1. チョコレートドーナツ
《ネタバレ》 親を選べない子どもにとって、幸せとは?親とは?法律とは? ベン・アフレック監督作「ゴーン・ベイビー・ゴーン」でも触れられたテーマ。 シリアスで重い内容を含んだ切ないドラマです。 しかし本作の素晴らしいところは、確かに話の内容は重いのですが、主役のドラッグクイーン、ルディのキャラクターが抜群にいい。 明るく人生を生きていける強さがある。彼のユーモアのある言動も巧く控え目に挿入されています。 その歌声、歌の歌詞と共にルディの生きザマに元気や勇気を貰ったような気もする。 冒頭でいきなりイケメンのエリート弁護士のカレ(ポール)をゲットするのも、そんなルディの人徳でもあるのでしょう。 ルディ、ポール、マルコ少年。3人の日々を追う手持ちカメラの不安定な映像は、3人の本当に幸せな日々が長くは続かないことを感じさせます。 しかし、ルディがマルコに添い寝して聞かせる「魔法使いの少年マルコのハッピーエンドのストーリー」。 これがあっただけに、最後はうまくハッピーエンドに持って行ってくれることを期待したのですが・・・。 後半の法廷劇の中でのルディとポールが熱く語る素晴らしい台詞の数々も、 こういう問題を何とか子ども本位で考えられないものなのかと問題提起を投げかけています。 いい映画だろうなと期待しての鑑賞でしたが、期待以上のいい映画でした。 ルディ、ポール、マルコの家族の姿と、そんな彼らを描く優しい作品の目線。 後半から終盤にかけては、館内の至る所から鼻をすする声が聞こえていました。 [映画館(字幕)] 9点(2014-07-25 17:52:50) |
2. 小さいおうち
《ネタバレ》 序盤から展開される、丘の上に建つ赤い屋根が印象的な“小さなおうち”の小さな幸せの時。そんな空気が家の主人の会社の部下である吉岡が演じる板倉の登場から少しずつ変化が生じていきます。 2人の主役である松たか子と黒木華。貫録すら感じさせる松たか子。彼女が様々なシーンで醸し出す色気。黒木華が醸し出す透明感。2人とも見事にそれぞれの昭和初期の女性を演じています。 板倉への想いを抑えきれない時子。その一方で、出征を控えた板倉のもとへ時子を行かせず、時子から託された板倉への手紙を渡さなかったタキの想いは果たしてどうだったのでしょうか。その手紙を捨てることが出来ず、後悔の念を抱え戦後ずっと独身を通してきた、倍賞さんが演じる平成の今を生きるタキが泣き崩れるシーンが印象的です。 暮らす人々の様々な思いが詰まった家も、そこで暮らす人の命も一瞬で奪っていく戦争。声高に反戦を前面に出さないものの、山田監督の思いはここにあったのではないでしょうか。それはラストのある老人の、戦時下を生きた人々の思いを代弁するかのような台詞からも感じられました。 [映画館(邦画)] 8点(2014-02-14 17:43:23) |
3. 朝食、昼食、そして夕食
《ネタバレ》 「星の旅人たち」や「サンジャックへの道」でも描かれた巡礼の旅の目的の地であるサンチアゴ・デ・コンポステラが作品の舞台。ただ、作品の多くの時間が食事が絡むシーンなので、あまり巡礼の町を感じることはありません。 邦題の通り、朝昼夜、3回の食事をめぐり様々な人物が登場する群像劇です。ですがグルメ映画のように料理を見せる映画ではなく、料理自体にはほとんどスポットが当てられていません。あくまでも食事の場に会する人々のドラマが軸になっています。 夕食でそれぞれのドラマが完結していく流れですが、その多くが悲しさや別れを感じさせるものになっているのが寂しくもありますが、朝から晩までラウラという彼女のために料理を作り続けてずっと彼女が来るのを待っていたある男。彼女は一向にやって来ない。しかしラストでその男の家のチャイムが鳴る。このラストはちょっと嬉しかったですね。 [DVD(字幕)] 6点(2014-04-10 23:02:09) |
4. 超巨大ハリケーン カテゴリー5<TVM>
最強クラスのハリケーンが町を襲うという作品にしては、ハリケーン描写はかなり限られていて、 TV用の作品で予算的に限られていたのかもしれませんが、パニックものとしてはショボいです。 それよりもハリケーンで危険に晒された家族のドラマという色合いが濃く、 2005年のハリケーン・カトリーナで身内を失った、家族それぞれの心にあるトラウマという作品の根底にあるものは良かった。 しかし家族の会話やもめ事の時間が長く、家族が延々と電話で話す時間帯が流れを止めてしまっていたり 避難の途中で助けを求めて入った家で、じいちゃんが銃で撃たれてしまうくだりは必要だったのかという部分もあります。 大好きなバート・レイノルズが出ているので見ましたが、最晩年の作品だけにさすがに年を取っていた。 それでも、反抗期の孫に向かって「こんな時にこそ、男の真価が問われるんだ。」という台詞は タフで男臭い役を数多く演じてきた彼らしい一言でありました。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2020-04-30 18:33:39) |
5. チェイサー(2017)
《ネタバレ》 息子を誘拐されたシングルマザー役のハル・ベリー。母は強しというところを見せつける。 ほとんど警察の世話にならず、ハル・ベリー1人で事件を解決してしまうアクションサスペンス。 尺も短く途中まではテンポも良く、ずっと出ずっぱりのハル・ベリーを立ち止まらせません。 中盤以降、カーチェイスがひと段落して以降はトーンダウン。 警察は何をしている?というのもこの手の映画のお約束か。 誘拐犯の目的がさっぱり分からなかったのですが、 ラストで聞こえてくるラジオが国際的な誘拐組織を摘発と伝えている。 国際的な組織にしては犯人のおっさんも、おばちゃんもショボすぎるし 最後に出てくる共犯者もマヌケにもほどがある。 ストーリー的にも、作品的にも孤軍奮闘のハル・ベリーの頑張りが無ければ、 もっときつい作品になっていたと思います。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2020-05-30 20:30:22)(良:1票) |