1. 天使と悪魔
《ネタバレ》 ガリレオの時代から、科学と宗教の深刻な対立はあった。時として科学の発展は、ガリレオの時代にも神の領域を侵すものとされ、神への冒涜と弾圧されることも。教会から弾圧された歴史を持つイミナリティの復讐劇。――と見せかけた陰謀が顕わにされるラストのどんでん返し。 でも、最初からユアン・マクレガーに怪しい臭いがプンプンしていたので、意外性もなくやっぱりかとの印象。 ストーリーにはどうにも都合の良すぎるツッコミどころがチラホラ。殺し屋が犯行現場を見られながらラングドンとヴィクトリアを見逃してやったのはありえない。また、カメルレンゴをすぐに捕らえずに焼身自殺する猶予を不自然に与えてしまったのも、教皇選出の煙の演出のためというあざとさが見えてしまう。 スケール感と雰囲気は重厚で壮大だけれど、中身がそれに付いていっていないのが残念。 キリスト教に疎いためにこうしたキリスト教絡みの映画は深い意味が汲み取れずいつもピンとこない。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2019-12-27 21:56:44) |
2. 手紙(2006)
《ネタバレ》 犯罪者の弟に対する差別があまりにも露骨でリアリティを損なっている。 もっと特異な犯罪の家族だったとか、家族にも大きな責任があるとかならわからないでもないけど、そういうわけでもないし。 差別はあっても現実には潜在化されるものだが、それをドラマティックにわかりやすくデフォルメしたのが逆効果に感じられる。 それ以外にもいろいろ演出があざとすぎて鼻につく。 また、漫才をお笑いの素人が演じても妙な居心地の悪さを感じるだけ。 主人公を支える由美子のけなげさはすごいんだけど、演じるのがあの沢尻というのが何とも…。 どうしてもアレのイメージが邪魔してしまうし、下手な関西弁も引っかかる。 罪を犯した人間が、どれだけの人を不幸に巻き込んだかを実感するなら、それが罪を償うことにもつながる。 この兄はその点では救いがある。 でも、実際はそんなことができない人間だから悪事に手を染めた犯罪者のほうがはるかに多いのだろう。 凶悪犯罪を犯しながら言葉だけの反省で出所しても賠償金を踏み倒して自分は幸せな家庭を築いているなんてことを聞くと、不幸のどん底に落とされた人達の無念を思ってむなしくなる。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2018-11-30 22:08:24)(良:1票) |
3. ディパーテッド
《ネタバレ》 韓国映画「インファナルフェア」のリメイクだが、オリジナルと比べると落ちる。だが、登場人物がもったいないくらいにあっさり殺されていくので目は離せない。時代劇の大仰でもったいぶった殺され方とは対極。頭にズドンと一発で仕留めるところがスコセッシ流なのかクールでリアル。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2015-11-08 23:23:36)(笑:1票) |
4. デッド・インパクト 処刑捜査
《ネタバレ》 爆弾魔のテロリストとの対決は『24』を思わせるような展開と雰囲気。 10人の命か妻の命かの選択を強いられた冒頭は、迫る時間と主人公の刑事の葛藤にグイっと話に引き込まれる。 犯人のライオンは、常に先を読む頭脳に加え、爆弾のスペシャリスト&変装の達人。 とても強そうに見えない中年のハゲなのに、刑事との格闘でも互角に渡り合う。 マンガのようなスーパーヒールで、こいつ一人に捜査は振り回される。 ラストは心中覚悟の防弾チョッキが、たまたまラッキーに転んだけれど、FBI側がかなりの無能。 イザベルが犯人の偽情報に吊られて一人でノコノコ出かけて人質にされたり。 FBIのビルにあれだけ大量の爆薬が仕掛けられるっていうのも、そんなに警備がザルなのかと。 それに、コルデロ議員暗殺が犯人の真の目的であれば、それまでの手段が回りくどすぎる。 冷静に振り返ると他にもご都合主義のツッコミどころは多いが、『24』と同じでスピーディーな展開と勢いに圧倒されて疑問は置き去りにされ、強引にストーリーの流れにもっていかれてしまう。 なので、退屈はしないし、エンターテイメント性はある。 [地上波(吹替)] 5点(2015-01-17 01:52:12) |
5. ディア・ドクター
《ネタバレ》 伊野を偽者と知っていながら告発しなかった、あるいは疑問を持ちながらも無意識に真相から目をそらせた者がいた。 それはなぜか? 偽医者が村を支えていたという事実。 本物だと信じたかった、思い込みたかったのだろう。 看護師、製薬会社の営業マン、研修医。 そして、村人も自分たちの望む医師像を伊野に重ねていた。 伊野もそれに応えて御輿に乗って神様を演じていたといえる。 伊野は患者や家族の本心に寄り添うことができる。 死にかけた老人の救命処置をしようとした研修医に、このまま逝かせてあげたいと望んでいる家族は困惑する。 伊野はそうした本音を察しながら、老人の死を悲しむ小芝居に付き合ってあげる。 嘘の世界をうまく演じることで、誰も損をせずに幸せになることもある。 ただ、偽者では治療にも限界がある。 伊野もそれを実感して重圧を感じ、途中で抜け出したくなることが何度もあったのではないか。 緊急性気胸の施術では経験豊富な看護師の協力で何とかしのいだものの、一歩間違えば患者を死なせていた。 僻地の診療所なので今まで問題が表面化しなかったが、専門家としての知識や技術が足りないために患者を死なせるリスクは常につきまとう。 それでも、伊野は危ういながらも成立している擬似世界を壊すことができず、土壇場まで居残るはめになったのだろう。 かづ子の娘りつ子は、すぐに訴えることはしなかった。 それよりも、助からないであろう母とどう向き合えばいいかを悩み、伊野なら母にどうしてあげただろうかと医師としても知りたいと思っている。 そこには伊野をある意味認めるような心情が汲み取れる。 ラスト、素っ気ない病院のベッドで横たわるかづ子の前に、偽給仕として現われる伊野。 二人の交わす笑顔に妙に感動してしまい、不覚にも涙が出そうになった。 伊野は本気でかづ子と向き合っていた。 医師免許を持つ医者でもなかなか成しえないことをしたのだ。 鶴瓶と八千草薫がたまらなく良い。 その二人を含め絶妙のキャスティングが作品の完成度を高めた。 [DVD(邦画)] 8点(2014-08-10 12:19:37)(良:2票) |
6. 天使のくれた時間
《ネタバレ》 コンビニでトラブっていた黒人と関わった次の朝、まるっきり人生が変わっていた。 人生の分岐点で別な決断をしていたらとふと考えることが誰にだってある。 愛する家族と過ごすごく平凡な生活が、一番幸せな人生。 よくあるテーマなのでストーリーの流れも予測がついて意外性はないけれど、普遍的なテーマで感情移入しやすいのと役者がいいので引き込まれる。 ニコラス・ケイジ、ティア・レオーニ、それに子役もすばらしい。 こんなチャーミングな奥さんと愛らしい子供がいるなら、大抵のことなら我慢できそうで、価値観が変わっていく男にも共感できる。 ラストの空港でのシーンは感動的で、コーヒーを飲みながらの会話が想像できて楽しい。 はしゃいだりふざけたり、お茶目でセクシーなティア・レオーニに魅了されて+2点。 コーヒーを飲みながら会話が弾むラストが絶妙。 突然元彼が現れてヨリを戻そうとしても、成功しているキャリアウーマンなら簡単に翻意するわけがない。 その後やっぱりそれぞれの道を歩むのが一番現実的だけれど、この映画はファンタジーなのだからもしかしたらと夢を持たせるラストがふさわしい。 「素晴らしき哉、人生!」を彷彿させるような後味の良い映画。 [DVD(吹替)] 9点(2013-06-29 23:43:43)(良:1票) |
7. 天使の卵(2006)
《ネタバレ》 古い少女マンガのように偶然が重なる出会いと人間関係。 電車で遭った一目ぼれの相手が、彼女の姉で、父親の主治医って、もう笑うしかない。 内容も陳腐で薄っぺらく、歯の浮くようなセリフやシーンが散見されて恥ずかしくなってくる。 演出も古臭くて間も悪いし、これならいっそのことコントにしてしまったほうが使えそう。 市原隼人演じる主人公もその無神経でキザなキャラが鼻につく。 あの沢尻エリカが健気ないい子に見えるとは、女優ってのはやっぱりプロだ。 [DVD(邦画)] 1点(2013-06-18 23:55:26) |
8. 天国までの百マイル
《ネタバレ》 八千草薫は優しい母親を演じさせたらこれ以上ないくらいにハマる。 ただストーリーや演出の泣かせよう泣かせようとするあざとさが鼻につく。 ベタでわかりやすいのは決して嫌いではないのだが露骨すぎ。 原作の浅田次郎の作風がそうなのか、それはタイトルから既に滲み出ている。 マリは原作ではデブでブスなのに、大竹しのぶは可愛いくて魅力的で、捨てられてばかりのホステス役には少し合わないかも。 百マイルっていえばすごい距離のようだけど、馴染みのあるキロでいえば160キロ。 車で運ぶのがそんなにたいした距離や苦労なのか、あまり伝わってこない。 母子の愛情という普遍的で感情移入しやすいテーマだし、兄弟との軋轢など誰でも身に覚えがありそうなシーンが出てくる。 なので、作品に物足りない点があっても、ある程度の共感を得ることはできる。 ラストはマリの別れの置手紙で、これで終わり?って感じのあっけなさ。 [ビデオ(邦画)] 4点(2013-06-10 00:24:38)(良:1票) |
9. でらしね
《ネタバレ》 デラシネとはフランス語で根なし草の意味。 主人公のホームレスは、まさにデラシネだ。 ホームレスが500円で売っている画に惚れこんで、個展を持ちかける画廊の女。 ある事件がきっかけで人物を描かなくなっていた男が、女をモデルにヌード画に挑戦。 画を描かれている女の顔が、性交しているかのように恍惚となっていく。 なんだかお約束通りの展開に、ちょっと興ざめ。 黒沢あすかはオールヌードのモデルで頑張っていたが、『六月の蛇』を観た後だったせいかインパクトに欠けた。 絵にあまり関心がないと、なかなかストーリーに入っていけない。 奥田瑛二の演じる女たらしのだらしない男は、どうも相性が悪くて好きになれない。 ラストはスパッとした終わり方で、あっけなかった。 [DVD(邦画)] 3点(2013-01-26 21:31:48) |
10. 転々
《ネタバレ》 全編に散りばめられた洒落っ気のある小ネタが見どころ。 臭いつむじ、岸辺一徳、時計屋のカンフーなど、ストーリーの本筋とはあまり関係ない小ネタも多いが面白い。 あるあるネタも多く、思わずニヤッとさせられる。 登場するのはクセのある人物が多くてユニーク。 擬似家族の体験でカレーを食べながら泣く文哉。 息子を小さい時に亡くしたらしい福原と、親に捨てられた文哉が、本当の父子のように見えて微笑ましい。 福原と文哉の散歩は、福原が妻を殺した後というような緊迫感や暗さはない。 終始ゆるくて遊び心を感じる映画で、独特の雰囲気に包まれている。 随所に感じる会話のセンスはすばらしいが、ストーリーの起伏で巻き込まれる感じはない。 まさに散歩と同じようなゆるさと遊び心を持つ映画なので、それが性に合わないとダレてしまう。 散歩するようなつもりで見ると、ちょうど波長が合う映画だろう。 逆にいえば、散歩したくないときに無理やり散歩させられている気分になるかもしれない。 [映画館(邦画)] 4点(2013-01-16 22:00:57) |
11. デビルマン
テレビの深夜放映でたまたま拝見。 永井豪の原作は大好きで、漫画を何度か読み返しているが、その名作をよくもここまで台無しにしたものだ。 学芸会のような棒読み演技、センスの欠片もない演出、退屈でデタラメなストーリーと、すべてが酷い。 CGもお金はかかっているのだろうが中途半端で、これならアニメのほうがよっぽどいい。 つまらないテレビ放映は、普通なら途中で見るのをやめるのだが、あまりにも酷い作品だったので、最後まで見届けてしまった。 作り手は原作をどう読んだのだろうか? 原作を愛する人なら、間違いなく怒りを覚える作品。 これを映画館でお金を払って観た人に心から同情する。 [地上波(邦画)] 0点(2012-12-04 16:30:10) |