1. シン・レッド・ライン
「細く赤い線」とは、生と死を分ける一線である。その「線」を引いていくのは神であり、兵士たちは神がどのような基準で線を引いていくのかだけを知りたがる。死を間近にした人間は、どうやら神と自分とのサシの対話の世界に入っていくらしい。死の病を宣告された人を思わせる。それがこのウィットのモノローグであるように思う。 現地人の営む穏やかな生活。同じ人間である彼らとの違いは何なのか。知恵の実は欲望とセットであり、それを食べたら二度と元には戻れない。知恵の実が文化を生み欲望を連れてきて、欲望が「大いなる悪」を生む。ウィットも私たちもあの現地人と同じ生活はできないのだ。 ニック・ノルティの怪演は鬼気迫る。すでに「棺桶に入っている」と自覚している彼。「どうせ死なせるなら、事前に恐怖を感じることなく死なせてやろう」という彼。なので下手に無駄死にを防ぎたがる大尉の存在は邪魔である。そんな自分の立場を「なんで自分がこんな役割を」と思っているがもちろん誰にも打ち明けることはできない。狂気に見せかけた孤独な指揮官。 ガダルカナルを守備する日本軍に、あのような攻撃を行う弾薬が残っていたとは到底思えない。また、日本兵のセリフにネイティブの日本人とは思えない発音の不自然さがある。世界中の観客のうち、これを理解するのは私たちだけであるので指摘しておかねば。 また、神との対話を続ける彼らと比べて、日本兵は何を考え何を祈っていたのか。「南無阿弥陀仏」で片付けられては到底納得できない。 ここで死んでいった米兵たちは、「マジェスティック」におけるルークなのかもしれない。ルークの墓の前に立つピーターと対峙している若者たちなのだ。そう思いながら見てみると味わい深い。 どうやって撮ったんだという見事なカメラワーク、今なら間違いなく手ブレで撮るだろうが、ブレないで疾走する這うような映像、やっぱりこうでなくちゃ。手ブレ映像FUCK YOU 。 [DVD(字幕)] 8点(2006-09-14 15:02:51)(笑:1票) |
2. JM
《ネタバレ》 これが面白かったらダメかなあ。でも私は好き。 イルカもかわいくて良いし、CG画像も抵抗なく見られた。アイディアもよいと思う。 キアヌには演技を期待してはいけないよね。べつに出ているだけでいいじゃないですか。顔きれいだから。たけしもがんばってるし、私は好きだ。 [DVD(字幕)] 8点(2005-11-02 23:50:20) |
3. 白い刻印
《ネタバレ》 力作だ。それはわかる。ニックノルティ渾身の一作。しかしなあ、救われない話なんだこれがー。見た後1週間気が晴れない、というような。寝たまま凍死してるって、誰が考えたんだか、すごすぎるよなあ。なかなか思いつかないぞ。ところで、やっぱり上の子のほうが、影響受けちゃって下の子の防波堤になって親の人生かぶっちゃうんだよね。そうだそうだ、もうひでー親父なんか、大人になったらみんなやっちゃえ。でも自分も似てしまったことが、救われないんだなあ。どうしたらいいんでしょうね、こういう場合。 [DVD(字幕)] 7点(2005-11-21 22:05:43) |
4. 11:14
《ネタバレ》 ものすごくダメなわけではないです。 が、「あざとい」部分が目立ちすぎているので作品としてはあんまり評価されないしできなくなってしまう。 あざといというのはもちろん観客の生理的部分に訴えるようにショッキングなシーンを複数入れてきたことで。私はこういうのは基本的に認めない。そんなんナシで勝負してくんなきゃダメだわ。 だからチ○チ○の部分とエッチの最中に頭の上に石像が落ちてくる部分ナシでも記憶に残るかどうかで考えてみなきゃならない。だとするとたぶん、1ヶ月もしないうちに見たことを忘れているだろう。 こういうのってたぶんリドリー・スコットの悪影響なのかもしれません。駆け出しの新人映像作家たちが安易に飛びつきがちな方法ではあるでしょう。どうすれば観客の記憶に残るか。 しかしリドリー・スコットはもともと変態でして、目立ちたくてそういうことをやってきたわけではないのですたぶん。そういうシーンが無くても、というか無いほうがカレの作品は素晴らしい。そして本人は顰蹙を買っていることにあんまり気がついていないわけです、自分がどのくらい変なのかってよくわからないですから。 ですから新人が安易に真似をする傾向は苦々しいものです。そんなんで記憶に残してはあげませんので残念でした~。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2009-05-01 15:34:43)(笑:1票) (良:1票) |
5. シー・オブ・ラブ
《ネタバレ》 テンポはそこそこいいのだし、脇を固める刑事たちも豪華なのだがサスペンスとしては突っ込みどころが多すぎて、犯人当てのスリルとかはあんまり期待できない。 冒頭から、フランクがサイドミラーを全く見ないで車道側に降りるとかいう細部も気になるし、暴力夫が元妻の男遊びを黙って見過ごしているという設定も有り得ない気がするし、殺すのだったら相手じゃなくて元妻のほうだという気がするし、自分がデートした男が3人も殺されているのに、何も気付かず平然として次の男を漁るヘレンという女も変だなあと思うし。 会ったばかりで「タイプじゃない」と言い放っておきながら、次に偶然会ったらもうベッドインしているヘレンという女は相当変。だいたいなぜ偶然会う。「誰とでも寝る女じゃないのよ」というお約束のセリフが非常に浮いている。 …というように脚本がご都合すぎて、せっかくのパチーノ主演作だというのになんだかなあ。 フランクという男については、仕事以外ではいつも酔っ払っているとか、女性を支配したいタイプの古い男性だとか、なのに女が居ないとどうしてもやっていけない典型的なアメリカの男だとか、人物としてはそこそこ描けていると思う。 でもヘレンについては本当に変。女性が描けていないとまともな作品にはならないという見本のような作品。若き日のサミュエル・L・ジャクソンが冒頭に出ているが話には全く絡まない。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2008-07-14 14:23:05) |
6. 死ぬまでにしたい10のこと
《ネタバレ》 高校中退でヤンママで深夜労働するしかなくて夫はほとんどプータローでトレーラーハウスで暮らすプアホワイトな彼女。 さて日本の皆さんはアンにどのくらい感情移入できるのか?まずまず難しいでしょう。私にとってアンは100%他人としか思えない。私自身の学歴とか収入なんて鼻クソのようなものなので、どうやらこれはそういう問題ではないらしい。 死を悟ってからのアンの思いつきや行動が、どうにも説得力をもって迫ってこないです。全部悲劇のヒロインぶった自己満足にしか見えないなあ。 アンはじたばたしない。なぜ?アンは誰にも打ち明けない。そんなに強い子なの? じたばたしないとしたらその理由は「これまでの人生に満足している」とか「もともと生きるのが嫌になっていたから」とか「あまり頭が良くないので深く物事を考えられない」とかなんかあるだろうが、これだと「あまり頭が良くない」としか思えない。 どうしてけっこう多くの人がこの作品に触れているのかなあ。アルモドバル製作だから? アンをわざわざこんな設定においたところから見ると、「虫けらのように24年間生きて虫けらのように死んでいく一人の女性」を描きたかったとしか思えない。すると、特にいいこともなくなおかつ運悪く病気で死ぬ彼女の何を見てほしいというのか。 マイナー作品で話題作というと期待してしまうけれど、これは「はずれ」。 [DVD(字幕)] 4点(2006-08-09 15:32:05) |
7. ジャンパー
《ネタバレ》 見事なほどに誰も死なないうえに何も解決していないということで、「シリーズ化します」宣言なのだ。 そういう親切さ(?)なのだが私は正直「2」を見たいという気持ちが湧き上がらない。 「瞬間移動」という「金脈」を掘り当てたつもりになっているのかもしれませんが…ダイアン・レインとかサミュエル・L・ジャクソンなんかもう若くないんだから、出演作を選んだほうがよかろうに。私は晩節を汚している(ダイアン・レインは晩節とはいえんが)と思うのだった。 くっだらないんです。このくだらなさは高校生を喜ばすのでせいいっぱいのくだらなさでしょう。初恋の彼女の扱いはいったいなんですか。世の中は30年前にすでにシガニー・ウィーバーがリプリーをやっているんです。そして歴史は「リプリー前」と「リプリー後」にわかれたのです。それがなんというていたらくですか。 百歩譲ってミリーが守ってやらないと死んでしまうような弱い存在だったと認めても、ミリーには「人格」さえ無いではないか。8年ぶりにあらわれた同級生に、仕事を早退してのこのこローマについていき、ホテルの部屋が特上だったというだけで喜んでエッチしてしまう、そんな女が今もいると思いますかそんなワケないだろ。 いるとしたら単に頭が弱い女ということだが、当然この作品ではそういう扱いはされていないですね。 ですから、私はシリーズ化されようが視覚効果がスゴかろうが「ジャンパー」には大バツをつけたいと思います。あんまり女性の観客をバカにするんじゃありません私は怒っているぞ。 ダグ・リーマンはこういうお子様向けSFに向いていないと思うしもったいないと思います。 [DVD(字幕)] 3点(2008-12-18 19:38:40)(良:3票) |