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1.  ゴジラ-1.0 《ネタバレ》 
ゴジラが海上からぬうっと鼻先を突き出し、船の後をついてくる様子にふと、「耳を倒して背中の毛を逆立ててるうちの子(猫)が、獲物にロックオン」というイメージが来て、それからというもの、あの恐ろし気なゴジラが、海上を匍匐前進する超巨大なCATにしか見えなくなってしまった!  厄介なことに一度こうと見えると、先入観は脳内からなかなか剥がれてくれない。 ゴジラが軍艦に体当たりし、かぶりつき、揺さぶり出すと、にゃんこがルンバにじゃれついている妄想が来て、初めに出たぐしゃぐしゃの軍艦は、猫パンチを食らったなれの果てかと納得し、勢い余ったゴジラが両腕を広げたまま、海上に仰向けにひっくり返ったときにはもう最高潮に萌えてしまって、キュートなんだかゾッとすべきか、わけがわからなくなった。 画面を横切って吹っ飛んできた軍艦はスリッパに見えるし、ゴジラが電車の車両に噛みついてるシーンは、サンマをくわえてる姿に見えてしまう。尻尾をはでに振り回すのは不機嫌モードの猫あるあるで、目の前をかすめて飛び回る戦闘機はコバエか猫じゃらしそのもの。壮大な音楽は荒ぶるにゃんこのパロディみたいに聞こえてきて、悲劇と喜劇、2つの映像を同時に見ているような超豪華なエンタメを味わえた。  ただ、ゴジラというキャラクターについて、今作もちょっと色々考えてしまった。 自然や神の象徴だったり、人類が不本意に創造してしまった核の産物、デストロイヤーとしての偶像として捉えられているけれど、それはゴジラが目的もなくひたすら街を破壊するからだろう。 生きるために「食べる」という行為が抜けている。ということは、自然界に属さない生き物、命のサイクルから外れた生命体という位置づけになる。 冒頭でミニゴジラが人間に噛みついて振り飛ばすシーンは、確かに怖いし迫力満点で見ごたえがあるけれど、口の中に入った人肉(たんぱく質)をわざわざ放り出してしまうとか、そんなのは狩りでも何でもない。 そもそも自然界の頂点に立つ猛獣は、満腹のときはあえて他を襲ったりしない。 それだけに、食欲に関係なくただただラリって殺戮、破壊行為でのみ生きるという生物が、どうしても不自然に感じられてしまう。 とはいっても、ハリウッド版のように、巣を作って、産卵して、幼獣が街中にあふれる繁殖率の高いゴジラでは、唯一無二の存在が希薄になってしまう。 だからこそ、「荒ぶる神」という孤高の位置づけがゴジラにはふさわしいのだろう。 それだけに、本作ではゴジラに己の咆哮を聞かせて「縄張り」を刺激する作戦がとられていて、いかにも従来の生物っぽい扱いにちょっと驚いた。  敷島がゴジラに挑むラストには息をのんだ。 もし彼が命を散らしたら「特攻隊」という戦時中の日本軍の過ちを肯定する映画になってしまう。だから死なないだろうと思っていた。 でも、放射能を振りまきながらゴジラが沈んでいった海に落ちれば、どう考えてもただではすまないはず。 でも、そこはもう、映画の世界だし、喜んで目をつぶりましょうという思いで安堵の涙を流した。 ラストのモコモコも、まあゴジラの映画ではお約束だものという思いで、スルーした。 映画館を出ると、表はすっかり暗くなっていて、うちのゴジラ(猫)会いたさに大急ぎで帰宅した。
[映画館(邦画)] 10点(2023-12-22 16:39:31)(笑:1票) (良:3票)
2.  今度は愛妻家 《ネタバレ》 
俊介とさくらが、『うる星やつら』のあたるとラムそっくりに見えた。ラムがそばにいるから安心して(?)浮気をするあたる。でも、ラムがいなくなると、身も心もぼろぼろに。俊介もあたるもほんとにどうしようもない浮気虫だなって思うけど、憎み切れない可愛げがあるから、そんな男に惚れた女は苦労するんだろうな。 後半は、ティッシュが手放せない状態になってしまった。現実に、先日から全国各地で自動車の死亡事故が報道される中、突然妻子の命を奪われた夫の会見を見たばかり。病死と違い、何の覚悟もなくいきなり家族を失うなんて、あまりに残酷すぎて想像するだけで胸が痛くなる。俊介は事故る直前のさくらの後ろ姿を、まさに虫の知らせか間一髪で撮っている。その後、彼が写真を撮れなくなるのは当たり前だ。どんな被写体も幻のさくらに見えたろうから。 本作は、オチを知る前、知った後の計2回は見るべき映画。脚本のマジックともいうべき二重のストーリーが味わえる。
[インターネット(邦画)] 8点(2019-04-27 00:48:23)(良:1票)
3.  コロンビアーナ 《ネタバレ》 
『悪の法則』を見たときは、麻薬組織のあまりの残酷さに数日ショックを引きずったものだけど、本作を見て、あれ? 『悪の法則』ともしかして、逆?『悪の法則』では、ワルのメインキャラたちが、神出鬼没で現れるメキシコの麻薬組織に追い詰められ、次々と悲惨な目に遭わされる。本作はコロンビアの組織を相手に、たった1人の女性が透明人間のように神出鬼没で現れ、大暴れ。どこから降ってわくかしれない敵というのは、確かにハンパなく怖い。愛する身内を殺されて、鬱憤ばらしのようにマシンガンをバリバリ打ちまくっているカトレアを見て、不覚にも、「か・い・か・ん・・・」と往年のセリフが脳裡で聞こえた。女性が男性並みに闘うときは、体を回転させて遠心力を利用するんだなあ。男性はそんなアクションなしでパンチを繰り出せるから、女性は相手以上に素早く動かなきゃ大変だ。(それにしても、あんなに激しく股間に蹴りを入れられて倒れ込まない男っているの?)ラストの死闘はなかなか迫力があって楽しめた。  ともかく『ニキータ』『レオン』とほぼ同じフォーマットで話が進んでいたので、細かい矛盾点は気にせず、割り切ってカトレアの復讐劇をシンプルに楽しんだ。 小さなカトレアを追う男たちのバイクにある「HONDA」の文字が何度も映り込んでいたし、エミリオが殴りダコのある大きな手で姪っ子を抱き寄せるシーンが印象的だった。3分署のシャーリの顔芸も面白かったし、人の不幸は他人事という連鎖も皮肉たっぷりだ。カトレアの身内の不幸を淡々と聞いていたFBIは、自分の身内を脅されて初めて動揺し、FBIの悩みを歯牙にもかけなかったCIAは自身の命を狙われて、初めて怯える。この一連の流れは人間心理のさもしさを見せつける。  で、ストーリーが終わった。エンドロールが長々と流れる。それをぼうっと見ていたら、supplier(小道具供給者)の文字が。テクニカル・ビークルとか、ボディガード(!)、ユニフォームレンタル、スカルプチュア・ワークショップ(シャーリの付け爪ってここから来たのかな)、フィルム・ストックはコダックだって。そのうち、「ディレクター一同、感謝申し上げます」という言葉が流れて来て、撮影に協力したホテル名やフランス、アメリカ各大使館などの紹介が続く。そこへ、「SPECIAL THANKS TO」という言葉が上がってきて、私たち日本人にはなじみのある「HONDA」のロゴマークがでかでかと!!! それもエンドロールのほぼラストのタイミングで来た。映画は製作年が2011年だというし、このサプライズはすごく嬉しい。
[DVD(字幕)] 7点(2017-09-14 01:21:19)(良:1票)
4.  GODZILLA ゴジラ(2014)
いろいろひっかかったり、首をひねりたくなるシーンもあったけれど、観終わった感想はただただ、「アメリカの皆さん、日本のキャラクターをここまで愛してくれてありがとう」 という一言のみ。日米にとっては腫れ物に触るような核やら放射能やらのイメージを、平気でしょって歩くゴジラが、なぜこれほどまでに世界で受け入れられるのだろう?
[地上波(吹替)] 7点(2016-07-30 00:54:50)
5.  ゴーストライター
どんよりと重い曇天、陽を受けない冴えない砂浜。別荘の巨大なガラス窓では、そうした2種の灰色が上下でせめぎ合っている。夕方から夜間にかけての映像も多いし、ほとんどBGMがないもの静かな雰囲気、激しく対立する起爆剤があるでもなく俳優たちのセリフもこそこそと低くていまいち覇気がない、なのに、ジャンルはサスペンスであって、印象に残るシーンも数多くあり、数々の映画賞を受賞・ノミネートしている不思議。監督がロマン・ポランスキーと知って納得した。全編を通して漂っている上質な静けさと、それにマッチしたうす寒い島の風景が見ていてとても心地いい。もう一度観るときはストーリーを度外視して、映像美を主に楽しみたい。ただ、エメット宅の訪問のシーンでは、『アイズ・ワイド・シャット』の似たような場面を想い出し、少し迫力不足を感じてしまった。
[DVD(字幕)] 8点(2015-06-01 15:44:46)
6.  告発のとき 《ネタバレ》 
戦友を殺害後空腹を満たすという話が出たとき、殺人後にカニを食べたというオウム真理教の犯罪を思い出した。遠い昔の事件でも類似の話が出たら瞬時に思い出すほどの強烈な異常性だ。 『プラトーン』を見て戦争がいかに人間性を破壊するかを、『理由』ではいかに先入観が恐ろしいかを、『戦火の勇気』では恐怖心を克服することの難しさを学んだ。この作品においては、それらを併せてさらに愛国心とは何かを深く考えさせられた。さまざまなテーマが詰まっているのにこれらが見事に融和している上、謎解きの意外さあり、トミー・リー・ジョーンズをはじめ各俳優陣の真に迫った自然な演技あり、これ以上ない国旗の演出で締めくくられたラストありと、圧倒されるばかりだった。この映画では、敵国であったイラクを悪く描かず、むしろ身内側の人道的な問題点を潔く世に問うている、その姿勢が素晴らしい。自国の愛国心を促すようなプロパガンダ映画は、どこか慈善的でざらついた妙な違和感が残ってしまうものだ。 
[DVD(字幕)] 9点(2014-02-27 11:22:11)
7.  言の葉の庭
確かアニメの映画を観たはずなのに・・・・・・? 観終わったら、純文学の短編小説を読みふけったような充足感。視聴中、クーラーを止め、扇風機を最強にしてすごい風を浴びてるときに、夕立の豪雨のシーンになった。そのときの臨場感ときたら(笑)。また井上靖の「額田女王」の文庫が映ったとき、学生の頃、教室のどこかに置き忘れてさんざん探して見つからなかった思い出が瞬時によみがえってきて、「うわっ!」と声をあげてしまった。フィンランドの人もお国のブランドのカップ(マリメッコ)を本編中に見つけたらしい。映画のDVDを見ていて、こんな体験は初めてだ。
[DVD(邦画)] 10点(2013-08-17 00:16:16)
8.  この子の七つのお祝いに 《ネタバレ》 
ただのスプラッタものではなく、飛び散る鮮血にはちゃんと意味があるということをひしひしと感じた。戦争が日本人に残した痛み、子供や夫、母などの肉親を失う痛み。それらは、凶器で突かれて肉体が現実に感じる痛みと呼応して、より深い狂気の色に染まって見える。 また、月のものが来るたび母に洗脳されるおぞましさや、自分の正体を知った上で殺される男の愛など、なかなか深いものがあった。もし男が業病にかかっていなくてもマヤは母の声に従って彼を殺しただろうが、激しい濡れ場シーンもなく静かにその手首を切る演出は、マヤの未成熟で不器用な性を強調していて、いっそう哀れを呼ぶ。 視聴が進むうち、画面に現れる赤い色は、すべて女の子宮から流れる血のように思えてきた。流血ざたも、人形の赤い着物も、小さなマヤの晴れ着も、何もかもが狂気のように赤い。ラストのマヤの動きは、飾られた人形のようにぎこちない。まるで壊れた操り人形のように、かくかくと、行きつ戻りつしてそのうち畳に伏せて動かなくなってしまう。私には岩下さんの演技がオーバーアクションには見えない。彼女はまさに人形になりきっていたからだ。命令を仕込まれた「仕掛け人形」だったのだから、指令を失った人形は迷走して力尽きるのは当然だ。成熟した一人の女性として描かれたマヤであったなら、あの不自然な動きはいかにも大げさにすぎるが、あの演技があるからこそ、この作品のラストは、厄介な情念が絡まりあった重たい人形浄瑠璃の幕が、やっと下りたような安堵をもたらすのだと思う。
[DVD(邦画)] 8点(2012-04-29 01:18:45)(良:1票)
9.  告白(2010) 《ネタバレ》 
復讐劇があまりに幼稚で品がない。きわものすぎて、受け狙いとしか思えない。倫理を外れたストーリーがいけないというつもりはないが、陰湿さばかりが腐った脂みたいにぎとぎとしてて、吐き気がする。ぴりっときいたユーモアもなければ、カッコいい悪の粋さもまるでない。そもそも成人女性が十代の子供に罠を張るなんて、設定自体がカッコ悪いので、真面目にテーマを考える気にもならない。結局「悪」をこれっぽっちも楽しめなかった。
[DVD(邦画)] 0点(2011-11-30 01:06:18)
10.  心の旅
「責任」「責任」「責任」と言われ続けて育ってきた娘は、何て神経の細い、存在感の薄い、びくびく怯える子供に見えたことか。「僕もだよ」と言って、娘を安心させるためにハリソンが自分のジュースをこぼすシーンは最高! この映画のすごいところは、1人の人間に2つの人生を重複させ、負傷前に一度もバックすることなく、現時点の演技のみでそれを表現させていること。回復したハリソンに周囲の人々が戸惑うだけで、彼が以前はどれほどエゴイスティックな仕事人間だったかよくわかるというもの。手紙の色を使った伏線、リッツの絵、ふぐの話。脚本の中に、重要なアイテムがほどよく散りばめられており、決してフィルムを巻き戻さず、現時点のストーリー展開が基本という姿勢が、とても硬派だと思った。リハビリ効果が恐ろしくスピーディなどリアリティに欠ける部分はあっても、それが何だと思えるくらい描かれている家族愛が素晴らしい。アメリカで心が通わず冷え切った家庭が増えているのは、「アメリカン・ビューティ」(これにもアネットが出演)でもよく知られるところ。「心の旅」はそうした家庭にとってはおとぎ噺であり、切ない希望なのだろう。 
[DVD(字幕)] 9点(2005-04-03 00:07:01)
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