1. 緋牡丹博徒
体に刻まれた緋牡丹を白い着物で包み、復讐の怨念=赤を白で鎮めていた“緋牡丹のお竜”の着物が弔いの黒を経て、ついに緋牡丹柄へと変わるその瞬間、内なる炎が外在化したその瞬間に、「よっ、お竜さん!」との声を発してしまったのあります。 [映画館(字幕)] 7点(2005-12-06 12:54:26) |
2. ピクニックatハンギング・ロック
ピーター・ウィアーさんのオーストラリア時代の作品。幻想的な映像に哲学的な言葉、パンの笛、ピアノ音がのせられ、神秘的な映像世界を構築しております。ピクニックでまどろむ女生徒達をソフトフォーカスでゆっくりと追っていくカメラワーク、手前に草木をぼかして撮り上げた構図、終始晴れ渡ったハンギングロックの木漏れ日、そしてアン・ランバート演じる少女の純たる清楚美・・・見ている方が神隠しにあうほどに吸い込まれてしまいます。ストッキングを脱ぐ少女の足をアップで、次々と寝転ぶ裸足の少女達を俯瞰したショットでとらえ、官能と神秘を同化させています。時計の止まったハンギングロックに響く少女の叫び声から、校長室にカットを移しカチカチと時を刻む柱時計の音・・・時を対比させた見事なシーン転換ですね~。神隠し後の後半も、冗長にならずに残った人間の心理描写を、校長先生を中心に細やかに描いているあたり、う~ん、これは傑作! 9点(2004-11-05 13:04:19)(良:1票) |
3. ビリィ・ザ・キッドの新しい夜明け
パルコが映画製作にのり出した作品です。この作品、見れば見るほど系で、もがけばもがくほど足をとられるような魅力があるんですよ。話は、ある酒場の店舗内でのみ進行していきます。その酒場をギャングから守る用心棒と、店に来る客、彼らがすべてネジが一本以上とんでいるような連中で、とにかく荒唐無稽なストーリィというかストーリィレスなストーリィ。理解不能な会話や登場人物の雰囲気を皮膚感覚で受容できるかどうかがこの映画を満喫できるかどうかの鍵ですが、私は受容派に属しました。また私の好みなのが、高間賢治さんのカメラワークで、店内を虫のようにドリーとクレーンで気持ちよく動いてくれます。北林谷栄さんと奥村公延さんの会話で、カメラがぐるっと回り込み、いたはずの奥村さんがいなくなって包帯巻きの人物が寝るベッドに変わっているワンカットのシーンは、「雨月物語」ばりでインパクトがありました。ギャングが襲来しての壮絶な銃撃戦は、スモークやら、雨やら幻想的な雰囲気をうまく作り出しています。ということで、保安官のパット・ギャレットにも是非見ていただきたい、愛すべき一品なのであります。 8点(2004-10-02 00:30:24) |
4. 百貨店大百科
百貨店のロケーションを楽しむようにカメラは縦横にショットをきめてくれます。カメラの前を客や従業員が平気で横切る、わざと横切らせているのが、これが百貨店だよ、と主張しているようでなかなか痛快です。百貨店だけでは単調になるの避けたのか、バンジージャンプやパリマラソンの映像に遊びごころを感じます。さてこの映画は、音の使い方がまた特徴的なんです。バックに音楽を重ねるているのは最初の方と最後のパリマラソンのシーンのみ。百貨店内では、店のBGM、アナウンス、客の雑踏、楽器売場の音、イベントの音、などなどをそのまま使用。そしてその喧騒がうるさい!という人間を配置し、一瞬店内がシーンと静まり返るシーンをもってきて、映画における音とは何かについて提示している、そのように感じました。この監督の音に対するこだわりを見たようです。ラストの合唱は少し切ないですが、人間関係において不協和音を奏でていた従業員のささやかな矜持を垣間見た感があります。その指揮者である楽器売場の店員が、最初のシーンでベランダにいた人間だと気づく時、やはり“音”がこの映画のモチーフなんだと推しました。ストーリィ性を追うと少し物足りないかもしれませんが、私には単純に楽しい作品でありました。 7点(2004-07-24 08:28:27)(良:1票) |
5. 桃色(ピンク)の店
この作品は、アットホーム賞でもあげちゃいましょうか。文通を媒介にした男女のすれ違いを軸に、タイトル通りに街角の店の話。解雇されるスチュワートが、一人ひとりと握手して店から出て行くシーン、見送る店員の背中(4人であるのがポイントですね)なんかほろりとします。そしてもっとほろりとするのが、クリスマスイブ、雪の降る中、店の前でボスが一人ひとりを食事に誘うシーン。ようやく連れ合うことができたのが新米の少年で、それでも満面の笑みを浮かべるボスが、言葉で並べる食事メニューのなんとおいしそうなこと。ここでこの少年にも粋な役割が与えられるのがあったか~いです。というように、けっしてスチュワートとサラヴァンの恋話に終始していないのが、この作品のいいところ。2人の関係に終始し、媒介のメールの中身そのものを描いたようなリメイク版では、けっして得ることのできない心地よさといえましょうか。ルビッチ作品の中では、少し毛並みが違いますが、肌触りはいいですぞ。 9点(2004-07-18 20:23:14)(良:4票) |
6. 昼下りの情事
《ネタバレ》 ワイルダー、ハリウッド監督13作目。そしてI・A・Lダイアモンドと脚本を組んだ最初の作品です。ワイルダーによるとダイアモンドという人は極端に性的表現を恥ずかしがる人だそうで、そういや、この作品もオードリーの魅力とあいまって品のある作品となってますねー。唯一、邦題だけが・・・なんだこの艶っぽさは。さてさてそれはさておき、この作品もワイルダーお得意の“なりすまし”から始まる物語。不倫相手の女性になりすまし、プレイガールになりすますことで、さんざん女性を振り回しきたプレイボーイを振り回すのは、本当は純真無垢な音大生。父親から真実を知らされ、荷物をまとめてオードリーと部屋を出るクーパー、廊下でチェロにちらっと目をやるクーパー、その後チェロを手に階段を降りる父。ワンカットで撮られたこのシーンは、チェロを媒介に実に巧く映像で語ってくれます。ラスト、駅で必死にふりをするオードリー、知っているクーパー、見る者はクーバーが知っていることを知っているだけに切ない別れ・・・あーいい映画だったなー・・・で終わるはずがひょいとオードリーを持ち上げ、列車へ ・・・えー、2人は結ばれちゃうのー!?、親父ものん気に判決うんぬんなど台詞を決めている場合じゃないだろと思うんだが、あくまで個人的な好みで、このラストはどうしても気に食わないなー。プラットフォームに残されたオードリーにチェロを渡す父の姿で終わってほしかった。しかし、アンクレットに挑発された男というのは「深夜の告白」では悲劇的な最後を迎えるんですけどねー。ちなみにオードリーはオードリーでも、クーパーとオペラを観劇していたご夫人は本物のワイルダーの妻、オードリー・ワイルダーです。 8点(2004-06-21 23:19:48) |
7. ビッグ・フィッシュ
3年かかって百科事典のアルファベットのGまで読んだ父親が、息子に、家族に、周りの人々に与えたのは、Gの次の、読んではなかったHで始まるHAPPYだったのだ。そうだ、HAPPYなど理屈で理解するものではないのだ。葬儀に集まった面々の表情、しぐさがそうささやいていました。 8点(2004-05-19 00:55:22) |
8. ピンポン
まずはCGをイヤミなくさわやかに映像表現した曽利監督に拍手です。CG技術者だけに、それがハナにつくような監督デビュー作ではないかという私の不安は見事に不的中。CGが浮くことのない、おみごと!な作品に仕上がっています。監督自身「役者の演技があってこそのCG」と言うように、それぞれのキャラを演じる役者もいいです。6面揃ったルービックキューブは、ヒーロー到来の記号だけではなく、6人のキャラがみごとにかみ合った象徴ではないかと推しました。ペコ、スマイル、ドラゴン、アクマ、チャイナ。ん、、、1人足りない。大人なジョーとオババは除いて、もう1人誰だ・・・。いた、キャプテン大田だ。荒川良々が実にいい味出してますねー。笑わせてくれます。それとピンポンのラリーのシーン。見応えたっぷりなのですが、このラリーという意味では、カット割のシーンと長回しのシーン、躍動感と会話の深み、これらもきれいにラリーされているように感じました。巧みです。次作に大きな期待を抱かせるのに十分な監督デビュー作です。 9点(2004-04-27 11:49:52) |
9. 100発100中 黄金の眼
おいおい、なんか楽しいぞい、はまってきたぞい、このシリーズ。軽ろやかでノー天気なリズムは前作同様。アンディこと宝田明の正体不明加減もそのままだー。笑いながらつっこみを入れたくなるとこ満載やし。1ドルで殺しを引き受けちゃうアンディ。おー、必殺シリーズの源流もここにあったのか。ルパンだけではなかったのだ。よしもっと見るぜ!ってこれで終わりなのね、このシリーズ。んー、残念、、、。 その残念感に前作より+1点献上。 7点(2004-04-23 23:00:04) |
10. ひまわり(2000)
どやどやと同年代の人物が集まってきて、一夜を過ごした翌朝、海岸でラストを向かえるというのは『きょうのできごと』の原点を見ているようでした。もっともこちらはファンタジー色が強く、回想シーンにあふれています。小学生の時、好きな女の子にボールをぶつけることができなかったことがあるような人には、すごく“ひまわり”がまぶしく映るのではないでしょうか。ただここまで謎めかす必要があるのかどうかは謎ですね。 7点(2004-04-12 21:42:19) |
11. 100発100中
ルパン三世の源流ここにあり。特に峰不二子の根を浜美枝に見るのはたやすい。作品全体のチープ感、浜美枝のキュート感を楽しむべし。ルパンという大河を生み出したという意味では一級河川と認定していいかもしれない。 6点(2004-04-11 16:26:03) |
12. 美女ありき
《ネタバレ》 1815年、フランスの港町カレー。エマ(=ハミルトン夫人)の万引の失敗のシーンから始まり、彼女が自らの人生を振り返る。ネルソンへの愛に貫かれながらも、彼をトラファルガーの海戦へ送り出し、死期を悟るシーンは、なんともせつない。悲報を知らされ、部屋のカーテンを自ら閉めることで彼女の人生も閉じられたことが語られる。冒頭、ワインを盗もうとしたのは、フランスからネルソンを取り返そうとした象徴ではないだろうか。転倒してボトルが砕け散ることに呼応するかのようにその年彼女は亡くなっている。史実、ナポレオンが同じ年に亡くなっているのはなんとも運命的である。 8点(2004-03-06 23:59:10) |
13. ビューティフル・マインド
《ネタバレ》 ルームメイトだった友人のジェームズの存在に救われながら見ていたら、いきなり「幻覚」ですよって、えー!そりゃないよー、てな感じでした。不謹慎かもしれませんが、奥さんも実は幻覚で、ノーベル賞受賞式で妻に感謝を述べたスピーチに一堂呆然とする、という結末だったらこれはすごい映画だったろーなー、と思ってしまいました。 6点(2003-09-07 23:00:58)(笑:1票) |