1. 17歳の肖像
《ネタバレ》 なんか不快な映画。若い娘に手を出すおっさんも気持ち悪いが、それよりも、過去をどこか誇らしいものとして捉えているにちがいない原作者(成功者)の、愛も恋も裏切りも知らずに勉強一筋で生きてきた少年少女に対する、お門違いな優越感が透けてみえるところが嫌らしい。主演のキャリー・マリガンは素晴らしい女優だと思ったが、鼻持ちならない雰囲気は出ていても、少女らしい可憐さはまるで感じられない。相手の俳優もダンディー、不細工どっちつかず。悲劇でもなけりゃ喜劇でもない、感動もしない。どこに焦点をあわせ、何を見るべきか全くわからなかった。 [DVD(字幕)] 5点(2011-08-31 12:44:52) |
2. ジャーマン+雨
野嵜好美といえば山下敦弘監督の秘蔵っ子という印象だ。それだけに(?)、よしこのような、憎たらしいがある意味魅力的な破天荒キャラがぴったりくる稀有な女優さんである。その彼女を主演に据えた横浜監督のセンスとガッツ、それだけでも私のなかでは結構高評価な本作だが、私が特に素晴らしいと思ったのは作中キャラクターである。登場人物に誰一人真っ当な人間がいないながらも、舞台が辺鄙な田舎町だから特に、こういう奴いそうだよね的な共感を呼ぶ。同じ変人系映画でも、ケラや三木聡作品のように「こんなやつおらへんやろ~」と思わずつっこんでしまうようなぶっ飛びタイプではなく、横浜監督が好むのは山下タッチのリアリズムである。愛を持って「ヒト」をよく見ている、そんなイメージ。それから、ストーリーについて。一見ポップだが、本質としては前のレビュアーさんがおっしゃるとおり、結構暗い。「ウルトラミラクル~」もそうだったので横浜監督の好みなのかもしれないが、積極的な前向きさはなく、どちらかというと諦念を抱き、どう開き直るかが主眼であるように思える。それで下手なメッセージ映画よりも、何だか逆に励まされるのは私だけではないと思う。映画の規模を考えたら限界があるとはいえ、人々にもっと観られていい映画。ただ、もう少し分かりやすくてもよかったんじゃないかと思う場面は多々あった。ドイツ人とよしこは性関係を持ったのかな?私は勝手にそう解釈しちゃったけど…。 [DVD(字幕)] 7点(2009-12-05 14:53:50) |
3. ジョゼと虎と魚たち(2003)
《ネタバレ》 そんじょそこらのホラー映画やサスペンス映画に負けないくらい、私にとってはものすごく怖い話だった。彼氏がいなくなったからと「種を撒く」一見清純派美少女(という設定であるらしいことはわかるが…しかし、上野樹里は化けたなあ。ホントに)、その美少女を高みから揶揄するクールな女、軽く恋しちゃう大学生ノリの延長線で重くなるであろう恋に走り、案の定、その重みに逃げ出す男…本当にこの世は魑魅魍魎の住処だなあ。不気味なばあちゃんや凶暴な幼馴染み、変態おじちゃんのほうがよほど私には好ましく思えたが、こういった人々のほうが異端扱いされるのが世の常。普通の人間って怖い。悪意がないから余計怖い。ジョゼとツネオの恋についての感想は人それぞれなんだろうけど、心溶かすような恋が永遠でなく一瞬だと分かっているならば、知ってしまうより、いっそ何も知らないままで海の底の何もない暗闇に延々漂っているほうが幸せなんじゃないかと私なら思う。離れていくツネオの心を眺めているジョゼの、物分りよく諦めの境地に立っているふりをしながら、懸命に「そんなもんだよ」と自分に言い聞かせているであろう心情を思うと、哀しくて哀しくてどうしようもなかった。この映画を前向きとか希望とかいう風に語れる人はきっと大人なんだろう。思い出に生きることもまた幸せだろうなんて、今の私には到底思えない。ただ、これから先、恋をしたら、もう一度観たい映画ではある。いつかは私にもこの味が分かるようになるといいのだが…しかしそれにはあと数年はかかるだろう。なにしろこの強烈な恋愛への恐怖心はしばらく私を支配するだろうから。でも結局はそのくらい、素晴らしい映画だった。 [DVD(邦画)] 8点(2009-11-06 22:54:57)(良:1票) |
4. ジャージの二人
「サイドカーに犬」も本作も、原作は未読。ただ同じ原作者というのがわかると納得した。どちらもストーリーはとりとめもなく、しばらく経つと思い出せない感じ。ただ、作品として「良かったなあ」という印象だけは結構残る。この作品、私は父子水入らずで過ごすシーン(ジャージの二人)が好きで、妻や娘がいる状態(ジャージの三人)は何となく気分がざわついた。そのあたりはジャージの仲間はずれエピソードで意図されているのかな。やっぱりいい年の男二人、避暑地のぼろい家でのんびり過ごすというむさくるしさが味なので。本業・ロッカーの鮎川氏は格好いいけどどことなくとぼけていて、プロの役者じゃないからこそ出せるであろうぎこちなさが、作品における父親像に絶妙にマッチしていた。堺雅人は言うまでもなし。ジャージ着ててもハンサムな男たちは可笑しくて、でもやっぱり素敵。 [DVD(邦画)] 8点(2009-07-10 21:33:14)(良:2票) |
5. JUNO/ジュノ
《ネタバレ》 映画としては楽しめた。ジュノのファッションなど可愛らしく、ジュノと同年代くらいの女の子は好みそう。ただなんというか…「クール」かどうかが判断基準だという女の子が、十代半ばでの妊娠というイレギュラーを結局は「クール」の一言で片付けてしまっていそうな点がいただけない。倫理観がどうのとかいうお堅い理論を持ち出す以前に、ただもうなんとなく受け付けない。「個性的」というのは褒め言葉なんだろうかというのが大いに疑問だった。似たようなテーマでも「14歳の母」のほうは、主人公がどこにでもいるような女の子で、だからこそもっと悩んでいたし、差別とも戦っていたし、そのあたり、日本人の私からすると共感できた(確かに14と16じゃ大違いではあるけど、もしジュノが14歳だったら尚のこと「私ってばクール!」に拍車がかかりそうな…)。あとは余談ながら…「ハード・キャンディ」のときから思っていたのだけれども、エレン・ペイジがどうも大竹しのぶに見えて仕方ない。いい女優さんだと思うけど、年齢設定からしてもうちょっとあどけなさが残る女の子はいなかったのかな?? [DVD(字幕)] 6点(2009-06-12 21:31:20) |
6. ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲
《ネタバレ》 大爆笑。「モール・ラッツ」で描かれた伏線の回収もなされて尚Good!個人的には「ク○ット」関係のネタがツボ(下品で失礼)。ジェイとボブは役者同士も長年の友人とあって、息もぴったり。制作に参加した人のひたすら楽しんでます感が伝わってきて、私も踊りだしたくなった。 [ビデオ(字幕)] 8点(2009-05-18 00:32:44) |
7. 重力ピエロ
《ネタバレ》 映像化不可能と謳われていたらしい原作のほうを、本作の鑑賞後にぱらぱらと読んでみた。小説でも漫画でも実写化によって劣化する作品が多いと個人的には思うのだが、この作品に関しては映画版のほうが断然良い。原作で随所に挿入される文化的な薀蓄が私には少し煩かったのだが、映画では大幅にカットされていて、かなりさっぱりまとまっている。森淳一の作品はこれまで「TOYD」しか観たことはなかったが、この冷たさを含んだ透明感は持ち味なんだろうなあ。そして、本作のいちばんの見所はキャスティング。こんなにそっくりな子役を使った回想シーンは今まで見たことがない。加えて、泉水も春もどちらもそれぞれの親に似ていることがびっくり。起用する役者のチョイスによってこんなにリアリティーを醸し出す作品はちょっと珍しい。 [試写会(邦画)] 8点(2009-05-14 14:38:36)(良:2票) |