1. 野良犬(1949)
《ネタバレ》 この時期の黒澤の現代を舞台にした映画って、どれもギラギラギラギラしてますよね。本来人間が持っていたはずの、いまにも暴発しそうな「生」のエネルギー。タイトル「野良犬」の息使いにも似た獰猛な危険さ。戦後復興時の街の情景とも相まって、なにやら画面からもやもやと、エネルギーの飛沫が立ち昇ってくるようなイメージ。クライマックス犯人逮捕シーンでの草むらでの俯瞰慟哭シーンと、どこぞのお屋敷から流れてくる穏やかなピアノの音色との対比が忘れ難い鮮烈な印象を残します。今のニッポン人は、この爆発寸前のエネルギーを昭和のいつかどこかに置き忘れてしまったんでしょうか? [ビデオ(邦画)] 8点(2009-11-30 15:05:45) |
2. ノーバディーズ・フール
「人生ってなかなか捨てたもんじゃないぜ」っていうメッセージを、嫌味なく素直に受け取る事が出来る、有りそうでなかなか無い心温まる秀作。いまは亡きポール・ニューマンとジェシカ・タンディ、ニ名優がふとした拍子にみせるチャーミングな笑顔を見ちゃえばなおさら。脇に徹したB・ウィルスも良い味。「雪に閉ざされたスモールタウン」っていう舞台装置もある意味ひとつの重要な役割を果たしています。おそらくこれは女性より、ある程度の年齢に達した男性の方がより共感出来る内容のはず。「クレイマー・クレイマー」のベントン監督、ここでも子役の使い方が巧い。ポール・ニューマン晩年の代表作として、もっともっとたくさんの人に評価してもらいたいなあ・・・。 [DVD(吹替)] 8点(2009-01-03 21:59:02)(良:3票) |
3. 信子
木下恵介監督戦後の傑作『女の園』(10点)と、まるで表裏一体合わせ鏡みたいな作品です。『女の園』では向かうところ敵なし、おっかない高慢ちきな学生寮の寮母を憎々しげに演じていた高峰三枝子、若かりし彼女がここでも女学校の寮母を演じています。ただこちらでは田舎訛りの抜けない優しい信子先生役。あまりによく似た設定での役柄のギャップに、自分は思わず笑ってしまいました。この作品から、後年『女の園』で彼女を抜擢した木下監督も、相当底意地が悪いといおうか(笑)確か生徒役の岸恵子に「もっと愛情を持って私たちに接して下さい!」と涙ながらに訴えられていたのに、ここでは逆に「生徒には愛情を持たないといけないんです!」って他の先生に強く訴えてる・・・。何十年か経って、この清く正しく美しい信子先生があの五条先生や犬神松子に変貌してしまうなんて・・・ああぁぁ女っていうのは怖い・・・。DVDジャケットの宣伝通り、これは女先生版「坊ちゃん」ですね。清水監督らしさは、レクリエーションでの野外ピクニックシーンに良く出てました。 [DVD(邦画)] 6点(2008-08-02 14:06:49)(笑:1票) |
4. ノンちゃん雲に乗る
そもそもがこれは、夏休みとかに公民館や児童会館で上映されるのに一番相応しいと思われる作品。この手の文部省推薦優良児童映画に点数を付ける事自体間違っていると思うんですが、ついつい観てしまったんで・・・。原節子、初めての母親役という事で当時それなりに話題になった作品らしいです。自分の目的も、小津映画以外の原節子がただただ観てみたかったから。それだけ。その欲求だけは一応満たされました。あの「東京物語」からまだ二年後の作品なんですね、これ。流石に彼女なりの味は出ていると思います。内容は・・・日本映画って昔っからファンタジー描写がたどたどしく下手だったんだなあ・・・っていう感想を持った程度。後年の妖艶時代しか知らない、鰐淵晴子嬢の少女時代を観られるのが一興。もはや僕のようなスレっからしの大人には特に他に語るべき事もないのが悲しい。 [DVD(邦画)] 5点(2008-05-03 14:14:20) |
5. NOEL ノエル(2004)
《ネタバレ》 このキャストの割りには少々パンチが弱い仕上がり。ロマンチックな雰囲気の醸成が若干不足してるのが何よりの不満。今年のクリスマス・イヴ日米対決は「大停電の夜に」の勝利!最近汚なづくりが続いていたベネロペが衣装をとっかえひっかえして久々に美しいのが取り柄。相変わらずスタイル抜群っす!ポール・ウォーカーって何か不思議な色の瞳をしてます、映画にも描かれてたけど女にも男にも(!)付きまとわれる理由、何となく解るぞ、うん!↑もうこのレビューではキャスト表で既にネタばれしてるので書きますが、別にロビン・ウィリアムズをノンクレジットで隠す必要もなかったと思うんだけど・・・。 [映画館(字幕)] 6点(2005-12-12 14:19:41) |
6. 野菊の如き君なりき(1955)
映画史的に観ても、いや誰が観ても多分(つーか絶対)オリジナルのこっちの作品のほうに軍配を上げると思うんですが、「へっぽこ」さん同様俺もどうしても澤井信一郎監督、松田聖子版リメイクの方に肩入れしてしまうのです。うううっ・・・。 [ビデオ(字幕)] 6点(2005-08-07 15:36:26) |
7. 野菊の墓(1981)
皮肉なモンですね、出演したご本人が自分の過去のフィルモグラフィーから抹消したいであろう映画が作品としての評価は一番高いとは・・・。しかし自分がここで褒め称えたいのはこれが監督デビュー作となった澤井信一郎監督の職人的手腕である。当時の松田聖子の凄まじい人気を考えると、どんないい加減な駄作を作ったとしても一応はヒットしたとは思うが、単なるアイドル映画に貶める事なく映画の文法をきちんと踏まえた正統派の演出は素晴しいと思います。澤井監督の今現在に至るまでのご活躍も、これを見ればうなずけます。もう亡くなってずいぶん経つけど、明治生まれの俺のばあちゃんもこれ見て泣いてました。それ以来松田聖子がテレビに出るたんびに「あの民さんがねえ・・・」とニコニコ笑って応援してましたもん。彼女がその後スキャンダル等に巻き込まれる姿を見る事無くばあちゃんは天寿をまっとうして逝きましたが、それはそれでよかったのかなあ・・・なんて考えてしまいます。(追記)澤井監督の演出術の本が出ましたよね。この作品や「Wの悲劇」等を高く評価してる自分は非常に(立ち読みですが)興味深く拝見させて頂きました。 [地上波(邦画)] 8点(2004-12-04 14:03:46)(良:5票) |