2. ラスト サムライ
アメリカで日本ブームが吹き荒れる中、ハリウッドが満を持して製作したサムライ映画である。しかし肝心のストーリーは特別傑出しているわけでもなく、ブレイブハートとさほど変わりは無い。サムライ・スピリットを前面に出し日本に敬意を表しているが、結局のところストーリー展開やオチはいかにもハリウッドといった感じだ。時代考証やプロダクションにしても製作陣の努力は認めるが、それは日本の文化を背景にした映画を製作する上では当然のことであり、何よりプロダクション・デザイナーやセット・デザイナー、コスチューム・デザイナーといった美術部門に日本人の名前がクレジットされていないところがいかにもハリウッドらしい(実際は日本人から何らかの意見を求めたと思うが…)。これらのことからこの映画は完全にアメリカのパースペクティブによって製作された映画と言わざるをえない。それはトム・クルーズやズウィックがギャンブラーではないということと、特にクルーズはアイズ・ワイド・シャットで芸術(リスク)はお金(コマーシャル)よりも重要なものではないということを学んだためだ。しかし最後の戦闘シーンで渡辺謙が馬に乗って敵陣へ突進していく姿、彼の表情(目)を見ていると胸に熱いものが込み上げてきたのは確かである。やはりこの私にも普段は気付くことの無い大和魂というものがあるんだなと感じたし、それだけでもこの映画を見る価値はあると思う。この映画を見て、これが外国産の映画であることに少々嫉妬すると同時に、この映画と同等のスケールの映画が撮れない日本映画を取り巻く環境が残念でしょうがない。今だからこそ日本人監督によるサムライ・スピリットの真髄を世界に伝えてほしい。私の友人であるアメリカ人(彼の好きな映画は七人の侍や用心棒などの黒澤作品)が映画を見終わった後にこう言った。「結局のところサムライ・スピリットの物語は唯一日本人だけが伝えることができるものなんだなと思ったよ」彼の点数は5点だった。 7点(2003-12-07 13:37:18)(良:1票) |