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1.  グッバイ、レーニン! 《ネタバレ》 
良質な、いい作品を、久し振りに見ました。コメディ仕立てとはいうけど、傍から見れば滑稽と思えることを真摯にやっているからコメディに見えるだけで、物語自体はかなり重いファミリー・ドラマだと思う。それを軽やかに乗り切ったのは、やはり監督の手腕なのだろう。ソ連邦が崩壊し、ロシアになった数年後かに、「共産党時代は良かった。ノルマさえ果たしていれば給料が貰えたから」という市井の人々の声を伝えるコラムを読んだことがあったが、本作を見て、当時の東欧は皆、急激に入ってきた自由競争の厳しさに晒されて、同じジレンマに苦しんでいたんだろうなと、今更ながらに思った。同時に、うっかりすればしか爪らしいドキュメンタリーに転びそうなテーマを、主人公の若者らしい反骨心、それが原因で母が人事不省に陥り、やがて・・、と。自責と愛情の相克の中で、せめて母に残された時間を母が信じていた時代の中でと、急速に西欧化する世の中にあって、旧時代があたかも現存するように振る舞う息子の苦闘を通した逆転の視線が、無理なく時代を反映していて素晴らしかった。そして、どんな体制の下であっても、結局、生きているのは日々を幸福に、出来れば夢を実現したいなと望む人間なんだよということなんだな。共産主義も民主主義も、理念は立派なのだ。でも、結局、踏みにじるのはやっぱり、人間の欲なんだなと、最後のメッセージが逆に知らしめるようだな。ところで、瓦解した旧体制があるかのような映像を作っていた友人の子が着ていたTシャツがマトリックスTシャツというのが、笑えた。こういうマトリックス使いも、あるんだね。
9点(2005-02-06 21:44:39)(良:2票)
2.  雲の中で散歩 《ネタバレ》 
恋愛映画って触れ込みだったけど、どっちかっていうと家族愛がテーマのお話だったな。両親も知らず、出征中に心の離れた妻しかいない青年が、ひょんな巡り合いから家族を見つけるんだな。キアヌ=ポールも、一晩だけの約束を二日・三日と居付いてしまうのは、ヴィクトリアへの愛情よりも家族というものへの憧憬の方が強いし、キアヌが、天蓋孤独の青年の不器用な憧れと、それは所詮茶番劇でしかないという虚しさを誠実に表現してた。ポールとヴィクトリアの愛情の変化も、押し付けがましくなく、葡萄が熟成していくように、なるべくしてなったなぁって感じがいい。頑固親父のジャンカルロ・ジャンニーニが、エキサイティング。こ~~んなに渋くなっていたなんて。それにしても、亀の甲より年の功? アンソニー・クインの爺さまのお惚け振りは、もしかして、ぜ~~んぶ御見通しだったのかな? おおらかなお母さんが、新婚の娘夫婦の為にベッドを用意して、夫婦の枕の真ん中に一本置いた真紅の薔薇が、心憎い。ランプ1個で葡萄園が全焼っていうのは無理矢理っぽいけど、見終わった後に、「ああ、よかった」って思える作品だった。キアヌの素朴な誠実さも堪能できる作品だけど、やっぱり、働き者で頑固一徹、愛情深いお父さんに、私は弱いらしい。息子ペドロとの近代化対決を、もう少し見たかったかな。
9点(2003-08-02 00:43:19)(良:1票)
3.  クール・ワールド(1992)
着想そのものは、悪くないんだな。でも、アニメ世界であるクール・ワールドの描き方が、無意味に騒がし過ぎ。現実を逃避した、オモチャ箱をひっくり返したような子供の世界を描こうとしたのだろうとは思うけど、そもそも子供向けアニメではないのだから、初めから開き直って、ストーリー重視で構成していれば、着眼点は悪くはないし、役者は豪華だし、もう少しはマシな評価になったと思うなぁ。ブラッド・ピットは、やっぱり華のある役者だなぁ。「スリーパーズ」の時も思ったけど、こういう髪型でフォーマルを着せたい。
6点(2003-07-16 01:56:53)
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