1. ナバロンの要塞
《ネタバレ》 小学生だった80年代中頃、父が持っていた『映画音楽大全集』というレコードのBOXセットに収録されていた、ミッチ・ミラー合唱団が朗々と歌う主題歌に聞き惚れ、解説を読んで胸を躍らせていた映画。それから間もなくして遂に初見する時、深夜放送で観るために、昼寝をして備えたのを覚えています。僕の映画好きを決めた作品の1つです。ラストで、真打ちの大砲がようやく登場。それまで、冒頭の説明で言われていた「想像を絶する破壊力と正確さを誇って」いた大砲が、初めてイギリスの駆逐艦を外し、大爆破の末に、夜のエーゲ海の藻屑と消えるシーンで、子供心に体が震えたのが忘れられません。 今になって観返してみると、「爆弾屋」ミラー伍長を飄々と演じるデヴィッド・ニーヴンが最高です。不平混じりのジョークを連発しながら、ここ一番でマロリー大尉に猛然と食って掛かるのが印象的でした。任務遂行の為に、深手を負って歩けなくなったフランクリン少佐に、偽情報を流してドイツ軍基地に (負傷兵として治療を受けさせる為) 残したマロリーを、「何をしたか解ってますか??あなたは、任務の為に重傷を負った人間を利用したんだ!」と糾弾。苦渋の選択をしたマロリーは、しばしの沈黙の後「考えたが、他に方法がなかった…」と苦悶の表情。このシーン、戦争について思わず考えさせられます。 さらに、爆薬を不能にされたミラーが、冷静に推理して、ある意外な裏切り者を暴き出すシーン。ここでもマロリーに食いつきます。「任務遂行の為には、ここで裏切り者を殺さなくてはいけないんだ!任務遂行に一番熱心なのは、あなただろう?!心を鬼にして目を閉じて、イギリスの為を思って一思いに引き金を引いてみろ!君は指揮官じゃないか!」と大啖呵を切ったものの、急に萎んだように不安な表情で立ち尽くすミラー。長い沈黙の後、意を決して立ち上がり、「心を鬼にして」裏切り者に銃口を向けるマロリー。肩越しにそれを察知し、思わず引き止めに駆け出すミラー。その瞬間、消音銃の鈍い銃声!…ゆっくりと崩れ去る裏切り者。その銃を撃ったのは、裏切り者の親友であった…。このシーン、まるで舞台劇の緊迫した名演を観るようで、涙が溢れました。他にも、嵐の中で荒波に揉まれて進む漁船で、何故かみんなにコーヒーを勧めて回ったり、ラスト直前の「ネズミ花火」でドイツ軍兵士の度肝を抜いたり…。デヴィッド・ニーヴンは最高でした。 [地上波(吹替)] 10点(2004-03-02 12:00:24)(良:2票) |