1. 大いなる陰謀
映画的緊張感に満ちたすばらしい脚本。俳優たちの演技も文句なし。 とくにトム・クルーズは、頭脳明晰で野心家で弁舌さわやか、でも兵士たちなんて駒としか考えてない、超いけすかない上院議員ぶりがとてもよかった。妙にチャーミングなところが、かえって小面憎いというか。 ほんとうに痛ましい、切ないストーリーなのだが、こういう映画が商業ベースで出てくるところが、ハリウッドの底力だね。 まだ今年は3分の1しかすんでないが、今年の私的ベストワンになりそうな予感。ついでに、映画私的ベスト「しょうもない邦題」部門でも、だんとつトップでしょう。どこが「陰謀」やねん。責任者出てこい。 [映画館(字幕)] 9点(2008-05-03 16:14:50) |
2. オレンジカウンティ
リリー・トムリン(進路指導員)、キャサリン・オハラ(主人公の母)、ジョン・リスゴー(父)、ケヴィン・クライン(あこがれの小説家/大学教授)など、助演陣がとにかく豪華。リリー・トムリンって、60をはるかに超えているはずだが、むかしからこういう骨ばった感じだったから、年取ってもそんなに印象がかわらないよな。フットワークの軽さはさすが。 ジャック・ブラックの怪演に拍手、といいたいのだが、ロクデナシぶりがあまりに真に迫っていて、笑えなかった。とにかく、パンツ一丁でうろうろするのはやめてー、という感じ。 ストーリーは「青い鳥 青春編」といってしまえば終わりなのだが、コリン・ハンクスの希望を次々と打ち砕く家族のとっぴな行動の数々に、次はなにをするやら、と、げんなり。スタンフォードに舞台を移した後半に比べて、前半はもたもたしていた印象。 スカイラー・フィスクは、度の超えた動物好きの描写があっても、全体に誠実な印象が消えず、好演だったと思う。 [DVD(字幕)] 5点(2007-07-27 18:36:53)(良:1票) |
3. オルランド
《ネタバレ》 見ていると、ティルダ・スウィントンの大きな瞳に吸い込まれそうである。性も年齢も感じさせない、彼女の不思議なキャラクターなくしては、成り立たない映画かも。 何百年も生き続けたり、途中で男が女に変わったり、しかもまわりはそれを不思議がることもなく、そういうものとして受け止めている。そもそも人を食った話なのだが、まじめな顔で与太とばすようなおかしみが全編に漂っている。 衣装や美術も楽しめた。 [DVD(字幕)] 7点(2007-07-27 17:37:45) |
4. オーバー・ザ・レインボー
《ネタバレ》 交通事故から始まり、部分的だが記憶喪失ときて、あまりにも手垢のついたストーリー展開で、結末もばればれである。大学のサークルの描写などは『菊花の香り』を連想させるし(もっとも、こっちが先だが)、探していたものが実は、という落とし方は『×××・××××ト』と同じパターン。 見ていて、おいおいという感じだが、決してつまらない映画ではないし、とくに学生時代のチャン・ジニョンのさわやかさは印象的だ。イ・ジョンジェも、細やかな演技で存在感を感じさせる。いままで見たイ・ジョンジェの映画の中では、この役がいちばん好きかなぁ。キャラクター的には、いちばん特徴がなくて地味なんだが。 役者の演技もよかったのだが、サークルでの同期の親密感、バカ騒ぎをしてみたり、くっついたり離れたりの恋愛模様などの描かれ方が楽しかった。 しかし、コン・ヒョンジンの大学生はちょっと苦しかったかも。 [DVD(字幕)] 7点(2007-07-24 17:10:02) |
5. オアシス
分析したりすると野暮になってしまう話。まるごと飲み込んで楽しむのが吉。そう、確かに苦い味はあるが、とても楽しい話なのである。 「グリーンフィッシュ」でも主人公の兄弟たちが生き生きと描かれているが、この小説でも兄弟の関わりが重要なポイントになっている。それにしても、ジョンイル、ジョンドゥ、ジョンセって、なんつーいいかげんなネーミングだ。(正一、正二、正三みたいな感じ。) [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2007-07-22 20:33:05) |
6. 王の男
《ネタバレ》 日本でのこの映画の売りは、イ・ジュンギの妖しい美貌、カム・ウソンとの同性愛的関係、で、そこにさらに王様がからむ、というところだろうか。「それより奥は、見てはならない」というコピーも、ほんとに映画見て作ったんか、と言いたくなるほど、的はずれ。売り方が悪いとしかいいようがない。 DVD(韓国版)で見たときは、確かにわたしもイ・ジュンギの魅力に目を奪われたし、劇場でも、ふっくらした唇を見て、本人の美しさだけではなく、メイク・照明・撮影などの技術も、こりゃたいしたもんだなぁ、と感心した。しかし、暗い劇場で画面とむきあって物語の中に入り込むと、一番印象に残ったのは、暴君として歴史に名を残す燕山君を、実に人間的に生き生きと演じた、チョン・ジニョンの様々な表情である。うまい役者なのはわかっていたが、この映画での彼の演技はほんとうにすばらしい。 ほかの3人も、それぞれ自分の仕事をきちんと果たした、ということだろう。とくにカム・ウソンは、いままでわりと都会的なイメージだったので、こういうマッチョな役は、ちょっと冒険だったんじゃないかな。体格もイ・ジュンギのほうが大きいようだし、筋肉質だし。でも、配役通りの剛と柔をきちんと印象づけたのは、彼らの演技力と監督の演出だろう。もともとの話は舞台劇なので、シナリオが破綻なくまとまっていた、ということも大きいと思う。 低予算で、セットや衣装もいまいち、という話なのだが、カン・ソンヨンの着る衣装のデザインはよかったなぁ。伝統的な韓服の枠の中で、国王の寵姫という権高さをよく見せていた。 字幕はおなじみ根本理恵なのだが、「広大 광대」という言葉が、すべて「芸人」と訳されているのは、ちょっとうーんという感じだった。これだと、ラストのセリフの感動が、字幕だけで理解している人に、伝わるんだろうか? 劇中で何度も「身分が低い」ということが出てくるので、まあそこで説明済み、ということなのかもしれないが、王や重臣たちに比べれば「身分が低い」というのは、当たり前っちゃあ当たり前で「賤民」であるということは、映画を見ただけでは、はっきりわからないような気がする。 かといって字数制限の中で、どう訳せば伝わるのかは、わたしもよくわからない。むずかしいものである。 [映画館(字幕)] 8点(2007-07-22 17:42:16) |