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花守湖さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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1.  アップサイドダウン 重力の恋人 《ネタバレ》 
美しい映像を楽しむための映画です。まるで大型美術館のなかに「二重重力の世界」が存在するかのようです。観客は美術鑑賞を楽しんでください。あくまでもストーリー重視ではなく、視覚重視の映画です。試されているのは観客の感性なのです。上と下の世界がそんなに遠くない距離にあるところが素敵でした。ロープを使って上から下へ。また下から上へ。面白いじゃないですか。遠そうで近い距離にある上と下の世界─。会社内ではジャンプをすれば、下の社員は上の社員にタッチできそうだ。しかし見た目は近そうでも、そこにはルールが存在し、実質的には遠いのですね。この上と下の、曖昧模糊とした距離感が絶妙です。もはやこのシュチエーションは芸術だ。恋愛の描写は素直にかわいいと思います。スパイダーマンよろしく、いつしかダンストは、アクロバットなキスをする女優と呼ばれるでしょう。それと青年のほうは必死すぎて笑えます。お前は体が燃えているのに彼女を追いかけるのかよ。残酷な現実が二人を引き裂けば、より一層強く惹かれ合う(by宇多田)というのは、天地開闢以来の恋愛の真実のようです。重力の都合でアクロバットなキスが多かった2人ですが、しっかりとセックスもしていたようです。さぞかしアクロバットなセックスだったのでしょう。やはりロープでどちらかを縛ってやったのでしょうか。さすがに映像化はできなかったようです。いずれにせよ、できちゃった婚で、メデタシ、メデタシ。ご存じの通り、この映画には矛盾が多いです。しかし私はこういう想像力に富んだアイデアを素直に面白いと思える感性を持った観客でありたいと思います。  
[DVD(字幕)] 8点(2014-09-21 20:47:22)(良:1票)
2.  バイオハザードV リトリビューション 《ネタバレ》 
見どころは多い。今回の中島ゾンビは、ついにアリスにぶち殺される。ミラのコメントでは「中島ゾンビは強くて、もう倒すのが大変だったわ」と言っている。実際に観てみると、秒殺されている。それでも私は、中島ゾンビの壮絶な憤死を誇りに思う。和製ゾンビ万歳!しかしである。ゾンビ映画の第一人者として君臨してきた私は、ゾンビが、車やバイクに乗り、銃を乱射している様子を観ると、一抹の哀しみを感じずにはいられなかった。従って今回はゾンビの話はしない。見どころは映像です。3D画像は最高峰に近い。特に斧魔人。彼は3D映画の申し子。バスの中まで斧が飛んできやがる。まさに世紀末の映像。斧魔人VSアリスとチャイナ服ガールの戦闘シーンは、2Dでは絶対に到達できない映像レベルに達している。もはやボーンシリーズのアクション映像など過去の遺物だ。3Dという技術は、アクション映画の1つの壁を越えたと思っている。ゾンビの血しぶきが観客席にまで降りかかる。あれもすごい。観客を感染させる気かよ。あのリアル感は是非3Dで味わってもらいたい。もちろんストーリは理解する必要もない。ラスボスだと思われていたグラサン男が、突然いいやつになった。脳みそが割れなければ味方にしても良い。それからアリスは無敵の方が良い。むしろ強すぎるのがアリスの魅力だ。そういう意味ではグラサンに感謝したい。ちなみに私は過去作品の登場人物など、誰1人覚えてない。従ってオールスター映画などと、のたまわれても、ゲームに興味がない世代の我々にはピンとこない。しかしそれでも「映画」として楽しめると言っておく。バイオは3D映画の頂点に君臨するアクション映画だ。そして強き女性たちの物語だ。華麗なチャイナ服ガールや、肉食系金髪ガールが、3D映像で、縦横無尽に躍動する。そして男どもは爽快に全滅する。(痴漢男だけ生き残ったのは残念だ)ただ、久しぶりに三半規管がやられてしまった。私の場合、これほど激しい映像を凝視すると、決まって倒れそうになる。それでも私に一寸の悔いもない。たとえ自律神経が乱れたとしても、この映画を3Dで観なかったら一生後悔していただろう。では最後にひとこと言っておこう。アリス、サンキューフォーエバー!
[映画館(吹替)] 9点(2012-09-30 07:56:13)(良:2票)
3.  エスター 《ネタバレ》 
マックスが信じられないほどかわいい。姉のエスターと妹のマックスと対比させることによりエスターの存在感が浮き上がってくる感じだった。つまり主役の悪魔を目立たせたいならば、まずは天使を目立たせる手法が効果的になる。もちろんマックスは天使でエスターは悪魔。しかし悪魔の化身と言われるエスターだが本当はかわいそうな女性だと思う。不倫大好きのあのエロ夫でさえ、エスターを「女」としてみようとしない。それは当然のことではあるが、しかし大人の女性にとってこれほどの孤独はないはずです。だったらエスターは自ら「私は今年で33歳なのよ、独身で恋人募集中よ、よろしくね」と言えばよかったのか?そんなことをすればますます世間の好奇の目に晒されてしまう。エスターはたしかに悪人でしょう。しかし彼女はただ愛されたかっただけなのだと思う。ホルモン異常のせいで、絶望し、怒りにかられ、何もかも壊してしまう。その繰り返しがエスターの人生であった。私はそう思う。彼女が号泣するシーンをみて、「怖かった」で終わらせてしまう人が大半ではないだろうか。しかしなぜ彼女は泣かずにはいられなかったのか考えた人はいるだろうか?そこに気がつけばさらにヒューマニズムの見地からエスターを見ることができるのです。あのイライラするほど頭の回転が鈍くてセックスばかりしたがるエロ夫が爽快にぶっ殺されたとき、思わずエスターに向かって「グッジョブ!グッジョブ!!」と連呼して叫んでいた。母親のほうは同情できる。彼女はもともとアル中で、世間ではダメママと言われる部類だろう。その過去があるからエロ夫から「離婚して子供をひきとるぞ」と脅されてしまう。エロ夫よ、おまえはエスターの策略にサクサクはまり過ぎだ。ばか者が。しかしこの母親、土壇場になって、我が子を助けるために天窓を自ら突き破って落下するのだ。子を想う母親の命がけのそのシーンをみて、私は心の底から感動した。ラストはハッピーエンドだと思う。これで親子3人、水入らずに暮らせます。エロ夫はどうか安からに地獄に堕ちてくれ。今度生まれ変わったらエスターは普通の女性となって、普通の恋ができるだろうか?そんなことを考えていると・・・やはり切なくなってくる。ちょっぴり泣きました。 
[DVD(字幕)] 9点(2011-01-15 20:50:45)(良:1票)
4.  第9地区 《ネタバレ》 
人間が人間を差別することの問題よりも、人間が動物を虐待する問題に見えました。たとえば住む場所を人間に奪われたクマやイノシシが、だんだん食料がなくなって、やむえず食料を求めて山を降りてきたら、「元の場所に帰れ」と追い返されるイメージ。ようするに人間に目障りな動物は、山奥という名の第9地区に閉じ込めてしまえということです。それで人間の都合で山奥を開拓して新しい工場を建てたら、自動的に動物たちは立ち退きを迫られる。野生動物からすれば、どこへ行けというのだと途方に暮れるしかない。南アフリカの移民問題のメタファーというよりも、むしろ動物に対する人間の横暴が映し出されているように私には見えました。基本的に動物というのはモノです。かりに他人の所有する動物を殺してもそれは器物破損扱いになるだけ。この映画のなかで人間がエイリアンのことを果たして、同等に扱っているのか、それともやはり動物として扱っているのか微妙なところです。エイリアンに承諾書のサインを求めていることから見れば、いちおう人間扱いされているのでしょう。しかし平気で彼らを殺しているところをみると、動物と同じように、モノと同じ扱いを受けているように私にはみえる。エイリアンの巣を焼き払うのだって、スズメバチの巣を処分するのと同じ感覚だ。そういうわけでエイリアンを人種差別の暗喩としてみるのはちょっとムリがある。しかし一組の親子だけが、やたらと知能が高い。そして何よりも「愛」という感情を表に出している。従って観客はこのエイリアンを同じ人間として自然と見てしまう。だから共感できる。絶体絶命の状況からこの親子が地球を脱出するシーンは、それだけでも、ショーシャンクの脱出劇と同じような爽快なカタルシスを得ることができる。私は地球からの脱出劇として面白い作品だったと思います。
[DVD(字幕)] 6点(2010-08-20 23:01:14)
5.  ラースと、その彼女 《ネタバレ》 
体が傷ついて血が出ればすぐ気がつくので治療できる。しかし心が傷ついた場合、気がつかないことが多い。そしてその傷は長い年月を経て、突然本人に異変を与える。これをトラウマと言います。ラースのトラウマは、母親の死や、兄の家出、父の人間嫌いなどが遠因に挙げられる。彼のトラウマが突然発症した原因は、数人のレビューワーさんたちが指摘する通り、兄嫁の妊娠により、出産で死んだ母を思い出したからだと考えます。そういう意味ではラースの妄想は笑い事どころか、目を覆いたくなるほど痛々しい。表面的にはコメディに見えますが、実は心が壊れてしまった1人の男性が再生するまでを描いたヒューマン映画なのです。ラースには同僚の女性や兄嫁のように好きな人がいました。しかし好きな相手がそばに寄ってくると彼は逃げる必要がありました。彼が他人から体を触られると痛みを覚える理由は、肉体がラースに対して警告を発しているからです。「気をつけろ、またお前は、お前を愛するすべての人々から傷つけられるぞ」という警告です。もう二度と傷つきたくないという思いがそうさせたのです。心の傷は必ずこのように肉体に表れます。もはや人に触れることさえできない彼が愛することができる人間はこの世にいなかった─。人形ならば愛しても傷つけられない。抱きしめても痛みを感じない。こうして「ビアンカ」は生まれるべくして生まれたわけです。皮肉なことに兄嫁の深い愛情から逃れるために、ラースはどんどん追い詰められたのでした。ラースの壊れっぷりは凄まじい。そんな彼を周りのみんなが必死になって助けようとする様子は現実では中々見られない。あのボーリングのシーンで突然乱入してきた男たちは、通常だと「お約束ごと」のように、いじめっ子役だ。それがリアルだと言われる。しかし単に現実を知りたいならば新聞で間に合う。映画は現実をなぞるだけのものではない事をこの作品は教えてくれる。「ビアンカ」に生気を吹き込んだのは、まさにラースを愛する周りの人々たちの勇気でした。稀に見る斬新なアイデアを見事に活かした傑作です。 
[DVD(字幕)] 9点(2010-04-26 20:26:34)(良:1票)
6.  ブラインドネス 《ネタバレ》 
収容所で権力を握る悪のボスが「女どもよ、ハダカになれ。セックスさせろ」となんて言い出したら、さっさとその要求に従う女性たち。目の見えるジュリアンは、盲目の世界では神に等しい能力を持っている。それなのに先頭にたって、まっぱになってしまう。さすが一流の女優だと言いたいところですが、最初からおっぱいありきだ。体当たりの演技=主演女優賞の魂胆が透けてきて、そっちのほうがいやらしい。けっきょく彼女はボスを爽快にぶち殺す。遅いヨ。盲目の世界が生まれたことによって、1人の女性が突然スーパーマンになるという設定はすごく面白いと思いますが、彼女が盲目の連中と鬼ごっこして捕まってしまうなど、その万能の力をいかしきれていない箇所が多くみられ、それが少しもどかしい。しかし作品じたいは暗示に満ちていて秀逸。私たちはお金がないだとか、残業がきついだとか、夫の息が臭いだとか、そんなつまらないことで不満ばかり言う。そして今自分が持っているものに感謝できません。耳が聞こえること、目が見えること、そんな何でもない当たり前のことに感謝の念を持つことがいかに大切か、この映画を通して実感できるはずです。神さまにお願いごとばかりして、神さまに感謝できない人間たち。「生かされている」という思いが希薄な証拠です。天気予報で雨だったらそれだけで文句を言う人も多い。天気の文句を言うのは、神さま批判と一緒なのです。ラストで雨が降る。それに対して大げさなぐらいに歓喜する人々。じつはこのシーンに大きな意味がありました。あれは私たちが神から受けている恩恵に気がついた瞬間なのです。そのおかげで失明は回復した。それでも何かを失ってから初めて自分たちが受けている恩恵に気がつく愚かさ。そういう浅はかな人間に対する警鐘が、この作品には込められていると思いました。 
[DVD(字幕)] 9点(2010-03-14 01:34:03)
7.  JUNO/ジュノ 《ネタバレ》 
最初にジュノの個性的な部屋の様子が映しだされ、それだけでかなりマニアックな女の子だとわかりました。しかしナチュラルな子でした。保護者になった気持ちで見ていました。彼女の言動は傍若無人を通り越してすでにファンタジックでした。そんな彼女のことを、まだ何も知らないあの夫婦に誤解されまいかと、はらはらしながら見守っていました。そうしたら子供が欲しいのに妊娠ができない妻の前でジュノちゃんは、ちゃっちゃっと赤ん坊をしぼり出してアンタがたに渡したいなんて、、お中元じゃないんだから!命の尊さのかけらもない言動だけどじつは悪気はないんです、こんな子なんです。私がかわりにあやまりたい気持ちでした。わたしの気持ちが通じたのか夫婦はジュノのことをわかってくれたようで本当によかったです。彼女が妊娠を家族に告白しようとしたとき、おそらく両親は戦々恐々だったでしょう。こんな娘だからレズビアンにカミングアウトするか最悪の場合左翼にオルグされて学生運動に参加するかどちらかです。でも妊娠、ときかされて、「え?ニンシン?逮捕されるんじゃないの?」とでも言いたげな両親の呆けた表情にみとれていました。案外得するキャラクターかも?最後は赤ん坊をすごく欲しがっていた母性のかたまりのような女性がジュノの赤ん坊を手に入れてよかったです。じつは静かにもらい泣きしました。めでたし。めでたし。
[DVD(字幕)] 9点(2008-11-12 19:38:48)
8.  エイリアンVS. プレデター 《ネタバレ》 
プレデター界の成人式は、思いのほか厳しいということが分かった。みなさん、プレデターを弱い、弱いと言うけど、ここに出てくるプレデターは、まだ少年や少女たちですよ。ピラミッドの試練を乗り越えてようやく大人と認められるわけだから弱くても仕方ないと思う。顔もよくみればあどけさが残っている・・気がする。シュワちゃんと戦ったプレデターもこの儀式に生き残った成人だったと思うと感慨深い。それに比べて成人式でいつも問題を起す日本の新成人のガキども・・・精神年齢が下がっているのに、無条件で全員を成人にするから、こういう事件ばかり起こるのだ。こういう新成人はプレデターと一緒にピラミッドに放り込めばいいと思う。生き残ったものだけを成人として認めれば良い。
[地上波(邦画)] 7点(2008-01-21 18:54:01)(笑:3票) (良:1票)
9.  ヒストリー・オブ・バイオレンス 《ネタバレ》 
どの映画においても、残酷な殺し屋は愛に目覚めて更生しようとすると、最後は善人になり、そして99%の確率でラスト5分前に死ぬ。なぜなら映画は因果応報にはうるさい世界だからです。つまり罪をおかした人間は法律で罰せられなくても必ずなんらかの償いをさせられる。本作の主人公は冒頭、小さな女の子をためらいもなく殺す。法則にのっとればこの主人公はラストで死ぬことになる。しかし結果は予想外でした。だから考えさせられる。ガンジーのように非暴力主義では愛する人は守れません。しかし「愛する者のために戦うんだ」といえば聞こえがいいですが、暴力に対して暴力で立ち向かう事と一緒です。主人公は暴力を捨てようとしましたが、暴力で対抗するしか方法がなかった。戦争や核や銃の心理もこれと同じで守るための暴力から発生する。つまり「暴力はいけませんよ」なんていう台詞はそもそも暴力について何も考えていない人のいう言葉であって、この監督のように暴力をずっと考えてきた人が「暴力」を語るとき、そのメッセージは含蓄がある。ラストで主人公が家に帰ってくる。わたしはまだ油断していなかった。更生した元殺し屋はいつもラスト5分前に必ず死ぬ。それが物語の鉄則。暴力にめざめた息子が「オヤジ~!」といって銃をぶっ放すことも想像した。食卓には母親と息子と小さな娘がいる。主人公は家の険悪な様子に恐れをなして家から立ち去ろうかどうか考えている。1つの終わり方としてはこのまま彼が何も言わずに家を立ち去る終わり方がある。家族を失うことで、いちおう主人公の罪に対する罰が成り立つ。しかし違った。小さな娘が立ち上がる。そして小皿を父親の席に無言で置いたのだ。父親はおずおずと食卓につく。しかしまだ安心できない。息子の目がおかしい。挙動不振だ。すると息子は食べ物を父親の空の小皿にのせたのだった(泣) 息子は両親の様子を心配して2人の表情を交互に眺めていたのでした。ふとオヤジの顔が画面に映し出されると泣いている。妻も泣いている。私は2人より早く号泣中。 息子と娘は父親をふたたび家族の一員として迎え入れたのでした。一番うれしかったのは母親かもしれません。この食卓のシーンはすべて無言で行われます。映画史に残る素晴らしいラストシーンです(泣)
[DVD(字幕)] 9点(2007-04-20 21:08:52)
10.  サイレントヒル 《ネタバレ》 
いやぁ、楽しかった!これは生死を越えた奇跡の母娘の物語です!神を愛し魔女をでっちあげ、そして仲間の連帯意識を高めようとするサイレントヒルの住民たちは、ドッグヴィルの村人たちと似ていると感じました。最後にリーダー格のおばはんがアレッサに復讐されるシーンは、控えめながらに言わせていただくと、もっと苦しんで殺してやればよかったと感じたのは私だけ? 子役のジョデルフェルランド嬢は素晴らしかった。舌が噛みそうな名前ですが、2歳ですでにデビューしている天才少女らしいです。覚えておいて損はないでしょう。この子はアレッサの善のこころが生んだシャロンと、彼女の憎しみが生んだ死神の一人二役を見事に演じていましたね。とくに死神の時の顔の表情がすごくいい。メイクで怖そうにみせたり、悪ぶっていましたが、やはりかわいさは隠せない(笑) 死神は憎しみの塊のような存在ですが、強がっていても繊細な一面もありました。そこが切ない。 それと母親のローズは偉い!化け物を相手に彼女は一歩もひかずに我が子を取り返そうと走り回る。その姿に感動しました。それにしてもローズの夫は本当に使えない奴だ。サイレントヒルのなかにいて我が子を取り返そうと戦っている母親と、サイレントヒルの外にいてオロオロしている父親の姿が対象的にえがかれています。子供にとって母親は神であり、父親は用なしということか? 実の母親に裏切られて傷ついたアレッサの良心(シャロン)を、あたらしく母親になったローズが癒してくれた。 私にとってこの映画は絶対ハッピーエンドだ。 
[DVD(字幕)] 9点(2007-02-27 19:27:42)(良:3票)
11.  カポーティ 《ネタバレ》 
カポーティというと「天才・ゲイ・アル中」という三拍子が揃ったスキャンダラスな作家というイメージが私には強かったのですが、この映画をみると、巧みな話術によって社交界から持て囃される華のある男という面白い一面も見せている。一見すると一流作家としての矜持を誇っているかのように見える主人公ですが、カポーティの本質はやはり子供のころのトラウマに根ざしており、彼の母親は母性本能の欠如した女だったので、わが子の顔を見るのが嫌で仕方なかったようです。したがって親の愛情を受けずに育った彼は異常なほどに他人から愛情をもらうことに執着し、名声に飢えていた、その飢えが「野心」となり、彼の揺るぎない創作意欲の原動力となっていたことも事実だと思う。歴史的な傑作「冷血」が生まれた背景には強烈な野心があったことは疑う余地もないのですが、その野心とはカポーティが持つトラウマの裏返しだったと考えます。そしてこの不幸な作家と同じく愛情不足で大人になってしまった凶悪犯人ペリーに対する不思議な友情も非常に丁寧に描かれており、ペリーを助けたいけど、早く処刑という結果が出てくれないと本が完結しないというジレンマ、助けたいけど死んで欲しいという相反する矛盾、その葛藤がうまく表現されていて不思議と違和感を感じませんでした。この作家は人格破綻者ではあるけれども、けっして冷酷な偽善者ではなかったと思う。カポーティーという作家は野心家であるがトラウマを抱えた孤独な人間、そして繊細な性格の持ち主であるが華やかな饒舌家でもある。こんな複雑で奥深い人間をどうやって役者が演じることができるのだろうか?見事に演じきってしまったフィリップ・シーモア・ホフマンに脱帽。 
[映画館(字幕)] 9点(2006-10-25 18:16:33)(良:2票)
12.  ホテル・ルワンダ
この映画をみて国連の批判や、国益重視の先進諸国の批判はできるが、だからといって自分たちだったら何ができるのか??寄付ならできる。しかしある1人のアメリカ人はお金を3万円だけ日本人に渡してこう言う。「お金は僕が出すから君がかわりに戦場に行ってくれよ」と。ルワンダの現状はわかった。我々日本人はクーラーのきいた映画館で、馬鹿な国連に腹をたて、この虐殺に無関心だった人間たちを軽蔑し、そして殺されたルワンダの国民に涙を流す。しかし頭の片隅には明日の仕事の段取りを考えている。せめて寄付でもして良心を満足させたいが、そういえば、家族とディズニーランドへ行く予定なのであまりお金を使いたくない。しかしこんな大虐殺が実際に起こっていたなんて信じられない。本当に素晴らしい映画だった・・と思っていたら友人から「今日は焼肉でも食いに行こう」と誘われる。ルワンダの事件は確かに深刻だったが焼肉は食べよう。多少良心は痛むが最初のうちだけだ。ルワンダの惨状に涙は流すが食欲はなくならないのだ。そして今日の夜もビールを飲み続ける。酔い加減も気持ちよくなってきたらさっそく、この素晴らしい映画のレビューをつけよう。もちろん10点をつけて、ルワンダに無関心な人間を哀れんでみせよう。私だけはこの映画をみて目が覚めた、この事件に強い関心を持つようになったのだ。そういう自分に満足をしながら温かい布団の中にはいってぐっすりと眠る。さあ来週はディズニーランドだ。なんとか今年のクリスマスまではこの事件のことを忘れないようにしよう。そうやって今日という日が過ぎていく。この映画を知って無関心だった事件に関心を持つようになった・・しかしそれだけである。 
[DVD(字幕)] 10点(2006-09-12 17:58:54)(良:2票)
13.  フリーダ 《ネタバレ》 
偉大な文学は不幸から生まれると言ったのはヘミングウェイ。(たぶん) 芸術もしかり。彼女を知らずして彼女の作品を見ることにあまり意味はないと思う、だからこそこの映画は貴重です。私はフリーダのことをたくさん知ってはじめて彼女の絵を見る資格を得た気がします。彼女の背負ったものは不幸であると同時に一種の情熱だったのかもしれません。少なくとも私がこの映画で知ったフリーダ・カーロは、ろうそくの火が消える瞬間のあの激しい炎の揺らめきのように美しい女性でした。彼女はまさに命尽きる寸前に激しい炎を発生させる燃える女でした(萌える女じゃありませんよ!)いっぱい詰め込みすぎた映画であることは否定しませんが、私は逆にもっと詰め込んで欲しかった。フリーダ・カーロを1つの枠に当てはめることなど到底不可能だと言わんばかりに混乱させてくれたほうが、いかにもフリーダらしいじゃありませんか。彼女は混沌の象徴。シュレアリスムという枠に当てはめること自体ナンセンス。彼女の魅力はアンバランス。知的でありながら世俗的で淫らであるということ─、逞しく強そうに見えながら体が小柄であること─、その美しい容貌とは対照的に体は傷だらけであること─、どれもが相反するアンバランスさを抱えながらそれがフリーダ・カーロという人間を形成している─、彼女の自画像はこのアンバランスの魅力だと思えてなりません。素晴らしい映画です。
[DVD(字幕)] 10点(2006-02-26 12:01:59)
14.  アララトの聖母 《ネタバレ》 
日本人がこの映画をみて頭に浮かべることは、いまだに中国から「嘘」か「本当」か分からない南京虐殺事件を責められていることだと思います。 興味深かったのは、アルメニア人大虐殺映画に主演してしまったハーフのトルコ人役者の心の葛藤です。 これは日本人が中国に行って南京虐殺映画に主演するようなもの。たとえ役者としての出世がかかっているにせよ後悔の念や自己嫌悪で苦しんでいる様子が随所に伺えます。 憎しみから何も生まれないとはよく言います。歴史認識に関しては疑問はありましたが、アルメニア人の両親をもつエゴヤン監督にとってこれは、自分のルーツを確認するための映画なのかもしれない。 しかしこの映画は歴史を扱っただけの映画ではなく私は再生の物語だと感じました。 これだけは絶対に言いたいことですが、この映画は時間軸の使い方が非常にうまく、3つの時間の流れと、2つの家族が丁寧に描かれています。 これほど完璧な構成力を持った映画にお目にかかることは1年に1度あるかないかだと思う。 登場人物では、父親の死に対する悲しみを義母への怒りに変えてしまった娘や、どうしてもゲイの息子を認められない堅物の父親(税関の仕事をしている)が特に印象的でした。 娘の悲しみが怒りに変わる心理はアルメニアの歴史と似ている。 そしてこの2つの壊れかかった家族が、アルメニアの主人公をきっかけにして再生していく─。 娘の刑務所のシーンや車のシーンがそれに当たります。 ところで取調室で主人公の少年を救ったのは税関検査官ですが、本当に救われたのは税関検査官だと思う。 赦すという事が理解に変わり自分が変わることもある。 そしてアルメニアの画家ゴーキーが時間軸を越えて現在の義母の前に現れたあの瞬間、監督がこの映画に望んでいた本当の目的が見えてきました。これはアルメニアに深い想いを抱く監督が作った執念の傑作です。なんと素晴らしい構成力を持った映画でしょうか。
[DVD(字幕)] 10点(2005-08-22 19:56:51)(良:1票)
15.  涙女
涙女は「泣き屋」という意味です。葬式の時に雇われて、死んだ人のために泣くことを商売にしている女性のことだそうです。 私が見たところ、泣くだけではなく、歌ったり踊ったりしていましたが、お堅い人がこれを見たら不謹慎だと思うかもしれません。この映画は、中国で作られたのに、中国では上映されていない不思議な映画です。 それは映画を見ればなんとなく分かりますが、事実なのに、都合が悪くなるとすぐに隠したがるお国柄なのですね。 それから泣き屋を演じたリァオ・チンは、元オペラ歌手だそうですが、映画の中では子供を抱えながら海賊版のDVDを売るような女性で、タフで利己的な面も持っています。しかし、ヘタレで弱さも抱えており、なかなか憎めません。 他人のために泣くことを商売としている「涙女」は一度も本気で他人のために泣きませんでした。 最後の大泣きも、「自分のため」だったのが印象的です。 たくましくてずるくてかわいい女性だったと思います。 この女性を通して、実質的に資本主義に変貌した中国の一面が見られます。 カラフルな色を意識的にたくさん使った映画なので、お洒落なミニシアター系の映画が好きな人は、けっこう楽しめるかと思います。  
[DVD(字幕)] 8点(2005-05-22 15:06:06)
16.  ボウリング・フォー・コロンバイン
私はアメリカが大好きです。 ・・・しかし彼はアメリカを愛していないと思う。  最近はブッシュを批判することでお金を稼いでいる人が増えてきました。よく考えればアメリカは世界の敵だからアメリカを貶める映画をつくれば需要はあるわけですね。ムーア監督の真似をする人が増えてきたのは当然かも。 最近はラップ歌手も「反ブッシュ」の歌を歌う。 これが今の流行なのかな(笑)  日本人の私はこの映画を見て監督がアメリカに対する愛を抱いているとは感じられませんでした。
0点(2004-09-03 21:10:06)(良:2票)
17.  死ぬまでにしたい10のこと 《ネタバレ》 
最近は感動を催促される映画が多い中で、この映画は地味だけどありのままの生身の人間を見せてくれたので新鮮だった。  残り数ヶ月の命─。 自分の人生の終わりが見えたときに、はじめて自分の人生が幸せなのか不幸せなのかを考えはじめた彼女は、ごく自然に別な男と恋をしようと決断する。  それが悪いとか良いかと考えるのではなくて、初めて若い彼女が自分の人生と向き直り、疑問に感じたことなのだから素直に受け入れられた。 本当に普通の女の子であり、1人の母親だったと思う。ほとんどの人は生きている間は自分の人生を振り返りはしないだろうが、彼女のように突然死が訪れたらやはり彼女と同じように今までの自分の人生を振り返り疑問を感じることはあると思う。  しかし彼女は死ぬ間際になって当たり前のように自分の周りに存在していた子供や夫や生活のありがたみを実感したと思う。 本当の幸せとは今自分が持っているものを実感できる気持ちなのかもしれない。
9点(2004-04-29 23:47:36)
18.  翼をください
人は、子供のときに、親から愛されることで、他人を愛する自信が生まれるそうです。 親から愛情を受けずに育った人の、他人の愛し方は、どこか、ぎこちなくて悲しい─。 これはそういう映画でした。 ちなみに「同性愛」はこの映画の本質ではないと思います。 彼女は、愛されたことがないゆえに、最後まで愛されるという自信が持てなかった。 彼女の愛情の飢えと不安は、しだいに「嫉妬」にかわっていくのは、ご存知のとおりです。 パイパー・ベラボーの素晴らしいところは、このトラウマを抱えた女の子を完璧に演じたことではないでしょうか? 愛されたいという願望や、愛してくれるだろうか?というトラウマから発した女の子の、身を焦がすような激しい焦燥感が、画面を通して伝わってきて、否が応でも、私の心を鷲摑みにして離しませんでした。 だけど彼女は、たった1人の人間を愛し続けたのだと思います。 それは未来のない絶望的な恋─。 彼女の行動は、終わりに近づくにつれ、荒々しさと、痛々しさを増していき、見ている者の胸に痛みを与えます。 彼女は、絶対に報われない恋愛の行く末を見ようとはせずに、目をつぶって全速力で、壁にぶつかっていく・・そういう少女でした。 母親からも愛されない彼女は、しだいに愛することよりも、愛されることに執着していきます。 パイパー・ベラボーは、絶望と狂気と、繊細さと、切なさの感情が同居する女の子を、見事に演じきりました。 これほど存在感のある女優は、それだけで観る価値はあります。 演技力に10点です
[映画館(字幕)] 10点(2004-01-14 10:18:13)
19.  ダブル・ジョパディー
女優さんが綺麗だった。ダブルジョパティの意味に関しては、そんなものだろう
6点(2003-10-15 22:57:44)
20.  チョコレート(2001)
子供役は救いようが無い。ハルベリーはあいかわらず、毅然とした表情を携えながら、時に情けないほど惨めな表情を見せたりするところが、つい応援したくなるところであり、彼女がこの映画で大きなものを掴んだことにかんしては素直に嬉しいと思う。
9点(2003-10-15 21:23:15)
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