41)(良:2票) |
5. イエスマン "YES"は人生のパスワード
《ネタバレ》 あまり期待はしていなかったが、なかなか爽快なコメディに仕上がっている。 本作を見たくらいでは大きな影響はないが、見終わった後は、ちょっと“前向き”になれる作品であり、こういう作品は貴重だ。 全ての事象に“YES”という必要はないが、“YES”と“NO”で悩む場合には“YES”と言ってみようかなと思わせるパワーがある。 アメリカのコメディは、たいてい下品でクダらない作品が多く、笑えないモノが溢れているが、本作は全体的に意外とセンスが良くて(特に音楽)、ただ笑えるばかりではなくてキレイにまとめられている(衝撃的なエロネタもあるが笑えるものとなっている)。 アメリカのコメディもだいぶ進化していると感じられる一本だ。 ジム・キャリーはもともと嫌いではないが、本作でもまったく嫌味やうざったさは感じられなかった。 多彩な顔の表情や、身振り手振りなど、彼の演技を真似することはできないはずであり、真の意味でのコメディ俳優だと思う。 コメディ俳優と名乗る者は多いが、彼はやはり超一流だと再認識できる作品だ。 多くのキャラクターも映画用にデフォルメされたものばかりではなくて(隣人のおばちゃんや自殺オトコなどは例外)、どことなく自然でリアルに感じられた。全体的に親近感が沸くような血が通った者が多かった点も好印象だった。 特に、ズーイー・デシャネルのナチュラルなキュートさも魅力的だった。 序盤のホームレスの存在、序盤の謎の夢シーン(この夢をみたおかげでセミナーに参加することとなるが)、終盤の交通事故(バイクシーンやケツ見せシーンが撮れるという効果はあるが)など、意味ありげのシーンに対して、投げっぱなしも多く、特にラストのオチを含めて「?」という展開もあるが、コメディなので細かいことは気にする必要もないだろう。 コメディに完璧さを求める必要はない。 [映画館(字幕)] 8点(2009-04-12 01:22:05)(良:2票) |
6. スピード・レーサー
《ネタバレ》 平日の最終回とはいえ、470人キャパの有楽町の劇場に20人ほどの観客しかいないという惨憺たる光景を目の当たりにするとは思わなかった。 観客の中には『「マッハGOGOGO」懐かしいな』と楽しそうに語っていたおじさんもいたが、自分は生まれてこのかた、元ネタを見たことは一度もなく、元ネタの情報を一切知らずに鑑賞した。 原作を知らず、ゲームもやらないのでこんなことを言っていいのか分からないが、誰も見たこともない世界・映画を構築しようという高い理想を感じられるようにはなっていると思う。 問題点はあるが、製作陣は一切妥協をせず、批判を恐れずに、真摯な姿勢で努力している跡が窺われる。 画面だけ見ていれば、それなりに楽しむことはできるだろう。 ただ、その世界観に上手くハマれず、乗り切れなかったというのが正直なところ。 やや、自分と映画の間に温度差を感じてしまった。 「この人たち、なぜ一生懸命走っているのだろうか?」「この人たち、なぜ戦っているのだろうか?」「主人公、なぜ家を出ようとしているのか?」と感じる冷めた自分が劇場にいた。 なんでもかんでも詰め込もうとして、まとまりが悪くなってしまったのが問題か。 世界観は豊かなのだから、子ども達が楽しめるようにもっと単純でも良かったのではないか。 「レースを金儲けの道具にしている悪い奴を倒す」「レースは八百長ではない」というだけでよく、株価がどうのこうのとか、ビジネスがどうしたとか、買収とか、訳の分からない、どうでもいい背景などは要らない。 余計なことを描きすぎたために、「スピードの兄が自分の身分を隠してまで本当にやりたかったこと」なども上手くは伝わってこず、「家族の繋がり」などの重要なメッセージも伝わりにくくなってしまった。 余計なストーリーだけではなく、余計なキャラクターも多いので、各キャラクターが生殺し状態に陥っている。 本作の描き方では、真田広之、RAINの扱いに合格点を出すことはできないだろう。 肝心のレーサーXですら、あの程度の出番では足りない。 「マトリックス」と同じく世界観を広げすぎたために、上手く収束させることはできなかったようであり、反省が活かされていないようだ。 優れたクリエイターではあるが、もっと単純にまとまりよく物事を伝えることができないと優れたストーリーテラーとはいえない。 [映画館(字幕)] 6点(2008-07-20 00:50:02) |
7. ブレイブ ワン
《ネタバレ》 問題はやはりラストだろう。賛否両論というが、果たして「賛」という人はいるのだろうか。あまりのメチャクチャぶりに一気に熱が冷めるのを感じたほどだ。 しかし、「愛する者を殺されたから辛い」→「救いにはならないけど、悪い奴殺したり、復讐すればいい」というのが、脚本の趣旨ではまさかないだろう。 冷静に振り返ると、意図しているラストはまさにその逆ではないかとも思われた。 キレイ事を語り復讐を諦めさせるよりも、あえて復讐することを描くことにより、「復讐なんてしても、何もならない」と訴えているのではないか。あえて間違った行動を主人公に取らせて、反面教師としての役割を担わしているのではないかと思った。 しかし、タイトルを「ブレイブワン」と銘打っている。復讐することが「勇敢」だと言いたいのだろうか。本当の「勇敢な人」とは真逆のような気がするが…。 脚本の趣旨がどうであれ、演出上にも問題があると思われる。 「愛する者を殺された場合どうすればいいのか」「親しい者が犯罪を犯した場合どうすればいいのか」という問いかけのレベルにも達していない。 問いかけの前提として、フォスターとハワードが親密な関係にならなくてはいけないが、十分とは言いがたい。恋愛関係というわけではない人間同士の深い関係を描くのは難しいが、ジョーダン監督ならば可能ではないか。「法律を犯し、自分が傷ついてまで、相手を庇う」ほど強固な関係が築かれていない。さらに「動画という証拠」を持っているにもかかわらず、「法の裁き」を受けさせないことが理解できない。法の裁きを受けさせることができない冒頭の妻の自殺偽装事件とは意味が異なってくる。 また、ラストの余韻がまるでないのも問題だ。「復讐を終えたときに、いったい何が残るのか」を観客に何らかの方法で伝えないと、映画としての意味をなさない。本作は「昔の自分とは違う自分を生きなくてはならない」という締めくくりだったように思えるが、ナレーションで逃げるのはあまり好ましくない手法だ。言葉による説明も重要だが、それだけではなく表情や動作、雰囲気だけで伝えられなくては、映画の質が高いとはいえない。 「恋人を失ったことの心の空洞が、復讐を果たしたことにより、より大きく、より深くなった」ということをもっと伝えるべきではなかったか。 [映画館(字幕)] 4点(2008-01-09 22:10:51)(良:1票) |
8. スーパーマン リターンズ
約20年ぶりに復活したシリーズ最新作は、続編でありながら、原点回帰のリメイク的な内容にもなっている面白い造りだ。今まで観た事がない人でも十分楽しめる内容にはなっているが、「Ⅰ」とリンク(マーロンブランドの重要なセリフ等)する部分もあるので、事前に「Ⅰ」だけでも観ておくとより一層楽しめるだろう。 【評価とテーマ】なかなか評価は難しい。「なぜスーパーマンが必要なのか」というテーマを相当ねちっこく、かつ丁寧に創りこんだため、完成度は高く、スーパーマンに対する深い愛情も感じられる良作というジャッジもできるが、2時間30分という長尺と派手なバトルがあるわけでもないストーリーとのバランスを踏まえると「長い・飽きる・くどい」といった評価も聞こえてきそうだ。「初代」に思い入れのある人には高評価で迎えられると思うが、最終的にはあまり高い平均点は期待できないかもしれない。 【ブランドンラウスが演じるスーパーマンについて】見た目や雰囲気はクリストファーリーブを彷彿とさせる見事なチョイスかもしれない。しかし、肝心の演技ができるかどうかは別だ。彼のスーパーマンは「表情」が語っていない。鉄火面のような無表情、CGのような無機質さを感じる。「人類に対する慈悲深い無償の愛」が根底にあるのは分かるが、「表情が豊かではない」→「感情が伝わらない」→「行動に対して共感できない」→「さっきから同じことの繰り返しじゃないか」という思考が延々とループしてしまった。もっと人間くささを出してもよかったように思える。 【ケヴィンスペイシーが演じるレックスルーサーについて】「セブン」のようなゾクゾクするような悪役を期待していたが、やや魅力を欠いている。好意的な評価をしても初代のジーンハックマンと同レベルかなという印象。もっとはじけてもいいと感じたが、本作のテーマを踏まえて、キャラクターとしての存在感を抑えたようにもみえる。本シリーズは、悪役が目玉となる「バットマン」とは根本的に異なり、あくまでも主役はスーパーマンという方針なのかもしれない。 【その他】幼年期のジャンプシーンは「スパイダーマン」や「ハルク」、着地時には「ミッションインポッシブルⅠ」を思い出した。ルーサーの出獄理由は「ダーティハリーⅠ」と似ているし、「タイタニック」のようなシーンもある。パクリではなくサービス的な意味合いでなかなかユニークと感じた。 [試写会(字幕)] 7点(2006-08-02 21:01:38)(良:2票) |
9. テイキング・ライブス
《ネタバレ》 異常に評価が低いけど、率直にいって楽しめた。 なんといっても、ジョリーの魅力ある演技が満載で、かなり良かったと思う。 笑顔と後悔の表情のギャップなんて相当良かったと感じた。 また、イーサンもなかなかの好演をみせていたのではないか。 ストーリーについては、確かに犯人はモロバレ(DNA鑑定でシロだったとか、ジョリーの判断(犯罪者の脳は普通とは違うとか)ではシロの可能性が高いとか、一応脚本の努力は認めてあげてもよいのではないか)しているけど、自分の想像以上に話が膨らんだと思う。普通のサスペンス映画なら病院を歩いているイーサンが実の母親に名指しされて犯人であることがジョリーにバレて適当に抵抗して捕まって終わりでしょう。 キーファーの起用も全く意味のない役柄であったが、逆の意味で良かったと思う。こんなどうでもいい役にキーファーが出るわけないのではないかという先入観があるから、脳が多少混乱する。キーファーの役どころが全く無名のおっさんだったら、観客を少しも騙せないでしょう。それにしても確かに扱いが酷すぎた。真犯人ではないにせよ、もうちょっと何らかのストーリーに絡まるキャラクターに設定すると思う。例えば、イーサンがキーファーをテイキングライブスしようとキーファーのことを観察していたら、実はキーファーは過去に殺人を犯しておりスネに傷を持つ身であったとする。そこでイーサンが自分の過去の犯罪をキーファーになすり付けて自己を清算するために、イーサンが目撃者のフリをしてキーファーのことを警察に告発するという流れでもよかったかな。キーファーのことを追いながら真相を突き止めようとするジョリー、警察に守られながらキーファーをはめようとするイーサン、自己の潔白のために逃走しながらイーサンの真の姿を暴こうとするキーファーの三者の駆け引き合戦でも面白い映画になったと思う。 [DVD(字幕)] 8点(2006-06-15 00:10:24) |
10. ムーラン・ルージュ(2001)
《ネタバレ》 音楽のチカラは偉大だと感じた。 あまり馴染みのない古典的な音楽を用いることよりも、時代感を無視して馴染みのある音楽を用いた「挑戦」も大きなプラスに出たと考えてよいだろう。 さらにバズラーマン監督の独創性に溢れた映像美も素晴らしかった。 しかし、なぜかこの映画に対して緊張感が感じられなかった気がする。 本来ならば、①映画の中の劇中において、サティーンは公爵に指示されたようにラストでマハラジャを選ぶのか。それとも公爵を無視して貧乏なシダール弾き(実際のクリスチャン)を選ぶのか。 ②サティーンを巡るクリスチャンと公爵の激しいやり取り、嫉妬、憎しみ。 といった緊迫感を得られても良かったはずだ。 なぜ、このような緊迫感が得られなかったかというと、冒頭でほとんどが種明かしされているからではないだろうか。 冒頭においてクリスチャンは生きており、サティーンは死んでいるということが明かされてしまっては、あとはただ単に確認するだけのことになってしまう。 よく映画では、冒頭とラストがくっつくような手法が取れられているが、この映画においては、あのような冒頭は不要というか、蛇足に過ぎない。むしろ映画の良い部分を壊してしまってはいないか。 また、サティーンの「病」というのも、何らかの古典がベースになっているのかどうかは分からないが、あまりよろしくない要素の一つだ。「もう病が進行しており助かりようがない」と観客が分かっていれば、当然サティーンが死んでも観客は驚きはしない。あれでは悲しみも半減だろう。 この映画が「愛」について描きたいのならば、むしろサティーンはクリスチャンを公爵からかばって死んだとした方がよいのではないか。究極の「愛」とは自己を犠牲にしてでも相手を守ることではないか。 だからこそ、冒頭でクリスチャンが生きていることが分かっていれば、ラスト間際にクリスチャンに公爵の魔の手が差し向けられたとしても緊迫感がなく、また、サティーンの病死に対しても「愛」のために殉死したと思えないのではないか。病死では、貧しくても幸せという「愛」を選んだ二人に訪れた悲劇という共感を覚えない。 [DVD(字幕)] 7点(2006-04-09 20:01:51)(良:1票) |
11. オーシャンズ12
《ネタバレ》 この映画を泥棒映画と思って観ない方が楽しめるような気がする。 主題は確かにオーシャンズ達とナイトフォックスの泥棒対決が根っことなっているが、はっきり言って、オチを見る限りこの映画の中ではそんなことはどうでも良くて、雰囲気やバカバカしさ、映画としては反則スレスレのネタを楽しむような創りを目指しているのではないかと思う。 そうは言っても、前半は確かにつまらないと感じた。 前作に引き続き、また駄作かなと思って観ていたが、後半に行くに従い面白いと感じるようになった。何と言っても全くストーリーに絡まなかったオーシャンズ軍団の存在が逆の意味で面白い。こんなに人を集めたのにここまで無視できるものかなと思う、逆の意味で本当に度胸のある脚本だろう。 オーシャンズ達を無視した分、後半のストーリーは読みづらくなり、かなり引き締まった感じを受けた。そしてラストに行くに従い、様々に散らばった点が徐々に一つの線になっていく様はかなり良いと思う。 それにしても、この映画における主役は果たして誰であったかを考えると、なかなか答えが出ない。 普通オーシャン、ラスティ、ライナスとも考えられるが、イザベル、テス、ナイトフォックスも実は主人公ではないかとも考えられる。主人公がはっきりと分からないほど、実はそれぞれ個別に光が当たっており、それぞれのキャラクターが活きていたのではなかっただろうか。やはり適当に人だけを集めたわけではなかった。 惜しむべくは、冒頭のガルシアとの絡みがもったいない。オーシャンズの仲間達には各人ほとんど出番がないのだから、この掴みの部分は前作のおさらいも兼ねる大切な部分なのでもっとそれぞれの特徴や性格が出るようにしっかりと描いて欲しかったと思う。 7点(2005-01-01 07:46:35)(笑:1票) |
12. ドリームキャッチャー
この監督は実は「笑い」というモノを理解しているんじゃないかという気がする。 笑いの基本である「やるなと言われたことを必ずする」という姿勢が特によろしい。 自分の命がかかっているのに、あそこまで必死に楊枝を取ろうとする姿にはマジで心打たれた。 この世の中には自分の命よりも守るべき大切なモノがあるんだなあと。 その他にも宇宙人の全貌が映ったときのあの衝撃はモノ凄かったよ。 あのデザインは常人には描けんよ。 銃をイキナリ電話代わりに使用するといった小技も使いながら、運転席に座っている人が何も突っ込まないのもクール。 そして映画史上に残るであろう名言「アイ、ダディッツ!」を産むことになるのである。 あまりにも斬新な映画ため、ちょっとこの時代には高尚すぎたのかもしれない。 欲を言えば、最後幼虫みたいなのがマンホールに落ちようとするのを何も知らずに踏んで終わりの方が面白かったと思う。 知らないうちになんとなく世界が救われてるという方がこの映画らしいだろう。 それにしてもあのウナギはどうやったらグレイタイプの宇宙人になるのだろうか。 グレイタイプが赤い粉末をばらまく、それが人間等の体内に入り成長して、お尻からウナギが出てくる。 そしてウナギは何故か一人で卵を産む。その後はどうなるんだ。 卵からかえった幼虫は結局ウナギになるだろうから、ウナギと幼虫のエンドレスだろう。 ウナギがしばらくして大きくなればグレイになるとしても、やっぱあの段階でいきなり卵はやりすぎじゃないのか。 2点(2004-10-11 19:13:45)(笑:6票) |
13. ピッチブラック
金は掛けなくても映像は凝ってるし、冒頭の落下のシーンにはセンスの良さを感じた。 あれだけ多数のエイリアンが相手なので、エイリアンとの戦いには焦点をあてずに、極限状態での人間性をテーマに悪人リディックを主人公にした設定は面白いと思う。 冒頭に人を荷物のように投げ捨てようとしたにもかかわらず、ラストに自分の命の危険性を省みずに救おうとしたキャロリンの姿が対照的に描かれている点は素晴らしい。 極限状態になれば普通恐怖に怯え、自分が生き残るためには他人を犠牲にしても厭わない、そういう世界は確かに描けてはおり、一体何が善で、何が悪なのかを一応考えることは出来たが、そういう世界や視点が上手く表現できていなかった気はする。 善人そうに見えていたほど…という展開の方が分かりやすかったのではないか。特にあの警官っぽい賞金稼ぎをもっと上手く使って欲しかった。 リディックは確かにカッコ良かったが、神の存在を信じているが、神を憎み続けた男が辿り着いたラストとしてはあれでは少し演出が弱いと思う。 ラストの一言以外にもっと心の動きを感じられれば良かった。 こんな中途半端に描くくらいなら、「自分の命を賭けられるか」というキャロリンとリディックとの二人のやり取りを考えると、思いきってリディックが自分が助かりたいがためにキャロリンをエサにしようという演技をしていたという展開の方が面白いと思った。 それならば、こいつは筋金入りのワルだなと思える。 本作はやはりどことなく中途半端に感じる。 5点(2004-08-08 01:07:35)(良:1票) |
14. マトリックス レボリューションズ
評判悪いようですが、概ね満足感を得られる出来だと思われます。 ただ、リローテッドで広がりすぎた世界観に対しての充分な回答を示してくれなかったのが残念です。 序盤のトレインマンとかメロビンジアンのあたりはリローテッドの続きっぽい流れだったけど、中盤のザイオン編では、ロードオブザリングのヘルム峡谷の戦いを見ているようで、最後のネオとスミスの戦いはドラゴンボールのようでした。 結局、機械側が人間に頼らない独自のエネルギー源を見付けてしまっているのが中途半端なラストに繋がったように思われる。 8点(2004-06-25 22:38:10) |
15. イン・ザ・カット
サスペンス仕立てにはなっているけど、最後くらいしかサスペンスだとは思わなかった、舞台はサスペンスでも「女」というテーマにこだわって描こうと努力している姿が見受けられる。 女の色とでも言うべき「赤」にはかなりこだわっている。 ただ「女」の本質を描くのは難しいのだろうか、そのため捉え所のない映画になってしまったが、「女」の本質は事実捉え所のないものだからしょうがないか。 ベーコンの役どころは全く大したことないけどカメオっぽい感じではないかな。 6点(2004-06-25 15:16:51) |
16. ミスティック・リバー
殺人事件が絡んでいるので、サスペンスと勘違いして観るとピントがずれるでしょう。 自分の殺した男の息子が自分の娘を殺してしまうという悲劇の連鎖という意味はあるけど犯人なんてどうでもいいのかもしれない。 後味が悪さはあるが、人生の不可思議さ、人間としての弱さ、哀しさ、愚かしさ、業の深さを描いているので安直なハッピィエンドには終われない。 唯一の救いは、ショーンが妻を失いかけているその時、妻が出て行ったのは自分にも原因があったという現実を直視できたことではないのか。 人生の苦しみという現実を直視できない人々が数多く登場する。 ジミーは元妻の死に立ち会えない悲しみをただのレイを殺すことで、娘を失った悲しみをデイブを殺すことで慰めようとしている。 アナベスは夫がやったことに対して、「家族のためにやったこと」と現実逃避をし、セレステが変なことを言ったから責任を転嫁する。 セレステも夫と向き合うことができずに、疑い続け、信じられず、「殺したのは夫かも」と苦しみをジミーに解決してもらおうとしている。 デイブは少年時代の想像を絶する痛みから逃れることが出来ずに、現実とは向き合えずにいる。 ジミ-が最後にデイブを見たのはいつだとショーンに尋ねられた時に、子供時代に連れ去られた時を思い起こすシーンやデイブが夢や青春を失ったと告白するシーンから象徴されるように主題は少年時代に受けた苦しみは決して消えることなく、大人になってもその苦しみから逃れることは出来ずに襲い続け、それは被害者だけでなく、その周りの人々にも大きな影響を与えるということだとは思うが、登場人物を見ると現実を直視できない人間としての弱さを感じずにはいられない、ラストのパレードでの父親がいなくなり深い悲しみを抱えた少年がどういう人生を送るのかと考えずにはいられない。悲しみは続いていく…ミスティックリバーはジミーにとっては罪人の罪を洗い清めてやる死体を沈める河なのかもしれないが、自分にとっては人生こそ不思議な河のようなものかもしれないと感じた。俳優の演技に注目が集まっているが、ショーンペンの娘を失った悲しみを最大限に放出するシーンや喪失感、苛立ちを抱えた演技。ティムロビンスの過去の呪縛から開放されることなく、苦しみと怒りを抱えながら抜け殻のようになってしまった表情や演技は素晴らしいとしか言いようがない。 9点(2004-06-25 14:59:27)(良:3票) |
17. ズーランダー
とにかく絶妙な音楽センスが素晴らしい。 ガソリンスタンドは最高だが、パソコンもかなりツボにはまる。 キメ顔も観客にも「全部同じやんけ」と最初に突っ込ませて、最後のオチに使うのもなかなか上手い。 ベンスティラーが監督や脚本までやっているとは思わなかった。 6点(2004-04-20 20:51:35) |
18. ピアノ・レッスン
映像は確かに驚くほど美しいものであったが、ストーリーは多くを語らないタイプの映画なので、ちょっとイマイチな印象を受ける。 自分の言葉であり、また命でもあるピアノと主人公の関係に対して二人の男性がどう絡んでいるのかがポイントでしょう、この辺を頭に入れて観ないと共感できるかどうかが違ってくると思われます。 サムニールは指を切り落としピアノとの決別を図る、カイテルは強引にピアノを船に乗せ、最後まで守ろうとする。 そしてハンターは指を失い、命であるピアノが海に落下した時に自分もそのまま海の藻屑と消えて、何も変わらない以前のままで死ぬかどうかの選択があった。しかし結果は言葉を練習しピアノも忘れないという新たな自分・生き方を選択するというストーリーは確かに感動できるものではあったんだが…ちょっと受けとめ方が難しい映画。 6点(2004-04-06 20:05:35) |