3. おおかみこどもの雨と雪
《ネタバレ》 シングルマザーとして色々気を使いながら子育てする母親と、野性児だった雪(姉、可愛い)が成長と共に人として生きていこうと頑張る姿はそれなりに描写されていた。子供二人のシンボルカラーが、心境が変化した時に入れ替わる(雪:服の色が赤→青、雨:瞳が赤色化)所と、『狼と人どちらでも立派になって欲しい』と願っておきながら、いざ息子が狼として旅立とうとすると『狼の10歳は大人かもしれないけどあなたは・・・』と口篭るシーンは良かった。 ただ『雪のクラスメイトである男子の問題が投げっ放し』『途中出てきた狼が何の関係も持たず終了』『父親の退場方法がいい加減、あっけなく死んだ的にするなら交通事故で十分』『全体的に緩急、浮沈が少ない』『傷だらけになる程の姉弟喧嘩をしておきながら、それ以降確執が生まれる等その後の展開に活かされることも無く気付けば仲直り』『主登場人物が多すぎて各人の描写が浅い』等展開のぶつ切り、中途半端、未補完な部分が結構多い。 特に雨(弟)が狼として歩んでいこうとする描写が雪に比べ唐突で雑。きっかけになった『先生』の設定も上記の狼に当てこみ、捕まったのを逃がしたお礼に自然の事を教えてもらうとかじゃ駄目だったのかな。 ただ表面的にはそれなりに整っているので、ここまでなら6点なのだが、序盤母親が病院に行くのを止め、『自然出産』の本を手にするシーンがあり、『ああ、狼が生まれてきたら大変だもんな』と思っていると、『狼が生まれてくると大変なので自然出産をする事にしました』と、所々ナレーションが入る、個人的にコレは『映像作品で絶対にやってはいけない表現』だと考えている。 そう言った事は『映像』で表現すべきで、『分かりやすくするための説明』なのかも知れないが、もうすこしボカして言えばいいのにズバリ言い過ぎ。その結果、映像から人物の感情を読み取る等と言った『感受性を使う楽しみ』が潰されている、上記の良かったシーンもそういった細かい説明が無かったからこそ良かったのに・・・・てかそこはちゃんと演出できてるのに何でそうなっちゃったの? 総評 色んな事をしようとする意気込みは感じられたが無駄なシーンが多く『トトロ』の劣化版になってしまった。個人的には本作が面白いと思ったら『ももへの手紙(点差の理由はナレーションの有無と人物描写の深さと構成がしっかり筋が通っている)』をお勧めします。 [映画館(邦画)] 5点(2012-07-22 00:28:31)(良:3票) |