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1.  白い刻印
僕は父のようになりたかった男だから、父と同じようにはなりたくないというニック・ノルティ演ずる中年男の気持ちは、なかなか自分のものにできない。けれど、この作品がもたらす独特な雰囲気に浸っていると、いつの間にかその気持ちを当然だと受け入れられるようになる。それはストーリー展開の力ではなく、メタファーに富んだ演出の力によるものだと思う。一面に雪が積もった世界は冷え切った親子関係のメタファーであり、歯痛による苦悩(Affliction)は男が感じている抑圧のメタファー。そして、その歯痛の原因である歯を自ら抜くことがまるで合図だったかのように、それまでゆっくりと進んでいた物語が、急速に破滅へと向かって転がりだす。確かに地味だし、あまり知られていない作品ではあるが、精神を病んでいく過程の陰鬱さが、独自の魅力にまで昇華された見事な一本。
6点(2004-03-11 02:43:01)
2.  シベールの日曜日 《ネタバレ》 
モノクロームなのになんと美しい映像なことか。カメラワークはちょっと狙いすぎな気もするが、ヌーヴェルバーグ真っ只中な感じがして、それもまた良し。青年と幼い少女の交流というテーマ自体は、昨今の日本でのペド犯罪の多さを考えると、現代ではもはや手離しでは歓迎できないだろう。しかしこの映画は、「純粋さ」というものが現実世界によって打ち砕かれてしまう悲しみと儚さを描いた、一種の寓話、ファンタジーとして見るべきもの。フランス映画に、ヌーヴェルバーグにのめり込んでいた学生の頃見ていたら、より深く心に残る一本になっていただろう。この監督とシベール役の女優が、その後ほとんど活躍していないところが、映画史の中でこの作品の輝きを一層増しているようだ。 【おまけ】オープニングと劇中のシーンで、なぜチベット音楽なのかが分からなかった。インドシナ戦争とは関係ないし。異教的なものの象徴だろうか?
8点(2004-02-22 16:19:32)
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