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1.  沈まぬ太陽
ケニアでの象狩での眉間に銃弾を浴びて倒れる巨象とジャンボジェット機の事故シーンをオーバラップさせるのは少しブラック過ぎる気もしたけれど、邦画に新しい部分を開くと言う面で意欲的な作品であるとして評価できます。これだけの企画だから際物を狙ったのではないだろうけれど、担当大臣の発言で株価が乱高下している昨今をみると航空会社の政治性と言うのが今更ながら印象づけられます。最後のほうにチラと見せられるように当時では優待券、現在ではこれにマイルとか言う換金性の高い商品が政治資金のための現金源として大きな意味を持つのでしょう。航空会社では路線獲得や機材購入などの面が経営上の大きな位置を占めるので主役はその方面の人々でテクノクラートの位置が相対的に低いことが安全性に影を落としていることはこの作品では覗うのは難しいようです。三浦友和の悪役は珍しいけれど結構うまく作品を引き立てています。
[映画館(邦画)] 7点(2009-11-24 23:42:00)
2.  ジャイアンツ 《ネタバレ》 
今さらながら2枚組DVDで観ました。50年代半ばと言えば米国では公民権運動も始まる前ですから当時の状況を考えれば相当に先進的とも言える取組みです。話としては東部の町から種馬の取引が契機でテキサス州の大牧場主と結婚することになってしまった女性の一代記とも言えて、それを代表的な美人女優と種馬男が演ずるややコメディタッチのテキサス近代史です。東部での出会いから場面は一転して自家用寝台列車でのハネムーンで自家用の駅に乗り入れると言うおとぎ話風のタッチですが、当時のテキサスは米国に併合して間もなくで、米国の移住者と先住のメキシコ系住民とが差別の中で共存している状態で一種の植民地とも言える場所です。ここでは努力と幸運次第で牧畜や石油発掘で巨万の富を得ることができるアメリカンドリームの場所でもあり、そこで大牧場主の子供達も自分の夢を実現し、メキシコ人の貧農の息子は大戦に召集されて運悪く戦死するけれど星条旗と州旗ローンスターの下での華やかな葬儀に送られます。反抗的な使用人のジェット(ジェームス・ディーン)は僅かな遺産の土地に賭けて大石油王になるけれどかつての雇用主とのパーティでの突っ張り合いが面白い。メキシコ系住民への差別意識が大きなテーマになってはいるけれど黒人はほとんど登場せず、教会も結婚式以外にはでてきません。この映画でのディーンのイメージはディカプリオとそっくりなことに気づきました。ちょっと時間が長いけれど気楽に観られる映画です。ちなみに原題のGIANTはローンスターの州旗が示すように孤高の大テキサス州のことです。 
[DVD(字幕)] 6点(2009-11-01 17:14:01)
3.  忍ぶ川 《ネタバレ》 
芥川賞受賞作と言うことで原作を読んでから何十年も過ぎてしまっていたから時代ははっきり覚えていなかったけれど,昭和30年代初期が舞台なんですね。ヒロインが子供の当時は特飲街の射的屋の娘で,それでも父親の優しさを受け継いでの素直さを奇麗に表現しています。戦災で焼けてしまってからの深川・木場の光景ですが今では全く失われた東京の風景が残っている貴重な映像です。浅草の様子も現在とは全く違ったものとして残されているだけでもこの映画の価値があります。原作者の自伝的小説とのことだったのですが最近の風潮ではこの種の表現はフィクションであっても困難になってきているので内容の古さなど抜きにしても一見に値する(もちろん栗原嬢の胸も合せて)映画でした。
[DVD(字幕)] 8点(2007-08-07 17:18:02)
4.  不知火檢校
勝新太郎の映画はほとんど観たことが無かったのだけれど、これが座頭市の原点なのですかね。しかし盲人の動きとして少し不自然さ(と言うより誇張)が目立ちすぎのようにも思えます。後に勝夫人になる玉緒はさすがに奇麗ですね。悪役ぶりの筋書きは見事で、ここまでワルだと憎めない。しかし本業(?)の琵琶の演奏場面がほとんどないのは残念です。最後の立ち回りのBGMとして取り入れる工夫はなかったのでしょうか?
[DVD(字幕)] 7点(2005-09-26 00:29:36)
5.  地獄への道 《ネタバレ》 
この映画ってビデオとか出ているのでしょうか?開拓当時のアメリカで鉄道建設のゴリ押しに反発する住民の支援を受けての義賊気取りがやがてプロ化していくところとか、そのずっと後の日本の学生運動とかにも通じるところがあるようです。最後に足を洗って新しいカリフォルニアでの出直しを決心した一家が家の整理を始め、鼻歌を歌いながら壁の画を外しているときに賞金稼ぎに後から撃たれて転げ落ちる場面で終わっています。この映画には、ここから始まる「地獄への逆襲」と言う続編があるのですが、こちらの印象は記憶に残っていません。
7点(2004-12-03 09:03:04)
6.  新選組(1969) 《ネタバレ》 
映画の2時間半としては情に篤い男の土方、芹沢、伊東といった剣客との間の友情と離別、古女房(美人過ぎますが)や子供に未練を持ちながら祇園の舞妓との熱烈な恋と矛盾したものを抱え込みながらの統率者としての苦悩する生き方は悲劇とも喜劇とも言えますがうまく描いています。しかし舞妓の身請けのための金の動きとかの説明は不十分で、それで犠牲者が出たことを知った後の態度も少し曖昧過ぎるように思えました。勝の描き方が決して好意的でないのは彼が剣客ではないからの偏見が過ぎるようです。沖田の件は別にしても有馬の描き方は少し史実とは違うように思えますが、死に花を咲かせるためには必要だったのでしょう。
7点(2004-10-08 11:13:10)
7.  シャイアン 《ネタバレ》 
観てからかなりの年月が経過していますが、あくまで誇り高い先住民と、それに同情しつつも任務を果たさねばならない騎兵隊との対比が印象的でした。特に婦女子を交えた先住民の一行を追い詰めて行き、最後の対決の場面での赦免の文書が届くところは従来の騎兵隊と先住民ものの裏返しになっています。これからかなり経過してから「ソルジャーブルー」が製作されるのですが、先住民を主役とする映画の先鞭をつけたものとして評価できます。 70mmの大作でそれまで先住民を悪役にしてきたジョン・フォード監督の謝罪作品とされています。
7点(2004-09-27 17:24:57)
8.  紳士同盟(1960) 《ネタバレ》 
誘いの手紙とともに届くのがギリシャ神話にあるアルゴ号の冒険の本で、軍隊を首になってろくな暮らしをしていない連中に自分がスポンサーになるから一冒険やろうと持ちかける。このときに披露される各メンバーの輝かしい経歴が笑えます。武器の調達の過程での兵士との軍隊食の論議とか英国流のユーモアたっぷりで「オーシャンと11人の仲間」とは違った味です。最後はお約束の上手の手から水が漏れることになるのですが、裏切りものが出ないところとか観終わっても気持がいい映画です。 
7点(2004-09-23 23:08:14)
9.  心中天網島 《ネタバレ》 
もう30年以上経ってしまったのですが、この映画を観たときの感動は忘れられません。篠田も巨匠とか言われるようになっても「スパイゾルゲ」は論外にしても、これを越える作品は作れていないようです。岩下志摩は雪国のときよりもずっと大人の女を演じるようになっていて、最後の屋外で情を交わすシーンなどはそこいらのポルノとかが及ばないものがありました。黒子が場面に登場する(首吊りの手助けまでするのですが)のは人形浄瑠璃としての演出ですが、北野の「ドール」でももっと応用すべきだったと思います。
10点(2004-09-23 20:52:21)
10.  七人の愚連隊 《ネタバレ》 
50年近く前に観た映画です。ライバルのカジノを襲撃して打ち壊したあとでサミー・ディビスJRがタップダンスを踊るシーンが印象に残っています。シナトラ一家はこの当時が一番輝いていたと思います。
5点(2004-08-21 09:56:00)
11.  女優フランシス
この映画は80年代に米国のケーブルテレビで観ました。R指定ではなかったけれどおかしくなって保護される場面などは当時の日本では絶対に放映されないシーンでしたので印象に残っています。当時はかなり評判の映画だったらしく何度も繰り返して放映されていました。 ケビン・コスナーが出演していたとは知りませんでした。当時はほとんど無名だったのでしかたないでしょう。
7点(2004-06-29 21:20:16)
12.  十戒(1956) 《ネタバレ》 
中学のときに見たのだから随分時間が経っていますが、当時のパンフレットには時代考証などについての経過などがかなり詳しく説明されていて、当時としては最大級の努力が払われていたものと考えられます。しかしオベリスクの建て方などは、当時としても物理的に相当に難点があるとは思いましたが、スペクタクル映画としては仕方ない表現でしょう。宗教的バイアスを除けばユル・ブリンナー演ずるエジプト王子->王のほうが神の代言者として傲慢さが強くなっていくモーゼに比較していかにも人間的で好感も持ててしまいます。 
7点(2003-12-21 13:22:12)
13.  地獄の黙示録 《ネタバレ》 
コッポラがどう考えて作ったのかは別として、カーツ大佐を「満州軍」にしたのは軍の司令官と言う権力を持たされて異文化に接触したときの適性の問題で、確かに戦争のせいではあるけれど、なまじっかなヒューマニズムだと思います。それが子供の手首か腕かの山を見たことをきっかけに狂ってしまった。満州軍とかひょっとしたらマッカーサーだってこの種の陥穽には陥りやすいものです。皆さんの評判は悪いけれど対照的なのが騎兵部隊の指令官で、戦争における自分の義務を心得えて部下の状態とそれを無事に任務を果たして故国に連れて帰ることに懸命になっているし、部下もこれについて行けば安心と考えているのです。それが現地人に与える影響とかは抜きにすれば、戦場で持つべき上司とはこんなものでしょう。コッポラはこの部分でキューブリックの「Dr.Strangelove」の機長を下敷きにしています。そのリーダーシップとテンガロンと死神の曲の奇妙な一致で。
7点(2003-11-05 20:23:08)
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