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1.  カッコーの巣の上で 《ネタバレ》 
本作は1975年の映画だが、描かれる物語の舞台はそこから12年遡る1963年のオレゴン州だ。そのことを映画は冒頭、さりげなく表示する。何故わざわざそんな但し書きが必要なのか、何故この物語が12年前のものでなくてはならないのか、観る者が漠然と抱くその他愛のない「何故」が、やがてマクマーフィーのこめかみに容赦なく刻み込まれる縫合痕へとゆるやかに帰結する。そのワンショットが静かに示す絶望。この映画はそうして人間の希望と絶望を丹念に描く。だがそこに安易な解答は一切用意されない。刑務所から精神病院に移送された主人公マクマーフィーが詐病か否かについて、彼を担当する医師が明確な診断を結局下さぬように、映画もまた最後までその答えを留保したまま終わる。描かれるのはただ、レジスタンスの英雄然とした彼の立ち居ふるまいと、カナダへの逃亡という夢物語を雄弁に語りながら結局はその巣にとどまり続ける彼の姿だ。物語の終盤ついに脱出口を眼前にしたマクマーフィーはしかし、自分との別れを惜しむ若者ビリーの一夜につきあう名目で深酒に酔いつぶれ眠り込む。やがて夜が明けても、今度は不幸にも自死に追い込まれたこの若者の仇を討つため、巣の上で手を振り外界へと促す雌鳥たちに背を向ける。だがはたしてその逡巡と失敗は彼にとって本当に繊細なビリーを庇護するため敢えなく選択された決断だっただろうか。映画が表立って描くのは、医療の名の下に人間がその意志を切除されるロボトミーの悲劇だ。だが一方でミロス・フォアマン監督はより根深い悲劇の可能性をも示唆する。手術が行われるよりずっと以前にマクマーフィーの「翼」はすでに自身の手によって無惨に切り取られていたのではなかったか、と。映画が最後に祈るように見据えるのは、マクマーフィーの奪われしその「翼」を引き継ぐべく鉄格子を破り、羽ばたくように外界へと巣立っていく大男チーフの姿だ。彼が力強い足取りで目指す先は、おそらくマクマーフィーが夢見たカナダの地だろう。自由へと飛び立っていくチーフの大きな背中は、ついに脱出口をくぐることなくそれでも最後までそれを願いそして夢見たマクマーフィーのその小さな背中でもある。大きな大きなチーフの背中に乗り、マクマーフィーは死してようやくカッコーの巣の上へと解き放たれるのだ。彼が見た絶望と、そしてその先に見据えつづけた希望とをたずさえて。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2010-09-17 23:20:56)(良:2票)
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