1. ジョン・ウィック:コンセクエンス
セルジオ・レオーネやジョン・ウー、ブルース・リーや座頭市、そういうのが好きなのはわかります。憧れのあの映画の雰囲気を再現したい、でもそれって結局映画を作ってるというより映画ごっこをやってるだけじゃないでしょうか。まあ映画ごっこでもいいんですよ、深く考えずに楽しめるエンタメなら。ローグ・ワンに続いて盲目のドニー・イェンはかっこいいです、ハマり役です、あのチャイムが鳴る仕掛けとか最高です。でもただのエンタメにしてはなんかモヤモヤする後味の悪い終わり方じゃないですかね。最近のハリウッド映画の傾向としてやたら上映時間が長いというのがありますが、それだけならまだいいんですよ。しかし一本の作品の中でまともにオチを付けずに続編へ引っ張るような終わり方をする作品が多すぎませんかね。しかも本作って一応シリーズ完結作のはずですよね?上映時間が長いならストーリーを語るだけの時間が十分あるはずなのにこれは怠慢じゃないでしょうか。悪い意味で映画じゃなくてテレビドラマの延長みたいな感覚で作ってるんでしょうかね。そりゃ倍速視聴も増えますよ。日本映画界は20年ぐらい前からそんな感じですがハリウッドまでそんなんになっちゃうのは勘弁ですよ。 [映画館(字幕)] 4点(2023-09-28 23:16:06) |
2. 静かなる侵蝕
《ネタバレ》 冒頭の昆虫や眼球の大写しが不気味な雰囲気を煽りSF映画としてのつかみはバッチリなのですが、残念ながら本編はSFではなくこのオープニングから期待させられるような展開は全くありません。エイリアンと戦いもせずに子供たちとのロードムービーのような場面が続くのでなんとなく察せるのですが、エイリアン関係は全て病んだ父親の虚言という設定です。それならそれで家族を守るために戦う父親像への批判がテーマかと思っていたら、最後は結局親子愛に着地しちゃう陳腐な展開です。スティーブン・スピルバーグ監督の宇宙戦争を思い出させるところもありますが、あちらはなんだかんだ言ってもSFスペクタクルの醍醐味は味わえましたし家族観もずっと厳しく冷めたものでした。主要キャストはインド・パキスタン系の俳優が占めているようですが、物語は白人の退役軍人を想定して書かれているかのようでそこも違和感があります。大きく見えていた父親の背中が小さくなっていくのは王道の作劇とも言えますが、映画自体の期待外れでがっかりする印象と悪い意味でダブって見えます。ただシナリオはいまいちでもカメラマンは優秀で画は本当に綺麗です。撮影の素晴らしさのおかげで最後まで付き合う気にはなれました。 [インターネット(字幕)] 3点(2023-08-29 23:19:27) |
3. 白い牛のバラッド
いま世界で最も人間を厳しく描くことができているのはイラン映画でしょう。経済的にも言論的にも自由度は高くないはずなのに伝統文化と現代社会の問題を巧みに絡み合わせこれだけドラマチックな物語を作れるのは驚異的です。もっともそれはイランの外側から見た場合であって内側では意外と活発に映画産業と言論が育っていることが反映されているかもしれません。劇中でも子どもが映画館に行きたがる場面があり、それはある程度イランのポジティブな現状を反映していると思われます。台詞と音楽は最低限まで切り詰められ、絵画的で象徴的なショットが何度も挿入されます。しかし必ずしも難解な内容ではなく、死刑制度が死刑囚とその親族だけではなく死刑を実行した側の人間にも傷を与えていることを両者の視点から丁寧に描いています。 [インターネット(字幕)] 8点(2023-07-13 23:08:48) |
4. 65 シックスティ・ファイブ
序盤からスケールの大きなロングショットが見られCGや美術も結構クオリティが高いと期待できますが、中盤暗い閉所の場面が続きこれはやっぱりそこまで予算に余裕はなかったんだなとがっかりというか納得しちゃいます。ただ王道のティラノサウルスとの戦いもちゃんとありますし、娘の記録映像や熱湯が噴き出す間欠泉といった序盤の伏線はちゃんとクライマックスで活かされてますので大きな期待をしなければ十分楽しめる展開です。しかしあの四つ足恐竜はなんでしょうか?少なくとも実在する肉食恐竜はすべて二本足ですのでこの映画のためにデザインされたオリジナルの生物であるのは間違いないようです。考えられるのは70年代頃までの恐竜映画で使われた手法として、本物のトカゲやワニを巨大な恐竜に見立てて撮影してたことへのオマージュじゃないかと。このスタッフですのでちょっとホラー風味ではありますが、全体的に70年代以前の低予算の冒険映画やSF映画みたいな雰囲気ですのでそういうのが好きな方へはおススメです。今時珍しく底なし沼まで見られます(笑)。恐竜の滅亡から現代文明までの諸行無常を簡潔に見せるエンドクレジットも良いです。下手に感傷的にしないこの終わり方だけで結構評価が上がりました。まあ半年もしたらほとんど内容を忘れてそうではありますが、そこまで悪くない佳作だと思います。 [映画館(字幕)] 6点(2023-06-01 23:27:59)(良:1票) |
5. シン・仮面ライダー
もちろん駄作なんですが、庵野秀明の作品の中では最もまともに鑑賞する価値のある作品かもしれません(実写アニメ両方含めて)。今までと異なりこの映画は何より役者の演技をちゃんと撮ろうとしています。何度も繰り返される仮面の着脱、無機物でしかない仮面にどう表情を宿らせるか、間違いなくこれは実写映画でしかできない試みです。フォトジェニック以上のものではないですが撮影も今までで一番良かったです。この映画の不幸は擁護する意見でさえ過去の作品へのオマージュの側面ばかり取り上げられるところです。自身がそのように読み解かれるよう自己演出を続けてきた庵野秀明の自業自得ではありますが、鷲巣詩郎の音楽やいつもの明朝体(シン・ゴジラで一番ゲンナリした要素です)が封印されているのは今までとは違うものを作ろうという精神の現れです。エヴァンゲリオンではメタフィクションに逃げ、シン・ゴジラは震災を描くように見せかけて帰ってきたウルトラマンのプロットを流用したに過ぎず、シン・ウルトラマンに至ってはノスタルジー以上の価値を見出せませんでした。今回庵野秀明はかつてないほど真剣に現代的なテーマを扱ったストーリーを語ろうとしているように見えます。最大多数の最大幸福ではなく最も絶望している者の救済、疫病による人口削減、人にも自然にも負担をかけない奴隷制度の復活、エネルギーの奪い合い、絶望を多幸感で上書きする洗脳。それでもショッカー側のキャラクターはワンパターンの快楽殺人鬼ばかりだったり、最終的には肉親の不幸に収束するスケールの狭さもあってまともにテーマを処理できてはいません。だから最終的には駄作と判断せざるを得ないのですが、この映画って言わばまともにストーリーが完結しているエヴァンゲリオンじゃないですか。そう考えるとシン・エヴァンゲリオンなどよりはるかに凄い達成だと思います。 [映画館(邦画)] 5点(2023-03-30 20:47:39)(良:2票) |
6. シャザム!~神々の怒り~
ラドンなのにゴジラみたいに青い炎を吐くとはこれいかに。それはともかく、安定して面白い娯楽作品としては上出来の作品です。既存のDC作品のパロディ要素を盛り込んでも本体が迷走気味なのがこのシリーズの不幸です。まあ他の作品を見なくても単体作品として十分楽しめるのがDCのいいところです。それでもやっぱりDCが生んだ最高のスターは姉さんですね〜。彼女が出るだけで映画が救われます。 [映画館(吹替)] 6点(2023-03-28 23:54:03) |