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1.  北京ヴァイオリン
高い評価で投稿されている方々↓には申し訳ないけど、それ程の作品だとは思いません。過去に遡るまでもなく、何処にでもゴロゴロしているような極めてありきたりな作劇で、チェン・カイコーも総じて鼻白むほど臭い演出に終始し、また本来もっとじっくりと描くべきシークエンス(特に前半部分)を、ものの見事にすっ飛ばしてしまうという、編集の荒っぽさが目立つし、オーソドックスと言うよりかは、むしろ凡庸と言わざるを得ないほど。自分の好みに合わない作品だったと言えばそれまでなのだが、この人、結局「覇王別姫」だけの人だったような気がしてならない。その才能を枯らすには、まだ早い!
5点(2004-05-05 18:43:30)
2.  ヘブン・アンド・アース
CGやワイヤー・アクション全盛の今、ライブ・アクションに徹している点が近頃では珍しいぐらいで、むしろ新鮮なほど。個々に魅力的に性格づけされた多彩な登場人物(中には殆んど説明されない、謎めいた或る人物も含まれてはいるが・・・。)と、望遠レンズの多用で映像にボリュームと躍動感をもたらし、自然の雄大さを捉えたカメラの素晴らしさもあって、本作は久々に見応えのある歴史冒険ドラマだと楽しんでいた。終盤までは・・・。それにしても、ここに至って突然のVSFで締めくくるという製作者側の心変わりには、一体何故?と言いたい。(それもまったく意味不明。)一大チャンバラ・バトルが当然の様に繰り広げられ、そのあとに来るチアン・ウェンと中井貴一とに、往年の日活無国籍アクションで見せる小林旭と宍戸錠との対決をダブらせ(勝手に)期待していただけに、この肩透かしを食らわせた締めくくり方には憤懣やるかたない思いだ。貴一の「お前を誰にも殺させやしない。殺るのはこの俺だ!」などといったキザな決めゼリフも、これでは生きてこないではないか。竜頭蛇尾のような作品になってしまったのがなんとも惜しまれる一本。
6点(2004-05-03 17:06:19)
3.  ヘヴン 《ネタバレ》 
冒頭、いきなり高層のエレベーターの爆発から物語は始まる。夫を失った悲しみとその恨みから、或る麻薬密売人に復讐する為に爆薬を仕掛けたのだ。覚悟の上での犯行だったが、しかし恨みを晴らすどころか、関係ない人たちを爆死させてしまう結果に。この時のヒロインの英語教師を演じるC・ブランシェットの凍りついた表情が印象的だが、普通の一般市民のテロ行為がまかり通る国家の恐怖を感じざるを得ないエピソードではある。この後、取調べに通訳として立ち会った若き憲兵が、彼女を助けながら思いを遂げさせるという展開となるが、何故彼はそこまでして彼女に想いを寄せるのかは、あまり多くは語られないので、やや唐突な印象を受ける。絶望感に打ちひしがれ、もはや生きていく気力も失いかけていた彼女だが、青年の純粋な愛に応えるべく、共に逃避行を決心するのが物語の後半。それはまさに絶望に向かってのものだが、サスペンス・タッチの前半から舞台がトスカーナ地方に移ったこともあって、陰惨さというものが徐々に薄れていき、いつの間にかピュアで詩情溢れた画調に変転している事に気づく。極度にセリフを抑え、表情だけで純粋な愛の形を描出したT・ティクヴァ監督の、この流れるような演出の手際の良さは実に見事である。ブランシェットと相手役のJ・リビジは共に本作のイメージ通りの透明感溢れる好演を見せているが、既に「ギフト」で共演していた事もあって、さすがに息がピッタリであった。二人を乗せたヘリが上空高く舞い上がり、やがて小さく小さくなって空に吸い込まれていくラストは、まさしく天国に召されていくという象徴的なイメージで、近年における名場面だといえる。
8点(2003-11-25 01:02:45)(良:1票)
4.  ヘルファイター
これは珍しいJ・ウエインの数少ない現代劇。映画は、火柱を上げる油田にニトロを仕掛け、その爆風で一瞬に鎮火させるという、油田火災専門の男たちの活躍を描いたもの。現代劇とはいえ主な舞台がテキサスということもあって、しかもカウボーイハットで登場するJ・ウエインとくれば、やはりお定まりの酒場での乱闘シーンに代表されるように、作品のトーンは西部劇そのもの。危険を顧みない夫への妻の不信感や、娘と部下との結婚話などといったサイドストーリーもあるが、あくまでも添え物で、後半、ヴェネズエラ革命で生じた油田火災に急行し、戦闘に巻き込まれながらも消火にあたるクライマックスが、やはり最大の見所となっている。全編、チャチな特撮はほとんどなく、まさに本物のスペクタクル映像が大画面に展開され、アンドリュー・V・マクラグレン監督らしい豪快な演出と相俟って、圧倒的なスケールを感じさせられた作品であった。
7点(2003-05-22 01:02:14)
5.  ベン・ハー(1959)
人間は水がないと生きては行けない。激しい喉の渇きを覚えても、その水を飲む自由が得られない時、そっと手を差しのべてくれる人がいたら・・・。この作品は、奴隷となった或る貴公子の数奇な運命と、彼の人生をめぐる多彩な登場人物たちの人間ドラマを、巨大なスペクタクルを交えて一大叙事詩として描ききった、言わずと知れた巨匠W・ワイラー監督の歴史的名作。その中で、“水を与える”というシーンが何度となく、そして思い入れタップリに描かれているが、さり気ないシーンをこれほど感動的に描いた作品を他に知らない。人間が人間に対して思い遣る心と、人の恩を忘れず生きていくことの大切さを教えられたようで、個人的にも生涯忘れられない作品となった。ミクロス・ローザの雄大いて安らぎを与える優しい旋律が心に染みる。
10点(2002-04-19 00:28:35)(良:2票)
6.  ペイ・フォワード/可能の王国
ストーリーそのものより、主役三人の演技の上手さに素直に感動してしまいました。ただオスメント君に花を持たせ過ぎたばかりに、せっかくイイ流れで来た話がラストで感動の押し売りになってしまたのがなんとも惜しい。
8点(2001-03-09 15:09:36)
7.  ペーパー・ムーン
いつの時代でもその流れに埋もれてしまいそうな慎ましい人々が、それでも懸命にしたたかに生きていこうとする姿には感動せずにいられない。おそらくチャップリンの「キッド」や「モダンタイムス」を意識して、30年代という雰囲気を白黒スタンダードというオーソドックスな方法をとった事(ラストの一本道に到るまでの展開などは、正にオーソドックスそのもので先が読めてしまうけど、それでもなお新鮮に思えるから不思議)と、キャストにライアン・オニール父娘を得たことが、この作品の成功の大きな要因と思う。T・オニールはこのあと「かんばれ!ベアーズ」にピッチャーで登板してから、どうやら現役を退いたようだし、また監督のP・ボグダノビッチもこの作品あたりでその才能を枯らしたようで、第一線を退いてしまったのが惜しい。
8点(2000-10-15 17:07:53)
8.  ベニスに死す
最初に見てからもう30年近くなるんですねぇ。“ベストワン監督”のルキノ・ヴィスコンティの作品群の中でもとりわけ抜きん出た傑作。僕個人としても生涯のベストワンと言い切ってもいい作品です。休暇でベニス(現ベネチア)の島に来た老作曲家が、たまたま遊びに来ていた美少年に心を奪われ、やがて熱病に冒され死んでいくというストーリー。貴族出身でもあるヴィスコンティ監督の絢爛豪華なるセットや衣装の見事さは、決して貴族趣味に陥っていない気品があり、また映像と音楽の融合は見事というしかない。ラスト、夕陽の海の中で戯れる少年(幻のような美の極致)を遠く眺めながら、砂浜の椅子にもたれて苦悶の表情の中、笑みすら浮かべながらやがて息絶える主人公(=ダーク・ボガードが一世一代の熱演)が哀れだ。その顔には“美”と“若さ”に憧れるかのように化粧が施されていて、やがて死熱によりそれが崩れていくさまは強烈な印象を残す。21世紀にも語り継がれていくべき名作です。
10点(2000-09-25 00:05:09)(良:1票)
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