1. ゲド戦記
まるでそこらの素人が作ったみたいな映画。それもそのはず、実際にそうなのだから。「心の闇」や「親殺し」など、取って付けたような要素を投げ込んでは持てあます、浅く幼稚な脚本。アニメーションのクオリティ以前に、コンテの切り方がめちゃくちゃでアングルが暴れまくり、どこからどこへ歩いているのかも分からない稚拙な映像。はたして制作中、あのしろうと監督にアドバイスをしてくれるスタッフはいなかったのか? 壊滅的に幼稚なストーリーセンスはともかく、少なくともコンテの段階で、想定線の概念くらいは教えてあげられたのではないか。演出は、編集は何をしていた? ・・・敢えて何もしなかったのだろう。そこには静かながら確かな悪意がある。そうでなければ、このようなものが出来上がるはずが無い。これは正直言って映画と呼ぶのも憚られるものだし、もっと言えばこのようなものを「商品」として易々と流通させてしまう日本の映画界にも問題があるのだが、「ヴィンセント・ギャロは例外的存在だった」ということを再確認させてくれた点では評価できる"事件"であった。 [DVD(字幕)] 0点(2012-12-15 23:55:28)(良:3票) |
2. バトルシップ(2012)
元気の出ない時に必要な映画は、優れた映画でも面白い映画でもない。元気の出る映画だ。 例えばそう、バトルシップみたいな映画。もっと具体的に言うならバトルシップ。 この映画はひどいものだ。 まずリズムがガタガタだし、ストーリーのラインも同じくらいガタガタしている。 エイリアンの行動理念や背景なんかも恐らく二、三分しか考えられておらず、リアリティのない映画に最低限必要なリアリティすら欠けている。 そういえば登場人物だって二種類しか出てこない。人格に深みがほとんど無いか、全く無いかのどちらかだ。 そもそも、バトルシップゲームの名前だけ使うならともかく、あのルールまでストーリーにねじ込むというのがまともな選択じゃない。 それ以前に、今の子が全然知らない遊び(俺の歳ですら知っているのが奇跡だ)を映画にしようという企画が狂っている。 だが、それでもこの映画には価値がある。 たとえば仕事が上手くいかなくて気分が落ち込んでいる時。長く付き合っていた恋人と別れて虚しい時。不安な時、うんざりする時、ムカつく時。 そういう時、人間が求める映画は何か。 バトルシップだ。 違うかもしれないから念のためにもう一度言う。バトルシップだ。 人間は弱い。ふだん強くても、年に一度くらいは弱ってしまうタイミングがある。 そういう時に備えて、あらゆる人はこの「バトルシップ」のDVDかBlu-rayを本棚やラックに置いておくべきだ。 バトルシップゲームのルールを知らなくても、戦艦や大砲に詳しくなくても、リアーナのアルバムを一枚も持っていなくても問題はない。 バトルシップを楽しむには、せいぜい片方ずつの目と耳があればいいのだ。脳に至っては無いほうが望ましい。 もちろん人の好みはそれぞれだから、もしかしたら「こんなもん買うんじゃなかった」と後悔する人もいるかもしれない。 でも大丈夫、そういう時こそバトルシップを見て元気を出す時だ。 [DVD(字幕)] 7点(2013-06-24 10:27:31)(笑:2票) (良:1票) |
3. スター・トレック/イントゥ・ダークネス
どこを通ってどう着地するのか分からない、例えるなら蛇行運転のようなストーリーだったが、それがかえって面白かったような気もする。 感心するのは、「スタートレック臭」みたいなものを(よくも悪くも)しっかりと残しながらも、オリジナルをまったく知らないどころか、リブート版の前作を見ていない人間でも問題なく楽しめるように出来ていること。そういう意味ではかなり丁寧な作りといえるのかもしれない。 総じて言えば、けっこう良く出来た派手な娯楽映画という感じ。安牌。 [映画館(字幕)] 7点(2013-09-01 15:12:45)(良:2票) |
4. フロム・ダスク・ティル・ドーン
まるで教科書のような良質のクライム・ムービー。ちょっとした弾みでも人を殺す危うい犯人たちと、人質にされた善良な家族との間に漂う緊張感が、観る者の心臓をキリキリと締めつけてくる。この脚本と構成力は……ってアホか!! 9点。 [DVD(字幕)] 9点(2012-12-29 01:50:44)(笑:2票) |
5. 死霊の盆踊り
この映画の見方を教えよう。まず、プレイヤーにこの映画のディスクをセットし、取りだし口をアロンアルファで接着する。これでそのプレイヤーは他の映画を見なくても良くなる。次にリモコンの「再生」以外のボタンをドライバーなどで壊す。「停止」と「早送り」は特に念入りに壊しておこう。あとは誰かに頼んで椅子に体を縛りつけてもらい(体の拘束方法は時計仕掛けのオレンジを参考にすると良いだろう)、ゆっくりと観賞するのだ。さあ、あなたも良き盆踊りライフを! [DVD(字幕)] 0点(2012-12-09 15:36:51)(笑:2票) |
6. デビルマン
ゆかいな駄作。 ただ単純につまらないだけの、言わば空気のような駄作が多い国産駄作の中で、本作は「シベリア超特急」に勝るとも劣らない味わいを持った駄作といえる。 「幻の湖」や「北京原人」のように取っ付きづらくなく、誰もが楽しめるという点でもポイントの高い駄作だ。名娯楽駄作である。 ただひとつ不満を挙げるとしたら、シレーヌの衣装(あんなもの特殊メイクには入らないので衣装と呼ばせていただく)か。 どうせオムツをはいているみたいなデザインにするなら、いっそ本当にオムツをはいた方が面白かった。ちょっと思い切り不足が感じられて残念なところだ。シレーヌ役の草なぎ剛さんにはもう少し頑張ってほしかった。 だが、それ以外はきわめて良いダメさ。 友達と突っ込みながら観るのがオススメ。 [DVD(字幕)] 1点(2013-09-04 20:45:11)(笑:2票) |
7. エイリアン
設定的にはSFだが、その実、丁寧に基本を押さえたホラー映画である。 「密閉された狭い空間で強く凶暴なものと一緒にいなければならない」という恐怖を、これでもかというほど徹底して描いている。 セットの趣を大きく二種に分け、映像にメリハリをつけている点も良い。 キャメロンのマンガ的なパニックアクションも悪くはないが、やはりエイリアンはこの一作目にかぎる、というのが個人的なつぶやき。 [DVD(字幕)] 8点(2013-02-24 07:13:14)(良:2票) |
8. 導火線 FLASH POINT
分かり易く言えば格闘アクション満載の暴力映画であり、分かりづらく言ってもそうである。もちろん見どころはアクションしか無い。 全編にわたってヒリヒリした緊張感が漂っているのが特徴。 「SPL(殺破狼)」等でもそうだったが、近年のドニー・イェンが演じる殺陣は、殴る蹴るばかりだった従来の香港アクションとは違い、投げや絞め、また首相撲なども駆使した、よりケンカ的でバラエティ豊かなものである。一言でいえば掴み合ってからの攻防が多い。 ともすれば必要以上にリアル寄りになってしまいそうなコンセプトでありながら、ちゃんと「夢のある格闘」を組み立てているあたりは、さすが香港映画といえよう。 [DVD(字幕)] 6点(2012-12-29 07:28:46)(良:1票) |
9. サラマンダー
どうひねり出そうとしても感想が出てこない映画。 「あ、はい。お疲れさまでした」という感じ。 面白いと感じる瞬間も無いが、人に言いたくなるほどヒドくもない、お湯飲んでるみたいな一時間半。 たぶん、来月にはこれを見たこと自体忘れると思う。 まあ怪獣が空飛んでるし、小さな男の子なら楽しめるかもしれない。 [DVD(字幕)] 4点(2013-03-28 23:25:37)(笑:1票) |
10. ドニー・ダーコ
時間の歪みをさらりと描いた構成ゆえ"難解"のレッテルを押され、皮肉にもそれが話題になってDVDのヒットへとつながったわけだが、実のところストーリーライン自体は簡潔であり、また非常に静かである。その静けさが、ドニーの選択の尊さと物悲しさを鮮烈に引き立てている。 大らかな構成と自信なさげな脚本は意図したものではないだろうが、揺らぎに満ちた物語によく似合っており、全体的な統一感が取れていた。 手放しに絶賛できるほど大した映画というわけではない。気まぐれに作った料理がたまたま上手く出来た、といったところか。 しかし、美味いのは事実である。 [DVD(字幕)] 6点(2012-12-29 06:31:59)(良:1票) |
11. マルホランド・ドライブ
悪質なギミックの仕掛けられた映画。つげ義春的ともいえる意識の表現を上手く使った二層構成で作られており、初見ではその特殊さに翻弄されるが、結末(真相)が分かった上でもう一度見ると、色々なシーンで切ない気持ちになる。 リンチ映画の中ではストレイトストーリーの次に分かり易い作品。優れた映画。 [DVD(字幕)] 9点(2012-12-29 07:03:00)(良:1票) |
12. 交渉人(1998)
ともすれば頭脳戦を必要以上に意識してしまいそうな設定でありながら、派手さとのバランスも忘れない、良くも悪くもプロらしい作り。ジャンルとしては、ダイ・ハードの第一作に代表されるような、シナリオ重視のアクションといえるかもしれない。なかなかの娯楽映画。 [DVD(字幕)] 6点(2012-12-29 07:50:11)(良:1票) |
13. オーロラの彼方へ
これほどひどい邦題の付け方もないだろう。日本では「泣けて感動するっぽい感じ」で宣伝すれば頭の軽い連中が観るとでも思っているのだろうが、そして実際そうなのかもしれないが、良質のSFサスペンスに泥を塗りたくるような真似はやめてほしいものだ。……まあ、それはいいとして。構成があまりスマートでなく、ストーリーの展開にやや強引なところはあるものの、それを補って余りあるアイディアが魅力的な作品。無線越しという限定的な過去への干渉が、段々と30年前の未解決殺人事件に関わってゆく緊張感にワクワクする。おすすめ。 [DVD(字幕)] 8点(2012-12-27 06:12:44)(良:1票) |
14. ゴーストライダー
アメコミ原作モノ特有の「ズコー!」な部分が色々と詰まっているので、そのへんをエンジョイするスキルがあればとても楽しい。もちろん見た目通り、まじめに見るような映画ではない。回想シーンの主人公とニコラス・ケイジが全く似ていなくて、「こっちの方がよっぽどショッキングな変身だよ」と笑ったのが個人的なハイライト。あと、詳細は言わないが「うおおおお!さて、俺はここで帰るわ」もなかなかだった。六点あげたいところだけど、導入が長いから五点。 [DVD(字幕)] 5点(2012-12-13 12:47:43)(笑:1票) |
15. ダークシティ
レトロフューチャー的な画作り。 ティム・バートンやテリー・ギリアムがやるような、敢えてチープに作った映像が、視覚的な遊びにとどまらず後々の展開にも生きてくる。 ストーリー自体はSFではよくある超古典的なパターンで、正直言って真相も読めてしまう。これが小説なら「うわー……」といったところだが、それもレトロなセットとマッチさせるために意図したものなのだろうか。このへんは判断が付かないけれど、様式美のような謎をいつまでも引っ張り続けるキーファー・サザーランドのセリフまわしにはちょっと苦笑した。 総じて言えば映像を楽しむ映画。もうちょい短くてもよかった。 [DVD(字幕)] 6点(2013-03-27 15:26:33)(良:1票) |
16. ザ・ダイバー
男らしい父親の男らしい想いを受け継いだ男らしい男が、男らしい目標のために男らしく努力する男らしい映画。男性ホルモンを補給したい時にはぜひ。 もちろん女性の登場人物もまったく空気ってわけじゃなく、デ・ニーロの奥さんが親切な親戚のおばさんみたいな感じで良い味のキャラクターだった。 [DVD(字幕)] 7点(2013-07-07 14:51:17)(笑:1票) |
17. ミッドナイト・ラン
ストーリーとキャラクターの魅力で引っ張ってくれる、正統派の「おもしろい映画」。見終えた後には、「ああ、おもしろい映画が終わってしまった」という、満足感と寂しさが同居したような感覚が味わえる。地味なパッケージとタイトルだからといって敬遠してはいけない。騙されたと思ってレンタルし、持ち帰り、ディスクをデッキに入れてほしい。決して後悔はしないだろう。 [DVD(字幕)] 9点(2012-12-13 13:13:04)(良:1票) |
18. エド・ウッド
エドっ子たち(エド・ウッド作品を愛してやまない頭おかしい人たちの意)なら間違いなく満足するであろう一本。 伝説のエピソードの数々が映像で再現されているだけで素晴らしいのに、エドの不必要ともいえる映画への情熱までもが、温かな愛を持って描きぬかれている。なんとも素敵な伝記映画だ。 エド映画の名シーン……名シーン!? はあ!? まあいいや、名シーンがちょこちょこと再現されているのも嬉しい。 ひとつ心配なのは、本作が素晴らしい作品に仕上がってしまっていること。 この映画を、たとえば好奇心旺盛な中学生やジョニー・デップファンの若い女性が見て、エド・ウッドという人物にちょっと興味を持ってしまい、その勢いでプラン9・フロム・アウタースペースやグレンとグレンダなんかをレンタルしてしまった日には、彼らを形容する言葉は「被害者」以外に無くなってしまうのではないか。いや、そこから何かに目覚める可能性も多分にあるけど。 冗談はともかくおすすめできる映画。 個人的にはティム・バートンの映画で一番好き。 欲を言うなら、オープニングの能書きでちょっとカンペ見てほしかったかな。 [DVD(字幕)] 8点(2013-03-29 04:15:47)(良:1票) |
19. 幻の湖
あの締め方は、地球を舞台にしたあらゆる映画のラストに適用できると思う。 [DVD(字幕)] 2点(2013-03-06 10:45:04)(良:1票) |