1. 市子
《ネタバレ》 妹月子の呼吸器を意図的に外して殺した市子は、母なつみに叱られるはずだった。それで母に「目を離しているうちに呼吸器が外れていた」などの巧妙な言い訳をするつもりでいた。だが母は全部見抜いて、市子に過大な負担を強いていたと察知し、市子の話に聞く耳も持たず「ありがとうな」と言って、全部受け容れた。 このとき、市子の心は壊れてしまったのだろう。母もまた、童謡「虹」を歌うことで平静を保つのがやっとだった。そして母の内縁の夫小泉に死体を隠蔽させたことで、3人の暮らしも壊れてしまう。 市子が夏の道を一人で歩くシーンは、全ての時系列の最後に当たる。歩くだけでしんどそうだが、人の姿はなく、彼女は孤独に一人で歩いて行かねばならない。ここで市子は「虹」を歌う。 庭のシャベルが一日濡れて 雨があがってくしゃみをひとつ 雲が流れて光が差して 見上げてみれば ラララ 虹が虹が空にかかって 君の君の気分も晴れて きっと明日はいい天気 大仕事を無事に終えた市子の脳内には、アドレナリンが出まくっているのだろう。彼女を苦しめた忌まわしい事件も、新しい人生を手に入れた今の彼女にとっては、ただの通り雨に過ぎない。人生大荒れの日があっても、きっと明日はいい天気だろう。 [インターネット(邦画)] 10点(2024-08-04 16:16:28)(良:1票) |