1. インターステラー
《ネタバレ》 冒頭で語られる植物の疫病のため人類窒息というプロット。なのに重要な酸素供給源であるはずの海藻類がどうなっているのか全く語られないのでこれは怪しいと思ったら、案の定ハードSF風味のトンデモ映画でした。アポロ計画風の原始的な打ち上げのブースターと、未知の惑星を縦横に飛び回るスタートレック並の高性能探査機が同居する世界観が、図らずもその科学考証のいい加減さを視覚化してしまっている。相対性理論と不確定性原理の統合とか特異点とかそれらしい科学用語が沢山出てくるが、ただの雰囲気とご都合主義に利用されるだけで、それらがどういう理屈でどう話に絡んでいるのか観客にきちんと理解させる気はないように見えるし実際よくわからない。パーみたいな単なる悪人が出てきたり陰謀論が語られたり自己犠牲によるお涙頂戴と、重苦しい文学性のありそうな雰囲気もSF的プロット同様のお安さに溢れている。更にとってつけたようなサスペンスもテキトー。ブラックホールに落ち込むというえらい難儀な事態のはずなのに何が起こったか不明のままハッピーエンド方向に収束。ここらへんディズニーのバカSF「ブラックホール」と一緒。そういえば子分のロボットもビンセントみたいだ。ぶっ壊れたのが出てくるし。一事が万事この調子のラフさで、誠実さに於いて同じマコノヒー氏出演の傑作ハードSF「コンタクト」の足元にも及ばない。「ソラリス」に影響を受けたとか監督が言ってるらしいが笑わせるにも程がある。 [ブルーレイ(字幕)] 2点(2017-09-25 06:49:29)(良:1票) |
2. イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ
《ネタバレ》 自分を大物アーティストと勘違いした愚鈍な男の見苦しい振る舞いを、超のつくほどクールな作家が白けながら映し出す。「土産物屋を通って退場」という本作のタイトルは、クソ高い入場料の美術館(公立なのに)に行くたびに感じていた苦々しい思いを代弁してくれているようで実に気持ちいい。しかし本作の内容は単にアートと金儲けを巡る問題というだけの単純なものではなく、芸術とは何かという根源的な問いまでをも含んでいる。そんな大テーマを大上段に構えること無く、笑いながらこれほど深く考えさせられるドキュメンタリーはオーソン・ウェルズの「フェイク」以来。なにしろ監督がはじめにつけようとしたタイトルは「クソのような作品をバカに売りつける方法」だ。素晴らしい! [DVD(字幕)] 10点(2017-08-13 14:54:48) |
3. 生きものの記録
独りよがりが過ぎて狂人の域まで至っている黒澤監督が、同じく独りよがりが過ぎて狂人の域まで至っている男を主人公に描く純粋独りよがり映画。監督の内面をそのまま実体化したような不快なじじいが主役。そして、凶暴なようなそうでもないような彼を近親者が恐れているようなそうでもないような、心理的につじつまのあわないシーンが連続してあきれる。そんなご都合主義の演出は歌舞伎の型で出来ているようなシュールさで、無理矢理な老け役の三船敏郎の力みすぎの熱演と、コントみたいなメークの水戸黄門の登場と相俟って観ているこちらも発狂しそうだ。また大上段に構えすぎる問題意識の表明は、黒澤さんがはずす時の「観客おきざり」というある意味王道ともいうべきパターン。本作はタイトルからしてそうとう恥ずかしいその手の代表作かと。こんな自己満の塊みたいな作品のために、町工場のセットを周辺も含めてまるごと作るのだから、当時の映画産業の持つパワーに思わず感心してしまう。家庭裁判所の廊下のセットは当時新しく出来た体育館みたいなスタジオを斜めに使った長大なものらしいが、画面を圧縮して密度を高める黒澤理論に沿って望遠で撮っているせいで奥行き感はなく、その効果はほぼ感じられない。大塚駅のセットもそれを作る必然性を感じる画は無い。いったい何やってんだ? 我が儘いっぱいの大人子供が作ったような極めて奇怪な作品なので、貴重なその珍奇さをもって10点でも100点でもいいのだが、どう好意的にみてもドラマ的なチープさは否めないうえに、心底恥ずかしい気持ちにさせられたので0点。 [DVD(邦画)] 0点(2016-12-29 16:40:57) |
4. イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密
面白い。カンバーバッチはアスペルガーぽい人物を良く演じているし、脚本も演出も音楽もそつがない。物足りないのは暗号解読の世界の魅力を伝えてくれないことと、時間の解体をした作劇法がムードを高める以上の意味がないこと。良くも悪くもきちんとした職人仕事という印象で名画とまでは言えない。監督にもそれほど大きな野心は無いのだろう。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2015-11-22 23:42:29) |
5. インモータルズ/神々の戦い
まずファースト・シークエンスの音圧が高すぎる。5分で耳がバカになって、その後の騒ぎが無感覚になってしまった。もともと筋らしい筋もクライマックスに至るタメもメリハリも伏線も何もないような話。ドンキで買ったパーティ衣裳を着た役者を「神」と思おうとしても、そう思わせてくれるサムシングが一切ないので無理。アポロだのゼウスだの色んな名前が出てくる(それもテロップで!)が、各々の特徴も描かれず、男も女もただ殴り合いが強いだけなので一切どうでもいい。仮装大賞を観たと思えば腹もたたないが、映画なんだからもう少し“物語”を楽しまさせてくださいよ。製作者は自分が阿呆か観客をバカにしているか、その両方のいずかれかでしょう。 [映画館(字幕)] 4点(2012-01-24 10:37:21)(良:1票) |
6. 石の微笑
《ネタバレ》 これは所謂不思議ちゃんに翻弄される男の物語。フランス映画らしくオチはなくとも彼が破滅に至るその経過だけで充分見せちゃう。若い頃はバカだからこういう得体の知れない女に惹かれてしまったりするもんだ。しかし不思議ちゃんというのは程度の差こそあれサイコの一種なのだから、平穏な人生を送りたい人は気を付けなくてはいけません。その手のエキセントリックなヒロインにごく平凡な外見を持つ女優を持ってきたキャスティングはリアリティがあって素晴らしい。さすがおフランス!しかし不思議ちゃんも彼女ほどの大物になると、ただ普通の外見というだけではちょっと物足りない。例えば前歯が一本無いとか靴が凄く汚れているとか、精神的ないかれ具合相応の外見的ダメージがあっていいのではないか。そこまでやってくれれば絵に深みと迫力がぐっと増したと思うのだが、原作付きだから仕方ないか。臭い部屋で異常性欲のサイコ女と常軌を逸したセックスが出来たのだから、その後の人生がどんなに悲惨でもいいじゃないか。そんなほのぼのとした心持ちになる良い作品ではある。ただ監督は薄味な奴なのか、女体に対する執着があまり感じられないのは残念。ローラ・スメットとという女優さんは尻がそこそこでかくて旨そうなのに、ほんの一瞬しか映してくれないので真価がよくわからんかった。尻を舐めるようにね~~~~っとり撮って欲しかったよ。勿体ないなあ。オレは女の巨大な尻が見たいんだよう。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-04-07 18:36:23)(良:1票) |
7. 緯度0大作戦
《ネタバレ》 幼少時に観てそれなりに楽しんだ作品も今見返してみるとヒジョーにキビシーということが特撮関係では枚挙にいとまがない。やっと再見できた本作もその例にもれず脚本演出ともにびっくりするほど手を抜いたものだった。とにかくテンポが悪く緊張感がまったく無い。カタルシスを感じられるポイントもほとんど無い。海洋シーンの特撮には東宝作品らしい格調があるが、陰の主役ともいうべき潜水艦α号にカリスマがないの無い無いづくし。特に艦内のセットに奥行きがなく書き割りのように平板なのは辛すぎる。先人の偉大な仕事(ディズニー版ノーチラスの艦内のデザインをご覧あれ!)から学ぶべきことを何も学んでいないことに驚いてしまう。敬愛する伊福部さんのスコアがいつもの調子なのも本作に限っていえば当たっているとは思えない。と、良くない点ばかりあげつらってしまったが本作にはなんとも得体の知れない魅力があるのも事実。特撮物には珍しく、ラストの解釈を観客の判断にまかせるリドルストーリーの体裁をとっていて、異様な後味を残すのがちょっとアダルト。この点ときぐるみ然としたグリフォンは残酷な設定と共にある種逸脱が感じられて爽快感がある。貴重なSF怪異譚として記憶に残る作品ではある。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2007-04-19 22:31:01) |
8. 愛しのローズマリー
“えーと、この鶏ガラみたいな女をまず綺麗と思わなくちゃいけないんだな”映画を観て意味的な翻訳をここまで強烈に強いられたのは初めてだ。あんな痩せた女が好みなのは主人公の勝手だが、受け手みんながそれを許容すると思っているところが救いがたい。バカか。このどっちらけ感はオレが筋金入りの豊満好きというせいだけではないだろう。美醜という本来個人の感覚に依拠すべき問題を、最大公約数におもねった製作者に語られてもちっとも心に響かない。人の外観について既存の価値観に本気で揺さぶりをかけたいのなら切実さに溢れたジョン・ウオーターズの初期作品を観ることを勧める方がよほど有効だ。がまんして最後まで観たが説教くさいのにも参った。痩せている=美しいという世間の俗情を当然のこととして受け入れなければ話が成立しない点、ヒロインが社長の娘であることで無理矢理ハッピーエンド風に仕立ててある点、等むしろ差別意識を助長するのではないか。文句なしの0点だ! [DVD(字幕)] 0点(2007-01-18 19:21:38)(良:1票) |