21. 荒木又右衛門 決闘鍵屋の辻
前半のストーリーがやや分かりづらく、やや辟易した。 しかし、終盤の鍵屋の辻における決闘シーンは、異様なまでの緊迫感が出ていて圧巻。 チャンバラ的なノリを徹底的に排し、無様とも言えるほどのリアリティな決闘が演出されていて見事。 加東大介も人間らしい弱みを見せる役どころで、全くもってかっこよくないのだが、これが素晴らしいリアリティを生んでいた。 終盤の緊迫感だけでここまで見せる映画は初めて観た気がする。 『切腹』に匹敵する、異色時代劇の傑作であろうことは間違いない。 [ビデオ(邦画)] 8点(2007-10-11 00:04:26) |
22. ある殺し屋の鍵
《ネタバレ》 前作では成田三樹夫が出ていたが、今回は出ていない。 その分、物足りなさを感じた。 しかも前作よりも作りが雑な印象を受けた。 最後の殺しのシーンにしても、明るい場所でアレをやるには少々、無理がある。 前作では確か停電中だったはず。 その他のシーンでも、説得力を欠くシーンがいくつかあったのが残念。 しかし、それを加味したとしても面白いことには変わりない。 このシリーズをもっと観てみたかった。 雷蔵の七変化も楽しめる快作。 佐藤友美という女性はスタイル抜群で好み。 脚が特に綺麗である。 それにしても、ラスト付近での佐藤友美の電話・・・ あれは一体、何を話していたのだろうか。 サッパリ分からない。 [ビデオ(邦画)] 8点(2007-09-24 09:15:49) |
23. ある映画監督の生涯 溝口健二の記録
溝口映画ゆかりの人達が、次から次へと39人も登場する。 本ドキュメンタリーは、 1.溝口作品の出演者達を、映画以外では知らない 2.溝口作品の出演者達の、その後の姿を全く知らない 3.溝口作品を沢山観たことがある の3つの条件を満たしていれば満たしている程、楽しめるに違いない。 それ以外の人が観ても、何てことのないドキュメンタリーか、もしくは、ただ単に古い人が沢山出てくるだけの退屈なインタビュー映像集になってしまうだろう。 また逆に、現在を起点に考えれば、本作は30年以上も前の作品となるわけで、現在は大半が亡くなられた人達ばかりでもある。 そういう点で考えても貴重なインタビュー集なわけで、特に宮川一夫、川口松太郎、依田義賢、増村保造等の映像を観れたのは良かった。 さてさて、本作を観る上で個人的に一番楽しみにしていたのが、溝口作品ゆかりの女優達のその後の姿をおがむこと。 特に、木暮実千代、山田五十鈴、入江たか子辺りのインタビュー映像は楽しみで仕方なかった。 39人のインタビューの中で、一番衝撃度が高かったのが木暮実千代。 『祇園囃子』でその妖艶さに打ちのめされた私は、すっかり木暮実千代の虜(とりこ)になった。 そして本作で60歳近くになった彼女と“再会”ができるわけである。(実際は、既に『男はつらいよ』で晩年の彼女を観ていたのだが、全く記憶にない) それはとても怖くもあったが、同時にそれ以上にわくわくもした。 そして、『祇園囃子』の過去の映像の直後に、“その後”の彼女が登場・・・ おぉぉぉ・・・・ うーん・・・ これが正直な感想。 でもとても嬉しかったのも事実。 何故なら他の女優達の“その後”が、妙に神経質っぽかったのに対して、木暮実千代のインタビューの受け答えは、とても明るかったから。 “妖艶さ”の面影は消えていたが、親しみやすいマダムな感じで、これはこれで楽しめた。 しかし、インタビューをした監督の新藤兼人さん、「祇園囃子は力の抜けたいい写真でしたね」って、それはないんじゃないの?? それを聞いた木暮実千代も、同意しかねていたではないですか! もちろん悪い意味で言ったのではないだろうけど、個人的には溝口作品の中で一番好きな作品なだけに、木暮実千代同様、私も同意しかねますねぇ~ [DVD(邦画)] 8点(2007-09-02 22:41:32)(良:3票) |
24. 乞食/アッカトーネ
《ネタバレ》 イタリアの名匠、ピエル・パオロ・パゾリーニの監督デビュー作。 主演は、パゾリーニ映画の“常連”であるフランコ・チッティ。 この人の顔は何度も見たことがあったけど、顔と名前をしっかり憶えたのは今回が初めて。 他の作品でもかなりの個性を発揮していた彼だが、本作においては主役ということもあって、存在感ありまくりだ。 舞台はローマのスラム街。 主人公であるアッカトーネは職にも就かず、プラプラと日々暮している。 彼の経済的根拠は“ヒモ”。 要するに、自分は毎日遊び呆け、女性に食わせてもらっているのだ。 なんという羨ましい暮らしぶりだろう。 「仕事なんて堕落した人間のすることだ。」 と、彼は劇中でのたまう。 なかなか哲学的なプータローだ。 自分も多分にプータロー気質な部分があるからして、こういった「怠け者の若者」を題材にした作品は、それだけで自分のツボにハマってしまう。 袖まくりをしながら、ガタイのいい(体格のいい)彼は街をブラブラとしている。 ロクに働いてもいないのに、無意味に体格がよろしい。 とあるきっかけで肉体労働を一日だけすることになるが、すぐにバテテしまう。 あのガタイは一体、何の意味が! 見かけ倒しかよ、おい! そんなとこも自分に似てて楽しかったりする。 そんな彼もついには奥さんに見捨てられ、家を追い出されてしまう。 それでも彼は働かない。 ガタイを活かさない。 しかしながら、さすがにそんな彼でも飯なしでは生きていけない。 「お腹が空くのは、食べることが習慣になってしまった証拠だ。」 と、またしても哲学的なことをのたまうが、要するに腹ペコな彼。 ついには、子供をあやすフリをして、子供の首にかかったネックレスを盗んでしまう。 そうして堕落の道をひたすら突き進んでいくのだが・・・ 後期の彼の作品群に比べると、過激な描写はほとんど無い本作。 それだけに、パゾリーニの描き出す独特の映像世界にどっぷりと浸ることができた。 パゾリーニ映画のモノクロ世界は、見ていてとても心地良くなる。 彼の作品群の中で、それを最も強く感じさせたのは、この『アッカトーネ』という作品だった。 巷のレビューサイト等で、非常に評判が良かった為、観ることを決めた本作。 どうやらその「口コミ評判」に間違いはなかった様だ。 [ビデオ(字幕)] 8点(2007-09-01 21:17:59) |
25. 赤い私と、青い君
《ネタバレ》 ひじょーに前向きな内容、こういうのは大好物。 音楽も素敵だ、音楽センスの良い日本映画大好き。 小説に熱意を持つ男女ふたりの物語。 あやしいびみょーな関係ながら、付き合ってはいなさそう。 付き合っちゃえばいいのになー。 二人とも美男美女とまではいかないまでもブサイクでもなくちょうどいい塩梅。 そのふたりが小説や就職活動について語り合う。 会話の内容は気持ちがこもっていて、なかなかに引き込まれる。 映像も綺麗だし、全体的にレベルの高い日本映画だ。 [インターネット(邦画)] 7点(2024-05-18 21:58:14) |
26. アスファルト・ジャングル
《ネタバレ》 ジョン・ヒューストン監督は見応えのある作品を作るなぁ。 『黄金』もそうだったけど作品に強く引き込まれた。 アメリカ映画は全般的に苦手だけど、ジョン・ヒューストン監督は好きなアメリカ人監督の一人だ。 とはいえ、悪人は最後全員滅んでしまった。 誰か一人くらいは逃して欲しかった。 勧善懲悪が行き過ぎている嫌いがある。 悪人が美味しい思いをするのは時代的に許されなかったのだろうか。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-04-07 20:08:31) |
27. あ・うん
《ネタバレ》 最後、高倉健は富司純子に思いを伝えようと雪の中、家を訪問したのではなかったのか? それが3人で酒を飲んで何事もなく終了。 雪の中の意を決した訪問はなんだったのか? 少しくらい気持ちを伝えようとするシーンがあったらともかく、何もないラストシーンに肩透かしをくらった感じ。 自分の好意を伝えないで我慢する、これぞ男の美学ということなのだろうが、気持ちを伝えようとしたけどグッと我慢をするシーンすらなかったのが物足りない。 だけど、すごく分かる話ではある。 好きな女性の幸せを願うからこそ、自分本位で好意を伝えたりせず、好意をそっと自分の胸の中にしまっておく。 これぞ高倉健、これぞ男の美学。 消化不良気味のラストシーンではあったが、高倉健の魅力は存分に出ていたので楽しむことはできた。 [インターネット(邦画)] 7点(2024-01-14 20:49:35) |
28. OUT(2002)
《ネタバレ》 巻き込まれ系サスペンスで、女同士の奇妙な友情を描いた怪作。 男優陣では大森南朋、香川照之がいい味を出している。 女優陣では妖艶な原田美枝子に、円熟の倍賞美津子、まだ若くて綺麗な西田尚美、鬱陶しいおばちゃんキャラの室井滋と粒が揃っている。 最後は破滅的逃避行の形で終わるが、私は結構楽しめた。 [DVD(邦画)] 7点(2022-12-29 13:14:13) |
29. 遊び
《ネタバレ》 最後に乗ったのが泥舟なのが気になる… 何もかも失った若者同士の破滅的な逃避行。 案外、楽しめた。 [インターネット(邦画)] 7点(2022-11-03 21:30:30) |
30. 愛のまなざしを
《ネタバレ》 あの万田監督の作品という事で、期待し過ぎたかもしれない。 展開はスピード感はあるものの、飛躍し過ぎというか、話を広げ過ぎで、最後はどうでも良くなってしまった。 前半部分はとても面白くて、興味を引かれただけに残念だ。 これまでの万田監督作品と比べて明らかに見劣りするのは、ヒロインの存在感。 森口瑤子の魅力や小池栄子の迫力には遠く及ばなかった。 [インターネット(邦画)] 7点(2022-09-27 21:44:10) |
31. i 新聞記者ドキュメント
《ネタバレ》 とても面白かった。 やはり私はドキュメンタリー映画が大好きなようだ。 それにしても、望月さんのパワー、へこたれない胆力、もの凄いな。 [インターネット(邦画)] 7点(2022-08-15 01:16:37) |
32. あの子を探して
《ネタバレ》 主演の女の子の執念に敬服しました。 テレビ局長が眼鏡をかけていると聞いて、テレビ局の門から出てくる全ての眼鏡の男に声をかけます。 丸一日、それをやります。 夜には疲れ果てて、路上で寝てしまいます。 でも、翌日もテレビ局の門の前に居ました。 この執念が実り、局長の目にとまり、ハッピーエンドとなる訳です。 この当時の中国の惨状を映画を通して知ることが出来ました。 それだけでも、大変、興味深かったです。 [インターネット(字幕)] 7点(2022-07-10 20:05:14) |
33. 悪魔のいけにえ
《ネタバレ》 とっても楽しめた! あの四人家族、家族愛があって素晴らしい! 特に年長者のお爺さんを大切にする家族。 お爺さんを誇りにする心。 一方で、捕まった女は終始ギャアギャアとうるさい。 どうにかならんものか。 最後は都合良く逃げすぎ。 そこまでが面白かったから、ま、いいっか! [インターネット(字幕)] 7点(2021-06-17 18:29:52) |
34. 青の光線
《ネタバレ》 現代日本の生きづらさ、葛藤、苦悩、そして僅かばかりの希望。 とても親近感の湧く内容で、新大久保や百人町界隈でのロケを多用しているのも魅力的。 それはさておき、黒川芽以の脚がとにかく綺麗! どこか影のあるキャラも、見事にハマっている。 コンパクトにまとまっており、見て良かったと思える日本映画。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-06-11 01:00:09) |
35. 逢びき
《ネタバレ》 これはある意味、理想形の終わらせ方。 お互いの気持ちを伝え合い、二人の時間を楽しみ、深い関係になる前にさようなら。 お互いの家庭は崩壊する事なく、元の生活に戻る事が出来る。 でも心には思い出が残り、余韻を残す。 もちろん、その思い出は辛さも併せもってはいるが、お互い破滅の道を進むよりは良いだろう。 実際、ここまで二人きりで過ごし、お互いの愛する気持ちを伝え合っていたら、深い関係になる事の方が多いのではないか。 そう考えると、理想的な別れ方だと感じる。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2020-09-13 10:51:10)(良:1票) |
36. ありがとう (2006)
《ネタバレ》 前半と後半とが、まるで別の映画のよう。 だけど、前半の描きがあるからこその、後半の感動。 もちろん、つながりがある。 私にも色々過去があり、トラウマもあり、前半部分については精神をやられたかのようなショックがあった。 描き方がリアル過ぎて、観たことを後悔したくらい。 震災の残酷さは描けていたと思うが、その分、観る者の心を蝕む前半。 トラウマを持つ人にとっては、精神的ダメージを負うかもしれない。 それに対して後半は、うってかわってハッピーモード。 感動全開。 しかし、前半で負ったダメージが抜けきれない。 前半部分をリアルに描いたからこその、後半の感動と思いきや、前半部分の心的ダメージの方が遥かに大きかったのだと思う。 少なくとも私にはそうなった。 ただし、題名の通り、周りの人に「ありがとう」と言いたくなる作品だ。 周りの人、特に家族に対して、私を支えてくれてありがとう、こんな私の為にありがとう、と言いたくなった。 そして、家族のことを、こんなに愛おしく思わせる作品は、他にはない。 [DVD(邦画)] 7点(2016-03-08 02:30:02) |
37. I'M FLASH!
《ネタバレ》 サスペンスな雰囲気で、最後まで持っていく内容は、とても面白い。 細かいダメ出しをすれば色々出てくるかもしれないけど、なんだかんだ最後まで画面に集中できる面白さがあった。 藤原竜也が意外にも凄い人なのか?と思わせぶりな展開ながら、結局はただの人という描き方も良いんじゃないだろうか。 松田龍平は、とてもかっこよくなった。 若い頃は、なんだかオネエなんじゃないかというくらい妖艶だったが、今は立派に男前。 殺気立った雰囲気さえ持ち合わせている。 この作品、多分、もっと洗練されたら、非常に面白い題材だったかも。 作りこみというか、演出の仕方に軽さがあるので、完成度は高くない。 新興宗教と、その中で創られた雇われ世襲教祖。 教祖のミステリアスな雰囲気、だけど、実はただの人。 それを追う俗なヒットマン達との対比。 藤原竜也と松田龍平との会話。 所々に魅力的な場面も散見されつつ、しょーもない場面や演出もあったりで、なんか高く評価したいんだけど、評価しきれない、もったいなさを感じた作品。 [DVD(邦画)] 7点(2015-03-11 03:18:52) |
38. 赤い鳥逃げた?
《ネタバレ》 70年代の日本映画には独特の味わいというか、個性がある。 おそらく時代を反映しただけで、意図的に演出されたものではない。 だけど、70年代の日本映画には、それ以前の日本映画全盛期にもなく、その後の洗練された21世紀にもない、稀有な個性的魅力を感ずる。 本作は、まさにその時代的魅力が発揮されている作品である。 風来坊の男女3人が、あてのない生活をしている。 おそろしくけだるく、そして将来性のない生活。 お互いの詳しい素性も知らない。 この設定がまた、70年代の日本映画っぽくて良い。 悪役たる会社の重役たち。 この人たちも、ステレオタイプ的な面白さがある。 フェンダーミラーの社用車に乗り、高そうなスーツを身にまとい、悪だくみをしている。 そして喧嘩になると、途端に弱い。 こいつらに暴力をふるう原田芳雄が、またかっこいい。 ストーリーは大したものではなく、ラストの破綻的なオチも何だか物足りない。 でも仕方ない。 70年代の、この系統の日本映画の中身なんて、大体こんなもんだ。 本作を観ていると、なんだか不思議と同時代の香港カンフー映画を思い出す。 良い意味でのチープ感、内容より勢い重視の作り。 観た後の満足度は低いが、不思議と定期的に観たくなる魅力を感じる。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2014-02-18 00:10:49) |
39. アフタースクール
《ネタバレ》 面白い! だが、観ている者をだます為の演出が、かなりわざとらしい。 常盤貴子の父親役が実は刑事だったわけだが、娘を心配する父親像が描かれる冒頭のシーンは、ただ単に観ている者をだます為だけに作られたものである。 この演出(ミスディレクション)に関しては、賛否が分かれるだろうが、ただ楽しめれば良いという点からはアリだとは思う。 社会的にずる賢く生きている者を、とことん破滅に追い込む怒涛の終盤は、確かに気分の良い側面はあるが、それこそ綺麗ごと過ぎではないか? ずる賢く生きている人間が得をし、真面目な人間が損をする社会こそが、現実の社会であって、本作の描く勧善懲悪な終盤は、それこそ監督の願望に過ぎない。 そう思うと、現実はこうじゃないよなぁ、みたいなやるせなささえ感じてしまう。 大企業の社長は、こんなに簡単には沈没しない。 そして、こんなに社会的視野の広い教師なども存在しない。 色んな意味で非現実的な内容で、映画にだまされることを単純に楽しむ為だけの作品だと思う。 かくいう私も、この作品にフツーにだまされたわけで、正直、それはそれで楽しかった。 まさしく痛快な作品である。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2012-09-23 01:27:40)(良:2票) |
40. ANA+OTTO/アナとオットー
《ネタバレ》 情熱の国スペインで偶然出会った男女が、やがて成長し、氷の国フィンランドで運命の再会を交わす・・・ いわゆるラブストーリーにありがちな“偶然の出会い”を多用した陳腐な内容かと思いきや、それがちょっと違った。 苦味に似た、哀しい余韻を心に残す。 人生とは偶然の出会いの連続である。 そしてそれが、男女間の恋愛問題に絡んでくると、心の底を揺さぶられるような感動、もしくは切なさが体を襲う。 この物語は、そんな人生の感動や哀しさ、やりきれなさを、暗めのトーンながら鮮やかに描いてみせた逸品である。 [ビデオ(字幕)] 7点(2012-06-07 17:51:01) |