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鱗歌さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 3885
性別 男性
年齢 53歳

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【製作年 : 1970年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  男はつらいよ 寅次郎相合い傘 《ネタバレ》 
まだ全シリーズ観てないけれど、今の所一番好きなのが本作。色々な形で過去と現在がクロスする切なさと、未来は決して現在にクロスすることはない、生きることの不安。リリー松岡の再登板によって、これらがうまく描かれていると思います。さて、まず冒頭の寅さんの夢、チープ過ぎる海賊ぶりに苦笑。目が覚めると寅さんは映画館の中。出る時に、モギリのおばちゃんに(眠ってて映画観てないくせに)「面白かったよ、有難う」と声をかける。コレですよコレ! モギリのおばちゃんが映画作った訳じゃなし、それでもこの一言。笑いと感動と反省を呼び起こす場面であります。で本編。離婚したリリー松岡がとらやを訪れる、この場面からすでに、過去と現在が交わり始めます。一方寅さんは旅先にて家出オヤジ(ポリデント船越)との珍道中の真っ最中。しかしものすごーい偶然により、ラーメン屋にてリリーと寅さんは再会できちゃう。これぞ過去と現在を結びつける“運命”の力なり。舞台は二人の思い出の地、北海道。海辺で戯れる場面の3人の童心。初恋の人に会おうと決心する船越。これらすべて、過去と現在との交錯。で彼はこれで目が覚め、無事更生。寅さんとリリーはとらやに戻り今度こそいい感じ。ここで、例のメロン騒動が勃発する訳ですが。寅さんの分を切り分けるのを忘れるという失態から大ゲンカ。この場面もまた、寅さんという子供vs周りの理不尽な大人、という構図で、私にとっての過去である「子供の頃の気持ち」をチクリと刺激します。寅さんにとっては「気持ち」の問題であり、自分のことを構ってくれなかった事へ抗議しているのに、周りのオトナどもはこれを理解せず、あくまでメロンという物質的なレベルでしか捉えない。とらやの面々にわたしゃ怒りを感じたよ(とムキになってしまう自分の子供心に、苦笑もする)。ここでリリーだけが、「気持ち」の面から寅さんを咎めているんですね。で、寅さん出て行っちゃうけど、“相合傘”によって仲直り。大のオトナが相合傘でドギマギする、やっぱり中身は子供。この後、二人はもう一歩で結婚か、という事になるも、見事なまでのすれ違いで、あえなく撃沈。我々の過去も、こういうどうしようもない忸怩たる思いと湿った後悔で、死屍累々、ですわな。観ててタマラン気持ちになります。あの時ああしていれば…。シリーズのどれか一本は満点としたかったので、本作を10点とさせていただきます。
[CS・衛星(邦画)] 10点(2009-08-16 15:54:38)(良:2票)
2.  男はつらいよ フーテンの寅
シリーズ中、山田洋次以外の監督がメガホンをとった2作品のうちの一本である、第3作。やはり雰囲気も異なります。長廻しもあれば、ごく短いカットの応酬もあり、特に江戸川べりでのさくらとの別れの場面の抒情性は、長いシリーズ中でもかなり異色のシーンですね。で、立ち去る寅さんは、駅に向う通勤者たちとは逆方向に歩いて行くのだけれど、一体どこに向ってるの?? 後半の舞台は湯の山温泉。ここでもまた、寅さんは例のごとくテキトーでいい加減なのだけれど、それでも、最後には実にいいトコロを見せる。そして見事に仁義を切って見せ、根なし草として生きる男の意地と孤独を、我々に見せつける。単なる失恋コメディに収まらず、寅さんの生き様をしっかり描いてみせた点、監督を交代しただけの価値ある異色かつ出色の作品となりました。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2013-12-31 11:55:58)(良:2票)
3.  オール・ザット・ジャズ
ある振り付け師の、生き様と死に様。当然それは、我々一般の人間の目に触れられることのない、ウラ話的な側面が目立つことになり、いわば、「ダンスミュージカルとその解体」、ということになるのだけれども、ここではついには、主人公の心臓手術という、いわば「人間の解体」にまで描写が到ることになる。この、人間という存在の脆さ、しかしその脆い存在が織り成す、あまりにも強烈な躍動感と存在感。この映画では、天使との交流など、しばしば幻想的な領域に足を踏み入れるのだけれども、最後まで、物語の具象性は失われることなく、登場人物たちはニオイ立つような存在感を発揮しつづける。この「赤裸々さ」こそが、ショウのもたらす感動、なのだろう。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2007-04-15 15:42:30)
4.  男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け
冒頭はスプラッタ調(山田洋次作品で唯一?)、後半は社会派サスペンス風味も加わる本作。太地喜和子扮する芸者・ぼたんの、何とかわいらしいこと。そう、この作品、登場人物すべてが魅力にあふれている。謎のジジイ・宇野重吉のトボけた味わいから、チョイ役の古本屋オヤジ・大滝秀治にいたるまで、実に忘れがたい人々。タコ社長も意外な奮闘な奮闘を見せ、思わず惚れ直すこと請け合い。「ジジイのエピソード」と「ぼたんのエピソード」が絶妙に絡み合い、一方、合間に挟まるとらやでの喧嘩、これがまたいつもに増してクダラナイ原因から始まってるのが可笑しい。ややもすると重くなりそうな題材を、意外なハッピーエンドで明るくまとめた、これはまさに好編と呼ぶに相応しい作品でしょう(どうせ寅さん、失恋するんだろうけど、映画の中でそれを描かないのもまたよし)。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2005-11-13 21:45:35)(良:2票)
5.  大いなる勇者
レッドフォード演じる主人公、(歌詞を信じれば)「抱えてきた悲しみをすべて忘れるために」山へと入って行く。山でいきなり出会ったのは炭素冷凍されたハン・ソロ船長。違うっての。その後も次々に奇妙な人とめぐり合う彼。そして奇妙な共同生活。やがて山での生活は残酷な一面をのぞかせる・・・。厳しい自然の中に自由はあるのか。結局そこに待ち受けているのも、厳しい「運命」ではないのか。しかし男は運命と戦い続ける。その寂寥に閉ざされた姿はあまりにも孤独だ。しかし我々は、その姿に静かなる憧れを抱かずにはいられないのである。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2005-08-25 22:13:11)(笑:1票)
6.  男の出発 《ネタバレ》 
Associate Producerとしてクレジットに名を連ねているのが、ジェリー・ブラッカイマー。かつてはディック・リチャーズ監督とともに、こういうシブい作品に関わってた訳ですな。 カウボーイに憧れる少年が、牛追いの仲間入りをして旅に出る、というオハナシですが、この牛追いのオッサン連中が見事なまでにアクが強く、キタナくって、「この少年もやがてはこういうオッサンに成長するのか」とか「このオッサンたちもかつてはこんな初々しい少年だったのか」とか、そういうことはまったく想像できない(笑)。もう、別の生き物です。 という西部劇で、72年の作品ということもあり、流血の描写や激しい銃撃戦の描写などには、かつての古き良き日のウェスタン映画とは違った印象を受けるものの、それでも懐かしい詩情のようなものは確かに感じられて、西部劇とニューシネマが魅力的に融合した作品となっています。 オッサンたちの中で、いつも半人前だった少年、その彼が見せた決断が、終盤のひとつの流れを作るのだけど、結局彼自身は何もなしえないという虚しさ。このあたりは、もはや失われてしまった古き良き西部劇に対する郷愁でもあり諦念でもあるのかな、と。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-03-12 10:08:26)
7.  狼の挽歌
いつもにも増してバカボンパパ似のブロンソン、なのにシブい、シブ過ぎるハードボイルド。彼が演じる主人公は寡黙な殺し屋。そりゃまあイタリア語のセリフをブロンソンがペラペラまくしたてても変なので、寡黙にもなろうってもんですが、まず冒頭からこれといったセリフもないままカーチェイスに突入。何が何やら、ですけれども、もちろん説明など不要。彼はまさに、そういう日常を生きる人間なのだから。やがて彼はある陰謀に巻き込まれていくのだけど、彼は決然と立ち向かい、そして刹那的に行動する。結局のところ、男ってのは、人を殺すときも、オネーチャンとエッチするときも、いつだって孤独なのだ、ということですね。モリコーネのノリのいい音楽が印象的ながら、あえて音楽を入れない静寂の中の、エレベーターのクライマックスが、さらに印象的。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2014-09-03 23:27:32)
8.  男はつらいよ 寅次郎子守唄 《ネタバレ》 
コメディならではの強引さが楽しい作品です。まず博の労災事故、ここで早くも看護師さんであるマドンナが登場して物語の布石を打つ。え、強引どころか、計算された脚本やんか、ってか。しかし、寅さんが帰宅し、老後の備えの話題となると、まるで会話を事前に予期し構想を練っていたかのように、壮大かつ軽薄な計画をスラスラ披露する寅さん、当然喧嘩となりとらやを飛び出すが、老後の備えと称していた通帳を捨て台詞と共にさくらに渡すと、それは実はさくら名義の通帳だったというオチ。喧嘩してカッコよく飛び出すところまで全て事前に織込み済みだったとしか思えない寅さんの全言動、コメディたるもの、このくらい強引でなくっては。そこから一転、侘しい港町でアンパンを買う寅さんの姿、風情があっていい感じ。しかし強引さは手綱を緩めず、知りあった甲斐性無しの男に赤ちゃんを押しつけられる展開。この後、登場人物の誰一人、警察に届けるべきという発想を持たないのが大変よろしい。この赤ちゃんが寅さんとマドンナを結びつける存在であり、一方とらやの面々はこれを阻止しようとムダな足掻きをする訳ですが。マドンナも強引にとらやに出入りするようになり、最初っから、寅さんにホレさせておいて後で別の男に走る算段だったとしか思えない。このシリーズのマドンナとして、これだけ自分の義務(?)に忠実なヒトも珍しいのでは。寅さんもこれに応え、いつにもまして軽薄で無責任な言動の数々を披露。当然にして最終的にマドンナは他のムサい男を強引にも選択。失恋したと知った瞬間に旅支度をする寅さんも、それを大して止めもしないとらやの面々も、素晴らしいほどに要領が良く、こういうストレートさも本作を実にサバけたものにしています。例の赤ちゃん、最後まで物語をかき回す役として存在してくれればいいのに、残念ながら作品の途中で退場してしまう。こうして物語を「整理」してしまうのが、本シリーズの限界かとも思う反面、最後に「遠い空の下で元気にしてるよ」と顔を見せてくれるのが、本シリーズの優しさか、とも。ところで、コーラスに参加した後のさくら、丸めた紙を持ってますが、楽譜ですかね。丸めちゃってるってことは、もう参加する気ないんですかね。喫茶店で丸めた紙を窓際に押し込んでましたが、このまま置いて行く気なんでしょうね。と思ったらその後のシーンでもまだ持ってましたね。意外に続ける気なんですね。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2014-02-22 04:20:35)(笑:1票)
9.  オリエント急行殺人事件(1974)
原作については、誰でも(?)読んでる有名な推理小説だし、作品の背景となっている実際の誘拐事件についても、どこにでも書いているので、改めてここに書く必要もないでしょうけど。原作小説における、この誘拐事件の位置づけは、事件に対する憤りなのか、単にトリックにケチをつけられないためのエクスキューズなのか、それはともかく、作品にいくぶんサワヤカな印象を与えているのは事実だと思いますが・・・いやあ、こうして映像化してみると、サワヤカどころか、変態的・猟奇的ですね(笑)。それにしても、「雪で立ち往生した列車内」という限られた舞台に、有名俳優をぎっしり押し込んで(外は寒そうだけど中は暑苦しい?)、ゴージャスな映画になってます。カメラも腕の見せ所、尋問のために次々に現れるスターどもをバッサバッサと料理する。当然、「そのうちの一人は、尋問すべてをワンショットで撮ってやろう」なんぞという発想にもなる訳ですが、一体どの俳優がその餌食となるのか。うーむ、イングリッド・バーグマンと来ましたか。そして、その一人ひとりの尋問の後、恒例の、“容疑者集めて犯人指摘”となる訳ですが、これがまた、スターそろい踏み、映像にするとなかなかに見栄えがするものでして、結構盛り上がるのでした。あとこの映画、リチャード・ロドニー・ベネットの音楽が良くって、変に構えたようなメインテーマのワルツとは対照的に、緊張感のある音楽で映画をビシッとシメています。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2010-08-10 06:44:24)(良:1票)
10.  王になろうとした男 《ネタバレ》 
なかなかにブッ飛んだお話でして、二人の野心家(あるいは夢想家、あるいは誇大妄想狂)が、艱難辛苦の末にインドの山奥に行って、王様になっちゃおうとする物語。冒頭の列車のくだりなどからすると、詐欺師同然の連中には違いないのですが、あっけらかんとしていて憎めない存在。その二人が、持ち前の大胆さ、無謀さ、そして運命の歯車によって、あれよあれよという間に支配者の地位に登りつめちゃう。マイケル・ケインの方はまだ小悪党の顔を残しているけれど、ショーン・コネリーの方は、自分の妄想に自分が飲みこまれてしまい、王どころか神を目指してしまう。しかし物事そううまくは行かない、正体がばれ、追われる身に。そして、あっという間に登りつめた地位から、吊り橋から谷底へ、まさにあっという間に転落していく。運命の怖さ、ですね。登りつめた後に転落した者のなれの果て、という物語ではあり、悲惨な物語でもあるのですけれど、それでいてどこかカラッとした陽気さがあり、楽しい映画になっているところが、本作の奇妙な魅力と言えるでしょうか。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2010-06-14 17:17:37)
11.  男はつらいよ 翔んでる寅次郎 《ネタバレ》 
このシリーズ、ワカリヤスサが売り、という部分があり、状況説明のセリフが必要以上に入ってしまって、「今のセリフは無くてもよかった(無い方がよかった)のに」と思ってしまうことがあります。しかし一方、それを補うかのように「観る面白さ」を全面に押し出した場面、というのが盛り込まれていて、その代表がやはり冒頭主題歌の背景に流れる、寅さん帰郷のシーンですね。特にこの本作、サイレント時代の喜劇映画を思い起こさせる、久しぶりに活きのいいドタバタを展開してくれます。このドタバタを、“一歩引いて”撮る。という「一歩引いた感覚」、コレが、本作は、全編にわたってしばしば見られます。前半の、北海道の雄大な自然を捉える場面などのロングショットもそうですし。それに、何と言っても、一つの画面の中で複数の物語が同時進行する場面が頻繁に見られるのが、目を引きます。画面手前においてある会話を捉える一方で、画面奥では別の会話が始まっている。そのようなシーンが、意識的に多く取り入れられているようで、何だか実験的なニオイすら感じられます。そしてこのニオイが、クライマックスでしっかり活かされていたりする。クライマックス、最後は寅さんが失恋して旅に出る、というのがいつものパターンだけど、本作では寅さんは予想に反し、柴又に残り、マドンナの結婚披露宴に出席します。この披露宴の席で、宴が進む中、画面奥にマドンナの母親がひっそりと現れる、という、例の「同時進行」のパターンが登場。これにより、感動がさらに盛り上がります。失恋相手の仲人役というつらい立場の寅さんも、この素敵なラストには、まさに柴又に残った甲斐があったというもの。さらに最後は大サービスで、新郎・布施明が歌を披露するというオマケつき、「素人のくせにウマすぎるだろ~」なんて、言いっこなし。こういう楽しさもまた、いいじゃないですか。というわけで、伏線による統一感と、物語の爽快感が、心地いい映画でした。ところで、桃井かおりの花嫁姿、何だかコワかったですねえ。やっぱり、何か特殊メイクでもして、あのコワさを出したんでしょうねえ。まさか本当にあんなコワい顔なんじゃあ、ないでしょうねえ。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2006-09-18 23:02:21)(良:2票)
12.  男はつらいよ 寅次郎恋歌 《ネタバレ》 
作品の基底に連なる「母」のモチーフ。さくらの歌う「かあさんの歌」、博の母の死、そして寅さんが惚れる今回のマドンナも子持ちの「母」。そこから浮かび上がるテーマは、「人生の重み」であり「幸せとは何か」、ということ(ここで寅さん自身の母親について触れられないのは、さすがにそこまでやるとあまりに見え透いているのと、蝶々さんのイメージではちょっとテーマに対し違和感があるから?)。母の人生は不幸だったと言う博。臨終を看取った兄は、母は満足して世を去ったと言うが、博は、そんな人生に満足すること自体が可哀想だと訴える。確かに、昔からよく世に言う、「幸福とは自分の不幸に気付いていない状態である」と。ではその人は実際は幸福だったのか不幸だったのか?ナントモ言えない問題であり、博の訴えは一理あるのも確かだし、自己矛盾しているのも確か。結局、幸せとは、絶対的にそこに「ある」ものではなく、人それぞれが「見つける」もの、あるいは「受け止める」もの、なのでしょう。ふと、モーパッサン「女の一生」の最後のあの有名なセリフ、あれを思い出し、あれこそが人生の幸不幸を的確に表現したセリフだったんじゃないか、とも思えてくる・・・。今回の寅さんは、明確な失恋を味わうわけではないけれども、より厳しい「人生の重み」を目の前に突きつけられ、嵐の夜、静かに柴又を去っていく。その後姿が哀しい。人生って、必ず、いいこともあれば、わるいこともあるのだよ。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2006-03-26 23:11:26)(良:1票)
13.  狼たちの午後
銀行強盗による篭城事件を描いているものの、緊迫のサスペンスと呼ぶには程遠い、奇妙な展開。緊迫感どころか、むしろ、登場人物の誰もが、なんとなく状況に流されてます。誰もこんな展開望んでないのに、誰にもどうにもできない迷走ぶり。いわば、この映画の主人公は、「この奇妙な状況そのもの」とでも言うべきか。「銀行強盗中」という異常な状況、本来「非日常」であるその状況が、ナントモ淡々と現実的に続いていくその一方で、「日常」であるハズの犯人の身の上がむしろどこか奇妙。アル・パチーノ演じる主人公が、チョット普通でない家族や愛人と長々と電話するシーン、これは彼にとっての「日常」なのだが、電話を終えてふと回りに目をやると、人質の診断をする医者の顔。まさにそこは「非日常」であるはずの「犯行現場」なのだけれども、まるで「日常」のごとく一見穏やかに、しかし問答無用に人々を押し流していく。「状況」に流されていく人々の無力さと、それを映画としてハタから眺める残酷さ・・・。それにしても、このふたり、やっぱり兄弟には見えないなあ(←それは映画が違います)
[CS・衛星(字幕)] 8点(2006-03-06 21:48:28)
14.  男はつらいよ 純情篇 《ネタバレ》 
オープニングのタイトルバックが、ヘリからの空撮による葛飾柴又の風景、というわけで、「故郷」というのがひとつのキーワードである本作。冒頭も夜汽車での「故郷」に関する寅さんの独白から始まりますが、この語りからして何だか寅さん、ダンディだね。缶ビールをあおってみたり(これは様にならず笑いを呼ぶ)。そして、九州で知り合った宮本信子とのやりとり、これまたダンディ。なかなかハードボイルドしてて、シビレます。もっとも、この後、柴又に飛んで帰っちゃってからはテンでダメの、いつもの寅さん。博の退職騒動での驚異の無責任ぶり、トンでもないドタバタに発展し、今度は苦笑まじりの笑いを誘う。それにしても、故郷を離れたらダンディだった寅さんも、故郷の柴又では実にノビノビしており、子供のよう。若尾文子の着替えに大興奮しつつも必死で自分を抑えようとする姿など、思春期の中学生みたいで、見てるこちらも一緒に赤面しちゃうけど、こういう感覚は誰しもの十代の頃の記憶に何となく繋がり、懐かしい感じもします。寅さんの惚れ易さが時に迷惑になることについても「頭じゃわかってるけど、心はそうはいかない」などとカワユイことを。←これはロバート・K・レスラーによる凶悪猟奇殺人犯の分類では「無秩序型」に当てはまるそうです(何でやねん)。それはともかく^結局は失恋して柴又を去る寅さん、発車直前の電車からさくらに「故郷ってのはよ・・・」と話かけるが、そこでドアが閉まり、その後はさくらにも我々にも聞こえない。こんな辛い別れのシーンも珍しい。一方、ラストでは冒頭エピソードの後日談が描かれ、静かに涙する森繁久弥が映画を締めくくる。寅さんシリーズって、映画の性質上、わかりやすく作られているので、ちょっとセリフが説明過剰に思われる場合があり、仕方ないんだけど、そんな中で、森繁久弥の役はセリフがかなり控えめで、逆にインパクトを残します。このラストはじーんと来ました。ちなみにこの映画、初代おいちゃんと2代目おいちゃんが登場する楽しさも。こりゃまるで007にショーン・コネリーとジョージ・レーゼンビーが登場するような豪華さ(←じゃあ大した事ない?)。 (ところで若尾文子にやんわり断られるシーンで寅さんは大勘違いをするが・・・実は寅さんは「わかっててわざと」勘違いして見せたのではないか?などと空想するのもまた楽し)
[CS・衛星(字幕)] 8点(2006-01-08 21:53:00)(良:1票)
15.  男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく
一作目でさくらは、寅さんを見ても最初誰だか解らなかったのに、本作では、さくらの同級生・紅奈々子は、とらやの店員に扮装(?)した寅さんを見た瞬間、一発で「おにいちゃん!」と気付いちゃう。倍賞千恵子しっかりしろっ! それはさておき、浅草のレビューの場面がたくさん盛り込まれた本作、木の実ナナのドハデな顔立ちとも相まって、なかなか賑やかな作品になっておりますが、華麗な舞台の一方、舞台裏では、年齢的な限界や結婚問題に悩む奈々子の姿があり、クライマックスの彼女の歌(これがまたイイんだな)へと、ドラマチックな盛り上がりのある作品になってます。寅さんの方はというと、後継者問題に悩むおいちゃんの病気をよそに、九州に飛び出して青年に説教したと思えば、心機一転、自分も身を落ち着けようととらやに「就職」してみたり、はたまた仕事そっちのけで木の実ナナにのめりこんだりと、まさに「わが道をゆく」。でもそんな寅さんも、踊りをとるか結婚をとるかという彼女の悩みに対しては珍しく深刻な表情を見せる。自分が彼氏なら、そんな彼女に決してそんな思いはさせないのに・・・。静かに去っていく寅さんの姿にホレボレしちゃうのでありました。一方、武田鉄矢が、寅さんの恋愛指南でも処置ナシという狂言回し役、これが出しゃばり過ぎることのない適度な盛り上げ役で、なかなかの好演でありました。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2006-01-04 18:57:30)(良:1票)
16.  男はつらいよ 柴又慕情 《ネタバレ》 
帝釈天の門にあるツバメの巣は、今年も空っぽのまま。「片付けようか」と言う御前様に対し、さくらは「もし来年ツバメが帰ってきて巣が無かったら可哀想」。このやりとりが直後の展開を暗示。とらやには「貸間あり」の掛札、絶妙のバッドタイミングで帰って来ちゃった寅さんがこれを目にして一騒動。こういう流れが、たまらなく可笑しいところでもあり、またホロリとくるところです。2代目おいちゃん・松村達雄も、ちょっと高めの声でまくし立て、喧嘩っ早くて涙脆そうな下町人情オヤジでなかなかの好演。そういえばとらやにナゼか突然ペプシの自販機が登場・・・これはペプシの売り込み戦略か(これは目立ちすぎてやや不自然かも)。さて、またフラリと旅に出た寅さん、旅先で女性3人組と出会うが、そのうちのひとりが吉永小百合ってんだからタマラナイ。しかも、こういう3人組って、一番の美人が、一番婚期が遅かったりするのよね。で、寅さん、御前様の持ちネタ「バタ~」なども駆使しながら彼女たちと打ち解けるうち、水が高きより低きに流れるごとく、吉永小百合演じる歌子さんにメロメロになっていっちゃう。こりゃもうしょうがないよね。でも、この後失恋するとなると、この落差はでかいぞ~。というわけで、なかなかに残酷なシチュエーションの本作ですが、ラスト、結婚後の歌子さんが近況を語る場面で、一瞬写る歌子さんの旦那が、これが実にブ男(←失礼)。ああ、これだったら、タイミングさえよければ寅さんにもチャンスはあったのだなあ、とホッとするやら、ねたましいやら。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2005-11-13 17:45:20)(良:1票)
17.  女必殺拳 危機一発
最近はとてもチャーミングなお嬢さんが実は長年、カラテをやってたりしたとかで、その素晴らしい身体能力を女優としてアクション映画の中で披露してくれたりして。いやはや、いい時代になったものです。 それもこれも、志穂美悦ちゃんがパイオニアとして先鞭をつけてくれたからこそ。みんな、悦ちゃんに憧れてアクション女優を目指したんだろうね。 と言いたいところだけど、まあ、そんなワケ、ないですわな。女必殺拳の頃と現在との間には、大きな空白の期間が。志穂美悦子に続くアクション女優はなぜ現れなかったのか・・・。 当然と言えば当然な気もしますね~、こんな妖怪映画みたいな作品しか作られないんじゃあ、ねえ。 こういう作品を安心して楽しむには、ある程度の距離感が必要ですね。だから、今こそ楽しむべき映画!なのです。 今回も敵の一味として、面倒くさいヤツが大量に登場します。コケオドシ感、満載、なのですが、これらのややこしくて面倒くさい妖怪じみた連中だけではなく、なななんと倉田保昭兄さんまでが、敵の一味? という展開。最終的にどうなるかは、見てのお楽しみ? 志穂美悦ちゃんのアクションは、今見ると微妙なところもありますが、それでも前作よりパワーアップしてるんじゃなかろうか。激しく、そしてキレがいい。 さらには、そのアクションを支える、カメラの躍動感。破綻寸前といって良いほどアングルを振り回し、それでも何とか、アクションがカメラに収まっている、そのギリギリな感じが、スリリングかつ迫力満点です。 もう、お腹いっぱい。
[インターネット(邦画)] 7点(2022-05-16 22:37:01)(良:1票)
18.  女ガンマン・皆殺しのメロディ
「女ガンマン」なんてのがいかにも、企画モノ、っぽい感じがしちゃうのですが、コレ、なかなかの作品です。ちゃんと起承転結になってます。あるいは、交響曲の4楽章構成。 主人公の女性が、自分を襲い・夫を殺害し・家を焼いて去って行ったポンコツ悪党三兄弟への復讐を誓う、と言うオハナシ。凄腕ガンマンへの弟子入りを希望するも何度も断られる、その過程がいい。ある瞬間に、転機が起こる、その流れがいい。 ようやく射撃を教えてもらえることになっても、映画はそこから、銃を入手するための旅へとエピソードを移す。海岸で子供たちと戯れたりする、平和な日々。もう復讐なんて忘れてしまってもいいんじゃないか、という気がしてきて、だからこそ、「それでもやはり復讐しなければ」という主人公の意志が、一種の宿命のようなものを感じさせ、見てて、やるせない気持ちにさせられます。 いずれにしても、彼らの元にある日、三兄弟とは別の悪党一味が現れて、平穏が破られます。 ここでの銃撃戦が、映画中盤の見所です。なかなかの迫力。こんな連中と戦った後で、今更あのポンコツ三兄弟と戦っても、盛り上がらんよなあ、と言う気がしてくるのも事実ですが。 しかしそこは我らがボーグナイン。強敵として彼女の前に立ち塞がります(ジャック・イーラムなどは予想通り戦力外)。終盤の刑務所跡での対決の場面では、影を使って間接的に人物の動きを見せるなど、心憎い演出もあったりして。 意外に正統派の作品、という印象です。企画モノだなんて、とんでもない。
[インターネット(字幕)] 7点(2021-05-18 22:39:59)(良:1票)
19.  オレゴン魂
『勇気ある追跡』の続編というのか、それとも変奏曲とでもいいますか。また3人で「追跡」をやるのですが、今回はずいぶん勝手が違ってます。前回ジョン・ウェインと同行したのが少女だったのに対し、今回はキャサリン・ヘプバーン演じるオバチャン。前回は3人の間にある種の緊張感があったけど、今回はこのオバチャンに圧倒されて、ジョン・ウェインもたじたじ(もう一人の同行者である先住民の少年は、とてつもなく素直なので、正直、存在感ありません、ハイ)。このオバチャン、敬虔なクリスチャンのはずなのにアッサリ敵を射殺してみせたり、クライマックスでは敵にウソついて不意打ちしたり、まーやりたい放題、まさに独断場。 ジョン・ウェインも、もうしょうがないなーとばかり、最初から折れ気味で、二人の間に緊張感が無いことは、二人の姿を横並びで収めた画面の多さにも表れています。 という、なんともいえないおおらかさ。ガトリング砲ぶっぱなしたり、ニトロが爆発したり、人も結構バンバン死ぬんですが、基調はあくまでコミカルです。もうこの二人、結婚しちゃえばいいのにねえ、と思ってたら、ラストは西部劇らしく別れとなるのですが、ここでは去っていくのがキャサリン・ヘプバーンであって、ジョン・ウェインが「見送る側」なんですねえ。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-01-21 21:28:10)
20.  男はつらいよ 奮闘篇
冒頭、集団就職の若者たちに「親を恨むなよ」「葛飾柴又のとらやに行けば皆暖かく迎えてくれるから」などと語りかける寅さん。とりあえず、「自分も同じ汽車に乗る予定だったのに調子に乗って見送る側になってしまった」というオチがつくのだけど、その後本編でさらなるオチが待っていて、とらやでは不在の自分を皆バカにしているし(といっても実は寅さんを暖かく迎える相談をしていたのに、というスレ違い)、寅さん自身、生みの親である蝶々さんを恨みまくってるし。という訳で、口で言うようには世の中、なかなかうまくいかないもの。とりあえず、前半は蝶々ワールドが展開していきます。お陰で後半のマドンナとの絡みがやや食い足りないか。で、今回のマドンナと寅さんの恋についてですが、エーと、その、コメントしづらい面があり、ノーコメントということで(笑)。しかしまあ、昨今、弱者切り捨て型の社会などと言われ、切り捨てた挙句にその帰結として発生する生活保護の増加と、それに対する中傷もまた増加するという悪循環、それに対し、障がい者の就職支援という、サポート型社会の姿を寅さんを通じて描くってのは、なかなか時代を先取りしているのではないでしょうか(世相を後追いする山田洋次監督には珍しい??)。さてさて、「似合いのカップル」ってのは、変に似合っていると、周りは心配になる。ましてや、似合ってないともなると……。物語自体は誰もが予想する展開となるのだけれど、それでもやっぱり、息子を想う親心、蝶々節が再び炸裂し、物語の流れに楔を打つ。そんでもってラストのさくらの旅路が良い。ここはもう少し長く観たかった、かも。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2013-12-04 23:50:01)(良:2票)
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