1. イブラヒムおじさんとコーランの花たち
60年代初頭のパリの裏町を舞台に、家庭に恵まれない孤独な少年と、彼に愛情を注ぐイブラヒムおじさんとの心の交流を描く・・・というといかにもありがちな話ではあるのだが、込められたメッセージはあまりにも深く、重い。最後の肉親であった父親に裏切られたユダヤ人の少年は、異教徒であるイブラヒムおじさんの養子になりたいと願い出る。彼にとってユダヤ人としてのアイデンティティは家族の裏切りによって完全に否定され、イブラヒムおじさんこそが彼の欲していた全てを与えてくれる存在であったことになる。だが人生に必要なものは全てコーランの中にあると言い切るイブラヒムおじさんの孤独な半生が明らかになるにつれて、実は少年モモの存在こそが、おじさんの人生にコーランだけでは決して与えられなかった最後の一片であったことがわかってしまう。二人の旅するおじさんの故郷、そこは赤茶けた大地の中にわずか4、50軒の家が肩を寄せあう貧しい村だ。その村からフランスに渡り、何十年もの歳月を黙々と働き続けて来たおじさんにとって、モモはその長い人生が決して無駄ではなかったことを証明する一つの光明でもある。底辺で生きる人々のささやかな幸福を描いた作品はいつも、心の中に一筋のやるせない翳りを残し続ける。パリの裏町でひっそりと数十年間に渡る地味な人生を歩き続けたイブラヒムおじさんの孤独は、オマー・シャリフの名演技と共に永く記憶に残り続けるだろう。 9点(2004-11-30 01:12:01)(良:1票) |
2. イン・ザ・カット
はっきり言って、メグ・ライアンは大根である。ただし彼女が大変魅力的な大根であったことは、彼女自身ばかりでなく誰にとっても不幸なことであった。大根だって調理法さえ間違えなければ立派な一品料理になり得るはずなのに、コメディ以外のどんな役にも不向きな彼女は、「実力派」として認められたいがためにそのキャリアのほとんどを無駄な努力に費やして来た。たとえば戦争映画、たとえばアクション映画。挙句の果てがこれである。こうなったらもう、これが遺作となってくれることをファンとして祈らざるを得ない。女性が何かをこんなに頑張りました、ということをわざわざ言う時代ではないと思うのだけれど、はっきり言ってこの作品にはその主張が溢れすぎている。残念ながらここにはエロはあるけどエロスはない。1文字の違いだが大違いである。同じ過ちを男性がやったら、少なくとも純然たるスケベ精神だけは残るのでまだしも救いがあるが、女性がエロを頑張り過ぎたらただの下品さしか残らない。エロ度については、メグ・ライアンにしてはやりすぎだけど世間一般の現代的標準から言えば全然手ぬるい。要するに中途半端な不潔さだけが、サスペンスはおろかまともなプロットすら存在しないシナリオにベタベタとコラージュされただけ。最後の最後までこだわりを見せた「ちょっとカッコいい」風のエンディングに賭けられた作り手の熱意が虚しい、前代未聞の最低最悪映画。はっきり言って盛りを過ぎたメグ・ライアンの裸は醜悪の一言。あんなに虚しい「ケ・セラ・セラ」は二度と聴きたくない。 1点(2004-04-07 01:12:33)(良:6票) |
3. インナースペース
まあまあ楽しい普通の映画。特に観客の積極的な参加も必要とされず、ひたすら受身で楽しめるという意味では、究極のひまつぶし映画と言えるかも。後から観ると、「ひょー。メグ・ライアン若いぞ」という楽しみ方も出来るし、特に時間の無駄にはならないと思う。映画から何らかの感銘を受けたいとか、明日への気力を得ようと思う方には不向き。ごくごく普通に使い捨てて良い娯楽作品としては優秀な出来栄え。 7点(2003-12-07 14:41:28) |
4. イントルーダー/怒りの翼
どうも「プラトーン」のイメージから抜け切れず、ナニをやらせてもエリアス軍曹になってしまうウィレム・デフォーがここでもカッコよく決めている。個人的にデフォーの熱狂的ファンである私にはかなり満腹な作品であるが、デフォーなんか別にどうでもいいもん、という一般の方を満足させているのかどうかはちょっと想像するのが難しい。でもフライトシーンなどは楽しく観れるし、戦争映画好きな方ならそこそこ楽しめる作品なのではないかと思う。特に飛行機にも戦争にも興味のない女性の方だと残念ながら退屈してる時間の方が長いかも。 6点(2003-12-07 14:38:31)(良:1票) |
5. インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア
《ネタバレ》 飛ぶ鳥を落とす勢いのブラピに、トップスターの座を譲り渡すまじと崖っぷちに立たされたトム・クルーズの捨て身の演技に、底力を見せつけられた作品。白塗りの化粧にフリフリ衣装のコスプレで、笑っちゃうぐらいシリアスなストーリーが、最後の最後で「全部、いつもの泣き言」であったと知らされるラストには正直、人生最高に笑わせて戴いた。おまけにカーステから流れ出すBGMがストーンズの「悪魔を憐れむ歌」なら最高でしょ。全編に漂うミステリアスな雰囲気に魅力的な子役、かなり先の読みにくい筋立てで、こういう世界が好きな人なら比較的楽しめる内容。インタビュアーのマイロ役には、急逝したリバー・フェニックスの代役としてクリスチャン・スレイターが好演。彼は場をわきまえてますよね、特に見せ場もないし地味にやっている。関係ないけどこの映画の「原作」は絶対に萩尾望都の名作「ポーの一族」。ルイ、レスタト、クローディアの三点ショットはマンガに出て来る1場面とまったく同じところまである。これもまあご愛嬌。オチははっきり楽しかったし、こういう遊び心っていつまでも大切にしたいですね。 8点(2003-12-06 23:10:09)(笑:1票) (良:1票) |
6. イレイザーヘッド
二度と観たくない映画を10本挙げよ、と言われたら間違いなく上位3本以内に入ると思います。決してつまらなくはなかったですが、観ていて辛い映画でした。別れた恋人が赤ん坊を押しつけて行ってしまうだけでも充分辛いですが、その赤ん坊が爬虫類だったら辛すぎます。ただし腹黒い猟奇趣味的好奇心だけは満たされます。ホラー映画は大好きでずいぶん観て来ましたが、どんなホラーよりもこの映画の方が怖いです。私もオトナになったので、今観てもあんなにコワくはないかな?と思いますが、やっぱりよほどの必要に迫られない限りは、これから先ももう二度と観ることはないと思います。 2点(2003-12-06 22:59:16) |
7. 今そこにある危機
ウィレム・デフォーのカッコ良い活躍をもっと見たいぞ、という方にはかなりお勧めできると思います。アロハシャツの怪しいチンピラ風から、白スーツにアーミースタイルなど、デフォーの七変化も堪能できます。お話はよくあるアクション映画という感じで、特に目新しくもなかったですが、ジャック・ライアンもほどほどに活躍してるしまあこんなもんじゃないでしょうか。悪いけど完全にデフォーの映画でした。私はデフォーの熱狂的なファンなので楽しかったですが、やっぱり脇役が主役を食うというのは映画として正しい姿とは言えないと思いますので公平を期して6点にとどめておきます。デフォーのファンにのみお勧めします。 6点(2003-12-06 22:55:26) |
8. 愛しのローズマリー
すみません。どうしても納得が行きません。外見だけで人を判断してはいけない、って言いたいんだろうと思うんですが、この映画だけを観てると、むしろ外見だけで人を判断しろ、と言ってるように思えるんですよね。だいたいコレではまるで、人の性格が「良い」と「悪い」の2種類しかないみたいじゃないですか?実際はもっとカラフルですよね。それに主人公だって、本当にローズマリーを愛してるんなら、何とかして痩せるように努力させるべきですよ。だってあれじゃあ健康とは言えないでしょう。ローズマリーは贔屓目に見ても卑屈で不健康な精神の持ち主で、確かに心は優しいかも知れないけど、もう美しくなりたいなんてことは諦めちゃっていて、フルサイズのケーキを半分食べちゃったりしてますよね。そんな彼女の心のどこがそんなに美しいのか、ちょっと理解に苦しみました。それに彼女はハルの長所に惚れ込んでるワケじゃなくて、見苦しい自分に興味を持ってくれたという希少価値にしか目を向けてないでしょう。そんな情けない恋愛をして本当に幸せなんですかね?私はローズマリーほど太ってるわけじゃないけど、もし自分がそうだったら、この映画を観てバカにされたような気がしてかなり頭に来たと思います。唯一、病院で出会う顔に大やけどした女の子のエピソードだけが救いでした。こういうのをブラックユーモアというのかなあ。私はかなりひねくれた話でも喜んで笑いますが、この映画には笑えませんでした。ジャック・ブラックにはかなり期待しているだけに、残念さで一杯です。 2点(2003-12-06 22:51:05)(良:4票) |
9. いとこのビニー
スコセッシ監督のマフィア映画では、あれほどカッコいいキレっぷりを披露してくれるジョー・ペシが、こういう役をちゃんと真剣に演じてくれるのって嬉しいですね。悪趣味で下品で頭悪くて、こういう役をやれる人って頭いいんだろうなぁと思います。彼と同じぐらい下品でイケイケのモナ・リザを演じたマリサ・トメイも、ちょっとテレビシリーズに出てたぐらいのはっきり言ってポッと出の新人だったくせに、いきなりバネッサ・レッドグレーブを押しのけてオスカーを獲ってしまうって、ハリウッド史上に残る快挙だったと思います。しかもコメディで受賞ですし。これは珍しいですよね。映画は非常にテンポ良く、ほどほどに笑えますし、ちゃんと最後には爽快感もあります。本当のコメディファンにはもう一つ二つ納得の行かないレベルだと思いますが、コメディ寄りの一般作品と考えればかなりのハイレベルを保っています。かなりおバカで、ハイテンションです。はっきり言って、一見の価値はあると思います。 10点(2003-12-06 22:41:29) |
10. イグジステンズ
ウィレム・デフォーだけを目当てに観に行ったのに5分ぐらいしか出て来ないし、しばらくエビカニ類は食えなかったですね。たしか90分台のかなりコンパクトな作品なのに、ジェニファー・ジェイソン・リーとジュード・ロウが主演じゃなかったら確実に3時間ぐらいに感じたと思います。2人のおかげで体感時間は2時間半ぐらいですみました。かなり疲れました。クローネンバーグもトシかなあ、と素朴に思いました。好きな監督さんの1人なんですが、このテンションで一生突っ走るのは無理があるのかも知れないですね。頑張っているとは思いますが。 6点(2003-12-06 22:31:36) |
11. 生きてこそ
原作となった「アンデスの聖餐」を先に読んでから観たので、それなりに覚悟は出来ていましたがやっぱりおっそろしかったです。ちなみに原作の方が、ウソっぽい映像がついてない分リアルでした。しばらく肉は食えませんでした。映画の方は、特に偏った食べ物(馬刺しなど)でなければ食べながら観てもどうにもならないってほどではないと思います。ただし世の中の半分以上が、こういう映画って単なる覗き見趣味で、猟奇趣味的好奇心から観るんであって、「人の命の尊さ」とか本気で思う人はかなり少数だと思うので、なんとなく良識を試された感じがしてちょっと憂鬱にはなります。原作本に何枚か写真がついていましたが、同じ場面を本物と映画とで比べてみると、やっぱり映画の方はみんな丸々としていて元気そうです。今どきCGとかいろいろあるんだし、もっとスゴい映像は出来たんじゃないのかな~という気もしますが、これって自主規制なんでしょうか。まあ一応映画なんで、このぐらいがちょうどいいのかも知れないですね。あんまりキレイごとは言いたくないので、猟奇的好奇心は満たされました、とだけ言っておきます。 7点(2003-12-06 22:27:20) |
12. イーストウィックの魔女たち
もちろん映画は映画なのであって、1本の映画として独立した面白さが保てていなければイケナイ。シニカルで辛口な語り口を売り物にするジョン・アップダイクの風刺小説を原作にしたこの映画も、おそらくアップダイクの作風または原作を知っていなければ特に何の値打ちもないワケワカラン退屈な映画。うっかり点が甘くなってしまったのは、愛するジャック・ニコルソンとスーザン・サランドンの稀少な共演作品だから。公の場に私情を挟み込んでごめんなさい。でも私、この2人が大好きなんです。スーザン・サランドンとタッグを組むのがシェール御姐様とミシェル・ファイファーという組み合わせもなかなか気が利いている。この3人にボロクソやっつけられるミス常識の議員夫人がベロニカ・カートライト、もう幸せ(笑)というワケで、広く一般に受け入れられるタイプの作品でないことは充分承知しているのだが、どうしてもこの作品にはキビシいことが言えない。でも正直、アップダイクのファンにはちょっとたまらない面白さがある。腹黒い人にはお勧め。 8点(2003-12-06 22:20:26) |
13. イージー・ライダー
《ネタバレ》 ここ20年くらいの間に映画を観始めた世代にとっては何ということもないのだが、実はオールロケ撮影という撮影方法自体が言語道断だったこの時代、今となっては誰も驚かないこのロードムービーがどれほど衝撃的だったかは想像に難くない。正真正銘のダメ人間たちが自堕落な主張を振り回して彼らにとっての実に一方的な自由を追い回す、というストーリーだが、保守的な「常識人」による銃撃という問答無用の制裁を受けるラストの意味するものは、「キャプテン・アメリカ死すとも自由は死なず!」と叫びたいのか、はたまた安易に猟銃を振り回す常識に対しての痛烈な批判なのか、それとも単にデニス・ホッパーがラリッていたからワケわかんなくなったのか。ちなみに筆者は最後の説を信じる。ヤク中はハッピーだが、ヤク中は一方的だ。この映画、デニス・ホッパーが最初に編集した時には6時間半だか7時間あったと聞いている。そのまんま公開されていたら、最後まで観るのはデニス・ホッパーぐらいのものだったに違いない。でもまあ、何と言っても初のオールロケ作品である。「すごいなあ」の一言ぐらいは、言ってあげてもいいと思う。 8点(2003-12-06 22:14:35)(笑:1票) (良:3票) |
14. E.T.
映画が「おもしろさ」だけを求められた時代にあって、これ以上ないほどその点だけに特化した、そういう意味では非常に素直な売れセン映画。あまり魅力的とは言えない容貌のE.T.が、ヘタな英語で一生懸命「カエリタイ」と訴える姿が、「可愛くない可愛さ」という新たな価値観を生み出した。彼と子供たちとの心の交流を軸に、ラストは子供で泣かせるというあざとさでは他に類を見ない作品だが、幼少期にこの作品に触れた世代に対しては「異端を認めなさい」という非常に明快なメッセージが素直に受け入れられ、強い影響を与えたと思う。そういう意味では、特に脳天をカチ割られるような衝撃を受けたり、人生における新たな境地を見出すような作品ではないながらも、かなり幅広い世代にとってある種の価値観を植えつけるサブリミナル効果があったことは否定できない。実はこういう作品にこそ、人って影響されていたりするんですよね。 7点(2003-12-03 23:06:29)(良:1票) |
15. 1941
あにやんさんとは正反対に、観た時はゲラゲラ大笑いしたんだけど・・・その後、世間の評判のあまりの悪さに、恐ろしくて見返すことのできない映画。タイミング的に、「ジョーズ」や「未知との遭遇」の直後に見たから笑えたのかも知れないですね。まだあのへんのイメージが鮮烈だったので。せっかく「面白かった」という感想を持っているのに、見直してみてつまらなかったらどうしよう・・・と思うと安易に見返せない辛い映画。当時まったく知らなかったジョン・ベルーシが、そんなに面白いとは思わなかったのもまた事実。ただ「ハリウーーーーッド!」で笑いころげていたような気もする。 8点(2003-11-30 01:20:18) |
16. インデペンデンス・デイ
BB2Bのあまりのつまらなさに収まりがつかなくなってしまい再見しました。ウィル・スミスがカッコよすぎるのがちょっと寒いですが、「宇宙人が攻めて来るゾ~~~」というあまりにも使い古されたネタでここまで突っ走り抜いた勢いはスゴイと思います。過去に地球を滅ぼそうとしたあらゆる宇宙人の中では、機動力において群を抜いていると思いますし、そういったスケール感を楽しむ以外に何もない映画ですが、そこに突出しているのは評価できます。ビル・プルマン、ウィル・スミス、ジェフ・ゴールドブラムというおよそ地球規模の危機に立ち向かえそうにないキャラクターを集めたところも非常に危機感を煽って成功していると思いました。バカバカしい内容だとは思いますが、大のオトナが真剣にこれをやってくれるのってアタシはけっこう好きです。 8点(2003-11-29 23:03:44) |
17. 依頼人(1994)
はっきり言ってコレは好き。貧乏な家の子供が事件に巻き込まれてしまったら、という設定がそもそもオイシすぎるが、たまたまそのコに助けを求められてしまったスーザン・サランドンの擬似母性が、あまりタフではないシングルマザーのメアリー・ルイーズ・パーカーとせめぎ合っているバランスが絶妙。対するトミー・リー・ジョーンズの憎み切れないワルさもいい感じだし、これはもうメンツの勝利に尽きますね。もちろんストーリーがオイシイのは言うに及ばず。ブラッド・レンフロの生意気な個性もこの頃は素晴らしかった。おもしろいストーリーと、上手い役者が揃えば、それなりの映画が出来るという一つの手本にはなっていると思う。何よりレジー・ラヴ可愛いです。満点。 10点(2003-11-29 13:23:15) |
18. 愛しすぎて/詩人の妻
実録ドラマシリーズ(と個人的に名づけているジャンルなのであるが)としては意外と格調を保っており出来は良い方ではないかと思う。ミュージカル「キャッツ」などの作者として名高いT.S.エリオットと、その妻ヴィヴィアンの数十年に渡る異様な結婚生活を描き、日本人としては思わず「智恵子抄」を思い出さざるを得ない内容。結婚前から精神を病んでいたヴィヴィアンと、結婚生活を維持しようと無理な努力を重ねる痛いトムの純情は、この不幸が彼を立派な作家へと育てたのね、という説得力に溢れている。イギリスの田園地帯を舞台とした美しい映像、衣装やセット、いかにもな雰囲気一発モノではあるが普通に覗き見趣味を満足させてくれる。マゾっけたっぷりなウィレム・デフォーの「痛い」個性が際立つ一篇。ミランダ・リチャードソンの狂った眼差しは上手い。オトナがなんちゃってな格調高い雰囲気を欲した時には、こういう作品もいいんじゃないかと。 8点(2003-11-29 13:08:21) |
19. イングリッシュ・ペイシェント
《ネタバレ》 これだけ長々と果てしないストーリーを展開されて、最後の最後に単なる昼メロ不倫映画だったと気づかされることの驚き。顔もわからないほどに負傷した男性が従軍看護婦に語る身の上話の中に、戦争の愚かしさや虚しさを痛烈に告発する力強いメッセージを期待してしまった身としては、強烈な脱力感は残るものの驚きも感動も未来への希望も失わせるには充分な映画。こういう男をカラダを張って助けてしまったのがジュリエット・ビノシュだから別にいいけど、昼メロなら昼メロと最初に言ってよね、という感じ。唯一、ウィレム・デフォーだけが痛い個性を充分に発揮してくれたので3点。彼が出ていなかったら0点でもお釣りの来る映画。テーマは無限の退屈。 3点(2003-11-29 12:33:50)(良:1票) |
20. いつか晴れた日に
《ネタバレ》 途中この映画は本当に結末があるのだろうか?という不安が頭をよぎったものの、ヒロインと共に耐えに耐えただけの報いはある。いかにもコスプレ向きのケイト・ウィンスレットを妹役に持って来たのも大正解なら、微妙に悪役顔のアラン・リックマンに求婚者役を与えたのも神業。オスカーを受賞した後での鑑賞となったため、エマ・トンプソンの頭良さげオーラには多少辟易したものの、最終的にはその知性の下にひれ伏すこととなった。それにしても襟の詰まった時代劇の衣装を着ると顔の長さが異常に強調されてしまうせいかヒュー・グラントの登場シーンだけアングルが狂っているように感じられたのは私だけなのであろうか。 8点(2003-11-22 23:07:12)(笑:1票) |