1. クロッシング・ガード
ひょっとして、映画というジャンルで「テーマ」は何か、という事を語るのはナンセンスなのかもしれないのだけれど、それを承知であえて書くと、この作品のテーマ、それは「果たして、人と人は分かり合えるのか」という事ではないだろうか?作品の冒頭ではストリップの馬鹿騒ぎの中に佇むフレディ(J・ニコルソン)と、その元妻が参加する遺族の集いとが交互に映される。これは、人と人との間にある、容易には埋められない「溝」を象徴しているように思える。娘を轢き殺した犯人に対する復讐を誓うフレディは遊び仲間にも、また同じ立場である筈の元妻にも理解されない。尚且つ自分に想いを寄せるストリッパーに対しても心を完全に開くことは出来ず、一人自閉的な孤独を抱えている。一方犯人のジョンもまた、友人にその心中を理解されてはいないし、彼の出所後に出来た恋人(ロビン・ライト)は彼に寄り添いながらも、彼を罪悪感から解放することが出来ない(ただ、彼がある意味フレディより救われているのは、彼には彼を無条件で愛し、受け止める存在―両親―がいるということである)。しかし、そんな被害者・加害者の関係にある二人はラスト、「亡くなった娘を悼む」という点で分かり合えたのではないだろうか?両者の関係は一般的ではない、極端なものだが、人と人とが「分かり合う」ためには、単なる思いやり・同情だけでなく時に暴力的であるような「格闘」も必要なのかもしれない。余談だが、戦争前イラクを訪れたショーン・ペンはその理由を問われ「イラクにも自分達と同じような人間がいて、同じように子供がいるという事をこの目で確かめたかった」という意味のことを語っていたと記憶している。ショーン・ペン、有言実行の男である。 9点(2004-05-06 18:37:16)(良:2票) |
2. 靴をなくした天使
これは久々にめっけもんでした。人間を皮肉な視点で捉えながらも、愛情のある描き方をしていて、キャプラの映画やO・ヘンリーの小説を彷彿とさせます。ラストはなんとなく予想できるのだけれど、話の運び方が巧みで飽きないし、ダスティン・ホフマンやアンディ・ガルシアも良い味出してます。同じダスティン・ホフマンが出演してた「ワグ・ザ・ドッグ」と同じでマスコミ批判が盛り込まれているけれど(「マスコミに演出された分かりやすいヒーロー」は、まるであの「ジェシカさん救出」を連想させる)、「ワグ~」より上手く作品化されてると思います。ただ、惜しいなあ、ラストをオシャレに決め過ぎたのがちょっと個人的にマイナス。もっとホロ苦い感じにすれば、より余韻の残る作品になったと思うのだけれど・・・。 8点(2004-05-02 19:37:57) |
3. クリスマスに雪はふるの?
今これを書く直前に唐突に思い出したんですけど、昨日テレビでやってた小津安二郎のシンポジウムで吉田喜重監督が「反復とズレ」ということを言っていました。要するに、日常というのは同じ事を反復しながら少しずつズレていく。それを小津は描いているのだ・・・みたいなことだったと思うのですが、この作品はまさにそんな感じ。季節が少しづつ移ろう中の家族を淡々と描いている作品でした。重要な所はわざと描かないで観客に想像させるところとか良かったです。 7点(2004-01-07 21:17:01) |
4. グッドマン・イン・アフリカ
こ、こりはヒドい・・・。何がヒドいって、いかにも主演のフリしてるショーン・コネリーの出番がすげー少ない(まあ重要っちゃあ重要な役どころだけど)し、話も後半破綻しちゃってるし・・・どーゆーこと? 3点(2003-10-30 21:00:29) |
5. クレーヴの奥方(1999)
この作品、「90年代の映画の最高傑作!」っていう人もいるみたいですけど、イマイチ良さがわかりませんでした。ヒロイン役のキアラ・マストロヤンニはエレガントだったし、面白い手法(コンサートシーンで、音楽は聞こえるけど写っているのは楽屋だけ、とか。「家路」でも似たような手法のシーンがあった)もあったんですけどね。厳格な母親の影響で貞節にこだわってしまうヒロインってのにどーしてもリアリティが感じられなかったんですよ。僕の映画の見方がまだまだ甘いせいかもしれないんですけど・・・。うむ、人間、一生修行だな。 6点(2003-10-13 15:13:27) |
6. グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち
うーむ、基本的に「感動作」と銘打たれた作品に対しては素直に感動するほうなんですけど、これは何だか違和感を感じてしまいました。ちょっと「頭でっかち」な話に思えちゃったんですよね。どっちかっていうと「小説家を見つけたら」の方が良かったです。ごめんなさい。 5点(2003-10-11 21:32:30) |
7. 紅の豚
勝手な想像ですけど、これって宮崎監督が「今までいっぱいエンタテインメントやって、観客には目一杯奉仕したかんね。これからは売れようと売れまいと好きなことやらしてもらいますばい(なんだ、この口調?)」という決意を表明した作品って感じがします。個人的には「カリ城」や「ラピュタ」の方が好きなんですけど。後の作品と比べると声優がいいですね(特に加藤登紀子)。 7点(2003-09-27 21:26:01) |
8. クライ・ベイビー
ジョン・ウォーターズ監督お得意の、分かりやす~い構図の楽しい映画でしたね(“スクエア”を「山の手」と訳してたのが妙におかしかった)。僕は世代が全然違うんでよくは分かりませんが、エルビス・プレスリーの映画のテイストを真似ているのかな?それにしてもジョニーの歌は吹き替えだったのかあ。もともとミュージシャン志望だったのに・・・。 7点(2003-09-06 18:57:48) |
9. クラークス
ケヴィン・スミス監督の「ジェイ&サイレント・ボブ」シリーズ(「モール・ラッツ」、「チェイシング・エイミー」、「ドグマ」、そして完結編「ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲」)の一作目ですね。コンビニやビデオ屋でバイトしている若者は共感するところが多いかもしれない。かくいう僕も昔コンビニで結構長い間バイトしていたので、なかなか面白かったです。それにしても、やや粗めのモノクロ画面にあんまり動かないカメラ、何だか「ストレンジャー・ザン・パラダイス」みたいだなーと思っていたら、ちゃっかりエンドロールのスペシャルサンクスのところにハル・ハートリー、スパイク・リーに並んでジム・ジャームッシュの名前も挙がっていました。ただ、僕は「ストレンジャー~」の良さがいまいちわからなかった人なので、この作品が良質なオマージュとなっているのか、それとも俗悪な猿マネなのかは判断しかねます。 6点(2003-08-29 17:52:07) |
10. クリクリのいた夏
こういうノスタルジックなヨーロッパの田舎の風景に弱いんですよね。淡々としつつも瑞々しい自然の描写が印象的でした。ちなみに僕はエスカルゴはそうでもないけど、カエル釣りがしたくなった。そして食べたくなった。 7点(2003-07-25 18:46:59) |
11. クレヨンしんちゃん 電撃!ブタのヒヅメ大作戦
はがっちさんに薦めて頂いて観た作品です。TV版「しんちゃん」を観ていないせいか、前半のしんちゃんギャグにはちょびっとついていけなかったんですけど(博士とオカマの助手とか)、ぷりぷりざえもんには不覚にも泣かされてしまった・・・!しかも声がいつもシリアスでクールな役をやってる人(名前忘れた!確か「北斗の拳」のレイとかやってた気がする)なので、なんだか泣き笑い。子供ができたら(って結婚すらまだだけど)一緒に観たい作品ですね。・・・ただ、いわゆる「旬」のタレントをゲスト出演させるのはこういう作品の宿命なのかもしれないけど、「奴」が登場した途端、気持ちが冷めてしまった・・・。 8点(2003-07-19 22:12:43) |
12. クレイドル・ウィル・ロック
《ネタバレ》 反戦活動家としても知られるティム・ロビンス&スーザン・サランドンカップルの、いかにも「らしい」、骨太の作品。正直言って、この手の群像劇、しかもあまりなじみのない舞台・時代設定は、観ていてかなり集中力を要しますね。でもあの時代(1930年代)の混沌とした感じ―ヒットラーやムッソリーニと完全に対立しているわけではなく、それよりむしろ共産化の波に脅威を感じているアメリカの雰囲気―がよく描けていたし、登場人物もそれぞれキャラが立っててよかったですね。中盤はちょっとわかりにくいところもあって観ていてちょっとキツかったんですが、一度は上演をあきらめていた「ゆりかごが揺れる」をああいう形で上演するとは!あそこは感動的でした。最後の腹話術人形の葬列がさりげなく現代にタイムスリップしている演出も余韻を残す(この話は過去の話だけど、取り上げてる問題は現代にも通じるんだよ、と言っているようで)、いい感じでした。それにしても、オーソン・ウェルズ役のアンガス・マクファーデンという俳優がそっくりだったのにはビックリ!実際のオーソン・ウェルズもあんなアナーキーな人だったんですかねえ。 8点(2003-07-19 22:02:15) |
13. グース
うわー、こういう動物映画観るの久々だけど、良かったなー。まず、あのグース達(っていうか複数形はギースだけど)が無条件で可愛い!あと、アンナ・パキンの「ヘイヘイヘイ、ギース、ヘイヘイヘイ!」っていうのがなんでか分からないけど心地よかった。実際にあったことを元に作った映画ということで、どの程度本当のことなのか分からないけど、カナダからアメリカまで飛ぶということの大変さと、それをいかに克服したかっていうことをきちんと描いているところは感心しました。「博士が飛ぶ言うたら飛ぶんやあー!」とかムチャクチャな事言ってた映画と比べると余計にそう感じます(ま、「あっち」は観てないから、こんなこというのは悪いかもしれないけど)。ま、自然や環境のことをシビアに考えながら観れば、甘いっつっちゃ甘いけど、グース達と空を飛ぶシーンの美しさでそんなのは帳消しですわ。特にビルの谷間を飛ぶシーンなんて、宮崎作品を髣髴(ほうふつ)させる素晴らしさでした。 9点(2003-06-07 20:07:50) |