1. GANTZ:PERFECT ANSWER
《ネタバレ》 原作は部分的に読んだことがあるが、ともかくあれをよくここまで映画化したもんだとは思った。これは私の勝手な想像だが、作者の奥浩哉氏自身もどういうようにストーリーをつなげ、どういうオチをつければいいかわからないまま苦悩しながら連載が進んでいったのでは?という気がする。これは本作に限らず、奥作品に共通する印象。 そのため、シチュエーション設定や演出の断片断片は凝っていて面白い反面、人間心理(兄弟愛とか友情とか)はありがちなステレオタイプを越えられておらず、掘り下げや練りはない。感覚的にはいいものを持っているが、ロジカルな思考が深められないという言い方をしてもいい。テーマ性は希薄というか弱く、「正義とは何か?」とか「人間における暴力の不可避性」とかいちおうあるようだが、それらも突っ込みが足りず平板。 不条理がウリの作品なので、あまり細かいことをいってもしょうがないのだが、ラスト近くで星人たちと玄野たちが猛烈な撃ち合いをしたあと、いったい、どう落とし前をつけるのかと思っていたところ、まるでゾンビのように次々と人物たちが起き上がってきたのは、いくらなんでもない。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2013-05-06 00:20:18) |
2. カサブランカ
《ネタバレ》 数々の名シーンが含まれていますが、私がもっとも強烈な印象を受けたのは、ラズロとイルザの乗った飛行機がまさに飛び立たんとしたときのこと。駆けつけたナチスの少佐が離陸を阻止するために管制塔へ連絡しようとするや、リックは何の躊躇もなくナチスの少佐を撃ち殺しました。何の躊躇もなく、です。 あの情勢下のカサブランカでナチスの将校を殺害するなど自殺行為以外の何ものでもありません。自らの生命、自らのすべてをかけるといっても過言ではない一撃です。にもかかわらず、リックはほんのひとかけらのためらいも見せることなく、じつに素早く冷静にことを為しています。リックの女への愛の深さと堅固さがどれほどのものか、私はこの瞬間の出来事に圧倒されました。もし、自分がリックの立場なら、あのようにできるだろうか……。 また、本作でのバーグマンの美しさは比類ありません。私はどちらかというと、バーグマンよりオードリー・ヘプバーン派ですが、それでもこの映画のバーグマンには魅了されずにはいられません。こんな女性に泣きすがられたら、男(私?)はイチコロです。 どれほど愛し合っていても結ばれることのない愛という哀切、戦争というものの不条理性がじつにうまくハイブリッドされていて、大人の愛を描いた映画とも反戦的メッセージの映画ともいずれにも解釈することができます(どちらかと決めつける必要はないでしょう)。娯楽作品にして思想的作品、思想的作品にして娯楽作品というさじ加減が絶妙です。脚本の力に感嘆せざるを得ません。 映画では己の愛を封印し、夫のため、あるいは世の中のためにリックのもとを去ったイルザですが、現実のイングリッド・バーグマンはイルザとは正反対の道を歩みました。夫と子どものいる身でありながら、ロッセリーニへと走り、そのことが原因となってハリウッドから締め出されました。ちょっと皮肉な逸話ですね。 ところで、最近気づいたのですが、イルザの夫は「ラズロ」という名前で設定されていますが、「ラズロ」は「ラザロ」にとても近い名前ですよね。西洋社会で「ラザロ」といえば、キリスト教の物語に出てくる「復活のラザロ」が思い起こされます。ラザロは一度死んでしまったあと、イエスの奇跡によって蘇ります。本作のラズロもまた、一度は死んだと思われたのに(なのでイルザはパリでリックと恋に落ちた)、生きて再びイルザの前に現れているわけです。そうか、ラズロはラザロだったのか、と妙に納得しました。 [CS・衛星(字幕)] 10点(2011-02-22 15:25:37)(良:1票) |
3. ガタカ
《ネタバレ》 まるで鉄道列車のように頻繁に飛び立っていくロケット、血液照合でIDチェックするゲートやハンディスキャナー……そうした近未来のどこか無機質、どこか醒めた雰囲気が抜群によかったです。テーマ自体は、逆に、古典的といってもいいもので、「努力する者は、たとえ資質で劣っていても報われる」というメッセージ。ヘタをすれば、汗と涙のお決まりの物語になりかねないところを、乾いたタッチで新鮮に見せました。 と同時に、本作が深みを増したのは何といってもジェロームの存在。本来、スーパーがつくほどのエリートであったはずの彼の挫折、大金を支払ってまで自分の痕跡を歴史に刻みたいと欲した強い気持ち。しかも、念願が成就した際に選択した、あの強烈な結末……。正直なところ、凡人の私なんぞには量りかねるものがありましたが、上り詰めた人間には、「堕ちることが許されない」という哀しい孤独な世界があるのだなとは感じました。 かたや資質には恵まれていないものの情熱と努力で夢を手にしたヴィンセント、こなた素晴らしい資質をもちながらも他人を借りねば夢を果たせなかったジェローム。不完全と不完全が補い合って初めて何かを得られるのだというストーリーは、絶対に完全などあり得ないわれわれに、常に「足らざるを知れ」という教訓も残してくれます。 ラストの抜き打ち検査でヴィンセントの正体がバレたときの係官の対応が最高でした。ということで、納得の8点也です。ユマ・サーマン、こういう役はピッタリ。 [DVD(字幕)] 8点(2005-06-22 22:15:08)(良:2票) |
4. 隠し剣 鬼の爪
《ネタバレ》 すでにみなさんお書きですが、日本を代表するとされる映画監督が二番煎じ、しかも自作のパクリをしてはいけません。細かい部分は違うでしょうが、概していえば同じですわ。貧乏侍がいて、なぜか心が通じ合う可憐な女性がいて、お家騒動が起こって、藩命によって決闘するハメに陥り、辛くも勝って、穏やかな終焉を迎える……。なので私は、作品の内容うんぬん以前に、どうしてこれほど同じ作品をつくるのか、つくれてしまうのかという点に疑問を感じてしまいます。映画会社からのリクエストやしがらみもあるでしょうが、映画監督という職業がクリエイティブなものであり、それに矜持をもつというのなら、やっぱりやっちゃいかんでしょう。これだったら、「たそがれ清兵衛2」としてもらったほうが潔かった。 立ち回りとかは真田のほうがうまかったし、永瀬侍はうらびれ方がちょっと足りなかった? 松たか子は好演してたと思いますが、いかんせん華がありすぎ(笑)。必殺技「鬼の爪」はカッコよかった(爆)。 5点(2005-02-16 06:57:36) |
5. 風の谷のナウシカ
《ネタバレ》 「ハウルの動く城」を見たあと、改めて本作を見直した。アニメーションこそ前者にひけをとるものの、作品としてのクオリティは比較にならない。制作されて、すでに20年。が、いまなお感動はまったく色あせない。映画の魂は、決してハード面の技術ではないことを教えてくれる。 終盤、オババが「いたわり」と「友愛」という言葉を口にする。それが、すべてをいいあらわしている。武に武を重ねるだけでは、安らかな世界は築けない――そんなきわめてシンプルでありながら、しかし21世紀のいまなお、人類は学べていない真実をこの映画を見た人は、改めて自分の胸に刻まないではいられまい。 ストーリー(脚本)も大変よくできていて、初見のときは、脅威の存在としか見ていなかった腐海の真の意味が明かされたときなど、思わず「あっ、そうだったのか!」と声を出しそうになってしまった。またオームなどのキャラクター類も、のちの媚びたようなものと違い、好感がもてる。 アメリカやドイツでも繰り返し上映され、多くの人の心をうった。日本が世界に誇る名作である。惜しむことなく満点を捧げたい、ということで10点也です! [ブルーレイ(邦画)] 10点(2004-12-08 23:44:29)(良:1票) |