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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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21.  アメリカン・ビューティー 《ネタバレ》 
本作は家庭の崩壊を描いた作品だと言われますが、実際のところ、家庭という要素はあまり重く扱われていないように思います。主人公であるお父さんは中盤で吹っ切れてしまい、以降は家庭に背を向けてしまうからです。嫁や娘とどう向き合うかという視点は一切なく、彼女達の存在は彼の頭からは完全に消えてしまいます。むしろ私が注目したのは、本作が1999年に製作されたという点です。1999年といえば、『マトリックス』と『ファイト・クラブ』という映画史に残る傑作が2本も生まれた年。そして両作ともに、くだらない日常を生きる男が、生の実感を求めて戦いの世界に足を踏み入れるというお話でした。本作もまた、上記2作と共通のテーマを扱っているように思います。家庭と仕事に揉まれて人生を見失っていた男が、そうした一切のしがらみを捨てて自分の歩みたい道を目指す。上記2作の主人公が追い求めたのは「全人類の救世主になる」「国中の男を束ねた組織のリーダーになる」という幼稚な夢でしたが、一方、本作の主人公が追い求めるのは「女子高生とセックスする」という実に下世話だが、実に正直な夢。目指すもののレベルはぐっと下がりましたが、レスター・バーナムはネオやタイラー・ダーデンと同根の男なのです。。。 本作の脚本は非常によくまとまっています。「この後、私は死ぬ」というつかみで一気に観客の関心を引き、その後は意外性のある展開が繰り広げられてまったく先読みさせません。コンラッド・L・ホールによる撮影、サム・メンデスによる演出も非常に手堅く、こういうものをよく出来た映画と言うのだという見本のような仕上がりとなっています。ただし、問題に感じた点が一点だけあります。クライマックスにて主人公はついに憧れの女子高生とセックスする機会を得たものの、結局彼はセックスを辞退してしまうということ。そこに大人の良識を介入させたら、青年に戻った中年男の悲劇というドラマの意義が半減してしまうでしょうよ。アメリカ社会の破壊を実行したタイラー・ダーデンを見習って欲しいところでした。
[DVD(吹替)] 7点(2013-06-21 01:25:38)(良:2票)
22.  ア・フュー・グッドメン 《ネタバレ》 
ブラッド・ピットやキアヌ・リーブスが世界的な人気を獲得する以前、ハリウッドはトム・クルーズのものでした。90年代前半のトムはまさに絶頂期にあり、派手な見せ場のない本作も、アメリカ国内だけで1億3千万ドル(2013年現在の貨幣価値に換算して2億5千万ドル)という規格外の大ヒットとなりました。さらには、アカデミー作品賞ノミネートというオマケまでくっつき、このジャンルの映画としてはかつてない大成功を収めた作品となったのです。。。 上記の通りビジネス面では大ホームランだった本作ですが、トム様の全盛期も今は昔、現在の目で見ると、それほど高評価を受けるような映画ではないというのが率直な印象です。頭は良いがグータラな男と、地味だが真面目一直線の女、そして家庭を愛する地味な男がチームを組んで巨悪に立ち向かうという構図は面白いものの、重要な場面は必ずと言っていいほどトム様の独壇場で、チーム戦としての面白さがまったく追求されていません。劇中、やたらと野球の話が出てくるのでチームワークを描いた映画になるのだろうと思っていたのですが、それは私の思い過ごしだったようです。さらには、彼らに対する悪人達のキャラ造形は非常に薄っぺら。ジャック・ニコルソンとキーファー・サザーランドというカリスマ的な俳優の力によって何とか帳尻は合っているものの、ここまで単純な悪人にはあまり面白みを感じませんでした。。。 本作の原作と脚本を書いたのは、後に『ソーシャル・ネットワーク』を手がけるアーロン・ソーキンです。ソーキン印の勢いある会話劇としてはよく出来ているのですが、証拠を追いかけながら真実に達するという法廷ものの醍醐味はほとんど追求されていません。事実や論理の積み重ねなどはなく、相手の手落ちを誘導する法廷での舌戦のみで話が進んでいき、知的興奮を求めると少なからず裏切られます。ジェセップ大佐が若造の仕掛けた罠にまんまと引っかかって罪を白状するクライマックスなんて、あまりに単純すぎて白けてしまいました。。。 とまぁ悪口を多く書きましたが、スタッフも役者も一流の映画なので、2時間はきっちり楽しめる娯楽作には仕上がっています。全盛期のトム・クルーズは本当にキラキラで、彼を見ているだけでもテンション上がるし。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2013-06-16 00:20:38)
23.  アイアンクラッド
ジョン王といえば、英国史上でもぶっちぎりのバカとして名を残す人物。そんなジョン王がマグナカルタを覆すために北欧人の傭兵を雇い、自分に楯突いた諸侯を殺して回るという事件が発生。その王に対抗するは、十字軍への従軍経験を持つ騎士を筆頭とした7人の戦士達。なぜ7人なのか?それは黒澤明が決めたから。戦局は南イングランド制圧の拠点となるロチェスター城へと絞られ、7人の戦士が1,000人の傭兵に立ち向かうという熱い構図が用意されます。タイトルの『アイアンクラッド』とは鉄壁の防御のことであり、主人公達が籠城するロチェスター城の守りを意味していると思われます。同時に、アイアンクラッドには【破ることのできない規律】という意味もあり、こちらはマグナカルタや宗教上の掟のことを指していると思われます。。。 この映画、アクション映画としてはなかなか手堅くまとめられています。リドリー・スコットの『キングダム・オブ・ヘブン』を意識したと思われる戦闘シーンは予算以上の迫力を見せているし、過剰なほどの残酷描写も映画の雰囲気に合っています。クライマックスに向けてどんどん盛り上がっていくというペース配分もよく、娯楽策としては十分に楽しめる内容となっているのです。。。 ただし問題もあります。まず、戦闘シーンでは寄りの画が多すぎる上にカットも割りすぎで、見ていてストレスを感じました。また、主人公の扱いが非常に悪く、肝心な場面に限って気絶しているという扱いはいただけませんでした。「よし、やってやるぞ!」とフルアーマーで敵の大軍相手に討って出るも、ロクな見せ場もなくすぐにボコられるという無様な展開などは必要だったでしょうか?さらには、愛のない結婚生活を送る城主の妻と、禁欲の誓いを立てた主人公との禁断の愛にも感動的なものがなく、このサブプロットは丸ごと不要だったと思います。。。 もうひとつの大問題は、英国史についての知識がないと何が何だかわからないということです。ジョン王とは一体何者なのか、マグナカルタとは一体何なのかという知識が最低限必要だし、ノルマン・コンクエストを知らなければ、なぜフランス人やデンマーク人がイギリスの内乱に干渉してきているのかも分かりません。英国人にとっては常識であっても外国人にとってはよくわからない部分が丁寧に説明されていないため、予習が必要な映画となっています。
[DVD(字幕)] 6点(2013-05-02 01:02:57)
24.  アイアンマン3
IMAX3Dにて鑑賞。『アベンジャーズ』という特盛大サービスで観客の目が肥えてしまった後に、平常営業の単品作品をどんな形で出してくるのかという点に大きな感心があったのですが、その点、本作は映画としての完成度を高めるという地道な方法でシリーズを再開しており、大変好感が持てました。シリーズの功労者であるジョン・ファブローに代わり、質の高い娯楽作を多く手がけてきたシェーン・ブラックを新監督に抜擢した辺りに、製作陣の思惑が現れています。。。 本作の前半パートは驚くほど静かです。『アイアンマン』の新作とは思えないほど雰囲気が暗く、トニーからは前作までの破天荒さが消え失せています。『アベンジャーズ』で死にかけた経験から心を患い、ブルース・ウェイン並みにウジウジと悩む描写が続きます。おまけに、アーマーで敵を倒すという爽快な見せ場がまったくなく、アイアンマンの活躍を期待してきた観客にとっては拷問に近い時間が続きます。もちろんこれは監督の計算のうちであり、『アベンジャーズ』でパワーのインフレを目の当たりにした観客の意識を落ち着けるために、意図的にダイナミックな描写を避けているのです。。。 以上の通り、前半部分ではテンション下がりまくるのですが、その分は後半で一気に取り戻します。トニーが再びアイアンマンとして戦う場面の爽快感はシリーズ最高レベル。前半部分でチマチマと設定やドラマを作り込んできたことの成果が、ここで一気に披露されます。また、見せ場の素晴らしさにも目を見張りました。パワーのインフレを抑制するために生身の人間による格闘とアーマーによる戦闘が組み合わされているのですが、このバランス感覚が絶妙なのです。さらには、35体のアーマーが救援に駆けつけるタイミングも完璧なものだったし、壮絶な戦闘の合間に挿入されるユーモアも作品の質を向上させています。ここにきて、シェーン・ブラックの力量が炸裂しまくりなのです。。。 ヴィランに実力派俳優をキャスティングすることが本シリーズの特色ですが、本作ではガイ・ピアースとベン・キングスレイという最強のタッグが作品を大いに盛り上げています。特に、原作コミックでは最強の敵として名を馳せているマンダリン役を演じるベン・キングスレイの怪演には、目を見張るものがありました。ある意味、ヒース・レジャーのジョーカーをも超えてますよ。
[映画館(字幕)] 8点(2013-04-29 00:32:02)(良:3票)
25.  アルゴ 《ネタバレ》 
コメディにしかなりようのない題材をシリアスなサスペンスとしてまとめてみせたベン・アフレックの演出は素晴らしかったと思います。前2作でも感じたのですが、この人は空気作りが抜群に巧い。件のサスペンスフルな演出といい、一滴の血も見せずして殺伐とした舞台を作り上げた手腕といい、ベテラン監督以上に小慣れた技を披露しています。さらには、クライマックスにおける滑走路上のカーチェイスではスペクタクルもモノにしており、その内容はかなり充実しています。かつて『パールハーバー』に主演したのと同一人物とは思えないほどの活躍ぶりです。。。 また、脚本もよく練られています。イランでの作戦行動自体はかなり地味なのですが、本国での下準備や決裁ルートでの混乱を丁寧に描くことで、映画全体のボリュームをうまく調整しているのです。その一方で、主人公・トニーの家庭環境や上司との関係など、本筋とは直接関係のない要素には深入りしすぎなかったバランス感覚も見事なものだし、あえてヒーローを作らなかったという地に足のついたキャラ造型も素晴らしいと感じました。感動的なセリフや熱い演説を排除したことにより、必死で職務をこなす役人達の誠実さがより際立っているのです。。。 地味ではあるのですが、欠点らしい欠点のない素晴らしい映画でした。こういう堅実な映画をきちんと評価して最高賞を与えるオスカーは、やはり侮れない賞だと感じました。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2013-03-27 22:52:15)(良:2票)
26.  悪魔を見た 《ネタバレ》 
熱い民族性がそうさせるのか、韓国映画のバイオレンスとにかく凄い。当該分野において、韓国映画界は間違いなく世界最先端を行っています。本作も例に漏れず、躊躇のない暴力描写、剥き出しとなった感情の衝突、質の高い演技と、見所の多い作品に仕上がっています。最狂の猟奇殺人犯vs殺人スキルを身につけたエリート諜報員という燃える図式も百点満点であり、少なくとも前半部分は最高クラスのバイオレンス映画としてまとまっていました。。。 ただし、後半になると物語は大脱線をしてしまいます。猟奇殺人仲間が登場したり、猟奇殺人犯が諜報員を出し抜く行動を取り始めたりと、やりすぎ感が出てしまうのです。特に、プロの諜報員であるスヒョンが、殺人鬼とは言えスキルは素人のギョンチョルに圧倒されるという展開は非常にマズく、スヒョンが無能に見えてしまうという結果をもたらしています。このテーマであれば、表面的な主導権を握っているのは終始スヒョンであり、彼は圧倒的な殺人スキルによってギョンチョルを極限まで痛めつけるが、歪みきったギョンチョルの心までは征服することができず、ついに禁断の手段に訴えてしまうという筋書きにした方が良かったと思います。
[DVD(吹替)] 5点(2013-03-07 00:28:02)(良:2票)
27.  アイアン・スカイ
監督を務めたティモ・ヴオレンソラとは初めて聞く名前なのですが、母国フィンランドでは有名なクリエイターのようであり、本作は決してパッと出の新人監督が勢いで作り上げた映画ではありません。確かに、兵器やコスチュームデザインのかっこよさや、戦闘シーンの迫力や面白さには圧倒的なものがありました。スペースナチスがマンハッタンを攻撃する場面では大作映画並の手慣れた演出が楽しめるし、ナチスが誇る最強兵器「神々の黄昏号」の起動シーンにはSF映画に必要な仰々しさが宿っていました。10億円に満たない製作費でここまでのものを作り上げたことは驚異的であり、戦闘シーンについては満点に近い評価を与えられると思います。。。 ただし問題は、人間が映っている場面が驚くほど面白くないということです。感情移入可能な魅力的なキャラクターが一人も見当たらないし、かといって強烈な毒を放つ個性的な悪も登場しません。さらには、風刺映画を標榜しながらも、その切り口に新鮮さがなかった点も大きなマイナスでした。ナチスやアメリカを悪とするなんて、あまりにありきたりで面白くありませんよ。道化を装って社会のタブーを突っつくことこそがこの手の作品の使命だと思うのですが、その点、本作は危険なネタを扱っていないためにまったく見応えがありません。『チーム・アメリカ:ワールド・ポリス』くらい突き抜けないと、この手の映画は面白くないのです。
[DVD(吹替)] 5点(2013-03-03 00:45:45)(良:3票)
28.  アタック・ザ・ブロック
エドガー・ライトとニック・フロストの製作チームと言えば、ジャンル映画に並々ならぬ愛情を注ぎ、パロディという体裁を取りながらもジャンルの王道をきっちり捉えた良作を多く生み出している安心のブランド。『遊星からの物体X』を連想させるイントロにはじまり、50年代風の着ぐるみモンスターが暴れ回る本作も、やはりジャンル愛に満ちています。映画は相変わらずの完成度の高さで、序盤から無駄な場面は一切ありません。ノンストップアクションながら早すぎず遅すぎずの絶妙なテンポを終始維持できているし、合間に挟まれる少年たちの友情物語には過不足がありません。さらには、オールドファッションな題材に躊躇のない暴力描写を付加することで現代的な活劇へと映画全体を昇華させており、一時期のピクサー社をも連想させる程の安定した仕事ぶりには毎度惚れ惚れさせられます。。。 以上、客観的な完成度の高さは認めるのですが、私個人としては、それほど感じるもののない映画でした。私の思うところは【あにやん】さんのレビューの通りで、主人公の少年たちに感情移入ができなかった点が大きな問題。誰もが自分を投影できる普通の少年少女が主人公であってこそジュブナイルSFは成り立つようであり、少年ギャングという特殊な人種ではうまくドラマに入り込めないのです。特にマズイと感じたのが序盤の恐喝場面で、夜遅くまで仕事をしていた若いナースから財布を奪う連中に、どうやって感情移入すればいいのでしょうか。この手の侵略SFにおいては、犯罪者や厄介者がまず侵略者の餌食となり、その展開に観客が溜飲を下げるというのがお決まりのパターン。良くて『ドーン・オブ・ザ・デッド』のCJ。彼らは侵略者に襲われこそしても、英雄になるタイプではないのです。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2012-12-26 17:28:57)
29.  アメリカン・クライム 《ネタバレ》 
怖い!暗い!不快!の3拍子揃った実録犯罪映画。インディアナ史上もっとも恐ろしい事件と言われたシルヴィア・ライケンス事件を扱っているだけに内容は超重量級なのですが、その一方で、露悪的な描写は最小限にとどめられています。血や裸はまったくと言っていいほど出てこないし、被害者役を演じるエレン・ペイジの顔も過剰には汚されません。安易な映像的ショックに走ることなく、演出や構成、演技の力で事件の恐ろしさを再現しようとした製作陣の真摯な姿勢には感心しました。本作と同様の企画をブチ上げると、必ずと言っていいほど血みどろの悪趣味映画を作ってしまう邦画界とはまったく違った奥深さを味わうことができました。。。 被害者少女の家庭環境や加害者女性の心理的背景、虐待の事実を知る者が大勢いたにも関わらず誰も通報しなかったという集団心理の恐ろしさ等、この事件には考えるべきさまざまな要素があるのですが、監督はその中でも加害者女性の心理にフォーカスしています。映画の視点を散漫にしないようひとつの要素に絞り込んだ監督の判断は支持できるし、物語の中心に立つガートルード・バニシェフスキーの完成度は驚異的なレベルに達しています。自分にとって都合のいいように物事を解釈し、理不尽を理不尽とは言わせない異様な空気を作り上げる恐ろしい女なのですが、それと同時に彼女は決してモンスターではなく、あくまで普通の人間の延長線上に位置づけられています。これを演じるキャサリン・キーナーの演技には鬼気迫るものがあって、序盤からラストまで嫌な汗をかかせてくれました。
[DVD(吹替)] 8点(2012-11-07 01:15:58)
30.  アフロ田中 《ネタバレ》 
原作は未読です。タイトルからもわかる通り正真正銘のバカ映画なのですが、鑑賞前には114分という思いの外長い上映時間が気がかりでした。というのも、『裸の銃を持つ男』も『オースティン・パワーズ』も上映時間は90分程度、この手の映画は短めにさくっと終わらせないとひどく間延びして感じるのです。そんな不安を抱きつつの鑑賞でしたが、幸いなことにこれがまったくの要らん心配でした。頭から尻尾まで濃厚100%、2時間近く笑いっぱなしでした。素晴らしい場面が100個はあって、ひとつひとつ挙げられない程です。さらには、下ネタやブラックジョーク、考えオチや内輪ネタは極力避けて王道の笑いのみで勝負している姿勢や、安易に感動に走らず終始バカに徹した潔さも男らしく、本作の純粋娯楽ぶりはコメディ界の『レイダース』とでも言える領域に達しています。。。 そんな本作ですが、その構成は極めて周到です。バカはバカではあるが2時間弱を不毛なコントで終えているわけではなく、骨格となるドラマは丁寧に組み立てられているのです。主人公・田中と、お隣に越してきた絶世の美女・加藤の関係がそれなのですが、接近したり離れたりのもどかしい距離感が大変なスリルと興奮を生み出しています。その間に披露される童貞あるあるも核心を突いたものであり、特に男性は「それわかる!」の連続だったはずです。また、オチの付け方も良いと感じました。アメリカ人にこの手の映画を作らせると必ずオタク青年が美女をゲットして終了するのですが(『アメリカン・パイ』『スーパー・バッド/童貞ウォーズ』etc…)、それではオチになっていません。情けないフラれ方をしてこそコメディだと言えるわけで、その点で本作は100点でした。さらには、訳のわからん理由で交際を断られるという展開もさもありなんで、男性ならば人生において一度や二度はこんな経験をしているはずです。。。 本作の脚本を担当したのは、36歳にしてテレビドラマ界のヒットメーカーと呼ばれている西田征史。そして監督を担当したのは、かつて史上最年少の若さでNHKの連続テレビドラマの脚本を執筆し、本作において若干26歳で監督デビューした松居大悟です。つまりこの映画、才能ある若手クリエイターが生み出した作品であって、決していい加減には作られていません。バカをやるには知性が必要という良い例だと思います。
[DVD(邦画)] 9点(2012-10-23 00:25:50)(良:3票)
31.  アポロ18
古くは『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』、最近では『パラノーマル・アクティビティ』がとった手法をSFに応用した作品なのですが、本作の映像はかなり洗練されています。フィルムの切れ目や損傷を入れるという工夫によって記録映像としてのルックスを完璧に作り上げており、本当に月面で撮られたかのような仕上がりとなっているのです。プロデューサーを務めたのは『ナイトウォッチ』や『ウォンテッド』で異様なまでの映像センスを披露したティムール・ベクマンベトフ、彼の手腕は疑似ドキュメンタリーでも冴え渡っています。誰だがよくわからない俳優さん達の演技も上々であり、映画としては水準以上に仕上がっていると感じました。。。 ただしこの映画、基礎となるアイデアがあまりに薄いことがボトルネックとなっています。どこかの映画で見たような古臭いワンアイデアで押し切った内容であり、SFらしい知的な驚きが皆無なのです。せいぜい30分程度にしかならないアイデアを無理矢理長編化したために話の密度は薄く、中盤ではかなり退屈させられました。技術的にはレベルの高い映画だけに、もう一捻りが欲しいところでした。
[DVD(吹替)] 6点(2012-10-21 18:02:55)
32.  あるスキャンダルの覚え書き
97年にアメリカで発生したメアリー・ケイ・ルトーノー事件に着想を得た物語なのですが、主人公バーバラの性格描写を徹底的にリアルにした結果、映画はある種の普遍性を得ることに成功しています。他人と仲良くしたいんだけど人付き合いは恐ろしく苦手で、人間関係がうまくいかない原因は相手にあると思い込むことで自尊心を保っているという困ったちゃん、私の身の回りにも確かにいます。友達だと思っていた相手に意に沿わない行動をとられれば、即座にこれを裏切りと決めつけてしまう被害妄想の塊のような怖い人、確かにいます。ミザリータイプの完全にイっちゃった人ではなく、日常生活で想定できる範囲の迷惑おばさんを主人公にしているところが本作の魅力で、このおばさんがいつどこでブチ切れて人間関係をメチャクチャに破壊してしまうのかを、観客は固唾を飲んで見守ることとなります。本作は大した事件が起こらずとも立派なサスペンス映画として成立しているのです。。。 他方、もう一人の主人公であるシーバのキャラクターは浮世離れしていて、こちらの創作は難しかったのではないかと思います。なんせ、『パール・ハーバー』のケイト・ベッキンセール以下のバカ女を、同情的に見せなければならないのですから。この点については、シーバ役を演じたケイト・ブランシェットの実力によって帳尻を合わせてきたという印象です。ブランシェットの演技力やパブリックイメージを総動員することで、何とかシーバのキャラクターを作り上げています。少しでもバランスを間違えれば観客から見放されかねなかった難役だけに、ブランシェットの実力が光ります。。。 コンパクトながら、脚本もよく出来ています。シーバが父親ほど歳の離れた旦那を持っているという設定を置くことで、彼女が小児性愛者でないことの説明となっているし、性についてのバーバラの独白を加えることで、彼女がレズビアンではないことを明確にしています。登場人物の性的嗜好について観客に誤った深読みをさせないことで、作品の意図を正確に理解させようとしているのですが、こうした細かい工夫には好感が持てます。
[DVD(吹替)] 7点(2012-10-18 01:26:10)
33.  unknown アンノウン(2006) 《ネタバレ》 
ハリウッドが得意とするソリッド・シチュエーション・スリラーの中でも、アイデアだけを取り出せば史上最高とも言える作品。「自分以外の誰が敵で誰が味方なのかが分からない」という定番のシチュエーションにさらに捻りを加え、「自分が被害者側なのか犯人側なのかすら分からない」という突拍子もない設定には恐れ入りました。監督はよくぞこんなアイデアを思いついたものです。。。 ただし、そんなインパクトある設定と比較すると、肝心の内容は今一つであると感じました。舞台に散りばめられたヒントをつなぎ合せて真相に辿り着くというのがこの手の映画の定石だと思うのですが、一方で本作は登場人物達に記憶が蘇ることで自然に謎が解消されていくという生温い進行となっており、知的な駆け引きを期待すると裏切られます。また、「自分以外の4人のうち、一体誰と組むべきか?」という心理戦にも魅力がないし、「自分は善人なのか?悪人なのか?」と自身の人間性と向かい合うドラマとしても、話がうまく広げられていません。優秀な俳優を多く揃えながらもこれを活かせておらず、設定に頼り切った内容となってしまったことは残念で仕方ありませんでした。。。 それでも、85分というコンパクトな作品としては充分に面白い映画ではあると思います。ラストにはきちんとサプライズも仕込まれており、水準を超えるサスペンス映画であることは確かです。
[DVD(吹替)] 6点(2012-10-09 01:18:04)(良:1票)
34.  アーティスト
サイレント映画を観るのは久しぶりだったので、開始後数分間はかなりの違和感を覚えました。セリフがないというのはこんなにも不思議な感覚なんだなぁとあらためて感じ、逆説的にではありますが、トーキーとは革命的な発明だったということを思い知らされました。オスカー受賞により本作はサイレント映画を見たことのない観客の目にも触れることとなったはずですが、そうした観客が本作をどう感じたのかが気になるところです。。。 監督はサイレント映画を徹底的に研究したというだけあって、本作はサイレント映画の醍醐味をきっちりと味わわせる内容となっています。陳腐な物語にオーバーアクト、そして良い人だけが出てくる良い話、これぞ古典の味わいです。こうしたサイレントでしか成立しえない物語を作り上げ、その魅力を現代の観客に思い出させたという点において、本作はその企画意図をまっとうする完成度に達していると評価できます。ただし、問題もあります。ペピーが大スター・ジョージに対して抱いていた憧れが、どの時点で恋心に転化したのかが明確に描写されていないために、ラブストーリーとしては筋の通らない話となっています。また、落ち目になってからのジョージが後ろ向き過ぎてイラっとする点も引っかかりました。優しい運転手に賢い愛犬、そして苦しい中で最大の援助を与えてくれるペピー、これだけの人々に支えられながら、依然として過去にしがみつく主人公には感情移入しがたいものがありました。要するに、ドラマとしての完成度は高くないのです。本作が成功したのはあくまで”器”の完成度の高さであって、”中身”に魂は宿っていませんでした。。。 作品賞受賞の本作を筆頭に『ヒューゴの不思議な発明』『マリリン/7日間の恋』『マーガレット・サッチャー/鉄の女の涙』と、今回のアカデミー賞には懐古的な傾向が目立ちました。古き良き時代を懐かしむ空気というのは、現代の世相が良くないことの裏返し。内容の賛否はともかくとして若い感覚に溢れた作品(『ノーカントリー』『スラムドッグ・ミリオネア』『ハート・ロッカー』)が賞レースを賑わせていた数年前と比較すると、やや寂しい傾向であると感じます。
[DVD(字幕)] 6点(2012-10-07 01:48:10)(良:1票)
35.  アニマル・キングダム 《ネタバレ》 
何やら野蛮で騒々しそうなタイトルからは『デビルズ・リジェクト』な一家が暴れ回る犯罪アクションを想像したのですが、実際の内容は静かな実録ドラマでした(本作は、1988年に発生した警官射殺事件をベースとしている)。ギラついたバイオレンス描写はほとんどなく、代わりにあるのはジリジリとした圧迫感。監督は本作がデビュー作ということで、間延びしすぎた描写や、逆に説明不足の場面も散見されるのですが、それでも締めるべき部分はガッチリ作り込まれているし、悪い余韻を残すラストもテーマと合致しており、本国で絶賛されたことにも納得がいきます。。。 アニマル・キングダムを仕切っているママと長男、とにかくこの二人の造型が素晴らしすぎます。全身にタトゥの入りまくった次男、完全にDQN顔の三男と比較すると、長男のルックスはかなり地味。犯罪者というよりも普通の中年男性なのですが、その狂いっぷりは次男・三男を怯えさせるレベル。彼は精神疾患を患っているために世界が歪んで見えているようで、極端な被害妄想を抱いたり、異常な攻撃性を示したりします。『グッドフェローズ』のジョー・ペシもそうでしたが、あからさまな狂人よりも、基本的には一般人と変わりないのだが、いくつかの点で異常性が見受けられるキ○ガイの方が遥かに恐ろしく感じます。一方、アニマル・キングダムを内助の功で支えるママは、キ○ガイに見えて実は頭脳プレーを得意とするという、長男とは正反対のキャラクター。息子達への溺愛ぶりには『デビルズ・リジェクト』のママにも通じる狂気が感じられるのですが、いざ一家が危機に陥れば、巧みな戦術や人脈を駆使した裏工作で生存の道を模索します。その思考は至って冷静。一時は警察側についていた孫のジョシュが一家の側に寝返った時点で、ジョシュは長男ポープに復讐する腹だということを彼女は見抜いています。ポープは愛する息子であり、母としての心情ではその生存を望むのですが、その一方で凶暴性に歯止めの利かなくなったポープは一家存続のために切らざるを得ない存在。そこで彼女は、三男の救出を最優先として長男ポープの殺害を容認し、情よりも利を取るという決断を下すのです。一家の愛憎が入り乱れるこのラストは非常に素晴らしく感じました。
[DVD(吹替)] 8点(2012-09-09 14:18:06)(良:1票)
36.  アベンジャーズ(2012)
IMAX3Dにて鑑賞。この映画の3D効果は非常に素晴らしく、IMAX料金に3D料金も加算されて二人で4,400円というえらい入場料を取られたものの、それだけの価値のある体験はできたと思います。。。 単独主演作のなかったキャラクター達にまず見せ場を持たせ、続いて主役格のヒーロー達に各々ド派手な再登場シーンを与える。この序盤の構成だけでワクワクさせられました。オタクの神様ジョス・ウェドンは多くのキャラが入り乱れるこの物語を愛をもって丁寧にまとめ上げており、その仕事は驚異的と言えます。また、各キャラに対して均一に見せ場を与えるというサジ加減も絶妙。雷神ソーやハルクと比べると、凡人をムキムキにしただけのキャプテン・アメリカなんてのは圧倒的に見劣りするヒーローなのですが、そんなキャップにもかっこいい見せ場がちゃんと与えられているのです。ドラゴンボールで言えば、サイヤ人達が入り乱れる中でヤムチャや天津飯にも活躍の場が与えられているという状態であり、それを思えば、この映画の脚本がいかに優れているかがわかります。。。 と、キャラクターものとしては素晴らしい作品ではあるのですが、キャラクターの交通整理に終始して映画全体としてはイマイチだったように思います。原作がそうだから仕方ないとは言え、ヒーロー達の仲間割れが延々と続く中盤の展開はめんどくさかったし、クライマックスの大バトルはパラマウントが昨年製作した『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』を下敷きにしていることがモロバレとなっています。世紀の超大作を謳う割にはサプライズが少なく、やや拍子抜けさせられました。。。 この映画が不幸だったのは、日本公開が全世界同時公開から3か月も遅れてしまったこと。もちろん世界最遅公開。このタイムラグで自分の中では熱が冷めてしまい、お祭り騒ぎに参加するという心境で鑑賞することができませんでした。もし熱狂の中で観ていれば、前述した欠点も「見過ごすべき小さな問題」として捉えられていたかもしれないと思うと、この手のイベント映画には鮮度が重要であるということを再認識させられました。2015年の公開が予定されている『アベンジャーズ2』ではそこんとこよろしくお願いしますよ、配給会社のみなさん。
[映画館(字幕)] 7点(2012-08-25 02:18:50)(良:1票)
37.  アメイジング・スパイダーマン 《ネタバレ》 
IMAXシアターにて鑑賞しましたが、スパイディの背中をカメラが追う3D映像はかなりの迫力と面白さで、映画館で観てよかったなぁと思う作品でした。今回のピーター・パーカーは松潤似のルックスに天才科学者並みの頭脳、ハリー・ポッターばりにいわくつきの両親を持つ特別な人物となっていて、平凡な高校生がスーパーヒーローになるというサム・ライミ版とは大きく異なる物語ではあるのですが(ドラえもんの主人公がのび太から出木杉君に代わったくらいの大きな変更)、前シリーズを丁寧に研究して作られているおかげでこの方向転換に違和感は覚えませんでした。スパイダーマンは正義のあり方について常に思い悩むし、敵も絶対悪ではない。人情が複雑に絡み合う湿っぽい構図は健在なのです。スパイディが市井の人々に支えられているという描写もきちんとなされていて、NY市民が負傷したスパイディのために道を作る場面にはファイトシーン以上に興奮させられました。これぞスパイダーマンです。。。 旧キャストによる「スパイダーマン4」の製作がキャンセルされ、代わりに娯楽作の経験のないマーク・ウェブが新監督に抜擢された時には不安を覚えたのですが、完成した作品を見るにこの判断は正解だったようです。サム・ライミが不得意としていた恋愛パートの演出も彼にとってはお手の物だし、アクション演出は期待以上に的確です。CG全開のヒーローバトルはもちろんのこと、マスクをかぶる前のピーターが街のチンピラを倒して回るライブアクションも流れるように決まっています。粋なラストはこの監督ならではで、今後も彼が担当するのであれば、このシリーズはかなり期待できると思います(私が鑑賞した吹替版と字幕版とではグウェンの父親の最後の言葉の翻訳に違いがあるため、どちらを鑑賞したかでラストの評価は割れている様子ですが)。。。 なお、私の周囲ではウェブシューター(糸を発射する機械)の登場に戸惑いの声があがっているのですが、原作に忠実なのは本作の方。前シリーズでは「平凡な高校生が高度な機械を発明することは不自然」との理由で手首から糸を発射するという設定となっていましたが、ピーターを天才とした本作では原作通りの描写に戻されたようです。
[映画館(吹替)] 8点(2012-06-25 00:42:31)(良:4票)
38.  アドルフの画集
若きヒトラーとユダヤ人画廊の交流という着想は素晴らしいのですが、肝心の本編は至って平凡でした。斬新なヒトラー像が提示されることを期待していたのに、本作に登場するヒトラーは誰もが想像するヒトラーそのもの。神経質で、コンプレックスの塊で、自分を否定されると烈火の如く怒り出す。これでは面白くありません。どうせフィクションなのだから(マックス・ロスマンというユダヤ人画廊は実在しません)、純朴な愛国青年がダークサイドに堕ちるスターウォーズのような物語にでもすればよかったのです。。。 なお、ヒトラーの人となりについては「ヒトラー最期の12日間」が正しいようで、普段は穏やかな紳士だったようです。大声でまくしたてる姿はあくまで彼の演説術に過ぎないのですが、そんな演説の姿から個人としてのヒトラー像を作り上げた本作のアプローチは、やはり陳腐であったと言わざるをえません。
[DVD(吹替)] 4点(2012-05-30 01:15:27)
39.  アルファ・ドッグ 破滅へのカウントダウン 《ネタバレ》 
TSUTAYAで何気なく手に取ったのですが、これが滅法面白くて驚きました。傑作の類ではありませんが、映画に通常要求される水準は軽く超えています。。。 不良同士の些細なトラブルがいくつかの偶然や勘違い、無知ゆえの思い込みによって凄惨な殺人事件へと発展していくという物語なのですが、ニック・カサヴェテスによる脚色が抜群に優れています。通常であれば殺人に手を染めた青年に的を絞るべき題材にあって、この人物をあえて本筋から外しているのです。ほのぼのとした友情物語に上映時間の大半を費やしておいて、ラストになって突如、殺気だった殺人者を送り込んでくる。このコントラストの付け方は非常に効果的でした。同時に、殺人者となる青年が殺人を犯すに至った心理的背景も手短ながらきっちりと描かれていて、相当に計算された脚本だと思います。。。 俳優の使い方もうまくて、ジェスティン・ティンバーレイク、エミール・ハーシュ、アントン・イェルチン、ベン・フォスター、オリヴィア・ワイルドら伸び盛りの若手を大挙して出演させ、その脇をブルース・ウィリスとシャロン・ストーンで固めるという抜かりのない布陣となっています。ティンバーレイクの気の良い不良ぶりは完璧なキャスティングだったし、神経質な母親を演じたシャロン・ストーンには「この人、こんなに演技力あったの?」と驚かされました。「フェイス/オフ」以来10年ぶりに見たドミニク・スウェインは相変わらず美人で、オスカー・ワイルドはおっぱいを出しています。まさに充実の映画ではありませんか。。。 問題に感じたのはこの映画の売られ方で、「実話を描いた衝撃のクライムサスペンス!」「史上最年少のFBI最重要指名手配犯!」という宣伝文句は作品の本質をまるで表していないどころか、観る者にあらぬ期待を抱かせて鑑賞後の満足度を引き下げる結果にもつながっています。良い映画なのだから、もう少し丁寧に扱ってほしいものです。
[DVD(吹替)] 8点(2012-05-13 18:16:13)
40.  アメリカン・サイコ 《ネタバレ》 
親の金で有名大学を卒業し、親の力でウォール街のエグゼクティブになった男の物語。趣味の音楽について長々と講釈を垂れるものの、彼が愛する音楽はヒューイ・ルイスにホイットニー・ヒューストン。日本で言えば、音楽通を名乗る人間がEXILEや西野カナについて真剣に語るようなものでしょうか。実際のところ、彼は音楽など好きではないのです。好きではないが、ファッションとして音楽好きであろうとしているだけ。こんな調子で趣味、仕事、友人、恋人、彼の周りにあるものはすべて上っ面のものばかりです。そんな上っ面ばかりの空虚な生活にはさすがに嫌気がさし、ここは自分がいるべき場所ではないと感じながらも、同時にこのコミュニティを離れては生きられないことも認識できている点がこの男の悲しいところ。自分には能力がないことをよくわかっているのです(ホームレスに長々と説教を垂れる場面、自分より教養のない人間の前でのみ小難しい話をしたがる点に、彼のコンプレックスがよく現れています)。顔面のお手入れや筋トレ、名刺作りに精を出したところでこの根深いコンプレックスを払拭することはできず、さらには妄想の世界にも逃げ場はなく、最終的に彼の人格は破綻してしまいます。。。 以上が本作の内容です。私は人生のある一時期、頭がよくて洗練された人々のコミュニティに間違って紛れ込んでしまって、非常に息苦しい思いをした経験があります。その時には”ホンモノの人たち”を見て完全に自信喪失するという感覚を痛いほど味わっただけに(ポール・アレンに出会った時の主人公と同じ感覚でしょうか)、本作の主人公には大変共感できました。もしあの感覚が一生続くとしたらまさに地獄。仮に貧乏であっても、ほんの些細なことで自信を持てる人生の方がきっと幸せです。。。 興味深いのは、本作が「ファイト・クラブ」や「マトリックス」と同時期に製作されたこと。ホワイトカラーが物質主義から脱却し、本当の自分を模索する物語が3本も続いたことは偶然ではないでしょう。
[DVD(吹替)] 7点(2012-05-12 02:32:08)(良:1票)
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