2. 千と千尋の神隠し
ストーリーは、小汚い実社会とのリンクをベースにしてる。現代の子供の礼儀の無さ(車での乗車姿勢、挨拶、お礼、ドアのノック)、仕事をしなきゃ生きられないという人生の役割、それと対比させる形で見せる、大人の見苦しい姿(食い意地、物欲、乱痴気騒ぎなど)、また湯婆婆のセリフに登場する「そんなヒョロヒョロに何ができる」といった身体的理由による就職差別や新入りに一番汚い仕事を押し付ける貧弱な精神性の群衆による職場いじめなどは、暗に見せる現実的な社会問題への風刺、その他、ナウシカ時代から引きずる環境、自然問題も今回も登場する。結局、これまでのジブリの手法と何ら変わらないし、予定調和の強いラストもこれまた同じ。だが、そういった使い古されたメッセージを展開の流れにおいて、訴える場面のつなぎ目を優秀な脚本で、ごまかしながら完成させているので、ぎこちなさは皆無。単純にストーリーを追える。初期のジブリと違い、ここ最近は、展開において複雑化の傾向があるが、この作品は、奇妙な世界観ながら、まったく肩の凝らない映画に仕上がっている渾身の快作といえよう。 8点(2003-05-09 20:06:35) |